違うクラスの女の子に目をつけられたんだが   作:曇天もよう

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通算UA10万件超えていました。読んでくださるみなさんのおかげです。ありがとうございます!

それと最近レポートが忙しくてなかなか書く時間が取れません。
それでも有栖が出る回はすんなりと意見が纏まるのですよね。
やっぱり有栖ってすごいな。そう感じました。

あと、今回あとがきで大事なこと話してるので見ていってください


審議の裏で

須藤の進退が決まる審議の前、須藤の問題点を気づかせるために挑発した結果、頭を軽くぶつけてしまった桐生は坂柳に連れられて保健室へ向かって歩いていた。

 

「それにしてもあの不良の生徒に問題点を気づかせるためとはいえ無茶なことをされますね」

 

有栖が少し怒っているような声で桐生に声をかける。普段あまり表情が顔に出ない有栖であったが、普段の声と比べてみると声が少し低く、厳しめな言い方であった。

 

「あれくらいしないと須藤は気づかないから仕方ない。それに無茶を知った上でのことだ。頭に怪我するとは思ってなかったけどな」

 

俺は先ほど須藤にすぐにキレるところがいけないということを教えるために少し強引ながら挑発をした。それに腹を立てた須藤は俺の胸ぐらを掴み、壁に押し付けた。結果として、須藤はその短気さに気づいたようであったが、俺は頭に怪我を負ってしまったのだった。

 

「頭をぶつけるというのはあまりよろしくないことですよ。身体に影響をもたらしてしまう可能性もあります。周りの方々が如何にこのことを予め知っていたのでしょうが、それでも危険が伴うのでやめて下さいね」

 

「ああ…次からは気をつけるよ…。というかなんで予めみんなが知っていたって知ってるんだ?」

「周りの方々を見ていれば分かることですよ」

 

「というと?」

 

「司くんが挑発しているときに彼らは誰一人として司くんが挑発するのをやめさせようとしていませんでした。彼が短気だと知っているにも関わらず…。なぜ止めようとしなかったのか、それは予め打ち合わせをしていたというのが正しい判断でしよう」

 

あの一瞬でよく見ている。普通なら怒っている須藤や俺に注目が行くだろうが、そこで周りの人たちの様子を見て気づくなんて流石有栖だ。

だが、ひとつだけ気になることがある。先ほど有栖に会った時には、たまたま近くを歩いていたが、気づいたから来たと言っていたが、今の話し方だと、結構前から有栖は俺たちのことを見ていたのだろう。

 

「確かに合っている。でもさ、有栖。ということはあのときのこと…最初から全部見ていたな?」

 

有栖は俺に聞かれると観念したように笑って話す。

 

「私としたことが墓穴を掘ってしまいました。確かに私は口論になる少し前から一連の流れを見ていました」

 

「やっぱりな…なんで嘘なんてついたんだ?」

 

「見ていないといった方が、警戒心が薄くなるかと思いましたので…。これからは嘘はつかないようにしますね。その代わり、司くんも嘘をつかないって約束してください」

 

なんでか俺も嘘をつかないって約束をすることになっているが、そんなに気にしなくてもいいか。有栖に嘘をつくことなんて多分ないだろうし。

 

「ああ、分かった。俺は嘘を有栖につかない。代わりに有栖もそうしてくれよな?」

 

「もちろんです。約束ですよ」

 

こうして不思議な約束が二人の間に出来上がったのであった。

 

 

 

 

 

その後らしばらく歩いて保健室に着き、桐生が扉を開ける。扉を開けると中には誰もいないのか、人の気配がしなかった。奥の方に誰かいないのかと見に行ったが、そこにも誰もいなかった。

 

「保険医の先生はいないようだな。少し歩いたし、有栖はここで待っておくか?職員室にいないか聞いてこようか?」

 

有栖は慣れたように少し奥側に置いてあった椅子を取り出して机の近くに置いて座る。少しだけ息を切らしているようであったが、顔の表情を見る限り、本当にきついという様子ではなかった。

 

「ここの先生がいないのはいつものことですので問題ないですよ。多分もう少しもすれば来ますから、司くんも待っていてください」

 

いつものことというのはどういうことなのか?慣れた様子で近くにあった椅子に有栖は座って待っているので、俺も座って待ってみる。

すると椅子に座ってから1分ほど経ってから部屋の扉が勢いよく開き、一人の若い女性が入ってきた。

 

「お、坂柳さんじゃない。やっほー」

 

「こんにちは、星之宮先生。ご無沙汰しています」

 

星之宮先生と呼ばれた先生は肩ほどに伸ばした明るいブラウンの髪をした優しそうな先生であった。有栖との話し方を見る限り生徒と仲良くしていくのタイプの先生らしい。

 

「坂柳さんは固いんだからもう少し砕けた話方すればいいのにね」

 

「私はこれで慣れていますので、お気になさらずにいてください」

 

「そっかそっか。それで今日はどうしたの?何か体調の悪いところでもあった?」

 

「少し体調が優れないのですが、あまり問題ありません。それよりも今日は、こちらの方を見ていただきたくて伺いました」

 

しばらく話についていけず、置いていかれていた桐生だったが、話を振られたことによりようやく話をすることができるようになった。

坂柳に言われたことにより、その保険医の先生は桐生の方に気づいた。そして、坂柳が座っていた椅子の近くにあるテーブルの上にあった紙とバインダーを取って桐生に聞く。

 

「えっと、どこの子かな?一応保健室に来た生徒は書かないといけない約束になってるから、学年、クラス、名前を言ってもらえるかな?」

 

桐生は必要な情報を一つ一つ説明した。すると、桐生の名前を聞くなり、星之宮先生は桐生の顔をマジマジと見つめて来た。突然顔を見つめられたことに桐生は困惑していたがそんなことも意に介さず星ノ宮先生は見つめて来ていた。

そんな状況がしばらく続きどうしていいのか困っていた桐生に坂柳が助け舟を出す。

 

「星之宮先生、司くんをそんなにマジマジと見られてどうかされましたか?」

 

坂柳に言われると星ノ宮先生はハッとした様子をし、桐生から離れた。そして見つめていた理由を話し始めた。

 

「いやー桐生司って何か聞いたことあるような…って思ってたんだよね〜。でも今思い出したよ。君について一之瀬さんが話していたんだ!」

 

「帆波が?」

 

喋った瞬間、背後から恐ろしい視線を感じた。あまりの恐ろしさに身震いがして恐る恐ると振り返ってみるが、そこにはいつものように含み笑顔を浮かべている有栖が座っていた。

 

「…どうかしたのか?有栖?」

 

「…いえ、何でもありませんよ。ただなぜ一之瀬さんを下の名前で呼ばれているのかと気になりましたので」

 

「…それは今答えないといけないことなのか…?」

 

「寧ろ答えないという選択肢があるでしょうか?」

 

普段と同じ様な含み笑顔を向けている有栖であったが、その笑顔は見ているだけで身震いが止まらなくなるようであった。

有栖を怒っているのは何故なのかよく分からないが、ここは答えておかなければいけない、そう直感的に感じたので、何故下の名前で呼ぶようになったのか、その経緯を説明した。

その最中もニコニコと笑っていた有栖であったが、その笑顔はより俺を怖くさせた。

そして全てを話し終えると有栖は少し考えているようであった。何を考えているのか分からないため、怖かったが、その間に星之宮先生に呼ばれたので星之宮先生の方向を向いた。

 

「ふむふむ。面白いことになってるね〜このこのっ」

 

肘でこちらをツンツンしてくるが、何がやるのか全く分からない。何か変わったことでもあっただろうか?

 

「しかも両手に華ときたもんだ。やるね〜」

 

「両手に華?ないですよ。そんな女っ気なんて俺にはないですし、寧ろ欲しいくらいですよ」

 

「もしかして気がついてない感じ?」

 

「何の話です?」

 

星之宮先生の言っていることは意味がわからない。俺が女子から好かれるわけもないし、そんな女子がいることもないだろう。いたらびっくりすると思う。なのにそう言うなんて。どういうことだ?

 

「気づいていないなら別に私が口出しをする話でもないんだけどね〜。本人が言ってほしいなら話は別だけどね」

 

「コホン。それはそうと星之宮先生、彼は頭を打ってしまっているので見てもらえませんか?」

 

なんだか無理矢理話を有栖が変えたようだが、もともとの目的は頭を打ってしまったのを何とかするために来たのだ。早く処置をしてもらいたい。

有栖の話を聞いて星之宮先生もなんだかまだ聞きたそうな顔をしていたが、俺に近づいてきて頭を確認する。

 

「あー…たしかに頭を打ってるね。とりあえず頭を冷やすためのアイシング材出すからちょっと待っててね」

 

星之宮先生は有栖の座っている椅子の近くに置いてあった冷蔵庫からアイシング材と、近くに綺麗にたたまれて置いてあったタオルを取り出し、タオルでアイシング材を包んでから俺の患部に当てた。

 

「冷たっ!」

 

急に冷たいものを当てられたものだから、冷たさに驚いて急に立ってしまった。しかし、星之宮先生はずっと頭にアイシング材を当て続ける。

 

「冷たいって感じてるなら問題ないね。これからは自分で当てておいてね。それにしても頭をぶつけるなんてなにがあったの?」

 

「それは…」

 

ここで須藤を挑発して胸ぐらを抑えられて頭をぶつけたなんて正直に言えば、須藤と共に罰を受けることになるし、今やっている審議も無駄になってしまう。なんて答えればいいのか…。

どうやって誤魔化すか困っていたところ、有栖が答える。

 

「先程私が廊下を歩いていたところ、少しふらついてしまったのですよ。その際に彼が私のことを支えてくれたのですが、彼の方向に重心が傾いた結果、司くんが頭を廊下の壁でぶつけてしまう結果となってしまったのです」

 

有栖が上手く嘘をついてくれた。多分考えられる限り最も嘘だと思われにくい嘘だと思う。実際星乃宮先生も全く疑っていないようだった。

 

「確かに桐生くんの荷物重そうだし、それは災難だったね。でも身体の弱い女の子がふらついた時にスッと助けるなんてやるね〜、このこのっ」

 

再び肘で肩の付近をツンツンとする星之宮先生であったが、こうしてみると同じ先生でも茶柱先生とは全く違った先生だな。茶柱先生は生徒と必要以上に関係を持とうとしないし、寡黙な先生だが、星ノ宮先生は積極的に生徒と関わりを持つタイプの先生らしい。

 

「星之宮先生は確かBクラスの担任をされていましたよね?」

 

有栖が星之宮先生に質問をする。有栖に聞かれたため、星ノ宮先生も答える。

 

「うん、そうだよ。私は1年Bクラスの担任もしてるよ。急に聞くなんて坂柳さんどうしたの?」

 

「いえ、司くんが気になっているような顔をしていたので聞いてみたのです」

 

「なんかしれっと考えていたこと読まれているんだが?」

 

「司くんは思っていることが顔に少し出やすいのですよ。私もAクラス担任の真島先生とは全く違ったスタイルをされるので少し気になっていたので聞きたかったのです。どちらにしても一石二鳥でしょう?」

 

「確かに聞いてくれて聞く手間が省けたが…」

 

そんなに俺の考えって分かりやすいのか…。もう少しポーカーフェイスができるようになっておかないと…。考えてることが読まれるのはあまりよろしくないからな…。

 

「ええっと、坂柳さんがAクラス、桐生くんがDクラスだったね。ということは佐枝と智也のクラスってことかな?」

 

突然呼ばれた名前に誰か分からず困惑していたが、よくよく思い出してみると茶柱先生の下の名前は佐枝だったことを思い出した。下の名前で呼ぶということは普段から仲が良いということなのか。

なぜ下の名前で呼んでいるのか気になっていると、星之宮先生は説明してくれた。

 

「君達二人の担任と私は高校の時に同級生だったんだよね。それで今も同じ職場で働いているから、今でも下の名前で呼んでるんだよね」

 

茶柱先生と同級生…確かに二人とも同じくらいに見えるけど、同じ高校の教師になるなんて仲が良かったんだろうな。茶柱先生が誰かと仲良くしているような姿は想像できないけれど。

 

「さて、昔話はお終い。身体がふらついたってことは坂柳さんは体調が今はあんまり良くないってことだから、少しここで休んでいきなさいね。桐生くんは坂柳さんを待って帰る?」

 

「ここまで送ってもらったので待って帰ります。それに体調が悪いなら寮に帰るのも大変だと思うので、荷物持ったりした方がいいでしょうし、途中で何かあった時に近くに誰か事情を知った人がいる方がいいでしょう?」

 

「確かにそうしてくれる方がこっちとしても安心できるからね。それじゃあ、坂柳さん体調落ち着くまでここで休んでいてね。体調が良くなったら鍵とか閉めずに帰っちゃっていいからね。あと、桐生くんはアイシング材は明日返してくれたらいいから」

 

「星之宮先生はどこかへ行くのですか?」

 

「佐枝が今審議に出てるし、終わったら酒飲みに行く約束するから。ちょっとここからいなくなるけど、何かあったら隣の職員室の先生に言ってね。それじゃあ!」

 

そういうと、星之宮先生は廊下へ出て行ってしまった。保健室に残された俺と有栖であったが、とりあえず上手く嘘をついてくれたことに礼を言っておく。

 

「さっきは上手く話を繋いでくれてありがとう。助かった」

 

「いえ、あのまま本当にあったことを話せば司くんも処罰を下されていたでしょう。それは私にとって良いことではありません。ですので、させてもらったのです。ですがこれこらはあのようなやり方はあまりしないでくださいね?」

 

「これからは気をつけるよ」

 

「はい。さて、流石にすぐに帰ってしまうと疑われてしまうのでもう少しここでゆっくりしてから帰りましょうか」

 

俺と有栖は少し休憩してから、寮に向かって帰っていったのだった。

 

 




突然で本当に申し訳ないのですが、ひよりをサブヒロインから外したいと思います。これからのひよりと司の関わりを考えていたら、それ、有栖と一之瀬さんでよくね?ってなるところばかりだったんです。もちろん彼女も登場させますが、サブヒロインとして扱うことはなくなります。
身勝手なことではありますがよろしくお願いします。

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