違うクラスの女の子に目をつけられたんだが   作:曇天もよう

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今年ももう一週間弱ですね。本当に時間の流れは早く感じます



審議前に

一之瀬がBクラスとの協力関係を持ちかけてきた次の日、桐生は早速クラスの中でも有力な力を持っている、平田、櫛田、堀北、綾小路を呼び、説明をした。

正直に言って櫛田を呼ぶのは癪だったが、あれでも一応クラス内での力は強いため、一応呼んでおいた。そのときはいつも通りの笑顔で対応していたが、内心自分に対して腹が煮えくり返っているのだろうと思うと、改めて人の評価は外見だけじゃできないと思った。因みに綾小路は俺にはそんなところに参加するほどのことは出来ないとか言っていたが、無理やり連れてきた。

 

櫛田が少し遅れて来たが、全員が揃ったので、Bクラスのことを話した。Dクラスと同じようにCクラスと対立しているため、協力したいのだと。

それを聞いて堀北はBクラスとの協力関係には反対を示した。Aを目指す中でいずれは対立するのだからそんな事必要ないと言っていた。

しかしながら、平田、櫛田、綾小路の三名は協力関係に賛成のようであった。Cクラスだけでも今は苦労しているのに、わざわざBクラスも相手にする必要はない。今だけでも協力しておけば、Bクラスについても知ることができるし、一石二鳥だというのが平田たちの意見だった。堀北は反対の立場を示していたが、平田、櫛田が良い点を挙げているうちに悪くないと思ったのか、納得をしたようだった。

 

Dクラスとして協力関係を結ぶことに賛成となったため、桐生は早速一之瀬に伝えるため、携帯電話から一之瀬帆波の名前をを探し出して電話をかける。

何度か呼び出し音が鳴った後、ガチャっという音がなって声が聞こえて来る。

 

「もしもし、司?どうしたの?」

 

「いきなり電話をかけてごめん。前話していたDクラスとBクラスの協力関係についてだけど…」

 

「あー…やっぱりダメだった…?他クラスと競い合う校風だからやっぱりダメだよね…。ごめんね、迷惑かけちゃって…」

 

帆波はDクラスが協力関係を拒否して、俺が謝りの電話をかけてきたと思い込んでいるらしい。そう思っているのか、俺にも謝ってきている。とりあえず帆波にそれが間違っているということを伝える。

 

「いや、違うぞ。Dクラスは話し合った結果、Bクラスと協力関係を結ぶことに賛成した。だからそのことを報告するために、こうして帆波に電話をかけているのだが…」

 

俺が話してから少しの間お互いに黙った状態になる。次に何を言っていいのか、俺が悩んでいると帆波から話し始めた。

 

「あはは、完全に勘違いをしちゃってたよ。なんだかダメだったみたいに語尾を濁していたから…」

 

「そんなつもりはなかったんだけど…。まあ、勘違いさせちゃったなら、悪かった」

 

「いやいや、こっちも早とちりしちゃったから…。とりあえずその話は置いておいて、協力関係になってくれるのは嬉しい!これからもよろしくね!」

 

「こちらもよろしくな。それはそうとBクラスの方は大丈夫なのか?帆波が独断で言ってたみたいだけど?」

 

この話を持ちかけてきたのは帆波だ。それもほぼ一方的にしていた。そんな帆波一人で話をしてもいい話ではないはず。なのに何故帆波はしてきたのか、そこが俺は気になっていた。

 

「問題ないよ。私たちBクラスは元々Cクラスの妨害を受けて困っていたからどうにかしないといけないって思っていたの。そこでDクラスと協力してどうにか出来ないかなって話が出ていたの。そこで誰かDクラスの人と接触して話をもちかけようとしてたら、たまたま司に出会ったんだよね。本当は櫛田ちゃんに話しかけようと思っていたんだけどね」

 

「確かに櫛田なら首を縦に振りそうだな。結果俺になったけど、上手くいったっていうわけだな」

 

「そうなんだよね。でもみんなこれで少しは安心してくれると思うよ。ありがとうね!」

 

電話をしているけれども、電話の先で帆波が笑顔でいる様子が思い浮かぶくらい、明るく嬉しそうな声であった。その声は聞いているこっちも嬉しくなりそうなくらいであった。

 

「Bクラスの方も文句がないなら、協力関係成立だな。それじゃあこれからよろしく頼むな」

 

そう言って用事が終わったのであれは電話を切ろうとする。しかし、帆波がちょっと待ってというため、切るのをやめる。まだ帆波には話したいことがあるらしい。その内容が何か聞いてみると、昨日話した俺が何か奢るという話であった。

 

「その…なんだけどさ…、夏休みに入るとすぐに、豪華客船の旅があるらしいから、その前に行きたいんだよね。でもすぐにすると、その須藤くんの審議の件があるから…来週の日曜はどうかな?」

 

来週の日曜日…確か何もなかったはずだな。有栖が突然何か言ってこなければ…の話だけども…。それよりもその豪華客船の旅って何だ?そんな話聞いたことないぞ?また茶柱先生大事な話をしてないのだろう。よくあんな適当な性格で教員になれたもんだ…。

 

「何かもう予定入れちゃってる?ダメならまた違う日にするけど…?」

 

少し考え込んでいたようで、帆波が心配そうに聞いてくる。そのため、すぐに返事をする。

 

「いや、問題ない。その日はすることもなく暇だったからいいよ。それじゃあその日にしよう」

 

「うん!それじゃあ来週の日曜日にね!」

 

そう言って帆波は電話を切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

やがて時間が経ち、ついに須藤の処遇を巡る審議の日がやってきた。桐生はこの期間に、一之瀬との協力関係を取り付けただけで何もできなかった。そのことも含めて謝りに綾小路たちの元へ行った。謝った後に、綾小路たちはどんな成果を得られたのか聞いてみると、佐倉が証言者として出席することになったようだった。

証言者である佐倉は、いつも通りオドオドとした様子であったが、証言をすると覚悟を決めたようで普段よりは落ち着いていた。

 

「証言者がいたんだな。Dクラスだから疑われるかもしれないが、それでもこちら側に優位に進むことは間違いないだろうな」

 

「ああ。証言してもらうまでは苦労したが、やってくれるみたいで助かった。佐倉、よろしくな」

 

「はっ、はい!よろしくお願いします」

 

佐倉も緊張しているが、やる気は問題なさそうであった。

 

「ところで堀北だけがその審議に参加するのか?」

 

「いえ、綾小路くんも参加するわよ。審議には二人までなら同席が可能と言われているから」

 

意見を冷静に判断してサバサバと返しをする堀北は審議でも活躍できるだろう。それに堀北が気づいているかは知らないが、恐ろしい能力を隠しているだろう綾小路もいるのなら問題ないだろう。

 

「ところでなんだが、桐生、お前が審議に出てくれないか?」

 

突然のことに誰しもが驚く。それは堀北や佐倉、須藤もそうであった。

 

「突然どうした?そんなこと聞いてないからびっくりしてるんだけど?」

 

「桐生は頭良いから俺よりも審議の場で良い意見を出せる、そう判断したからだ」

 

真顔で言っているが、絶対にめんどくさいからだろう。綾小路は表立って行動するのを嫌いからな。しかし俺としてもそんな話し合いの場に行く用意もしてないため、何をして良いかわからない。勿論ここは断ろう。

 

「悪いが綾小路。俺は今回何も証拠を用意できなかったし、突然審議の場に入っても何も発言できないだろう。それに俺はそう言った審議とか討論とかが苦手だし、めんどくさいから出たくない」

 

「そうか…出来ればお前に出て欲しかったんだがな…」

 

綾小路もきっぱりと断った桐生を見て諦めかけていたその時だった。

 

「てめぇ、めんどくさいって何なんだよ!ふざけてんのか!?」

 

須藤が桐生の制服を掴み、壁に押し付けてきた。その勢いで頭を軽く桐生はぶつけてしまい、頭に少し痛みが走る。

桐生は少し頭を抑えるような仕草をする。そんな桐生を見て、須藤はいきり立っていて、イライラしているようだったが、桐生はあくまで冷静に答える。

 

「めんどくさいからめんどくさいのさ。だって俺は大人数での話し合いが好きじゃないし。今回ここにいたのも、ただ綾小路がどんな情報を手に入れたのか聞きたかったから聞きに来ただけだ。それなのに急に自分の代わりに出てくれなんて言われて、行きたいなんて言うやついないだろ?」

 

その言葉に一層腹を立てたらしく、制服を掴む力が強くなっていく。

流石に少し呼吸がきつくなってきたが、ここで臆すれば負けるため反論をする。

 

「なんだお前。絶対に助けてくれるだなんて思ってたのか?くだらない。元を辿れば、お前が暴力を振るわなければこんなことにもなってなかっただろうが。けれどもお前は暴力を振るった。それが唯一確定されている事実だろう?それに以前お前が図書館でCクラスともめた時だって、その場では関係なかったにも関わらず謝ってくれた椎名を殴ろうとしていたな。あの時とお前は何も変わってないな。すぐに頭に血が上り、反論できなくなったらすぐに暴力を振るう。ただの猿だな」

 

 

服を掴み抑え込んでいるにも関わらず、寧ろ嬉々として自分を貶してくる桐生に須藤はもう我慢ができなくなっていた。今まではこれ以上暴力を振るえば本当に退学になるかもしれないと、まだ理性が効いていたが、この目の前の男から発せられる言葉を聞いているともうその理性のタガも外れてきていた。そしてその限界が来た時、その右手を振りかぶった。そのまま目の前にいる男に拳を振りかざした。

 

 

 

 

しかしその手は目の前の桐生に届くことはなかった。

 

「須藤、いい加減にしろ。ここで暴力を振るったらみんながここまで動いてきたことを無駄になる。だから止めるんだ。それに桐生、お前も言い過ぎだ」

 

右手を綾小路に抑え込まれたため、目の前の桐生を殴ることができなかったのだ。それでも構わず右手を動かそうとするが、右手はガッチリと綾小路に止められて動かすことができない。

動かすことができない以上何もできないので須藤も諦めて桐生の首元を離す。

 

手を離したのを見て、堀北が須藤に注意をする。

 

「いい、須藤くん?あなたのいけないところはそこよ。すぐに逆上して手を出す。それが今回の事件を起こした原因よ」

 

「け、けどよ…」

 

「でもじゃない。どんなに悪口を言われたとしてもあなたが暴力を振るえば相手は怪我をする。相手に怪我をさせたらあなたが悪い。これは小学生でも分かることよ。特にあなたは力が強いのだから気をつけないといけない。分かった?」

 

堀北がなだめるように須藤に伝えるが須藤は納得がいってないようであった。

 

「そんなにバカにされるのが嫌だと言うのなら、あなたがもっと努力して偉くなればいいじゃない。今回のこともバスケ部でレギュラーを取ったから言われたのでしょう?だったら次はレギュラーで活躍すればいいじゃない。そうすればそんな小さなことでやっているのか、そう言えるはずよ。だから暴力で何でもかんでも解決しちゃいけない。そこが了解できないのなら私たちはあなたを助けることはできない。そこを了解できる?」

 

「………分かった」

 

随分と悩んだようだったが、須藤も納得いったようであった。須藤がなんとか納得がいったところで桐生にも注意する。

 

「それにあなたも言い過ぎよ、桐生くん。いかに言っていることが正しくても、今のはただの挑発よ。今のはしてはいけないことよ?」

 

「ああ。俺も言い過ぎた。悪かった須藤」

 

須藤の前に立って桐生が謝る。桐生が謝ったことで須藤も若干嫌そうであったが、須藤も謝ったのでこの問題は解決となった。

 

 

 

「そろそろ時間ね。遅れると印象が悪くなるから行きましょう」

 

堀北たちは審議の時間が近づいているため、指定された会議室へと歩いて行った。この中で審議に参加しない桐生はすることがなくなったので帰ろうと玄関の方は向かおうとした。

 

しかし桐生が向かおうとする先、そこには坂柳が立っていた。

 

「あら、司くん。ごきげんよう」

 

「有栖か。こんなところでどうした?」

 

「いえ、たまたま歩いていましたら桐生くんが見えましたのでこうして来たのですよ」

 

有栖が俺の前に現れるということは大抵何かある。今まで有栖と会った時には何かしら用事があった。そのため何があるのかと疑っていると、有栖が話しかけてくる。

 

「それと司くん、あなた先ほど頭をぶつけましたね?少し腫れてますよ」

 

有栖がその腫れているという部分をジェスチャーする。桐生もそのジェスチャーにしたがいその部分手を当ててみる。すると少しだけ、たんこぶのように腫れているようであった。

 

「頭に出来た腫れはあまりよろしくありません。早く冷やすのが良いですよ。保健室まで同行しますので行きましょう」

 

「これくらい大丈夫だって…」

 

「行きますよ」

 

有栖はこちらの言葉を聞かず、俺の手を引っ張って歩き始めた。急に引っ張られたことによって、俺もよろめいて有栖の方向へ引っ張られる。

 

「分かった、分かった。保健室に付いて行くから引っ張るのはやめてくれ。俺を引っ張りながら歩くのは有栖の身体的にもよろしくないだろう?自分で歩くから、その手を離してくれ」

 

「ようやく理解してもらえましたか。では保健室に行きますよ」

 

結果、二人で保健室に向かうことになったのだった。




最近ひよりの出番がなさすぎて、ヒロインって何だっけ?ってなってますね。有栖と一之瀬さんが強すぎる…


ちなみに須藤を挑発したのは綾小路に桐生が提案したことです。詳しいことは次回書きますのでよろしくお願いします

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