違うクラスの女の子に目をつけられたんだが   作:曇天もよう

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今回は坂柳が少しだけ登場していますが本格的な登場はもう少しだけ後なのでもう少し待っていてください。


ようこそクラスルームへ

バスを降りた生徒たちは各々のペースで指定された教室へと歩き出す。特に周りを見渡すこともなく一直線に向かっていく者もいれば、周りの大きな建造物に驚きながら歩く者、早速知り合った友人と歩いていく者もいた。

 

桐生は友達をすぐに作れるようなタイプではないので指定された教室へと一人でゆっくりと歩き出していた。

確かに周りの建物はとても大きく驚いてはいたが、これから3年間滞在するのだからすぐに慣れてしまうだろう、そう思いながら歩いていると、こちらへ杖を持った銀髪の少女が歩いてくるのが見えた。

 

ここへ着いた者たちは教室へと向かうのだから、こちらへ歩いてくるなんて珍しい。何か用事でもあるのか?

 

そんなことを思っていると少女は桐生の目の前にやってきた。桐生が相手とぶつかるのを避けるために右に避けると、少女もなぜかそれを見て桐生の目の前に移動し、お互いに立ち止まる。

そして近くなりジッと桐生のことを見つめてくる。背は意外と高くなく、少女のようだが、そこから醸し出される雰囲気は少女のそれとは全く異なっていた。

そんな不気味な少女に困惑していると少女は不意に口を開き話す。

 

「あなた…面白そうな人ですね。また会えることを楽しみにしていますね」

 

非常に簡単な一言だけ告げると先ほど歩いてきた方向へと少女は戻って言った。

 

今の女の子は何だったんだ?突然話しかけられてびっくりしたが、何かあの子の興味を引くことでもあったのだろうか。もしかして髪がはねたりしているのだろうか?と思いトイレに行ったが、特に身だしなみで変なところはなかったため、不思議に思いながら指定されたDクラスへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

俺が予め指定されていた教室、Dクラス付近までやってくると先ほどまで静まり返っていた校舎内に人が喋る声が聞こえてきた。どうやら初日から仲良くなっている人たちがいるようだ。

俺はあまり人と仲良くなるのが得意ではないため、そのようにすぐに仲良くなれる人たちを多少なりと羨ましく思いながら教室のドアを開く。

俺は「おはよう」と無難な挨拶をして教室に入る。すると何人かの生徒たちもあいさつを返してくれた。あいさつを終えると自分のネームプレートの書かれた机を見つけて、そこへ移動し、荷物を降ろした。

 

 

席の隣の人物は誰かと見てみるとやけに表情が変わらない少年と、綺麗な黒髪を伸ばした少女が話をしていた。言葉だけ聞いていれば良い雰囲気を醸し出しているようであるが、実際は違っていた。

出来れば関わりたくないなどと話をしているようで、この二人は初日から大丈夫か?と心配になるような話をしていた。そんな不思議な二人がとなりの生徒なのかと思っていると、こちらの方に少年が振り返ってきた。しかしながら少年は話しかけてくることもなく、ひたすらこちらを見つめてくるだけであった。

 

 

「あなたたちはいつまで黙って見つめあっているのかしら?」

 

お互いに黙り合って見ていると奥側の少女が沈黙を破るように話す。

少女は一見すれば美少女というものを絵に描いたような容姿をしていた。しかし、先ほどの話し方から自尊心が高くて少し接しずらそうな印象を桐生は受けていた。

 

そんなことを考えていると再び少女に言われたため、少し焦って話し出す。

 

「黙ってしまって悪かった。俺は桐生司だ。先ほどもこうしていきなりジッと見られることがあったから、何か変なものでも付いてるのかなって思ってしまったんだ。これからよろしくな」

 

簡単に名前と、先ほど黙っていた理由を述べる。少年はなるほどと納得したような様子を見せていたが、少女は興味がないと特に聞いているような様子はなかった。

 

そうしていると少年が今度は自己紹介をする。

 

「綾小路清隆だ。あまり人と話すが得意ではないからさっきは黙ってしまった。その…なんだ…よろしくな」

 

となりの表情があまり出ない少年は綾小路というらしい。あまり喋るようなタイプではなさそうだが、その分俺は仲良くできそうだ。多分俺と同じく友達が少ないタイプだろう。違っていたら?めっちゃ恥ずいけど…。

 

そんなことを考えながら綾小路の隣にいる少女にも話しかけてみる。

 

「君はなんていう名前なの?」

 

「私に答える義務はあるかしら?」

 

「そうだ、ないっちゃないが、していないと損はあるかと思うけどな」

 

「私は義務はないし、損もないと思うため答えない。何か不満があるかしら?」

 

思っていたよりもきつい返事が返って来た。おそらく一人で今までは出来ていたから友人とかが必要ないと考えているとタイプだろう。人は助けてもらえなければ生きていけない生き物だというのに愚かな考えだと思う。

まあ、この子にそんなことを言っても耳を傾けないだろうし無駄なんだろうけど。

 

「堀北、そんなこと言ってると桐生からぼっち認定されるぞ?」

 

「貴方に言われたらおしまいね。それよりも綾小路くん。勝手に人の名前を言わないでもらえるかしら?」

 

「悪い、堀北鈴音。悪気はなかったんだが…」

 

堀北は冷たい目で綾小路を睨んでいたが綾小路はそんな目を気にすることもなくこちらとも話をする。まあ、そのおかげでこの少女が堀北ということはわかった。まあ、いずれ仲良くなれたらいいな程度に思っておこう。

 

そのまま堀北はこちらと話すこともなく黙って小説を読み始めてしまったため、綾小路と他愛もない世間話などをする。なんだか、似たような考えをしているようで親近感をわきながら話をしていると始業のチャイムがクラスに鳴り響き、教室前方のドアから黒いスーツを着た女性が教室へと入ってきた。

 

それを見たクラスメートたちは一斉に自らの指定された席に着席をして、入ってきた女性を注視する。

全員が先に着席をすると女性は咳払いをして話す。

 

「えー新入生諸君。私はDクラスを担当することになった茶柱佐江だ。普段は日本史を担当している。この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。よろしく。今から一時間後に入学式が体育館で行われるが、その前にこの学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらう。以前入学案内と一緒に配布はしてあるがな」

 

 

前の席から今茶柱先生が配ったプリントがやってくるため目を通してみる。するとやはり一度目に通した内容がそこには書かれていた。

 

この学校は、普通の高校とは違う点が複数ある。まず、生徒は全寮制であるのだ。さらに寮生活だけでなく、在学中は特例を除き、外部との連絡を一切禁じている事だ。つまり、一度この学校に入ったら、余程のことがない限り外には出られない。

しかし、娯楽が何もないというわけではない。生徒たちがなるべく不満を抱えないように、カラオケやカフェ、映画館にスーパーマーケットなど、生活に必要な施設から娯楽施設まで学校の敷地内にそんざいしている。まるで、この学校が一つの町として形成されているようだ。

そして最大の違いはこの学校で生活していくためのお金であった。

 

 

「今から配る学生証カード。それは敷地内にあるすべての施設を利用したり、売店などで商品を購入することができるものだ。いわばクレジットカードのようなものだ。ただし、現金の代わりポイントを消費することになっているので注意が必要だ。学校内においてこのポイントで買えないものはない。毎月の一日に自動的にポイントは振り込まれることになっている。今お前たちには平等に10万ポイントが支給されている。1ポイントにつき1円だ。これ以上の説明は不要だろう」

 

 

茶柱先生の発言に、クラス全体がにわかに騒がしくなる。

この学校が他の高等学校と異なる部分の三つ目。それが、Sシステムの導入だ。先程茶柱先生から説明があった通り、毎月振り込まれるポイントによって、学校生活で必要な物などを購入することができる。

 

俺は毎月2万ポイントほど支給されそれでやり繰りをしていくものだと思っていた。しかし予想を大きく上回り10万ポイント…現実的に言えば10万円が振り込まれたのだ。しかし、全校生徒に毎月10万ポイントを振り込んでいると言うことはありえない。そんなことがあり得るとしたら、いくら日本政府の介入があるとはいえ、やりすぎだろうと考えられる。

この学校のモットーは社会に役立つ人材育成が謳い文句だ。そのため、自堕落な生活を全校生徒にさせるはずがないだろう。

となるとなんなのか?それは簡単なことで、何か裏がある。美味しい話には裏があるとよく本でも書かれるがまさにこの事なのだろう。証拠は無いが、最大限ポイントを消費しないように生活して様子を見るのが大事だな。

俺の見立てでは、1万ポイントもあれば十分な生活ができるだろう。服や、生活用品の持ち込みは審査を受けた上で許可されているため、水、電気、ガス、食料さえあれば生きていけるだろう。

 

そんなことを一人考えていると茶柱先生は説明を続ける。

 

「ポイントの支給額が多いことに驚いたか?この学校は実力で生徒を測る。入学を果たしたお前たちに対する評価のようなものだ。遠慮なく使え。ただしこのポイントは現金化は不可だからな。」

 

 

そう茶柱先生は話すが、生徒たちは10万ポイントをどのように使うかで頭がいっぱいな様子で、多くの人が上の空のようであった。だが、綾小路や堀北は浮ついた様子など見せていなかった。

 

「質問は無いようだな。では、良い学生ライフを送ってくれたまえ」

 

 

クラス中が浮き足立つ中、茶柱先生はそう言い残すと教室から出て行ってしまった。

先生が教室からいなくなってしまうと、生徒たちはすぐに仲の良いグループの人同士で集まってグループで話し合いを始めた。何に使おうだとか何買おうかな〜などと、多くの人たちは10万円という多額のお金に疑問すら抱いていないようだった。

 

 

「思っていたほど堅苦しい学校では無いみたいね」

「確かに。何と言うか物凄く緩いな」

「緩すぎてちょっと怖いけどな」

 

 

綾小路と堀北は二人で話をしていたが、二人は10万ポイントを積極的に使おうとしてなさそうだ。他にも周りを見渡してみると10万ポイントを使うことに躊躇するものもいた。

 

これで今日の日程は終わったため、生徒たちはお金を使うためか、蜘蛛の子を散らすように教室から消えていく。

桐生も準備をするため、荷物を片付けて教室の外へと向かった。


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