英雄伝説 閃の軌跡3 灰の剣聖   作:クロス レイブン

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少し長めです


鉄機隊との共闘

 魔の森

 

「くっ、私達をどうするつもりですの。残念ながら此処に来た目的は話しませんわ。」

 

「まあ、知りたいとは思うが、無理矢理聞くつもりは無い。」

 

「じゃあ、なんですの。」

 

「何って、さっき言ったように即刻この森から出て行ってもらうだけだが。」

 

「なっ、捕らえないんです。」

 

「残念ながら今の俺は修行の身でな、この森からは出られないんだ。」

 

「後悔しますわよ。」

 

「その時は、その時後悔するさ。」

 

 と、言ったその時「ガァァァァア」と鉄機隊の隣から気配を殺して隙を伺っていた大きな虎型の魔獣が飛びかかって来た。

 

「ちっ……」と、リィンは自らの失態を悟った。鉄機隊との戦闘に集中し過ぎて、周囲の警戒を疎かにしてしまっていたのだ。たが、この魔物は幾ら警戒を疎かにしていたとは言え、リィンに気配を悟られずに潜伏していたのだ。つまりかなりの強さを持つ魔獣だと言える。

 

 咄嗟に鉄機隊も反応するが、さっきの戦闘の傷が癒えていないため動きが鈍い。

 

 魔獣は鉄機隊を薙ぎ払う様に爪を振り下ろす。

 リィンは鉄機隊を守るように魔獣の爪を剣で受け止めるが、「くっ……」と想像以上の重さに声をあげてしまう。

 

 リィンは警戒度を一気に引き上げ『鬼の力』か『ヴァリマール』を使う事を視野に入れる。

 

 どちらを使うか考えているといきなり魔獣が後退する。

 

 何だと思うとリィンを守るように鉄機隊が武器を構えていた。

 

「な、どうして、なんで逃げなかった。」

 

「それはこちらの台詞ですわ。どうして、私達を助けたんですの⁉︎」

 

「あなた達が悪人だとは思えないからな。たとえ敵であろうと、好き好んで見捨てようとは思わなかっただけだ。それに……いやなんでも無い。それよりあなた達はどうなんだ。」

 

 お互い立場なんかがある以上、単純に武で競い合いたいなど言えるはずもなかった。

 

「そんなもの決まっていますわ。守られてその上逃げ帰るなんて鉄機隊の恥、あのお方に合わせる顔が無いですから。」

 

「なるほど、なら此処は共闘と行かないか?」

 

「ふ、ふん。まあ、どうしてもと言うのなら共闘してあげなくも無いですわ。」

 

「あらあら、素直になれば良いのに。」

 

「リィン殿の力添えは心強い。」

 

「なっ、ま、まあ、そう言う事ですわ。行きますわよ。『星洸陣』」

 

 そうしてまた、鉄機隊が光の線で結ばれる。それと同時にリィンの《ARCUSⅡ》が反応しだす。

 

「なっ、これは星洸陣と共鳴してるのか⁉︎…………試してみるか。『戦術リンク オン』」

 

 そう言うと、青い線が3人に伸びていく。

 そして3人との繋がりを感じる。

 

「まさか本当に動くとは、驚いたな。」

 

「確かに、シュバルツァーとの繋がりを感じますわ」

 

「リィン君とのリンクが繋がった見たいね。今まで、鉄機隊のみんなとしか繋がった事がなかったから不思議な気分ね。」

 

「ふむ、そうだな。たが、これならいきなりだが動きを合わせられそうだ。」

 

「まあ、今は戦力が少しでも上がった事を喜ぶべきだな。と、そろそろ魔獣の我慢が限界そうだ。」

 

 そこには、今にも飛びかかろうとする魔獣の姿があった。

 その魔獣に剣を向けリィンが言う。

 

「八葉一刀流 中伝 リィン・シュバルツァーならび鉄機隊、共に大型魔獣を撃破する!」

 

「「ああ(ええ)。」」

 

「はい。て、なんでシュバルツァーが仕切ってるんですのぉぉ!」

 

「来るぞ!話は後だ」

 

 と、すぐに魔獣の薙ぎ払いがくる。

 それを、リィンは剣で受け止め、バックステップで距離を取る。

 だが、すぐに魔獣も追撃を与えに距離を詰めようとするが、その魔獣の目にエンネアの矢が突き刺さる。

 

 魔獣は痛みに悶え後ずさるが、その隙を見逃さず飛び上がったアイネスのハルバードによる振り下ろしが直撃する。

 

 魔獣は痛みのあまり暴れ狂うがそんな事知った事じゃ無いと言う様にリィンとデュバリィが速さで翻弄する。しかし、全身傷だらけになりながらもまだ魔獣は立っていた。

 

「なんてタフさだ。此処までしてまだ倒れないのか。」

 

「普通の魔獣じゃないみたいですね。」

 

「ああ、今まで半年間此処にいるが、こんな魔獣を見た事がない。」

 

「だが、後少しで倒せる筈だ。全員気を引き締め「グガァァァァア」なんだ。」

 

 黒い気の様なものを出しながら魔獣の闘気が急激に増大し始める。

 

「まさか、これは…上位の猟兵にしか出せないんじゃなかったのか?」

 

「ウォークライ………ですの。」

 

「ああ、見た事がある。たが、似ているようで違うような。」

 

「さしづめ、高位魔獣が使えるウォークライの様なものだと思った方が良さそうですね。どちらにしろ冗談にしては、タチが悪すぎるんじゃないかしら。」

 

「来るぞ!気を付けろ。」

 

 魔獣は一気に踏み込みエンネアの前で爪を振りかぶる。

 それを見たリィンは縮地を使い一気にエンネアの前に躍り出て爪を受け止めようとするが、その爪を見てリィンは瞬時に受け止めては駄目だと判断し、エンネアをお姫様抱っこして縮地で一気に離脱する。

 

 爪の振り下ろされた場所を見ると地面に深い爪痕が残されていた。

魔獣はさっきの一撃を避けられたのを、警戒したのか様子を伺っている様だった。

 

「ふぅ、いまのは危なかったな。」

 

「ありがとう。リィン君、でも早く降ろしてくれないかしら。」

 

 と、少し赤い顔で言うエンネアを二人の元に連れて行き降ろす。(一人にはジト目を向けてきていたが)

 

「ゴホン、とりあえずアレをどうするかだな。」

 

「さっきまでとは別物だと思った方が良さそうですわね。」

 

「みたいだな。それと、あの爪をまともに受け止めるのは避けた方がいい。」

 

「あの痕を見て、その気が起きる方がおかしいですわ。

 

「はは、そうだな。さて、始めるとしよう。総員最大限に協力して奴を仕留めるぞ!」

 

「はい(ああ、ええ)」

 

 そう言うとリィンは縮地で一気に魔獣の懐まで潜り込み強烈な『弘月一閃

 』を放つが魔獣は怯んだ様子もなくそのまま爪を振り下ろす。が、リィンはその一撃を知っていたかの様に慌てず「アイネス!」と言うと横から「承知」と放たれたハルバートの一撃で上に弾かれる。

 

 そして体制が崩れた瞬間「デュバリィ!合わせろ!」と言うと直ぐ後ろから「言われなくても!」と言う声と共にリィンとデュバリィが魔獣を中心にクロスを描くように斬撃を喰らわせる。

 

 だか、魔獣はそれでも怯まず直ぐに体制を立て直し腕を振る。

 それによりアイネスが吹き飛ぶ。リィンは直ぐに「エンネア!動きを!」

 を言うと「ええ、任せて。」と空から無数の矢が魔獣の動きを封じる。

 

 その間に縮地でアイネスの吹き飛ぶ方向に先回りしアイネスを受け止め「大丈夫か?」と言うと「あ、ああ問題ない。礼を言う。」とアイネスが体を起こす。「なら一気に決めるぞ!」と言うと四人で魔獣を取り囲む。

 

 そしてまず、アイネスが飛び上がり上からハルバードによる強烈な一撃を叩き込む。が、決定打にはならない。

 

 直ぐにエンネアの矢が残された目に向かうのだが学習したのかその矢を途中ではたき落とす。

 

 そして魔獣は勝利を確信し二人を殺そうと爪を振りかぶる。が、二人の勝利を確信した目を見てもう二人いたことを思い出す。

 

「シュバル…ああもう、言いにくいですわ。リィン合わせなさい!」

 

「はは、ああ、分かった」

 

 と、エンネアとアイネスが引きつけてくれていた間にリィンとデュバリィは自分たちの分身を2体づつ生み出し、計六人で魔獣を嵐の様に全方位から切り刻んでいく。

 

「「ハァァァァァァア」」

 

 更にスピードを増し凄まじいコンビネーションで切り傷の無い場所がないレベルで切り刻むと、二人で分身を消して魔獣の真正面まで移動し、「「これで……終わりだ。(ですわ。)」」と、魔獣の胸にクロスになるように強力な一撃を二人で放つ。

 魔獣は、その一撃が決定打になったようでゆっくりと消滅していく。

 

「終わったみたいだな。」

 

 四人ともが顔を見合わせ武器を収める。

 

「そ、その一応礼は言っておきますわ。べ、別にあなたがいなくても勝てましたけどこんなに早く倒せませんでしたし。」

 

「本当にこの子は………はぁ、もういいわ。私からもお礼を言わせてリィン君、ありがとう。あなたが居なかったら危なかったわ。」

 

「迷惑をかけたな。………あと、その…あんな風に受け止められたのは初めてで動揺して礼を言うのが遅れた。ありがとう助かった。」

 

「いや、別に気にしないでくれ。一時的な共闘とは言え、仲間であった事は間違いないんだ。仲間同士で助け合うのは当たり前だろ。」

 

「ふ、ふん。敵を共闘とは言え仲間扱いするなど、甘すぎますわ。」

 

「デュバリィ、そんな事言いつつ口元ニヤけてるわよ。でも、本当にお姉さん狙っちゃおうかしら。」

 

「ふふ、本当に気持ちの良い男だなリィン殿は。」

 

「そろそろ行くんだろ?……いつかあなた達とは立場なんて関係なく戦いたいものだ。」

 

「そんな日はこ「来ない…か、俺も最初はそう思っていた。だが俺たちは立場なんて関係なしに共闘し合えた。なら、そんな日が来ても不思議じゃないだろ?」……はぁ、本当に甘いですわね。ですが、まあ…そんな日が来るのも悪くはないかもしれませんわね。ですが、次会う時は敵同士です。手加減するなど許しませんわ。」

 

「当たり前だ、俺たちⅦ組の前に立ち塞がるなら容赦なんてしない。」

 

「本当にⅦ組命ですわね。私達はこの辺りで失礼させてもらいます。ああ、それとそろそろ結社が動き始めますわ。せいぜい気をつけると良いですわ。」

 

「なんだ、心配してくれてるのか?」

 

「そ、そんな事ある訳ないですわぁぁぁぁ!」

 

 と、逃げる様に走り去ってしまう。

 

「あ、おい。」

 

「あらあら、全く世話の焼けるわね。それとリィン君。次、鉄機隊が勝ったら私達の配下に加わってもらうわよ。」

 

「え、それってどう言う……て、もう居ないし。」

 

 言う事だけ言って直ぐにデュバリィの後を追って行ったエンネア。

 

「次の立ち合い楽しみにさせてもらう。」

 

「はぁ、もう勝手にしてくれ」

 

 そして、全員が去って行った。

 

(リィン、どうやら終わったみたいだな。)

 

 頭の中に声が響く。

 

(ああ、ヴァリマールか、今終わった。)

 

 そして、リィンは改めて結社の目的なんだったんだと思う。

 リィンは鉄機隊の進行方向にだった方向に目を向けていると、ある事を思い出す。

 

(ヴァリマール、確かこの先に古い石版が置いてあったよな?)

 

(ああ、そう言えばそんな物がたったな。)

 

 確かその石版には「此処ハ、《巨イナル一》ノ、生マレシ場所。」と、書かれていた筈だ。《巨イナル一》と言う存在がどんな存在か分からないが、この森と言い、あの魔獣と言い尋常な存在じゃ無さそうだ。

 どちらにせよ、この森を一度調べてみる必要が有りそうだ。

 

(リィン、どうかしたか?)

 

(いや、取り敢えずそっちに戻るよ。それから、今日あった事とか今後の事を話し合おう。)

 

 そうして、魔の森の謎は深まるばかりであった。

 

 

 

 




過去編は一旦終了です。この後リィンが何を知ったかはまだ秘密です。(な、何も考えて無いなんて言えない。)

星洸陣に反応する《ARCUSⅡ》の不思議(きっとARCUSの元に
なったのが星洸陣なんだよ。この小説内ではきっと。)
ウォークライみたいなのを使える魔獣、れ、歴戦の魔獣ならきっと(震え声)
魔の森とは一体なんなんだ(棒読み)

これは全部《巨イナル一》とか言う奴の所為なんだ。(ヤケクソ)

御都合主義と思って貰えれば幸いです。

あと、誤字報告ありがとうございます。助かります。

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