あの約束を果たす為に──巡り回る運命 完結   作:レイハントン

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こんにちは。

主人公の最後のお話です。それではどうぞ。


FAINL EPISODE 思い出話

 やあみんな、久しぶりだな。

 

 入学式から日は経って約2週間くらい経つ。大学生活にはだいぶ慣れてきた。毎日有咲と学校に通えるのは最高だよ。あとは帰る方向さえ逆じゃなければ………。遠回りして帰ると時間かかるからな。

 

 ここ最近は台風が二回も来たりして雨ばっかりだよ。ホント嫌になるわ………。けど悪いことばかりじゃない。雨の日は有咲と同じ傘で帰る。つまり相合傘というやつだ。

 

 でもなー。素直に言ってはくれないんだよ。そこが可愛いんだけど。

 

 袖を少し摘まみながら上目使いで頼んでこられたら、俺じゃなくても撃沈だろ? 思わずお持ち帰り──これ以上は有咲の視線と白鷺先輩の視線が痛いからやめよう。

 

「あのー、先輩が居ると出来ることも出来ないんですけど」

 

「あらあら、そう簡単にここでイチャイチャ出来ると思ってるのかしら?」

 

 バチバチだよ………。女って怖いな。つうか昼休みやることかこれ?

 

 有咲と二人で外のテーブルで昼飯を食ってたら、なにくわぬ顔で白鷺先輩が乱入してきた。ここ最近ずっとそうなんだよ。

 

「そろそろ喧嘩は終わりに~」

 

「けいは黙ってて」

 

「神山君は少し黙ってくれると助かるんだけど」

 

 へへへ…。ダメだこりゃ。俺なんかのために争わないでなんて言った暁には殺されそうな勢いだ。はぁー。誰か止めてくんないかな~。平和なお昼を取り戻したい。

 

 大人しく有咲の手作り弁当を食べていると、ついに現れた救世主。その名は──

 

「二人ともまたですか? 神山くんが迷惑しているでしょ」

 

「紗夜先輩~。良いところに」

 

「別に周りが迷惑していると思っただけです」

 

「え?! 今神山くんが迷惑してるって言ったのに?!」

 

 なぜかそっぽを向かれて知らん顔をされた。この人達よくわかんなーい。もう少し素直になってくれると助かるんだけどな………。そこが可愛い所なんだろうけどさ。

 

「あ! 見つけましたよ! アリサさん!」

 

「げっ…。鍋川じゃん………」

 

 そのゴキブリが出たみたいな嫌な顔するなよ有咲。鍋川がかわいそうだろ? なんだかんだで良い奴なんだからさー。

 

「なんだお前も居るのか。モチベ下がるから消えてくんない?」

 

 俺が視界に入った瞬間冷めた顔で言葉を浴びせてきた。

 

「前言撤回。さっさと死ね、アホ川」

 

「ボクはしにましぇーん」

 

「うざ。お前がここに来るなんてニ万年はぇーんだよ」

 

「お昼はどこのウルト◯マンだ!」

 

 結局俺とアホ川も喧嘩が始まる。呆れたのか紗夜先輩はいつの間にかテーブルの上に弁当を広げて食べていた。止める気なんて微塵もないんですかあなたは。

 

 この状況はいったい誰が収集を付けるのか。それはだな。

 

「楽しいことになってるわね♪」

 

「あ・・・・出た」

 

 常に楽しいことを探している金持ちのお嬢様。弦巻こころである。この子が来ると本格的に収集が着かなくなるんだよ。だからぴたりと止まる。

 

「いや~お昼は楽しいなー」

 

「ホントホント。有咲の手作り弁当めっちゃ美味しいよ」

 

「ば、バカ! 大声で言うなよ!」

 

「仲良いのね♪」

 

 どうやらごまかせたようだ。危ない危ない。弦巻さんには悪いけど…な? 巻き込まれると少々厄介なのも事実だ。

 

 こうして俺の日常は過ぎてゆく。でも、見てわかる通りに周りに可愛い女子がたくさん居るせいか男子にはあまり良い目では見られない。おまけに彼女持ちとなれば反感を買うよな………。

 

 第一考えたら、周りに居る女子はみんな可愛いい。白鷺先輩なんて女優だぞ。今や女子だけでなく、男子からも人気があるRoseliaのギターの紗夜先輩。

 

 そりゃ嫌われるわな………。俺の大学生活はこうして流れていくのであった。

 

 

 

 

 

 全部の講義が終わり有咲と一緒に帰る為に校舎内を探していた。

 

「あれ? いったいどこ行った?」

 

 この年になって迷子とはいったいどうなっているんだ全く。けしからん彼女だ。浮気とかしてんじゃ──

 

「好きです! 付き合ってください!」

 

 曲がり角の近くで聞こえてきた言葉は俺の足を止めるのに十分だった。

 

 あれぇ? もしかして誰かに告白してるのかな? それじゃあ俺はお邪魔虫ですね。さっさとこの場から離れますか。

 

「ごめんなさい!」

 

 振られたー!? まさに告白した瞬間秒で切り捨てられたー! しかも聞いたことがある声だなおい。

 

 あんまりひとが寄り付かない場所でなんと俺の彼女に告白をしていた。知らない男が。

 

 とぼとぼと俺の脇を通って男は帰っていった。そーっと曲がり角を覗くとため息を吐いている有咲の姿。知らん振りして帰ろうかな。

 

 一旦この場から離れようとした時にふと有咲と目があってしまった。とっさに隠れずに前に出て、見ていない態度をとる。

 

「こんな所に居たのか」

 

「聞いてた?」

 

 俺の気遣いを無視するどころかそれを投げつけてきた。

 

「なにが?」

 

「私が告白OKしたこと」

 

「いや、してないだろ・・・あ」

 

 トラップに引っかかった~。人の嘘を見抜くのにどんな方法使ってるんだよ。ストレート投げるって言ったのにカーブ投げられた気分だ。

 

「見てたなら見てたって言えばいいのに」

 

「なんかな…」

 

 言葉で表すのは難しかった。なんで断ったの? って聞くわけにはいかないし、結構告白されんの? とかも聞くのはちょっとな………。俺の中にもやもやする感情があるのは確かだ。

 

「最近多くて、マジでめんどくせぇ」

 

「そう言うなって。相手は真剣なんだぞ?」

 

「じゃあ付き合っていいの?」

 

「ダメに決まってるだろ」

 

 俺が真剣な顔で言うと有咲は手を口に当てて微笑んだ。ここ最近有咲の仕草が女の子ぽくなってきたような気がする。別にバカにしているわけじゃない。その1つ1つの仕草が可愛いって言うか………。

 

「疲れたし帰ろ」

 

「そうだな」

 

 有咲と共に帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 手を繋いで帰るいつもの帰り道。今日はいつもよりは会話が少なかった。ここ最近俺から話題を振ることが減ってきてるから、なにか話題を作らないと。

 

 だけど人間やろうと思えば思う程出来なくなる。全く話題が思いつかない。こうなったら最近話題の親父の映画の話でも! いや待て。なんか嫌だな。

 

 嫌というより白鷺先輩の話を出すと有咲の機嫌が悪くなるんだよ。どうしてだろうか。

 

「ねぇ。恵はどこで白鷺先輩と仲良くなったの?」

 

 あなたはエスパーですか? なんでこのタイミング?

 

「えっと………親父繋がり」

 

「本当?」

 

 そこは間違ってないんだけど~…な? 今話すと別れる原因にもなりかねないことになってしまうから話せないんだよ~。詳しくは響かない声を参照。

 

「ホントホント。映画の撮影と旅行を同時にするってアホなことをするために京都に来た時だ」

 

「へぇー。それで仲良いんだ」

 

「まぁな」

 

 余計なことは省いて説明したはずなのに有咲の機嫌はどこか悪かった。白鷺先輩どころか女の人と話していると、どこか機嫌が

悪いような気がする。もしかするとこれは・・・・・。

 

「もしかして…妬いてるのか?」

 

「はぁ?! べ、別に妬いてねぇし」

 

「嘘つくなって。嘘つくといつも目を逸らすからバレバレなんだぞ?」

 

「うっ………」

 

 俺が誰かに取られるとか思ってるのか? 意外と有咲は嫉妬深いのかもな。そこがまた可愛い。

 

「大丈夫。浮気しないから」

 

「したら地獄に送る」

 

「それは勘弁しくれ」

 

 俺の手を握る有咲の力が少しだけ強くなったのを感じた。

 

 有咲…嘘はつきたくないけど、白鷺先輩とのことはやっぱり話せないや。

 

 

 

 

 

 

 有咲の家に帰った俺と有咲は縁側で、2人並んで手を繋ぎながら外の景色を眺めていた。空は真っ赤な夕焼け空。この空を見ていると思い出すな~。久しぶりに会ったことを。

 

「そういえば、久しぶりに会ったのも夕方じゃなかったっけ?」

 

「俺も同じこと考えてた。夕方で合ってるぞ」

 

 あの時は無視される理由がわからなくて悪態ついたっけ。買うもの間違ってお母さんに怒られたし、災難ちゃ災難だ。

 

「あの出会いがなかったら私達仲直りしてなかったのかな」

 

「その可能性はあるかも。どっちにしろ、お使いがなかったら会わなかった」

 

 お使いだけが全てじゃないぞ? やっぱり一番大きいのは戸山香澄という存在だ。香澄が居なかったら俺達は仲直りどころかあのまま通り過ぎて居たかもしれない。

 

 それだけじゃない。ポピパのメンバーとも会えなかった。

 

「でもやっぱりかすみだよな~」

 

「あいつが居なかったら俺達は変わらなかった。香澄には感謝してもしきれないな」

 

「うん」

 

 有咲はそっと俺に寄り添ってくると肩に頭を乗せてきた。こんなに間近な距離なのに不思議とドキドキしなかった。当たり前になったからとかじゃない。言葉では言い表せないけど、これだけは伝えられる。

 

 いい匂いがする。

 

 ふざけてるわけじゃないんですごめんなさい。本当のことだからつい。

 

「ゆいから話を聞いた時…胸が締め付けれらた。恵にずっと辛い想いさせてたって考えたらなおさら………」

 

「気にするなって。あれは有咲が軽蔑したわけでも陥れた優衣が悪いわけでもない。誰も悪くないんだ。このまま誰かのせいにし続けたら負の連鎖が続くだけ。憎しみは憎しみしか産まない」

 

 自然と有咲の手を握る力が少し強くなった。

 

 言い訳にしか聞こえないかもしれないけど………こうでもしないと負の連鎖は止まらない。

 

「恵ってたまに良いこと言うけど、どこで勉強してるの?」

 

「たまにって………俺だってそれくらいは言えるぞ?」

 

「別にカッコいいこと言わなくたって恵はカッコいいよ」

 

「え?」

 

 俺がカッコいい? 

 

 カッコいいなんて言われて嬉しくない男子は居るのだろうか。いや居ない。

 

「聞こえなかったからもう一回」

 

「はぁ?! そんな恥ずかしいこと何回も言えるかよ!」

 

「えー。減るもんじゃないし良いだろ?」

 

「やだ」

 

 結局何度お願いしても言ってくれなかった。まぁ仕方ないか。今度は真っ正面から言ってもらえるように頑張るよ。

 

 

 俺の物語はここまでだ。また会う日まで。みんな元気でな。

 

 

 

 

 

───────☆

 

 ここは…どこだ?

 

 目を開けると、こっちに向かって歩いてくる黒髪の男の姿が映る。

 

 彼はそっと右手を軽く挙げくる。オレは自然と手を挙げて彼から何かを受け継ぐようにハイタッチを交わした。

 

「次はあんたの物語だ。市ヶ谷彰兎(いちがやあきと)

 

 その言葉だけが頭に響いた。

 

 

 

 

 

 ハッと目を覚まし上半身だけ起こした。息は少し荒く、肩を上下している。壁にかけてある時計に視線を向けると、長針は11に。秒針は6を指していた。

 

「6時前か…」

 

 ベッドから降りてカーテンを開ける。まだ登りきらない太陽の光が部屋に差し込む。窓に写る自分の顔。金髪の髪が生える頭を掻いて呟いた。

 

「オレの物語ってなんだ?」

 

 夢でお前の物語だって………なんのことだ?

 

 明日から学校が始まるって時に変な夢を見た。

 




最後に次回作の主人公と名前を出しました! まだプロットを練りに練っているので、お持ちください!

それではまた次回作で会いましょう!

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