違うクラスの女の子に目をつけられたんだが   作:曇天もよう

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最近風邪をひいて困っている作者です。みんなさんも風邪をひかないように気をつけてください。

気づけばお気に入りも150件を超え、UAも1万件を超えていたので読んでくださっている皆さんありがとうございます!
さて、アンケートを取った結果、一ノ瀬さんを加えることに関して否定的な意見がございませんでしたので一ノ瀬さんとの交流も少しづつ増やしていこうと思います。ですが一ノ瀬さんは原作2巻以降の登場なのでもうすこし後での登場になりますのでそこは把握をお願いいたします。

それでは本編をどうぞ!


1学期中間試験編
小テスト


入学から三週間が経ってくると誰しもが新しい生活に少しづつ慣れ、怠けるような人たちが増えてくる。これを世間一般には五月病というが、その現象がここでも起こっていた。

始業に遅れる人はもちろん、授業中に寝る、私語をするなど普通の高校であればあまり起こらないことをしている生徒たちが増えてきた。特に須藤はほぼ100%遅刻をしてくる上、授業中は睡眠タイムときたもんだ。

桐生は特にそういったことをせず、普通の高校生らしく授業を受けていた。たまに眠たくなることはあれど、眠ることなく過ごし、予習や復習もしっかりとこなしていた。

そんな桐生がこの学校について疑問に思っていることは複数個あったが、その中でも授業中に私語をすること、睡眠をすること、そして遅刻をしてくることに対して一切注意を行わないことについて不思議に思っていた。確かに高校は義務教育ではないため、全ては自己責任であるというのも納得がいった。しかしそれにしても最近は酷すぎる。その様子に疑問を抱いていない多くの生徒にも同様のことを思った。

これが社会に役に立つ生徒を世に送り出すと謳っていた学校の授業なのか…と。

 

そして今日の3時間目、社会の授業担当である茶柱先生から抜き打ち小テストが行われる旨が伝えられた。当然多くの生徒が対策も何もしていないためブーイングを起こす。だがしかし、茶柱先生はこの小テストは成績には一切反映されない。成績表には…な、と答えた。

成績に反映されないならいいかと多くの生徒がブーイングを取り下げたが、その含みのある言い方が桐生には気になった。まるで成績表には反映されないが、成績表とは関係のない別の何かには関係することを指し示しているようだった。

綾小路や堀北はその違和感に気がついたようで、不思議がりながらも普通に解くようだ。対して池や山内、須藤といったメンツは解く気ゼロといった様子であった。

 

茶柱先生が小テストが配り、全員に答案が渡ったことを確認すると開始の合図を出す。その合図と共に問題用紙を裏返し問題を解き始める。

テスト用紙をひっくり返し、問題構成を確認してみると、国語、英語、数学、理科、社会各4問の全20問構成で、各5点配当の100点満点であった。

第1問から早速取り掛かるが、桐生は毎日勉強しているためある程度は取れるだろうと考えていた。しかし5問ほど解いてから桐生はその問題の異様な簡単さに疑問が生まれた。なぜこんなに簡単な問題ばかりなのか?それこそ受験の時の問題が比にならないくらいだ。受験のときの問題よりも2段も易しい。

そう思いつつと問題を解き進んで行き、最後3問に差し掛かった瞬間そこまで順調に解いていた桐生の手が止まった。

明らかに異質な3問。それは明らかに今までの17問とは問題の難しさが違っていた。だが最初の理科、英語の問題は多くの勉強をしてきた桐生だからこそなんとか解くことが出来た。しかし残りラスト1問、数学の問題は複雑な数式を組み立てた上で解法しなければならない問題のため苦戦していた。

明らかに高校1年生に解かせる問題じゃない…成績に反映されないと言っているのにこの難易度は一体…?

 

授業終了を知らせるチャイムが鳴り、問題用紙が回収される。多くの生徒たちは気にしていないようなそぶりをしているが、一部の生徒は問題について話をしている。

せっかくなので桐生も隣の綾小路や堀北に聞いてみることにした。

 

「さっきのテストどうだった?最後の3問がすごく難しくなかった?」

 

「ああ、最初は良かったが最後の3問は完全にお手上げだった。俺には全く何をしていいか分からなかった。堀北はどうだ?」

 

「そうね。確かに難しかったけれども、最後の1問以外は解けたと自負しているわ。ただ最後の1問だけは解け切れてないわね。ただ気になったのはこのクラスの人たちよ。あまりにペンを動かす音が小さすぎるわ。本当に解いていたのかしら?」

 

確かにそうだ。俺が難しい理科の問題を考えている時点でかなり多くの生徒たちが問題を解くのをやめていた。分からないと諦めてしまった生徒もいただろうが、寝ている人たちも多くいた気がする。それらは時計で時間を確認するときにちらっと見ただけなので確証はないが、それでも紙に書く音は少なくなっていたのは覚えている。

 

「難しかったから解くのを諦めて寝てたんじゃないのか?」

 

綾小路も俺と同じ考えのようだ。堀北はその考えに納得がいかないようだった。

 

「納得できないわね。分からないから解くのを止める?愚かすぎるわね。分からない問題があっても考えれば何かしら思いつくかもしれないのにそこで思考を放棄するなんて私には考えられないわ。」

 

無理もない。実際俺もそうだ。分からなくても何かしら書けば考えが整理されて閃くかもしれないし、部分点でももらえるかもしれない。それをしないというのは俺もイマイチ分からない。けど世の中多くの人たちがいるのだから仕方ないことではあるのだろうと思うが。

 

そんな話をしていると携帯からメールを受信したという合図が来た。まだ授業の開始まで時間があるためメールを開いてみると単純に用件が書かれていた。

 

『本日17時より例のカフェでお話し出来ませんか?待っています。坂柳』

 

今日は図書館に行くような予定もないし、誰かと遊ぶような予定もないから行けると返事をする。するとしばらくしてから、

 

『そうですか。それでは楽しみにしていますね。』

 

と返ってきた。それを確認して携帯を閉じると、桐生の後ろから大きな声がしてくる。

 

「おい、桐生。今の坂柳っていうのは誰だ?まさかお前彼女じゃないだろうな!?」

 

そんな言葉とともに池と山内が詰め寄ってくる。別に坂柳は彼女でもなんでもないが、週に一度は最初のカフェで談話する。坂柳は頭がいいので話をしていて面白い。もしかしたら坂柳もあの問題をしていたなら解けているかもしれないな。聞いてみるとしようか。

 

「聞いてるのか?おーい、桐生聞いてるか?」

 

「聞いてるさ。それにしても勝手にショルダーハッキングするのはいただけないな。」

 

「ショルダーハッキングが何か知らないけど、その坂柳って誰なんだよ!?」

 

「ショルダーハッキングは個人の情報を肩越しにみることであって、決してよろしくないことだな。」

 

「俺たちが聞きたいのはそれじゃねえよ。まさかそこまではぐらかすなんてお前の彼女だろ!?」

 

何日か前までは池と山内と仲良くしていたが、ここ最近鬱陶しく思えてきた。この二人はすぐに女の子の話ばかりをするし、誰かが女子と仲良くしているとこうやって詰め寄ってくる。めんどくさくて仕方がない。第一入学して三週間ほどで彼女作るとかありえないだろ?

 

「くそっ何なんだよ。平田も作ってやがるし本当に俺たちの敵ばかりか!」

 

前言撤回、すでにいました。しかも仲の良い友人だった。まあ、おそらく普段の様子から軽井沢だろう。あの二人よく一緒にいるのを見かけるからな。

そろそろ池と山内が騒ぎすぎてめんとくさいなってきた。これ以上騒ぎにされても困るし答えておくことにした。

 

「別に彼女なんかじゃない。ただ話が合うから話をするだけだ。お前らが考えているような関係じゃない。」

 

「そんなこと言って嘘だろ!?じゃあなんで今まで無視してたんだ?」

 

「それはお前らが騒ぎすぎて言えなかっただけだ。騒ぎすぎなんだよ。」

 

「そうだそうだ。池も山内も五月蝿いぞ!」

 

みんなが池や山内にふざけて言う。そんなみんなからの援護もあってこの騒ぎは終息し、授業に入っていくこととなった。

 

 

 

放課後となり、俺は坂柳と約束したカフェへとやってきていた。時間は4時57分でかなりギリギリだ。なぜこんなに遅くなったかいえば再び、池と山内が追及してきていてあの二人を撒くために櫛田に手伝ってもらったからだった。本当に櫛田があの二人の気を引いてくれてなかったら付いてくるとか言っていたからめんどくさかった。櫛田には感謝している。また後日櫛田には何かお返ししないとな。

そう考えながら店内に入ると、入って奥側の壁際の席に腰掛けている坂柳を見つけた。すぐに店員に坂柳の連れのものですと伝えて、坂柳の座っている席に向かった。

 

「遅くなってしまって悪かった。結構待った?」

 

桐生が話しかけると坂柳は目線をこちらに合わせて話す。

 

「こんにちは、桐生くん。待っていませんよ。私も先ほど着きましたので気にしないでください。それに桐生くんも約束の5時には間に合っているので大丈夫ですから。さあ、座ってお話ししましょう。」

 

「ああ、少し急いで来たから疲れたから座らせてもらうよ。坂柳はもう注文した?」

 

「いえ、私はまだ頼んでいません。頼むものが決まりましたら一緒に頼みましょう。急がなくても大丈夫ですよ。」

 

急がなくてもいいとは言われたものの、先に決めていると言うのでなるべく急いで決める。前はカフェラテを頼んだが、今回はカフェモカを頼んでみよう。それと坂柳も少しは待っただろうし、何か食べるものでも頼んでおこう。カフェなんて昔は自分は一生行かないところなんだろうなんて思っていたのに今は週1は来ているなんて不思議なもんだ。

 

「決まったけど、坂柳は何か好きなスイーツはある?」

 

「そうですね。私は抹茶などが好きですが…どうしました?」

 

「いや、待たせてしまったんだ。坂柳の分もスイーツを頼もうと思って。」

 

「そう言ってもらえますことは嬉しいですが、気にしなくて大丈夫ですよ。時間通りに来られてるのですし、そのように考えられる必要はありません。」

 

「確かにそうだけど…じゃあ、今回は俺がスイーツを頼みたかったけど、一人じゃ恥ずかしかったってことにしてくれない?」

 

「あまり言っても折れそうにありませんね。分かりました。ですがその分は私が払いますからね。」

 

「いや、無理を言って頼んでいるのはこちらなんだから俺が払うよ。」

 

「ふふっ、気配りの出来る男性は女性に好感を抱かれますが、意固地な方は女性に嫌われますよ。ですが今回はお言葉に甘えてご馳走に預からせていただきますね。」

 

坂柳が少し笑いながら承諾をしてもらえた。そのため注文を頼むために店員を呼ぶ。すると今は客が少ないため店員がすぐにやって来て注文を取る。

 

「注文は如何されましょうか?」

 

先に注文しようか悩んで注文をすることをためらったが、坂柳がお先にどうぞと言ったため、先に注文をさせてもらうことにした。

 

「じゃあ、カフェモカとモンブランをお願いします。」

 

「私はカフェラテと抹茶のティラミスをお願いいたします。」

 

「はい、カフェモカ、カフェラテ、抹茶のティラミスにモンブランですね?」

 

「はい、それでお願いします。」

 

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」

 

店員はオーダーを確認すると厨房の方へとオーダーを伝えにいく。しばらく世間話をしていると頼んだ注文が届いたので食事しながら再び話をする。

 

「Aクラスの方でも今日小テストが行われたのか。それは最後の3問が難しくなかったか?」

 

「そうですね。それ以外は中学生に与えるような問題の易しさでしたが、最後の3問はなかなか骨が折れました。本来なら20分ほど余らせる予定だったのでしたが、5分ほどしかあまりませんでした。」

 

なんと坂柳はあの難解な数学を解いたようだ。Dクラスの誰も解けていないであろう問題を解いてさらに5分も余らせるなんてやはり坂柳は頭がいい。自分も解けていないので坂柳に聞いてみることにした。

 

「その数学問題ある程度の式を立てることはできたんだが、結局解ききることができなかったんだ。教えてもらえない?」

 

「私も完全に正しい答えが出せたとは限らないので少々不安ですが、私が考えた考え方でよろしければお教えしますよ。」

 

「ああ、是非お願いしたい。」

 

「それではまずはこの公式を使って…」

 

 

 

そこから坂柳が解いた解き方で問題を解いてみた。これが解いてみると素晴らしく、自分が解いていたやり方よりもはるかに効率が良かった。要点をまとめられていてこの解き方をすれば先ほどの解き方よりも半分ほどの手間で終わってしまうほどだった。

 

「こんな解き方があるなんて考えなかったな。ありがとう。」

 

「いえ、逆に桐生くんの考え方も面白かったです。この後その解き方からのアプローチもしてみましょう。」

 

「頭良い上に向上心もあるとは手がつけられないな。」

 

「そんなことはないですよ。それを言えば桐生くんもそうです。わざわざ終わった小テストの解き方を聞いてくる人なんてAクラスにはいませんから。」

 

「まあ、普通はテストが終わったらそんなことは考えたくもないからね。」

 

問題について終わったので再び談話に戻る。こんなに頭が良くてすごい回答ができるとなると対抗心が生まれる。次のテストのときには坂柳が驚くような回答を示したいな。

 

「さて、今日私がここへあなたを呼び出した本題へと入りましょうか。」

 

基本は週一でカフェに来ていると先ほど言っていたが、大抵の場合坂柳は何かしら集まる理由を持っている。毎度変なことだったりするのだが、今回はその様子から真面目な話のようだ。その真剣さから何かただならぬ予感をしたのできちんと話を聞く。

 

坂柳はその内容を話す。その内容は桐生が考えていたこととは全く違っていたため、桐生を驚かせることとなった。

 

「では桐生くん。あなた…私の派閥に属していただけませんか?」

 


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