英雄伝説 閃の軌跡3 灰の剣聖   作:クロス レイブン

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まさかここまで続いている事に自分で驚いてます。
これも応援してくださっている皆様のおかげです。
本当にありがたい限りです。
今回で序章は終わりです。割と詰め込みました。

泡泡さん、誤字脱字報告ありがとうございます。


入学オリエンテーション

アインヘル小要塞・L V 0 B1

 

リィン達は順調にアインヘル小要塞を攻略していた。

 

ユウナとクルトは互いにいがみ合ってはいるが、もともと相性が良いのか戦術リンクを使った息の合ったコンビネーションを見せ、アルティナはこちらからの動きに合わせてクラウ=ソラスによる援護やアーツによる補助をこなし、リィンは生徒の技量に合わせ全員のサポートに回っていた。

 

そして、あっという間に後半地点まで足を進めていた。

 

リィン達は大型の魔獣を相手に足を止めていた。

 

「あの魔獣……他のより一回り大きいけど。」

 

「現在戦力では、若干手こずりそうですね。」

 

と、アルティナが冷静に戦力を比較する。

 

「ふぅ、まさかあんなものまで、徘徊しているとはな………」

 

リィンは、学生相手にここまでするかと思いながら製作者を思い出してため息を漏らす。

 

「……迂回して別ルートを探しますか?」

 

クルトが意見を出してくるが、リィンは実力を測るには良い機会だしそれに戦術リンクを使っていればまず間違いなく負けない相手だと思い正面から仕掛ける事を言う。

 

「いやーーここは正面から仕掛けよう。」

 

「正面からって………ちょっと無謀すぎません?」

 

「そうとも限らないさ。こちらは4人ーー今なら戦術リンクの連携も可能だ。ここまでの基本を抑えていれば必ずや撃破できる筈だ。」

 

「あ……」

 

「………いいでしょう。自分も異論はありません。」

 

そう話し合っているうちに魔獣がこちらに気づく。

 

「それじゃあ決まりだな!と、どうやら彼方もコッチに気づいたみたいだな。」

 

「みたいですね。ーー戦闘行動に移行します。」

 

全員が自分の武器を構える。

 

「状況を開始するーー一気に行くぞ。」

 

その言葉と共に戦闘が開始される。

 

 

大型魔獣はゆっくりと地に伏せた。

 

戦闘自体はそこまでなんら変わりはなく。少し苦戦はしたものの危なげなく勝利した。

 

「敵性魔獣の沈黙を確認。」

 

そうアルティナが言う。

 

「はああ〜………結構手こずったけど……」

 

「………(思っていたほど大した相手じゃなかったか。)」

 

ユウナとクルトが武装を解くとこちらを振り返る。

 

その瞬間、魔獣がまた動き出す。

 

ユウナとクルトが驚き後ろに下がる。アルティナもクラウ=ソラスを出し二人を守ろうとする。

 

一方、リィンは慌てた様子を見せず「良い機会だ。」と言うと、一瞬で魔獣の懐に入る。そして魔獣の身体に脱力した拳を当てるとこう言う。

 

「いいか?実戦で奇襲や想定外の事態が起きた時、得物を振るうより拳を振るった方が早い時がある。こんな風にな?」

 

そう言うと、脱力した状況から一気に力を込めて

 

「八の型 『重烈撃』」

 

と、東方の《鎧通し》と言う技術を用いて魔獣に打ち込む。そうするとまるで()()()()が当たった様な轟音が響き魔獣が内部から爆散する。

 

それを三人は唖然として見ていた。

リィンはその三人を正気に戻すため手を叩く。

 

「と、いった感じた。拳で戦える様になっていれば大抵の状況でも生き残れる。」

 

リィンはあの場所では最初の方は刀を抜く暇さえ与えて貰えず。ずっと拳で戦っているうちにいつの間にか、刀を使うより強くなっていた時期もあったなとしみじみ思い出しながら実感のこもった声でそう言う。もちろん今は刀を使った方が強いが。

 

「いやいや、おかしいでしょ!?何ですかあの威力!?」

 

やっと正気に戻ったユウナが一気にリィンに迫ってくる。

 

「確かに、常識を逸脱した威力でした。」

 

アルティナが動揺を隠しながらそう言う。

 

「……(なんなんだ。剣士が無手の方が強いって、八葉一刀流って剣術じゃなかったのか?)」

 

クルトはひたすらに悶々としていた。

 

リィンは収拾がつかなくなってきたなと思い。強引に話を進める事にした。

 

「とりあえず…アルティナ、咄嗟によく動いてくれた。それとクルト、ユウナ?」

 

「あ、は、はい。」

 

「……(いや本当に八葉一刀流ってなんなんだ……)」

 

リィンは聞こえなかったのか?と思いもう一度呼びかける。

 

「クルト?」

 

そうすると、

 

「え、は、はい。」

 

と、焦った返事が返ってくる。

 

「しっかり話は聞いておくように。二人とも魔獣の前で武装を解いたのがまずかったな?敵の沈黙を完全に確認出来るまで気を抜かないーー実戦での基本だ。」

 

「っ……はい。」

 

「………すみません。完全に油断していました。」

 

これには本当に懲りたようでユウナとクルトは反省した様子で言う。

 

「いや……偉そうに言ったが今のはどちらかと言えば指導者である俺のミスだな。やはり俺も、教官としてはまだまだ未熟って事だろう。」

 

そう話していると、

 

『いつまでそこで立ち止まっているつもりだ。さっさと先に進め。』

 

と、博士が催促してくる。

 

「さて、そうだな。そろそろ先に進もう。」

 

リィンがそう言うと、小要塞の攻略を再開する。

 

その後、ゴールが近い事もあり直ぐにゴールにたどり着く。

 

「外に光が見える。どうやら着いたみたいだな。」

 

リィンは外の光を見つけそう言う。

 

「はあはあ……全く信じられない。地下にこんな施設を作るなんて、これだから帝国人は。」

 

「いや、帝国人を一括りにしないでもらえるか。」

 

ユウナが疲れた様子で言った言葉にクルトが反論する。

 

「と、おしゃべりはここまでだな。全員、戦闘態勢」

 

リィンは内戦の時、嫌と言うほど感じた気配を感じ全員に戦闘態勢を指示する。

 

「センサーに警告。霊子反応を検出………来ます。」

 

そうアルティナが言うのと同時に魔煌兵が実現する。

 

「………!?」

 

「こ、これって………帝国軍の《機甲兵》!?」

 

クルトとユウナはどちらも驚いた様子を見せる。

 

「いや、《魔煌兵》ーー暗黒時代の魔導ゴーレムだ!まさかこんなものまで用意しているとは、内戦時に捕獲でもしたんですか。シュミット博士?」

 

『そう言った所だ。機甲兵より出力は劣るが自律行動できるのは悪くない。さあ、撃破してみせろ。』

 

「くっ、本気か!?」

 

「ちょっとマッド博士!いい加減にしなさいよね!?」

 

と、その言葉に流石に冷静さを保てないクルトとユウナ。

リィンも今の戦力では少しキツイかと思い、少しギアを上げるかと思うと、

 

『シュバルツァー、それ以上の力を出すのは認めていない。それ以上は正確なテストとは言えないからな。』

 

それを読んだ様にシュミット博士に釘を刺される。

 

『せいぜい、まだ使っていない《ARCUSⅡ》の新機能を引き出してみるがいい。』

 

『《ブレイブオーダー》モードを起動してください………!オリビエさんーーオリヴァルト皇子が、リィン教官ならきっと使いこなせるって言ってました!』

 

その言葉にリィンは《ARCUSⅡ》を渡された時の事を思い出し、全く殿下はと笑みを浮かべる。

そして、直ぐに気を引き締める。

 

「そうかーー了解だ!」

 

そう言うとARCUSⅡを取り出し、《ブレイブオーダー》モードを起動する。すると四人全員が青く光る。

 

「これはーー!?」

 

「な、何かがあの人から伝わってくる………!?」

 

「戦術リンクいえ、それとは別の……」

 

リィンは刀を魔煌兵に向ける。

 

「Ⅶ組総員、戦闘準備!《ブレイブオーダー》起動ーートールズ第二分校、Ⅶ組特務科、全力で目標を撃破する!」

 

「「おおっ!!」」

 

そこから魔煌兵との戦いがはじまる。

そこからはギリギリの戦いだった。しかしブレイブオーダーの力によりⅦ組の力は魔煌兵の力を僅かに上回っていた。

 

魔煌兵は受けたダメージにより消滅した。

 

「はあはあ……た、倒せた……」

 

「………っ……はあはあ……」

 

「…体力低下。小休止します。」

 

リィン以外の三人は体力がなくなったのか全員地面に伏せていた。

一方、リィンはブレイブオーダーの思った以上の力に驚いていた。それと同時にもうそろそろかと思い()()()()が出現する場所に目を向ける。そこには、先の魔煌兵より強化された魔煌兵が出現した。

 

「な!?もう一体!?」

 

「くっ、ここまでか。」

 

「戦力差は歴然…ですか。」

 

と、三人が絶望的な声を出すが、リィンは冷静に博士に問いかける。

 

「これが俺の実力テストですか?」

 

『フン、そうだシュバルツァー。お前は一人で奴を倒せ。それで今回の実力テストを終了とする。』

 

『き、聞いてませんよ〜〜』

 

「む、無茶よ!?」

 

「自分も……っ………戦います。」

 

「リィン教官…逃げてください。」

 

三人がリィンを引き止めるが、リィンは不敵な笑みを浮かべて

 

「みんなは休んでおいてくれ。この程度の相手直ぐに倒す。」

 

と言うと、それを肯定するように博士が言う。

 

『ならば仮にも《剣聖》の名を持つ者の力見せてもらおうか。』

 

三人が《剣聖》という事に驚きの声を上げる。

 

「すまない。実力テストの事で口止めされててな。改めて、八葉一刀流 七の型 奥義皆伝 《灰の剣聖》 リィン・シュバルツァーだ。」

 

リィンは済まなさそうに言う。

 

「お詫びと言ってはなんだが、自分達の目で自分の担任にふさわしい実力かどうか見極めてくれ。」

 

そう言うとリィンは剣気を少し放出する。それだけで空気がリィンに支配される。コートを剣気ではためかせ、リィンは刀を納めたままゆっくりと魔煌兵に近づいて行く。

 

これから放つ剣技はもう決まっていた。放つのはたった一刀。求めるのは()()の一撃。ただ速く、ひたすら速い一撃。鞘に片手を当て全身を脱力させ、いつでも放てる様にする。

 

一方、魔煌兵はゴーレムの筈なのに異様な雰囲気に当てられ一歩後ろに下がっていた。魔煌兵はその雰囲気を打ち払うように『高揚』を使い敵を排除すべく行動する。リィンを潰そうと腕を振り上げ振り下ろす。

 

リィンが魔煌兵に潰されそうになり、もうダメだと思われた瞬間、

 

「遅い。四の型 『迅雷一閃』」

 

と、言う言葉と共に魔煌兵の腕がリィンの頭上で止まった。いや、止まらざるおえなかった。魔煌兵の身体はゆっくりと横にずれ消滅する。そして、いつの間にかリィンは刀を振り抜いていた。そこに居た誰もが、Ⅶ組の様子を見に来た教官達や分校長でさえも、リィンの刀を抜いたところを見ていないのだ。まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()かの様に、気づけば刀を振り抜いていたのだ。

 

「嘘………」

 

「馬鹿な……」

 

「出鱈目です……」

 

Ⅶ組の三人はその光景を見て、一人は、そこまで磨き抜かれた剣技に尊敬の念を抱き、もう一人は、自分の無力さに悔しさを感じ、最後の一人は、いつかあの人の隣に立ちたいと言う願いを持った。

 

一方。リィンは刀を納め、三人の元に行き全員を立たせる。(クルトの目線がすごく尊敬したものに変わっていたが。)

 

『み、皆さんお疲れ様です。これで今回の実力テストは終了です。』

 

『流石は剣聖と言ったところか、強化した魔煌兵が一撃とはな。次からはもっと強化しても良いかもしれんな。』

 

「はは、流石は博士だな。とりあえず三人とも、よく頑張った。ARCUSⅡの新モード、《ブレイブオーダー》も成功ーー上出来と言って良いだろ。それぞれ課題はあるだろうが一つ一つクリアしていけばいい。」

 

「《Ⅶ組・特務科》ーー人数の少なさといい、今回のテストといい、不審に思うのも当然かもしれない。ロクに概要を知らない俺が教官を務めるのも不安だろう。希望があれば他のクラスへの転科を掛け合うことも約束する。だからーー最後は君たち自身で決めて欲しい。」

 

「自分の考え、やりたい事、なりたい将来、今考えられる限りの自分自身の全てと向き合った上でーー今回のテストという手応えを通じて《Ⅶ組》に所属するかどうかを。多分それが、《Ⅶ組》に所属する最大の決め手になるだろうから。」

 

と、リィンは旧Ⅶ組の事を思い出しながら言った。

 

「ーーユウナ・クロフォード。《Ⅶ組・特務科》に参加します。」

 

一番に名乗りを上げたのはユウナだった。それに驚く他の二人。

 

「勘違いしないで下さい。入りたいからじゃありません。あたしはクロスベルから不本意な経緯でこの学校に来ました。帝国のことは、あまり好きじゃないし、貴方のことも良く思っていません。」

 

「みたいだな。」

 

「……だけど、今回のテストで貴方の指示やアドバイスは適切でした。さっきの化物だって、貴方がいなければ撃破出来なかったでしょう。それに、もう一体出てきた時に何も出来ずに守られていた事は、正直言って悔しいですし、警察学校で学んだことを活かせなかったのも不本意です。ーーだから結果を出すまでは、実力を示せるまでは《Ⅶ組》にいます。《灰色の騎士》ーーいけ好かない英雄である貴方を見返せるくらいになるまでは。ただし、《灰の剣聖》である貴方にはご指導よろしくお願いします。」

 

ユウナの物言いにクルトは内心滅茶苦茶だなと思い。

リィンはどっちも俺なんだけどなーと苦笑いしつつ言う。

 

「分かった、《Ⅶ組》へようこそーーユウナ。」

 

「っ……ーーはいっ!」

 

「クルト・ヴァンダール。自分も《Ⅶ組》に参加します。正直自分の剣には自信があったのですが、あんな剣を見せられた今、自分の至らなさを痛感しています。《灰の剣聖》である貴方の剣に触れさせて貰えれば自分の剣ももっと高みに至れる気がするので、ご指導のほどよろしくお願いします。」

 

「ーー了解した、クルト。《Ⅶ組》への参加を歓迎する。」

 

「……はい。」

 

「ーー最後は君だ。アルティナ。」

 

「この一年貴方が消えて、何か胸にぽっかり穴が空いた様に感じました。正直、まだこれがなんなのか分かりません。ですが、貴方の側に居るとぽっかり空いた穴が埋まってポカポカします。ですから、私は貴方の側に居たとそう思います。それでは……ダメ…でしょうか?」

 

「いや、十分だ。よろしく頼む、アルティナ。」

 

「はい。」

 

と、アルティナは笑みを浮かべて答えた。

 

「アルティナ。今………いや何でもない。」

 

リィンはこれから先もきっと見ることになると思い途中で言う事をやめる。

 

と、いつの間か他の二人からジト目で見られていた。

 

「ど、どうした?」

 

「いえ、別に……」

 

「自分が言う事ではないので……」

 

リィンは強引に話を進めようとする。

 

「さて、それじゃーーそれでは、この場をもって《Ⅶ組・特務科》の発足を宣言する。お互い新米同士、教官と生徒というだけでなくーー仲間として共に汗をかき、切磋琢磨していこう!」

 

こうして《Ⅶ組・特務科》は発足した。

 

 

 

 

「リィン君………」

 

トワが安心したようにそう言う。

 

「フフ、アレが今のシュバルツァーか。あの一撃、私でさえ見えなかった。ますます欲しくなったな。」

 

と分校長がまるで獲物を見つけた様な目でリィンを見つめる。

 

「な、ぶ、分校長!?」

 

トワが焦った様にそう言う。

 

「おいおい、分校長でも見えないなんてどんだけだよ。」

 

ランドルフ教官が冷や汗をかきながらそう言った。

 

「一年前の資料が宛にならないようだな。だが、少し勝手がすぎるな一教官に生徒の所属を決定できる権限などないというのに。」

 

ミハエル教官がリィンの勝手さを責める。

 

「フフ、転科の願いがあれば私は認めるつもりであったが。」

 

「分校長、お言葉ですがーー」

 

「帳尻が合えば良かろう。彼らは己で決めたのだ。Ⅷ組、Ⅸ組共に出だしは順調、捨石にしては上出来の船出だ。ーー近日中に動きがある。せいぜい雛鳥たちを鍛えることだ。激動の時代に翻弄され、儚く散らせたくなければな。では、私は行くぞ。シュバルツァーを手に入れる方法を考えなければならないからな。」

 

「もう、分校長!」

 

「取られたくないならせいぜい気を張る事だ。シュバルツァーを狙う相手はかなり多いだろうからな。」

 

そう言うと颯爽に去っていく。

 

「本当に、分校長は………もっと積極的に行った方が良いのかな?(ボソッ)

 




うちのリィンは一体何処へ向かっているんだろうか……
リィンは今アルティナの好意を兄に向ける好意だと勘違いしてます。鈍感だからね、仕方ないね。

「八の型 『重烈撃』」《別名:防御なんて捨ててかかってこい》
破甲拳は身体全体で打つの対して、両足が地面に着いた状態で片手さえ相手に触れて入ればタメなしで放てる。やろうと思えば騎神の装甲さえ打ち抜ける。防御するには聖痕を使ったレベルの障壁が必要。

「四の型 『迅雷一閃』」《別名:相手が何かする前に斬って仕舞えば良くね》
速い居合。凄く速い。速すぎて抜くと言う動作が無くなりいつの間にか振り抜いている。初手殺し。(だ、大丈夫。きっと避けてる人は居る……はず。)

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