あの約束を果たす為に──巡り回る運命 完結   作:レイハントン

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こんにちは。

まずは今日まで読んでくれた読者様には感謝してもしきれません。後半グダグダな展開なのに付き合っていただいて誠にありがとうございます。

それでは最後のお話です。


Last Episode 果たされた約束

 久しぶりに徹に出会ってから一週間。今日は優衣、有咲と俺の3人で出かける予定だ。

 

 季節は変わって春。3月から4月へと移り変わり、入学シーズン。後一週間程度で大学の入学式。

 

 この一週間、バイトをこなしつつ、もともと交流のあった人達と過ごした。徹から説教された事は今でも鮮明に覚えてる。寝る前に考えるから若干寝不足だったり……。

 

 あれから有咲とは会ってない。バイトや用事が忙しいって言ったら言い訳にしか聞こえないだろうけど、実際そうだ。このままじゃいけないのは自分でもわかってる。

 

 俺と有咲の関係を知ってなのかはわからないが。優衣から有咲とオレの3人で出かけないかと連絡がきた。

 

 もちろん即OKをだした。機会があれば有咲の今の想いを聞きたい。あわよくば………。

 

「それはねぇか」

 

 街ゆく人を見ながらボソッと呟く。俺と有咲が付き合える可能性なんか万が一でもありえるのだろうか。前と同じ過ちを繰り返す俺なんかと……。

 

 そういえばみんなすごいのは、自分達の苦労話を笑い話で話してたっけ。それを見て惨めに思えのはここだけの話だ。苦労話を笑い話に変えられる程、俺はまだ大人じゃない。

 

「遅いな……」

 

 時間を確認するとちょうど待ち合わせの時間。早く来たのは俺だけど5分前に来るとか出来ないのか? まぁ優衣は遅れて来そうだよ。最近仕事忙しいみたいだからな。でも……有咲は来ても──

 

「あっ。やっと見つけた」

 

 右の方から有咲の声が聞こえてきた。視線を向けるとなぜかジト目で俺のことを見ていた。まるで俺が集合時間遅れたみたいな表情だ。

 

 なにか悪いことでもってしましたか? ……したかも。

 

「やっと見つけたってどういう……」

 

「待ち合わせ場所ここの反対側だけど」

 

「え? マジで……?」

 

「マジで」

 

 スマホで待ち合わせ場所を確認するとどうやら本当らしい。勘違いするにも程があるな。どうかしてるぞ俺。

 

「悪い。勘違いしてた」

 

「しっかりしろよ……」

 

 会話はそれで終わってしまった。・・・・なんか気まずい。前の俺と有咲ってこんな感じで話してたっけ? いつも喧嘩してたような気もしなくはないんだけど……。

 

「・・・喧嘩でもするか?」

 

「なんでだよ……」

 

 ものすごい微妙な顔をされた。

 

 まぁだろうね。なんで俺も喧嘩する? って聞いたのかは意味不明だ。話すことがないからって喧嘩するはないよな~。もう少し考えて話そう。・・・考えて話す? なんで考えて話す必要があるんだ?

 

 

 

 普通に話すということがわからなくなっていた。

 

 

 

 

 何も会話がないまま10分が経過した。いくら待っても優衣は姿を現さない。あいつが待ち合わせ時間をこんなき過ぎるとは……。なにもなければいいけど。

 

「なっ……え? どうすんの?」

 

「どうかしたか?」

 

 スマホを片手に有咲から焦りを感じた。この流れだと思い当たることは1つしかないんだが……。

 

「ゆい、仕事入ってこられないって……」

 

「はぁ? 呼んだ張本人来られないってどういうことだよ……」

 

 いろいろマズい状況だぞ。このまま行くと2人きりで映画観に行くことになるぞ。……ヤバいじゃん。どうなるんだこれ。

 

 話がないまま数分。こうしてても仕方ないと思ったのか、有咲が口を開いた。

 

「どうする? ふ、2人で映画でも観に行く?」

 

「彼氏持ちの奴と独り身の奴が一緒ってヤバくないか?」

 

「やっぱりそういう事思ってたんだ」

 

 そっぽを向いて言う有咲をじっと見つめる。考えていたことをバレてた以前に引っかかることがあった。

 

 

 “やっぱり”という言葉だ。

 

 

 もしかすると……いや。もしかしなくても俺の考えはバレてたのかもしれない。もうそれならいっそのこと───

 

 

 一歩前に踏み出せ。

 

 

 散々逃げてきたんだ。今度は前に進むだけ。告白よりは……簡単だ!

 

「有咲。ちょうど良いし話さないか?」

 

「話?」

 

「……場所を変えよう。ここじゃ話づらい」

 

 もう逃げ道はない。

 

 

 

 

 

 

 2人きりで話せる場所は限られてる。公園は人が居るだろうし、カフェみたいなお店は他の人がたくさん居る。となると場所はかなり限られてしまう。あんまりよろしくはないだろうけど、場所は俺の家にした。

 

 今は家に向かう……帰る途中って言った方が正しいか。なんとも奇妙な。1時間前に家を出たはずなのに1時間後に帰る。何しに行ったんだっけ?

 

「恵…」

 

 な、名前で呼ばれた……。

 

 無言で歩いていると少し後ろを歩く有咲から名前で呼ばれたことに若干驚きつつ「ん?」と答えた。

 

「付き合ってる人が居るって知った時どう思った?」

 

「どうって・・・・前にも言ったろ? 付き合う人なんて有咲の自由だって。だからどうも思ってねぇよ」

 

 本音は本音だが、少しばかり嘘が混ざってる。付き合ってる人が居るってわかった時は信じられなかった。ずっと待っててくれると思ってたから。正直、居間有咲と付き合えてる奴がうらやましいよ。

 

「じゃあ私のことは嫌い?」

 

「嫌いではない。1人の友達として好きだ。今はそれ以上でも以下でもない」

 

 後ろに振り返ることなく淡々と言った。すると、聞こえていた足音が聞こえなくなり、立ち止まって後ろに振り返る。有咲は俯いていた。

 

「有咲?」

 

「………私は好き。恵のこと」

 

「お前なに言って──」

 

 俺の言葉を遮るように有咲は真っ直ぐな黄色の瞳を向けて言った。

 

 

 

 

 

「今でも、恵のことが好き」

 

 

 

 

 

 その言葉に嘘、偽りは微塵も感じられなかった。一度も真っ正面から有咲の真剣な表情は見たことがない。どこか新鮮な気持ちと

 

 俺は今、告白されてるのか?

 

 というドキドキ感が心の中で渦巻いていた。

 

「彼氏が居るんだろ? それなのになんで告白なんか」

 

「別れた……というより振られた。今の私は恵しか見えてないって言われて」

 

 もうなにがなんだかわからない。有咲は振られて彼氏なしで、今は俺のことが好き? 言葉では理解出来るものの深いところまでは理解が追いつかない。

 

 つまり俺が出さなければいけない答えはなんだ? 告白に対しての返答か? なんで俺しか見えていないのか理由を聞くべきなのか?

 

 一度にたくさんの情報に後頭部をかきながらとりあえず、告白の返答を返すことにした。

 

「さっきはああ言ったけど、俺も有咲のことは今でも好きだ。でも……本当に良かったのか? あいつは俺以上に有咲のことを好きだと思うんだけど」

 

「あいつは最後まで私の全部は理解してくれなかった。でも、恵は違う」

 

 さっき以上に真剣な眼差しで見つめてくる。それがあまりにも眩しかった俺には直視出来なかった。でも…それだけ有咲は俺のことを真剣に考えてくれてるんだ。ちゃんと答えよう。

 

「こんな俺で良ければ」

 

 

 

 2年か……いや、4年もかかった。

 

 

 

「よろしくな」

 

 

 

 4年越しに約束を果たせた。

 

 

 

 

 

──────☆

 

「いや~やっとくっ付いたか」

 

「今ので78回目だからな。80回言ったら……な?」

 

「怖いこと言うなよ……」

 

 花咲川大学の入学式の日。隣に座る恵が宇崎君に文句を言っていた。私が告白した日の帰りにひょっこり現れた優衣と宇崎君。全部あの2人が立てた作戦らしい。嬉しいような嬉しくないような………。あれから恵はずっと根に持ってるのか、その話題が出る度に回数を数えてる。よく覚えてられるな。

 

「で? あれから何回デートしたの?」

 

「なんでお前にそんなこと言わないといけないんだよ」

 

「良いじゃん別に~。オレとお前の仲だろ? な?」

 

「知らん」

 

 頑なに答えない恵の変わりに言うと……よ、4回くらいかな。お互いやることあるし、頻繁には会えないけど。たまに会える日はすげー嬉しい。毎晩電話もするし、メール送ればバイト中以外はすぐに返答返ってくる。本当に付き合ってるってことを実感出来た。

 

「ったく……。なんで有咲は笑ってるんだ。今のやりとりに笑う要素あったか?」

 

「恵がムキになってたからつい」

 

「なんだそれ。しつこく聞いてくればそうなるだろ」

 

「確かに」

 

 ゆいはある程度いじったらやめるタイプだからそんなにイラつかなかったけど、宇崎君は違う。とことんいじってくるタイプ。私もしつこいって思わないわけじゃない。

 

「じゃあ今度香澄達誘って焼肉でも奢らせね?」

 

「それ良いな~。じゃあ俺と有咲が付き合った記念ということで」

 

「す、すいませんでした……」

 

「よろしい」

 

 7人で焼き肉屋に行ったらいったいいくらかかるんだろう……。おたえと香澄は意外と食べるから。ん~3、4万くらい?

 

「おっ、入学生の挨拶が始まるぞ」

 

「これって入試で1番の人がやるんじゃなかったっけ?」

 

「たぶんな」

 

 ってことは壇上に上がったあの男の人が1番だったんだ。見るからに頭良さそう。もう少し勉強すればよかったかも。

 

 紙に書いてある文章を読み上げていく中、ふと2人のことを見た。宇崎君は寝てて、寝るのはぇな……。恵はどこか遠くを眺めていた。その視界にあの男の人が映ってるとは思えない程に。

 

 恵の左手をそっと握った。

 

「ん? どうした?」

 

「いや……。遠く眺めてたからつい」

 

「そっか。ありがとな」

 

 微笑むような笑顔に思わず顔を逸らしてしまった。今のはズルい……。

 

「有咲?」

 

「なんでもない」

 

 ちょうど挨拶が終わったのか、紙をしまいこんだ。挨拶して終わりそう思った矢先。頭を下げずに勝手に喋り始めた。

 

「勘違いしてほしくないので言っておきます。ワタシが入試1位ではないですの」

 

 ………あいつなに言ってるの?

 

 急な展開に会場中がざわざわし始めた。頭を下げて壇上を何事もなかったかのように階段を下っていく。ふと恵を見ると目をパチクリしてその男の人を見ていた。たぶん私と同じこと思ってんだろうな……。

 

「あいつ頭大丈夫か?」

 

「勉強し過ぎたんじゃね?」

 

「なるほど」

 

 

 

 

 

 

 こうして波乱の入学式が終わった。いよいよ明日から大学生活が始まる。春休みが最高過ぎて大学生活が始まるのが憂鬱だったけど……恵と一緒だからむしろ早く始まらないかって思ってる。

 

 手を繋いで歩く私の彼氏は親しい人に程、気持ちを素直にぶつけられなくて。困ってる人を見つけるとほおっておけない。大好きな人。

 

「恵」

 

 

 

 

 

───────☆

 

 なんだか新鮮だ。こうして有咲と手を繋いで歩けてるのが夢みたいだ。4年前はこうなるだなんて思ってなかったし。俺があの有咲と。

 

 右手から伝わる温もりを感じながら帰る道はいつもとは違った。通りなれてるはずの有咲の家への道が今日は幸せでいっぱいだ。

 

 こうして好きな人と一緒に帰れる幸せをこれからも守っていこうと思う。

 

「恵」

 

「なんだ?」

 

 1人新たな誓いを立てていると有咲に名前を呼ばれ、視線を向ける。彼女は微笑みながら俺に告げた。

 

「だ、大好き……」

 

 顔を真っ赤にしながら素直に自分の気持ちを告げてきた。昔の有咲だったら有り得ないだろう。けど、今の有咲は違う。俺が居なかった間に変わった。もちろん良い意味でだ。

 

 だから俺もそれに答えるように告げた。

 

「俺も大好きだ」

 

 道のど真ん中で口づけを交わした。

 

 

 

 

 

 過去が変われば未来も変わる。

 

 

 あの残酷な未来に向かって進むことはもうないだろう。俺は今を後悔しないように生きる。

 

 




ついに本当の完結でございます。

今日まで頑張ってくれた主人公には感謝です^_^

ここにギリギリ15かな? って思った内容を………

有咲の膝枕が最高過ぎて少しうとうとしてきてしまった。バレないようにあくびを連発していると、ふふっと笑い声が聞こえてくる。これは隠せてなかったパターンか? いや待て。ネットサーフィンしてて笑ってるのかもしれない。顔を見ないことには……

 有咲の顔を見ると普通に俺のことを見て微笑んでいた。

「眠いの?」

「まぁ………横になったら余計に」

 寝ていいと言われれば普通に寝れる勢いだ。じっと有咲のことを見ているとなんだか、すごく愛おしく思えてきた。起き上がって隣に座り、心臓が早鐘のように動いているのがわかった。視線の端には俺のことを不思議そうに見つめる有咲。

 覚悟を決めて行動に移そうと一度深呼吸。

「な、なぁ……有咲」

「ん?」

 あの時はその場の勢いでしたから、恥ずかしくなかったけどいざ言おうとなると、すげぇ緊張するな。でも、後には引けない………。

「キス……していいか?」

「はぁ?! き、キス?! お前……!」

 顔を真っ赤に染めてそっぽを見る有咲がなんだか可愛いく見える。そっと右手を頬に添えて顔を近づけると、嫌がることなく目を閉じた。お互いの唇が重なる。


 一度離れるも磁石のようにもう一度唇を重ねる。今度はすぐに離れることはなかった。意外にも有咲の方から積極的に口を開いて舌を絡ませてきた。答えるように俺も舌を絡ませる。

 空いてしまった時間を埋めるようにお互いを激しく求めた。自然と自分の右手が動いて、有咲のYシャツの中に忍ばせる。ビクッと体を震わせて、激しいキスが一度止まった。口をゆっくり離すと部屋に差し込む夕日に照らされお互いの混じった唾液が糸を引いていた。

「ご、ごめん。なんか…止められなくて」

「う、うん……。私も…い、嫌じゃないかな」

 嫌じゃない。そんな言葉を聞いて止められるわけがない。有咲を押し倒してキスをして、今度は俺から舌を絡ませにいった。途中途中「んっ…」とエロい声が有咲から漏れてくる。それが余計に俺を駆り立てた。

 キスをやめて、Yシャツをめくると白い肌が露わになる。外で遊んだりしないインドア派ならではって感じだ。

「ほ、本当に……このままやるの……?」

「だって止めらんねぇよ」

 頬が赤くそまる有咲を下敷きに、止められるわけがなかった。



最後になりましたが、今日まで自分の小説を読んでくれた方々ありがとうございます!!

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