違うクラスの女の子に目をつけられたんだが   作:曇天もよう

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ミーティング

放課後となり、これからの対策を練るとクラスの多くの人たちが参加するミーティングの準備を洋介たちが進めていた。

洋介は人望が高いため多くのクラスメートたちが参加するようだ。しかし、堀北や須藤、高円寺などや、話し合いの苦手な数人は参加していなかった。

 

ミーティングの準備をしているメンバー以外は各々の雑談をしていた。山内は綾小路に2万ポイントで先日買ったばかりのゲームを買わないかと聞いている。綾小路は気にすることなく流している。先々考えないで使ってしまったのがいけなかったのだろう。綾小路もわかっているため相手にしていない。

 

「頼むよ〜桐生〜このゲーム機を3万ポイントで買ってくれよ〜」

 

綾小路が買ってくれないと踏んだのかこちらへとやってくる。というかさっきまで綾小路に2万ポイントで売ると言っていたのにポイントを値上げしてる。俺なら買ってくれるとでも思っているのか分からないが図々しい気がする。こういうところであやふやにすると押し切られて買ってしまう可能性があるためはっきりと断る。

 

「俺はゲームのカセットを持っていないし、興味もないからいらない。他を当たってくれ」

 

「頼むよ〜」

 

「いらないって言ってるだろ。あとくっついてくるな」

 

頼みながら擦り寄ってくる山内を引き剥がす。綾小路より高いポイントにして売りつけてくるなんて

やはりポイントを使い切っている生徒たちは他の人に分けてもらえないかと頼みに行っている。

周りを見渡してみると他にも、女子の中心メンバーになっている軽井沢が周りの友達に一人2000ポイントを恵んでもらえないか頼み込んでいる。とは言っても頼み込んでいるような態度には見えずフランクに聞いているが、櫛田のような貸してもらえそうな面々に聞いているので成功しているようだ。

なんだか女子の力関係を感じていると、教室内に放送が鳴り響いた。

 

「1年D組綾小路清隆くん、先生がお呼びです。至急職員室まで来てください」

 

クラス全員の注目が綾小路に集まる。綾小路は特に気にしないようにして、クラスの外へ出て行った。綾小路が出て行くと、多くのクラスメートたちがどうして呼ばれたんだろうかと邪推し始める。実際俺の周りでも女子たちがヒソヒソと話をしている。だがみんなが考えているようなことではないだろう。綾小路は先生から呼び出されるようなことをする人間には見えない。俺がそう考える理由は表面上は触らぬ神に祟りなしといったスタンスをしている人間に思えるからだろう。だがしかし、人間誰しも表と裏があるものなので、どうかは分からない。実際俺だって裏と表があるからな。

 

「はい、みんなミーティング始めるよ。席についてくれないかな?」

 

洋介がみんなの考えを遮るように話す。おそらく洋介はそれを狙っていっているんだろうけど。

洋介に促されたことで多くのクラスメートたちが自分の席へと戻って行く。

 

「さて、これから僕たちはクラスポイントを獲得していかないといけないわけだけど、まずはどうしていくのがいいだろうか?」

 

洋介はみんなが考えるように促す。しばらく黙っていると誰かが授業態度を変えるべきだと話した。それを聞いて、洋介はその意見に賛同してから自分の考えている意見を話す。こうすると、他の人も自分で考えるし、その上で聞いてもらうことで理解してもらいやすい。やはり洋介はクラスをまとめていくような人だと思った。

 

「でもさ、そこを変えてもポイントが増やされないのにどうやったらいいわけ?」

 

誰かが意見を出す。この質問にはさすがの洋介も顔をしかめた。たしかに何がマイナスで何がプラスなのか教えられていない今、その質問に答えることはできない。他のクラスメートたちも分からないため、黙ったままだ。

やはり、情報が不確定過ぎて誰も話せない。今の時点で話し合っても無駄だったか。そう考えていたときだった。

 

「もしかしたら、中間試験を乗り切れたらポイントをもらえるかもしれないよ?」

 

少し高めの声が教室内に響き渡る。その声の主へとクラスメートの視線が向けられる。みんなの視線の先には櫛田桔梗がいた。

 

「確かにそうであるって決まったわけじゃないけど、ずっと下向きなことばかり考えていたら進まないよ。だからもっと前向きに捉えてやっていこうよ」

 

「うん、そうだね。下ばかり見ていたらきりがないよね。だからみんな、今回は中間テストをみんなで突破できるように頑張っていこう!」

 

クラスの人気者二人の意見が合わさったことによって概ねその方針でいくことが決まった。平田だけの意見だったら男子はつき従わなかったかもしれない。そこに櫛田という男子からの人気が高い人が意見することで達成できたことだ。

 

そしてその後クラスで勉強会をし、みんなでテストの点を上げていこう、ということになった。

 

 

 

 

 

クラスでのミーティングが終わり、解散となったため、桐生は足早に教室を去った。桐生には今日は用事があったため、早くミーティングが終わって欲しかったが、平田、櫛田の活躍もあって30分ほどで終わった。これにより約束の5時にギリギリ間に合うくらいだった。

軽く息を切らしながら走り、なんとか時間内に目的地へとたどり着くことができた。そこには目的の人物がいないようであったので中へと入ってみる。するとそこには目的の人物がいた。

 

「待っていましたよ、桐生くん」

 

桐生が向かっていたのはAクラスの教室、そして会う約束をしていたのは先日とある取り決めをした少女、坂柳有栖であった。

 

「どうぞ、そこの席にでもお座りになってください」

 

坂柳の前なら席に座るように促される。今回は坂柳以外にも二人の生徒がいるが、席に座ることなく坂柳の背後に立っている。

 

「気にされなくても大丈夫ですよ。彼女たちは私の指示で動く部下みたいなものですので」

 

「それじゃあお言葉に甘えさせてもらって座らせてもらうよ」

 

そうは言われても気になるものなんだけどな…というかそこの女子は部下と言われて、ムッとしたような様子を示した。対して反対側に立っている男性はそれが当然という反応を示した。どうやら同じ坂柳派に所属していても忠誠心はまるで違うようだ。

 

 

「さて、本題に入りましょうか。やはり私の提供した情報は正しかったようですね。まあ、Dクラスのクラスポイントには流石に驚かされましたが…」

 

坂柳は笑みを浮かべながら話す。それもそのはず、今回の情報が正しければ桐生が坂柳に協力をするという取り決めになっているからだ。そしてDクラスのクラスポイントは0だった。これは坂柳の所属するAクラスは940ポイント。いかに差があるかは一目瞭然であった。

 

「ああ。確かに坂柳の言っていたことは正しかった。だから協力をしよう。ただし、坂柳の派閥には入らない、そこのところはいいな?」

 

「はい。約束を破ることはいたしません。私はただ、あなたが私とともに動いてくださることに意義がありますので。力で屈服させあなたを使うというのも甘美なものであると思いますけど、それでは面白くありませんからね」

 

クスクスと今度は笑っている。それを見てお付きの女子はまたもやムッとしていた。おそらく先ほど言っていた力で屈服させられたのだろう。忠誠心はないが従うしかないといったところだろう。

逆に男子の方はそういった様子が一切見えない。こちらは坂柳の実力を大いに認めているために従っている忠臣といった感じか。

どちらにしてもこうして俺との話し合いに連れてくるんだ。二人ともを坂柳はかなり信頼しているのだろう。

 

「さて、今回桐生くんを呼び出した理由としては協力関係の確認、そして私が普段よく使うこの二人のご紹介です。まずはこちらの少し強調性が薄めな女性の方から。こちらは神室真澄と言います」

 

なんだか今紹介しながら貶していたような…気にしたら負けなのだろうか、坂柳ともう一人の男子は一切気にしていなようだった。言われた本人はワナワナと震えていたが、堪えているようだった。

 

「……神室真澄だ。よろしく…」

 

怒りを堪えながらも名前を言う。何かしら弱みを握られているんだろうけど、ここに連れてくるってことは坂柳も信頼しているんだろう。なんだか不思議な関係だな。神室が簡潔に自己紹介し終えたので、坂柳はもう一人の紹介をする。

 

「そしてこちらが橋下正義と言います」

 

「橋下正義だ。普段は諜報なんかをしたりしている。これからよろしく」

 

神室と対して橋下は忠誠心が高そうだ。それに運動し慣れたと言う体つきをしている。ボディーガード的な役割もしているのかもしれない。

そうだ、俺も自己紹介をしなければならないな。すっかり忘れていた。

少し遅れて桐生も自己紹介をする。

 

「じゃあこちらも。Dクラス所属の桐生司だ。坂柳との約束の結果こうして力を貸すことになった。だが、派閥の争いにはあまり干渉するつもりもない。そこは覚えておいてほしい。これからよろしく」

 

全員の自己紹介が簡潔に終わる。すると坂柳は二人に指示を出す。

 

「二人とも連絡先を司くんと交換しておいでください。これからあなたたちは司くんにも頼まれたらその仕事を完遂してください。ただし、私からの仕事を優先でしてくださいね」

 

「ちょっと待った聞きたいことが二つはあるんだが」

 

「どうしましたか。何か疑問に思う点がございましたか?」

 

突然坂柳の話した内容には二つほど疑問に思う点があった。それを坂柳に質問する。

 

「疑問も何もまずいきなり初対面の相手と突然連絡先を交換するっておかしくないか?」

 

「おかしくはありませんよ。これから私が依頼することはたくさんあります。そのために情報を集めなければならない時に一人でしなければならないとなると大変でしょう?ですのでその労働力として使っても構わないと言う話です。ですが、こき使っていいとは言ってもあんなことやこんなことをしてはいけませんよ?」

 

こちらが聞いているのにジョークを交えながら話す坂柳にペースを乱される。しかも本人は面白いおもちゃを見つけたと言う表情で笑っていた。

 

「まあ分かった。確かに坂柳の依頼は無理難題な気もするしな。だとしても突然下の名前で呼んだのは何故なんだ?」

 

「あら、司くんと呼ばれるのは嬉しくありませんか…?」

 

坂柳はわざとらしくよろけるようなそぶりを見せて上目遣いをしてくる。確実に演技をしているのだとわかるのだが、実際坂柳自身がかわいいので破壊力がある。

 

「そりゃあまあ、嬉しいが…」

 

「ふふっ、新鮮な司くんを見ることができました。女性に上目遣いで頼まれると断れない…と。女性に頼まれると断りきれないのでしょうか?」

 

「こらこらメモを取らない」

 

しれっとメモを取っている坂柳を止める。どうも坂柳と話していると調子が狂う。そんな俺の様子を見て神室は同情する目を向けていた。

 

「気を取り直しまして、連絡先を交換してくださいね。」

 

「脱線させたのは坂柳の方だろが…」

 

坂柳が言うと神室と橋下が俺のそばに寄ってきて携帯を出す。俺も交換しておく方が得かと考えて交換をしておく。

 

「交換してもらえましたね。これからは二人のことも使ってもらって構いませんからね。私のことも楽しませてくださいね。ああ、ただし、私からの依頼の方が二人は優先事項なのでそこは覚えておいてくださいね?」

 

「言われなくても基本使わないで済むようにするさ」

 

「それはそれは。楽しみにしていますね。それでは今回はここら辺で終わりとしましょう。本日は来てくださってありがとうございました」

 

そう言って坂柳は杖を持って立ち上がる。それに合わせて坂柳の荷物を橋下が持つ。本当にお付きの人のようだ。神室は教室を戸締りする準備をする。教室は最後まで残っていた人が戸締りをするというルールがこの学校にはあるからだ。

 

神室が準備を整えて鍵を取ったため、俺も席を立って戻し、帰るため教室のドアをくぐる。すると出たところで坂柳が待っていた。

 

「司くん、これからは私のことは有栖と下の名前で呼んでくださいね。私だけ名前で呼ぶというのも面白くありませんので」

 

最後の最後で爆弾を持ってきた。しかもこの様子呼ばないと返してくれそうになさそうだ。

 

「坂柳じゃダメなのか?」

 

「ダメですね。私は司くんと下の名前で呼んでいるので不公平です」

 

いや、坂柳は勝手に呼び始めたのだが…

 

「勝手にではありませんよ。こうして協力関係になったので呼ばせていただいているのです」

 

「ナチュラルに心読むのやめてもらえない?」

 

「ふふふっ、今司くんが考えていることが手に取るように分かりますので。ですが私のことを有栖と呼んでくださったら大丈夫な話ですよ?」

 

明らかに俺がただただしているのを見て笑っているな。けれども実際問題女子を下の名前で呼ぶのはちょっとあれだな…

 

「呼んでくださらないならこちらにも手はありますよ。それでは私のことを有栖と呼んでください。これは私からの依頼です」

 

「それを言われちゃったら呼ぶしかないじゃないか…」

 

「それが目的ですので」

 

「ずるい女性だこと。……じゃあな有栖。また今度な」

 

恥ずかしかったが呼ばないといけなかったので名前で呼ぶ。名前で呼ぶのはやはり恥ずかしいもので呼んだらすぐに坂柳に背を向けて帰って行った。

 

一方、名前で呼ばれた坂柳は近くにいた神室曰く、普段にはないほどご機嫌だったらしい。




この小説書いていると、坂柳が自由に動くんですよね。今回の内容もほぼ坂柳が勝手に動いて作られました。対してひよりが梃子でも動いてくれないです…早くひよりも書きたいのですが…

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