違うクラスの女の子に目をつけられたんだが   作:曇天もよう

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投稿遅くなりました。すみません。

ついに『違うクラスの女の子に目をつけられたんだが』がお気に入り登録者1000人を突破しました!ありがとうございます!これからも頑張っていきます!

それと作者テスト期間を終えたのでもう少し投稿ペース早くしていきます


暴力事件編
波乱


6月下旬ともなれば暑さが酷くなってくる。6月が梅雨の季節のため湿気が増すというのも原因の一因を担っていたが、それよりも7.8月がやってくることによるカラッとした暑さもやってくるため、ダブルで暑さを体験するこの頃、桐生は特別棟に来ていた。

桐生が特別棟にやってくる理由としては、神室と話をするからだ。神室は桐生の頼みで情報を収集することが偶にあったのだが、表立って会うことはできなかった。

それはこの高度育成高等学校が他クラスとの抗争を促しているからだ。他クラスと対立している中、他クラスの生徒と話をしているとなるとクラスメートたちから疑いの目を向けられることがある。そのため、放課後ともなればほとんど人気のない特別棟で神室と待ち合わせていたのだ。

神室の指定した特別棟3階踊り場へと桐生は向かっていたが、肌にじわじわとまとわりつく暑さに辟易としていた。本校舎内は空調設備が整えられているため、快適に過ごすことができるが、特別棟には設置されていない。普段空調設備の整った環境で生活しているため、その暑さに少しバテ気味になっていた。

 

汗が滲み出てくるのをハンカチで拭き取りながら階段を登ろうとしていると隣を一人の少女が駆け下りて来た。

 

「佐倉さん?こんなところで何してるの?」

 

「え?…き、桐生くん?」

 

 階段を駆け下りて来た少女は桐生のクラスメートである佐倉であった。突然話しかけられたことに佐倉はかなり驚いた表情をしていた。右手にデジカメを持っていたことから何かを撮っていたのだろう、そう桐生は考えた。しかし、そう考えるにしては動揺しているようで、何かに怯えているようであった。

 

「ご、ごめんね、私帰るね」

 

 そのまま桐生の横を小走りで通り過ぎて行ってしまった。

 その様子に疑問を思っていると、再び上から誰かが降りて来た。

 

「あぁ?なんだ桐生か。わりぃが今はイラついてんだ。すまんな」

 

 そう言って須藤も桐生の横を通り過ぎていった。

 

正直言って二人も特別棟にいるなんて驚いたな。今までここへ来たときには誰にも会わなかったのに。二人で会っていたのだろうか?…いや、ないな。二人に接点がなさすぎる。須藤はバスケ一筋だし、ここ最近堀北に意識が向いているし、佐倉はそう言ったことに無縁そうな人だ。となるとなんだろうか?

 

 二人が何をしていたのか考えながら階段を上ると、2階の廊下の奥に3人組の男たちが見えた。何やらコソコソとしているため、死角に隠れて様子を伺う。

 

「上手くできました。これで須藤は終わりですね」

 

 上手くいった?須藤を何かさせたのか?三人の方をより近づいて見てみたいが、これ以上近づくとバレてしまう。遠目に見るしかなさそうだ。

 

「あとは任せてください、龍園さん」

 

 そう言うと、男子生徒は電話を切ってカバンに電話んしまった。そして三人組はカバンを持つと、出口のあるこちらへと歩いて来た。

このまま、ここにいると盗み聞きがバレてしまうので三階に上がってその場をやり過ごす。

 

三人組は何も気がつかず、階段を降りていった。

 須藤と三人組が何をしたのかは分からない。けれどもあの口ぶりからして何かトラブルを起こしたのだろう。また解決しなければならないことが増えたようだ。

 

そんなトラブルごとに少し困りながらも神室が待っている三階階段踊り場に桐生はやってきた。

 

「少し遅かったね。何かあった?」

 

三階に上がってすぐの角を曲がるとそこに神室は立っていた。様子から少し待ったのだろう。少しだけ怒っているようだった。

 

「1分遅れてしまっていたな。悪かった。何か下でトラブルがあったみたいだけど、神室は何か聞いたか?」

 

三階にいた神室が何か知らないか桐生は聞いてみる。もしかしたら何か聞いているかもしれないと思って聞いてみたのだ。

 

「さっき?…確か何か怒鳴り声と何か物に当たるような音はしたよ。詳しくは分からないけど」

 

神室の言葉とさっきの三人組の言葉、そして須藤の言動から推測するに、三人組が挑発して須藤を怒らせ、須藤がキレて殴ったのだろう。全く、あいつはすぐにトラブルごとを持ってくる…

 

「それじゃあそろそろ本題に入りましょう」

 

須藤の一件に頭を悩ませていると神室が本題に持って行こうとする。すっかり忘れかけていた。

 

「今回はBクラスについての情報だったよね?」

 

「ああ」

 

今回、神室にはBクラスについて調べてもらっていた。Aクラスについては有栖と話をするから情報が入ってくるが、Bクラスについては謎が多い。そして目下の敵であるCクラスについては椎名がいるが、椎名はクラスに無頓着なため、あまり情報を知らない。それでも多少のことは教えてもらっている。そう考えるとまずはBクラスについて知りたかったのだ。

 

「まずは基本情報から。担任は星乃宮知恵。Dクラス担任の茶柱って人と仲がいいらしい。明るい雰囲気の先生だけど、考えていることが一番わかりづらいめんどくさそうな担任だよ」

 

星乃宮先生は一度だけ見かけたことがあったな。職員室に用事があった時に、茶柱先生にやけに茶化すように話しかけていた。たしかに考えていることがわかりにくそうな人だ。ある意味一番めんどくさいかもしれないな。

 

「続けてクラスの主な人ね。まずは一ノ瀬帆波。クラスの中心人物ね。明るい性格と差別しない優しさでクラスを取り仕切る、まさにBクラスの大黒柱ね」

 

「明るい性格ね。神室と真逆の性格じゃな…」

 

桐生が喋り終わるまもなく神室の強烈なチョップが桐生の腹に直撃する。油断していた桐生にクリティカルにヒットしたチョップで桐生は息をすることが出来ず、その場にうずくまる。

 

「余計なこと言わないで。話を続けるよ」

 

「悪かった…それにしても強烈なチョップだ…」

 

「それで他にはその一ノ瀬の右腕のような存在の神崎隆二。身体能力の高さが際立ってるけど、かなり消極的な性格。ただ切れ者であるため、総合能力はかなり高い。そして、あとは柴田っていうサッカー部の人くらいかしら。柴田はそれこそ身体能力が学校随一ってくらいで他に目立った特徴はない。Bクラスを総じて話すならお人好しが多いイメージかしら」

 

「なるほど。大体のことは分かった。他には何か情報を掴めたのか?」

 

「そうね。噂程度だけど、一ノ瀬がとても高いポイントを所有しているということくらいね。具体的なポイント、入手方法などは分からないけど、かなり高いポイントらしいよ」

 

「それは気になるな。直接聞くわけにもいかないし、こちらも調べてみるよ。ありがとう助かった。」

 

「そりゃあどうも。それじゃあお礼として愚痴を聞いてもらおうかしら」

 

桐生が依頼をする時、神室は普段溜め込んでいる坂柳に対する不満を桐生に向かって吐き出すのだ。それが、依頼する時の約束だからだ。

 

「っと、その前に次の依頼だけ決めといていいか?」

 

「いいわよ。次は何を調べればいいの?」

 

「次はCクラスについて調べて欲しい。特に龍園ってやつを調べて欲しい。何か情報を掴めたら教えてほしい」

 

神室は頷いてから坂柳に対しての愚痴を話し始めた。その坂柳の愚痴は2時間にも及び、終わった頃には神室はスッキリしていたが、対して桐生はげっそりとしていた。

 

 

 

 

 

 次の日の朝、いつも通り早起きして教室に行き、一限目の準備をしてから机に座ってぼんやりとしていると、クラスメートたちがやってきた。いつも賑やかなクラス内だが、今日はいつにも増して騒がしくなっていた。その様子はみなが浮き足立っているようであった。

その理由は今日、7月1日今日は入学以来、久しぶりにポイントの支給があるかも知れないからだ。中間テストを乗り切り、遅刻や欠席、私語をやめた事によるポイントの増加に皆が期待している。

なぜみながこんなに期待するかといえばプライベートポイントは様々なものを購入できるからだ。それは日用品からテストの点数まで多種多様である。そのため、俺としても確保をしておきたいと思っていた。

 

 そうは言えど、今朝起きて確認をしてみるとポイントは振り込まれていなかった。まだ振り込まれていないだけの可能性もありえる。Dクラスは最初から0ポイントだったため、いつ振り込まれるのか分からないからだ。しかし、すでに振り込まれているとしたならば、テストの結果だけではプラスにならない程の負債を抱えていた可能性もある。

 そんな不安を抱えながら、ホームルームの時間がやってくる。クラスの扉が勢いよく開いて、茶柱先生がいつもと変わらない表情で教室へ入ってきた。

 

「おはよう諸君。今日はいつにも増して落ち着かない様子だな」

 

 教室を見回し、クラスのようすがそわそわとしていることに触れる。そう言った先生に真っ先に反応したのは池だった。

 

「沙枝ちゃん先生!俺たち今月もポイント0だったんですか!?朝チェックしたら一ポイントも振り込まれてなかったんですけど!」

 

「それで落ち着かなかったわけか」

 

茶柱先生は冷静に判断する。しかし池がさらに茶柱先生に言う。

 

「俺たちこの1ヶ月死ぬ気で頑張りましたよ。中間テストだって誰も退学者出さなかったし……なのに0ポイントってあんまりじゃないですか!遅刻や欠席、私語だってしませんでしたよ!」

 

「まあ、そう勝手に結論を出すな。まずは話を聞け。池、お前の言うように今までとは見違えるほど頑張っていた。それは認めよう。そしてお前たちが実感を持っているように学校側も当然ながらそのことを理解している」

 

 諭されたようで池は大人しく席に座った。

池が席に座ると持って来ていた紙を黒板に張り出す。そこには各クラスのポイントが書かれていた。

 

 紙にはAクラスから順に書かれているためまずはAクラスのポイントが見える。そこにはAクラスのポイントが1004ポイントと書かれていた。それだけではなく、BやCクラスのポイントも、先月と比べ100近く数値を上昇していた。早くも、ポイントを増やす方法を見つけたようであった。

 

2つ隣の堀北は他のクラスのポイントを気にしていたが、このクラスのほとんどの人は他のクラスのポイントなんて気にしていなかった。ほとんどの人はDクラスはどんなポイントなのか。その一点のみが気になっていた。

 

 クラス全体がが息を飲んで見守る中、その結果が開示される。

 

そこには『Dクラス:87ポイント』と記されていた。

 

「え? なに、87って……俺たちプラスになったってこと!?やったぜ!」

 

 ポイントを見るなり、池が飛び跳ねる。池君が言った通り、そこには87ポイントと表記されていた。皆が喜ぶ中、茶柱先生がそれを窘める。

 

「喜ぶのは早いぞ。他クラスの連中はお前たちと同等かそれ以上にポイントを増やしているだろ。差は縮まっていない。これは中間テストを乗り切った1年へのご褒美みたいなものだ。各クラスに最低100ポイント支給されることになっていただけにすぎない。現に他のクラスを見ろ。お前たち以上に増えているだろう?」

 

 たしかに他のクラスはほぼ90ポイントほど増加している。これを鑑みると差を再びつけられてしまっている。

 

「がっかりしたか堀北。まあ、クラスの差が余計に開いてしまったからな」

 

「そんなことはありません。今回の発表で得たこともありますから」

 

 茶柱先生の問いに堀北は、桐生と同じ事を思ったのか、そう答える。池が立ったまま得したことは何か、を堀北さんに聞くが、答える気はないらしく黙って座ってしまった。それを見ていた平田が代わりに答える。

 

「僕たちが4月、5月で積み重ねてきた負債……つまり私語や遅刻は見えないマイナスポイントにはなっていなかった、ということを堀北さんは言いたかったんじゃないかな。そうでなければ僕たちにポイントは入らないからね」

 

 今回の結果得られなものは負債が無いと判明したことだ。もし今回、100ポイントを貰っていても0ポイントだった場合、負債が残っていることを意味し、その負債が残っているのかが桐生たちには分からなかった。それが無いと分かったのは大きな収穫である。そしてポイントを支給されることによってDクラス全体のモチベーションアップにもつながる。これも大きな得だろう。

 

 すると、ここで一つだけ疑問が残る。

 

「あれ?でもじゃあ、どうして俺たちにポイントが振り込まれていないんだ?」

 

 先生に疑問に思ったことをぶつける。たしかにクラスポイントが87上がったならプライベートポイントが8700ポイント振り込まれていなければおかしいのだが…

 

「今回、少しトラブルがあってな。1年生のポイント支給が遅れている。おまえたちには悪いがもう少し待ってくれ」

 

 茶柱先生の返答に生徒達から不満の声が上がる。ただでさえプライベートポイントが無くて困っていたDクラスであったためDクラスの生徒たちはポイントに飢えている。そしてポイントがあると分かるとみな態度が大きくなっていた。

 

「そう責めるな。学校側の判断だ、私にはどうすることもできん。トラブルが解消次第ポイントは支給されるはずだ。ポイントが残っていれば、だがな」

 

 何やら意味深な言葉を残して、教室を出て行ってしまった。みんなも茶柱先生が出て行ってしまったので追及するのを諦めて渋々と一限目の準備を始めたのであった。

 

 

 

 


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