W.H 〜邂逅〜   作:アマザケ01

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魔女の家のanother story よければご覧くださいますよう……


W.H 〜邂逅〜

夢を見た。

何の夢? と問われれば、森でいつも一人でいる、お友達の夢。

どんな夢? と問われれば、彼女の心境を理解してあげられなかった、悲しい夢。

夢を見た感想は? と問われれば、言いたくないし触れたくない、私だけの夢。












その夢を見て、貴女は何がしたい? と問われれば--















「………………」

ふと、森の中で目が覚めた。辺りを見渡しても誰もおらず、寝ぼけ眼の瞳からは薄っすらと風によって揺れる枝や葉っぱが映る。よく聞く話だが、病院のベッドなどで、あの葉っぱが落ちたら最後、私は死ぬの。そんなことを言う人がいるけれど、私はそうは思わない。葉っぱ一枚程度で生と死の境が失われ、生が死に奪われる? そんなこと、ありえない。

ゆっくりと立ち上がり、数度自身の衣服を手で叩く。どれくらい眠ってしまっていたのかはわからないが、そんなに土埃も付いていなければ、寝ていた間に体の上に葉っぱが落ちてきていたわけでもない。軽くウトウトとしていた程度なのだろうか。

何か夢を見た気がするが……きっと、それはありえないのだから。

ふと、寝てしまっていた付近に手紙が一つ落ちていることに気がつく。その手紙を拾い上げ、ゆっくりと文字を読み上げる。

あぁ、そうだ。私は行かなければ。

読み終えた手紙をポケットへとしまい込み、近くに建っていた看板へと視線を向ける。目的の方向が間違ってないと感じれば、ゆっくりとそのまま歩き出す。数分後、たいした距離も離れていなかったために目的の場所へとたどり着いた。

見るからに巨大な洋館。いや、屋敷というべきなのだろうか。見るからにさぞ大層な富豪が住んでいそうなほどの建築物。こんな辺鄙な森の中にあるのが不思議であり、常識が覆されるほどの圧迫感。そう感じさせられるほど、その屋敷……家は、不可思議と言える存在であった。

私はゆっくりとその家のドアノブへと手をかけ、家の中へと足を踏み入れる。玄関は一部屋分はあるんじゃないかというほど大きな空間であり、目の前には扉が一つ。

その扉へと再び足を踏み出しては、ドアノブを捻る。ガチャリと音が鳴り、さらに奥へと足が前へと歩み出る。

そこには何もない空間がまた広がっていた。否、何もないというのは訂正するべきである。部屋の中心には赤い何かのマーク。そしてその部屋の奥の壁には小さな張り紙が貼られており、何かが記されている。ここからでは何が書いてあるのか見えない。

足元のマークに気をつけ、踏まないようにしつつも部屋の奥へと歩み寄り、その張り紙を見つめる。

【わたしの へやまで おいで】

そう一文だけ書き記された張り紙。読んだ瞬間にその紙がパッと消えてしまった。唖然としつつ、少しだけ動揺からか後ろへと下がる。その際、足元には部屋の中心にあった赤いマーク。

突然として、壁が左右から迫ってくる。私は急いで、先ほど入ってきたドアへと急いで向かう。ガチャリ、とドアノブを捻ればドアが開き、部屋の外へと出る。

外へと出た瞬間、先ほどと景色が少し違うことに気がついた。左右に新しく部屋が現れていた。その後に、背後からズズン……と何か大きな音がした。先ほど迫ってきた壁がそのままくっついたのだろうか。

そのようなことを思いながらも次は、部屋を出て見てから左の部屋へと足を進める。その先には細長い廊下に部屋が二つ。大きなのっぽの古時計。

手前の部屋のドアノブを捻る。そこには部屋の中央に、テディベアがカゴの中へと入っており、再び壁には一枚の張り紙。近づいて読んでみると。

【くまを かごに】

入っているけれど、そう思いながらもぶんぶんと首を横に振る。ある程度探したけれども部屋にはもう何もなさそうだからと一度部屋の外へと出る。

次はもう一つ奥の部屋へ。ドアを開ければ、そこにはたくさんのプレゼントが積まれたお部屋。その中に、小さなテディベアが一つあることに気がついた。

私はそれを持ち上げ、ゆっくりと部屋を後にする。部屋を出る際に、何かがコロンと音がしたけれども、きっと気のせいだろう。

先ほどの部屋へと戻って来れば、カゴの中へとテディベアを入れようとする。しかし、元々いたテディベアのおかげか隙間には手が邪魔で入れられなかった。

そのため、私は一度カゴに入ったテディベアを取り出し、きちんと詰め込みやすいように人形の体を整理してからカゴへと入れた。うん、入った。

その際にガチャリ、とどこかで扉が開く音がした。私はゆっくりと立ち上がっては、用のなくなった部屋を後にする。その際に、先ほどの部屋と同じく背後で何か動いた気配がしたが、気にせずに部屋を後にする。

玄関前へと戻って来れば、先ほどよりも少しだけ薄暗い気がした。部屋を出てから見て、正面の部屋へと歩みを進める。その際に、何かが部屋のドアの奥から飛び出してくる気配を感じた。向かい側のドアが、開く。私は何か来ると身構える。しかし、何も飛び出しては来なかった。だが、そこには確かにいた。とてつもなく巨大な、大きなテディベアが。















--ただし、ドアの大きさにその大きさが見合わずに、扉からこちら側へと出れなくなっていた。

私はクマをジッと見つめる。クマは数瞬ほど力むような仕草を見せていたが、出られないと分かればその後諦めたかのように部屋の奥へと戻っていった。

私はクマを退けた部屋へと歩みを進める。室内は少し埃っぽく、テーブルの上には鎖で繋がれたハサミ、埃の詰まったタンス、部屋の隅に不貞腐れたテディベアと、色々なものが置かれており、その少し先には違う部屋へと繋がるドアがあった。

私はそのドアへと足を踏み出し、再びドアを捻る。ガチャリ、と音がして扉が開く--

ここから先は、たくさんの不思議なことがあった。

--料理熱心なコックさん
--私を好いてくれたカエル
--左右を均等にしないと出られない部屋。
--階のすべての部屋で音を鳴らさないといけない部屋など。

色々と不可解なことを感じつつも、私は最上階へと辿り着いた。最上階は今までの階層のように特に何があるわけでもなく、普通の廊下を曲がった先にはすぐに部屋があった。

ここにきてから何度目になるかとわからないが、再びドアノブへと手をかける。ゆっくりと、少しだけ軋みを響かせながらもドアが開く。

室内は暗く、中の様子をちゃんと伺うことは難しい。明かりはどこかと探していれば、室内から声が響いてきた。

「………………のね……」

聞き覚えのある声。この声を、私は知っている。

「……くれた……のね……ラ……ん……」

その声の元へとゆっくりと歩み出す。部屋の中心には大きなベッド。そこから声が響いてくる。

「……来てくれた……のね…ヴィオラ……ちゃん……」

「……うん。来たよ、エレンちゃん」

この館の主人へと目線を向ける。紫色の髪に赤いリボン。綺麗な黄色い瞳におしゃれな洋服。エレンと私に呼ばれたその少女は、私の姿を見つめれば口元を緩め、三日月型にまで広がる笑みを見せ--















「あーもう! まーた勝てなかったぁ! ヴィオラちゃんはなんでそんなに驚かないのよ!」

頬を膨らましつつ、ベッドの上で両手足をジタバタと軽く動かしながら、私の方へと視線を向けながら声を荒げた。

「だって、私あんまり驚くって苦手だし? あ、でも一階の壁がゴゴゴって動いてくるのは少しびっくりしたかも」

私もそう言い返しつつ、エレンちゃんの寝ているベッドの縁へとちょこんと座り込んだ。

「あれは多少驚かせられるとは思ったけれど……本当ならもっと早く、それこそ動けないぐらいの速度でゴゴゴーって動かすつもりだったのよ? だけど、それだと万が一にもヴィオラちゃんが逃げられないと困るし、とっても速度を遅くしたんだからね?」

「私はエレンちゃんみたく、瞬間移動? っていうの出来ないから……」

「まぁ、私が色々と魔法が使えるといってもこの家の中だけなんだけどね。つまり、この家の中なら私は最強なの!」

ふふん、と自慢げに胸を張ってくる。

「でも、毎回毎回私にこうやってここまで辿り着かせちゃってるよね。前回来た時はなんだか騎士? みたいな甲冑の人が私の視界の隅でどこか行っちゃってたし」

「むぅ……あれはちょうどあの子が勤務時間で交代の時間だったから……というか、ヴィオラちゃんが本読んでうとうとしてるのがいけないのよ!」

「だって読んでたら少し眠くなっちゃって……あ、でも今回は一階のクマさんが可愛らしかったよ」


「……もっとサイズは小さくしておくべきだったわね、アレは……あの子、驚かせようと張り切ってたのよ? よくも私の子供をカゴに閉じ込めてくれたなー! 許さないぞー! みたいな意気込みで突撃しようとしたら、まず部屋から出られなかったって……あはは、今思い出してもちょっとお腹痛いかも……ふふっ」

「笑っちゃかわいそうだよ。頑張ってくれたのならちゃんと褒めてあげないと。あ、でも今度ダイエット勧めておいてあげるといいかも」

「あははっ! そっちの方が逆に酷くない? 太ってドアが出れなかったから、ダイエットしておきなさい、って。あはは、なんだか残酷な感じ」

くすくすと楽しそうに笑みを浮かばせるエレナちゃん。その仕草につられ、私もにこりと笑みをこぼす。

「……前から思ってたんだけど、ヴィオラちゃんって笑うの苦手というか、こう、口元しか笑わないよねー……にこにこと笑ったりはできないの?」

「え、出来てない? こう、私からすれば出来てると思うんだけど……」

「出来てない出来てない。いい? こう、もっとにこーって! ヴィオラちゃんは可愛いんだから、きっと笑った顔は似合うんだからね? それこそ本当に私が乗っ取っちゃいたいぐらい可愛いんだもん」

「乗っ取る……乗っ取る……ねぇ、前にも言ったけれど、本当にいいの? 1日ぐらいなら、体変わってあげてもいいよ? エレンちゃんがとっても辛いのは知ってるし、今だって……」

「ストップ」

ピタリ、彼女の制止する声で口が止まる。魔法でもなんでもなく、震える腕で、私の口元へと人差し指を押し付けては口を止めさせた。

「全く……私たち、友達でしょう? 友達にそんなことしないわよ。私の体は私のもの。いくらヴィオラちゃんが欲しいと言ってもあげないんだから! 何度も言わせないでよね?」

べっ、と軽く舌を出しては戯けた様子を見せる。

ほら、ね? あの夢なんてありえないって、言ったでしょ?

「……ふふ、そうだね。ごめんね?」

「良いの良いの! さて、今日は何をしようかな? 早速お茶会でもする? それとも、おままごと? 後は後は……」

くすくすと、二人の少女の笑い声が部屋の中へと響いていた--





















それから数ヶ月後、一人の少女の葬式が執り行われた。

教会の鐘の音が響く。私とお父さん以外の参列者は誰もいない。むしろ、お父さんも行くべきではないと言っていた。でも、私は私の意思で、お葬式をあげたいと思った。

教会の神父さんも嫌々な顔をしつつ、しっかりと一つ一つ段階を踏んで埋葬してくれた。

お墓の前に立つ私に対し、お父さんがもう帰るぞ、と声をかけてきた。私は、まだ帰りたくない、と一言呟けば、お父さんは数瞬考え込んだ後に小さくため息を漏らし、遅くならないうちに帰ってくるように、と一言私に言った後、自宅へと一足先に帰っていった。

夕方の教会。赤く世界が浸透していく中、教会の鐘の音が響き渡り続ける。辺りには小さな黒猫が一匹、私の近くへと隣に並ぶかのようにして墓標を見つめている。

私は、ポケットを探る。持ってきていたあの時の手紙を取り出しては再び視線を落とし、読み始める。

「…………大好きだよ……エレンちゃん……これからも、この先も……私たちは友達だよね……」

笑顔が苦手な彼女が、亡き友へと最後に送る、満面の笑み。その笑みには薄く一筋の雫が溢れ、握る力が篭ってしまい、少しだけクシャリと折れ曲がった手紙を濡らしていく--














「今度のお休みの日、私の家でまたお茶会でもしない?




あ、もちろん今度も驚かせるために、私が魔法でいくつも不思議で面白い展開を演出するからね。驚いたら、私の勝ち。驚かなかったらヴィオラちゃんの勝ちね!







その時にはちゃんと驚かせてあげるし、私が勝ったら今度こそちゃーんと笑ってもらうんだからね。ヴィオラちゃんの笑顔、私ちゃんと見たことないんだからさ。まぁ罰ゲームにこうやって笑顔を要求するのは間違ってるのかもしれないけど……











まぁ、何があっても、ちゃんと来てよね? しっかりとおもてなしさせてもらって、楽しませてあげるんだから! じゃあ、またね。いつもみたく、楽しみに待ってます。
























Dear My Friend viora」






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