違うクラスの女の子に目をつけられたんだが   作:曇天もよう

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かなり間隔が空いてしまいました…
投稿間隔が開いても失踪はしないので、これからもお願いします


接触

先ほど平田たちに少しの間単独行動をすると伝えた俺は早速森の中に入った。

地面はぬかるんでないため、走ることもできそうだ。しかし、森の中は木が生い茂っているため、見通しが悪く、しばらくもしていると方向感覚を失う可能性がありそう…そう言った印象を受けた。

とりあえず一定間隔で歩いて来た方角を指し示すための目印を残しておく。

目印といっても木の枝を踏みつけて置いておく程度のものだが、これがあるだけでもかなり方向性は分かりやすい。よくそんなことしなくても方向を見失うことはない、という人を聞くが、実際に深い森に入ってみると5分もしないうちに道に迷う羽目になる。

ここは決して深い森とは言えないが、方向感覚を見失って彷徨うのは問題だ。それに加えてすぐに戻ると平田と約束しているため、なるべく早めに戻れるような手段も必要だから、今回はしている。

 

しばらくそうしながら歩いていると、少し開けた場所にたどり着いた。そこは洞窟のような洞穴が存在していて、人気は感じなかった。

とりあえず誰かに見られていないかを確認しながら中に入ってみると、その中はいたって普通の洞窟であるようであった。

 

しかし、その洞窟の中にはひとつだけ不自然なものが存在していた。これといった人工物も存在しない無人島であるこの島には似つかわしくない機械が置かれていたのだ。

 

「これは…?」

 

思わず何かと思い、その機械に近づいてみる。

 

近づいて確認してみると、画面が起動し、「リーダーカードを提示してください」といった文面が画面に映し出された。

 

リーダーカードとは一体…?と思ったが、先ほど茶柱先生が話していたクラスのリーダーに関するものだと俺は考えた。おそらく、そのカードはリーダーのみが使用可能で、その使用しているところを盗み見るなどするのがこの時間において大事なことなんだろう。

 

しかし、そんなに簡単に見させてもらえるとは思えない。ある程度誰がもっているか予測をつけて、その上で証拠を揃えていくのが良いのかもしれない。

 

ある程度洞窟内の構造を調べておいた上で、この洞窟から脱出をしておく。もしかすればここを拠点にするクラスがあるかもしれない。そうなれば先にここにやって来ていた俺は少し優位に立てるかもしれないため、なるべく痕跡を残さないようにしておいた。

 

 

 

 

 

俺は洞窟から離れ、一旦Dクラスに合流しようと考えた。これ以上長く離れていると心配されてこれからの行動が取りにくくなる。これからも好き勝手行動するのに支障をきたしてしまう。それに、ちゃんと上位クラスを目指さないと有栖にどういったことをされるか…。

…考えたくないな…。とりあえず戻ろう…。

 

 

「…桐生か。ちょうど良かった」

 

目印にしていた枝を見つけながらすぐに戻っていこうとしたが、俺は横から突然話しかけられたため、足を止めてそちらの方向に振り返る。

するとそこにいたのはAクラスの生徒である、橋下と神室であった。

 

「どうしたんだ、こんなところに二人いて?」

 

「戸塚がお前たちもスポットを探しに行けって言ったんだよ。あいつは何もしないくせに」

 

神室が文句を言う。その時の表情からかなり言われたのだろう。

 

「そういうわけだ。俺たちはスポットを探してここに来たんだ。逆に桐生はどうしてこんなところに一人でいるんだ?俺たちと同じように誰かに言われたのか?」

 

「いや、俺は一人でちょっと散歩してただけだ。そこにスポット有ったぞ。多分俺たちは使わないから使ってもいいと思う」

 

先ほど見つけていた洞窟の方を指差しながら言っておく。すると、「神室が確認して来るから」と言って少し離れて行った。

 

神室が離れていくと、橋下は再び話しかけて来た。

 

「ところで、俺は坂柳からお前にこの試験において手伝いをするように言われている。何ならAクラスのリーダーをここで流してもいい。どうする?」

 

「…正気か…?」

 

この試験においてクラスのリーダーを他クラスに知るというのはとても大切なことである。他クラスに知られるということは他クラスにポイントを50与えることとなり、自クラスのポイントを50失うことにつながる。

そんな情報を流そうと言っている。普通なら正気なのか疑いたくもなる。

 

「正気だ。俺は葛城に従うつもりはさらさらない。俺は葛城が信頼を失うように裏工作をするつもりだ。神室には伝えてないが、あえて俺一人でやることでバラにくくするつもりなんだ。どうだ?納得してもらえたか?」

 

「…ああ」

 

なるほど。この試験では有栖が欠席をしているため、葛城派が優勢に動いているわけか。どうりで二大派閥に分かれているAクラスにしては行動開始が早かったわけだ。多分有栖が参加していれば、意見の対立は必須で、あんなに早く行動開始とはならなかっただろう。有栖派の人たちも今回は葛城派に、渋々ながらも従っているというところだろう。

 

「今回の試験は俺たち有栖派は表立ってすることは何もない。坂柳自身も特にこれといった指令を出してないため、勝手に行動して首を絞めるようなことに繋がらないようにするつもりだ」

 

「そへなのになぜクラスのリーダー情報を流そうとするんだ?クラス全体への影響があるからお前たちにも影響があるんだぞ?」

 

聞き返すと、橋下はこちらを振り返って説明をし始める。

 

「だからこそだ。俺たちが情報をリークするなんて誰も考えないだろう。そうなると、クラスのリーダーがバレた責任は誰に行くと思う?」

 

「…なるほど」

 

今の発言で橋下たちが狙っていることがわかった。今回この試験においてAクラスの指揮を取っているのは葛城だ。有栖派はリーダーがいないことにより行動を起こさないため指揮をとっているが、もしも他クラスからリーダーを的中させられたのならばその責任は全て葛城に降りかかる。そうなれば葛城派は少なからずな被害を受けるうえに、離反してこちらに流れ込んで来るかもしれない…そういった目的があるのだろう。

 

「坂柳が認めてるのだから全て分かったのだろう。その前提で話を続ける。そういうわけで俺たちは葛城派に気づかれないように妨害をしていくつもりだ。それが俺たちにとってリスクがあろうとも、相手の戦力を大きく削れるのならば俺たちは積極的に仕掛ける。どうだ?協力してくれるか?」

 

橋下はこちらに手を差し伸べて来る。

たしかにここでAクラスのリーダーを知ることが出来れば序盤から大きくリードを取れるだろう。少しでもAクラスに近づくには大きくポイントを獲得して、なおかつAクラスにポイントを入れさせないように妨害もしていかなければならない。今回はその絶好の機会である…が…やはり…

 

「どうした?協力してくれないのか?」

 

橋下が俺に質問をして来る。いつまでも無反応だったため、確認をしてきたようだ。

 

「ああ…今回はとりあえず見送らせてもらいたい。いくら教えてくれるといっても最初から知ってたら面白くない気がするんだ。最終日手前に答え合わせをしたい。そこまで待っていてくれ。そこで答えが違っていたのならば聞いて、その答えを俺たちDクラスは出そう」

 

俺の回答を聞いて、どんな反応をするか伺っていたが、橋下は納得したような表情を浮かべ、話を続けた。

 

「そうか、分かった。たしかにいきなり話すというのも面白くないだろうな。少し急ぎすぎていたようだ」

 

意外にもすぐに納得してくれたようだ。実のところ橋下と話をする回数はあまり多くなく、あまりどんな人物か分からなかったのだ。有栖がAクラスの中で一番信頼しているのは橋下であり、かなり使われているようなので、俺が助けを借りるときにはもっぱら神室であったことが主な理由だ。神室自身は有栖に忠誠を誓っている訳ではないため、俺の依頼をこなす方がいいらしいが。

 

「6日間でAクラスのリーダーを的中させることを楽しみにしているぞ?」

 

笑顔で言ってくる橋下に軽くプレッシャーを感じながらも、とりあえずこれで意見はまとまった。6日後の密会場所は橋下たちが先ほど見てきたという、崖側近くの森にするとのことだ。曰くかなり入り組んでいて周りにスポットのようなものも確認できなかったため、人が来ることはほとんどないとのことだ。

とりあえずポイントを教えてもらったので、明日にでも確認に行こう。

 

「確認してきた。拠点にするには結構良さそうに見えたけど、どうする?」

 

俺が先ほど見ていたスポットのチェックが終わった神室が戻ってきた。どうやらここをスポットとして推していくようだ。

 

「そうか、それならここを推しておくか。その方が桐生も動きやすいだろうからな」

 

「その話し方だと計画を話したのね。坂柳は嫌いだけど、葛城派はもっと嫌いだからちゃんと成功させてよね」

 

「分かったよ。できる限り尽くすよ」

 

神室とも話した後俺たちはすぐに別れることにした。他クラス同士で話し合っているところを見られると、どうなるか分からないからだ。

俺もやりたいことは出来たため、なるべく急いでDクラスの元へと戻ることにしたのであった。

 


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