あの約束を果たす為に──巡り回る運命 完結   作:レイハントン

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こんにちは。

あと2話です~


変わる想い

 ニコニコしながら手をひらひらと振る白鷺千聖。俺の最も苦手な部類に入る人間だ。一緒に居ると彼氏みたいな感じになってしまうから。相手が美人や可愛い人だと妙に話題が湧いてこない。そんなのは可愛いもんだ。じゃあ何が問題かって? そんなもん決まってる。

 

 

 この人は平気で俺に接してくるからだ。

 

 

 それの何がいけないかって? 無防備過ぎる所だよ。記者や週刊誌は恋愛ネタが大好きだからな。手を繋いでいた所を写真に撮られたり、議員の不倫が現に撮られて大変な騒ぎになったのは記憶に新しいはずだ。そう考えるともう夜も寝られない。

 

 本人はそれが気にならないのかぐいぐい近寄ってくるは、バイト中なのに話かけてくるはでもう大変。今は人の目があるからやめてくんない? わざとやってるのは知ってるんだから。

 

「せっかく会えたのにそんな目で私の事を見るんだ」

 

「言い方! ……話なら後でしてやるから、今は勘弁してくれ。バイト中だし」

 

「じゃあ、“後”でね?」

 

 妙に後でという言葉を強調して伝えてきた。なぜそこまで俺に執着するのだろうか。2年前の出来事はあの場で終わったはず………いや。その場限りという事をちゃんと伝えたはずだ。それなのにしつこく絡んでくる。遊ばれてるのか、俺の事を好きなのか……その可能性はないか。

 

 白鷺さんの背中を見つめぬがら、小さくため息を吐いてバイトへ戻った。

 

 やっぱり苦手だ。

 

 

 

 

 

 

 パスパレのリハーサル。正直に言うとすごかった。演奏能力、曲、チームワーク。どれをとっても上手い。さすがアイドルバンドだ。あの親父が酒が入ってたとは言え絶賛してた理由がよくわかる。

 

 ボーカルの丸山さんは歌唱力高いし、結構引きつけられた。そう言えば前にファストフード店で見かけたな。

 

 ギターの日菜先輩。これはもう……ね? 余裕が見える。でも演奏はしっかりしているから問題はないな。前に親父から聞いたけど天才らしい。けど、間違えた時の修正力がな~とボヤいていたのを覚えてる。

 

 ドラムの大和さん。メガネかけてる時は正直、アイドル? と少し疑う部分もあったけど、メガネを外したらあら不思議。演奏能力もさすがの一言。

 

 キーボードの若宮さん。パスパレの紅一点って感じかな。5人の中で1人だけハーフ? だから浮くんじゃね? と思ってたけど見ててなんの違和感もなかった。演奏能力も高い。

 

 最後に白鷺さん。この人はふざけてるのか、時折俺の方に視線を向けてウインクしてきた。リハーサル中だぞとツッコミたい気持ちをぐっとこらえてたけど。それだけ余裕があるんだろう。

 

 親父にたまに指導してもらってたとしてもだ。個々の演奏能力の高さには驚いた。普通に勉強に菜って立ち会えて良かった良かった・・・・・リハーサル後に楽屋に呼び出さらなければ。

 

「この人が神山さんの息子さん……」

 

「そうだよ! 神山けー!」

 

「いやそれ俺のセリフ……」

 

 紹介してくれるのはありがたいけど、そのけーってなんなんすか? もうイニシャルじゃん。頭文字Kになっちゃうよ。運転したことないぞ。

 

「皆さんの事は親父に聞いてますよ。リハーサルすごかったです」

 

「まぁね~! 余裕余裕」

 

「またそうやって調子に乗ってると、間違えるわよ?」

 

「大丈夫だよ~。間違ってもすぐに修正するから」

 

「本当に?」

 

「うん!」

 

 なにこの会話。俺入っていけないじゃん。これはあれか? もしかしたら、もとから入るスペースなんてなかったんやっていう状況か。なるほど~しっくりくるな。・・・・くるかよ!

 

「てつおさんから聞いたんすけど、いろいろな楽器が演奏出来るとか」

 

 2人の会話を眺めているとキラキラした視線を向けて大和さんが話かけてきたが、質問にすぐに答える事は出来なかった。ん~と少し唸ってから、出来るだけがっかりさせないような答えを探す。

 

「前はって言った方が正しいですかね。今は笑えない程、出来ないです。すいません」

 

「あっいえいえ! じぶんの方こそ、早とちりしてしまってすいません……」

 

「謝らなくて大丈夫ですよ。悪いのは全部親父なので」

 

 この場は一旦笑い話で済ませる事に成功した。親父よ感謝するぞ。とりあえず一通り親父のせいにしておくな?

 

 後話してないのは、丸山さんと若宮さんだけか。でも無理して話す必要もないよな。

 

 すると若宮さんが唐突に耳を疑うことを聞いてきた。

 

 

 

「ケイさんは彼女が5人居るんですか?」

 

 

 

「・・・・・はい?」

 

 唐突に人を女たらしみたいなことを聞いてきたは若宮さん。その意図は不明だ。この人ぶっ飛び過ぎだろ。ほら丸山さんなんて目のハイライト失ってるもん。完全に人をゴミみたいな目で見てるよ。

 

 それぞれ、様々な反応を示す中、とりあえず落ち着いてこの状況を解決していこうか。

 

「まずね、俺に彼女は居ないです。女たらしでもないですよ?」

 

「でもテツオさんが、ケイにもようやく彼女が出来たのか~って顔を赤くして言ってました!」

 

「……とりあえず全ての元凶はあの親父か。とりあえず、酔ってる時の親父は嘘の塊みたいなものなのであんまり信じないでくださいね?」

 

 そう……うちの親父は酒に酔うと平気で嘘を付くとんでもない奴なのだ。今度北海道に連れてっててやる! とか言ってた割には連れてっててくれなかったし。お小遣い増やしてやる! とかも嘘で……殆ど嘘の塊だな。

 

「5人って、ポピパの子達じゃないのかな?」

 

 救いの手を差し伸べてくれたのは意外にも丸山さんだった。さっきまで人をゴミみたいな目で見てたのに……。でも乗らない手はない。

 

「そうです! 香澄達の事なのでお気になさらず」

 

「なーんだ。つまんないのー」

 

 人のスキャンダルがそんなに楽しいのか? 若宮さんの一言でこっちは死にかけてるんだよこんちきしょう。全部親父のせいや。

 

 

 

 

 

 一時はどうなることかと思ったが、話は意外と弾んだ。主に親父の話とかバンドの事とか。

 

 丸山さんは香澄と仲が良いらしい。なんでも同じ一番星を目指してるだとか。・・・・なんか違う気がするんだよな~。香澄がアイドルの一番星を目指すわけがない。この2年でアイドルに目覚めていなければ。

 

 若宮さんは高2の時に香澄達と同じクラスで友達なんだと。

 

 ガールズバンドパーティーがあってから交流の輪が広がったみたいで、たまに対バンとかもしてるみたいだな。それもどれも月島さんの提案だとか……。なんだろう、そんなすごい人だとは思わなかった。見た目では判断出来ないこともあるってことさ。

 

「じゃあ、そろそろバイトに戻りますね」

 

 ずっと話してるわけにもいかない。俺はバイトでここに来ているのだ。あんまりサボると、ね? 風間さんが大変そうだろうし。

 

「急に呼び出してごめんなさいね」

 

 真っ先に白鷺さんが声をかけてきた。それに「いえ。楽しかったので大丈夫ですよ」と作り笑いを浮かべて答える。それを見た白鷺さんはふふっと口に手を当てて笑う。俺の作り笑いに気づいたのか?

 

「香澄ちゃん達によろしく言っておいてください」

 

「はい。ライブ頑張ってください」

 

「ありがと♪」

 

 笑顔で答える丸山さん。その笑顔につい視線を逸らしてしまったのをバレないように背を向けて楽屋をあとにした。これでようやく仕事に戻れ───

 

「あ! けーちゃんだ!」

 

 この声。その呼び方。もう1人しか心当たりがない。ゆっくり顔を向けると案の定香澄達、Poppin'partyの面々。

 

「本当だー。何でここに居るの?」

 

 沙綾の質問に「バイトだよ」と簡単に答える。・・・・・なにこのバットタイミング。さっきパスパレを相手したのに今度はこいつらか。つうかなんでここに?

 

「なんで居るんだ?」

 

「pastel*palettesのライブを見にきたの」

 

 俺の質問に答えてくれたのはりみ。

 

「そうことか」

 

 香澄、おたえ、りみがギターケースを持っていないということはそうなのだろう。にしてもこうして見ると見た目は変わらんな。変わったと言えば状況だけか。

 

「背、伸びたね」

 

 おたえの方に視線を向け、手を上下させながら言った。

 

「まぁな。お前らが縮んだんじゃねぇか?」

 

「この年でもう縮み始めるの?」

 

「いやそういうことじゃねぇよ………」

 

 おたえのわけわからんところも変わらない。それがおたえの魅力みたいなものか。

 

「本当に帰ってきたんだね」

 

 不意に沙綾が改めて言ってきた。なんせ約束したからな。俺がここに居るのはお前達のおかげでもあるんだよ。

 

「ああ。また会う日までって言ったろ?」

 

「確かに!」

 

「積もる話もあるだろうけど、悪いけどまた今度な」

 

 香澄達の間を通り抜ける一瞬──有咲と目があったが、また逸らされた。

 

 この前に話した時から妙な違和感を感じていた。なんか変に距離があるような………。もしかして避けられてる・・・のか? この間の対応間違ってたかもだな。でもあそこで別れろなんて言えない。

 

 まだ俺と有咲の間には溝があるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後。無事ライブも終了しバイト終わった。今日のバイトは初日で疲れたな。別の意味で……。けど、みんな元気そうでなによりだ。

 

 着替えを済ませてまだ仕事をしている月島さんと風間さんに挨拶するために一度荷物を盛ってスタジオに戻った。

 

「先、失礼します」

 

「はいよー。お疲れさん」

 

「お疲れさま」

 

「お疲れさまでした」

 

 挨拶を済ませて外に出るとすっかり辺りは暗くなっていた。時間帯もそれなり。ライブハウスでバイトすると終わるのが結構遅くなる。ライブの時間帯によるけど。

 

 街灯が照らす帰り道を1人歩く。

 

「静かだ……」

 

 夜でも車が行き交っていたアメリカとは違い、人1人居ない。世界で自分1人しか居ないみたいだ。自分1人しか………。

 

 1人だった時の有咲もこんな感じだったのかな。結局俺は学習してないってことか。遠慮して引く。いつになったら俺は変われる? 人は変えられるのに、自分自身を変えられないとかお笑いだよな。

 

「ホント…バカだな」

 

 立ち止まって星が輝く夜空を見ながら言った。答えてくれる人なんて居ない。もはや1人事だ。

 

 

 

「それな。お前は本当にバカだよ。約束1つ守れないんだから」

 

 

 

 聞き覚え……いや。どう考えてもあいつの声だ。お前だけは俺を見放さなかったんだな。

 

 後ろに振り返ると街灯の光に照らされたあいつの姿がそこにあった。

 

「そういう風に言ってくれるのはお前だけだよ……徹」

 

「まぁな。とりあえずお帰り」

 

「ただいま。………どうしてここに?」

 

 徹と会えたのはいい。けどなぜここでばったり会えたのかは謎だ。

 

「バイトしてるって風間さんに聞いてだな。で、ここに来たってわけ」

 

「そうか。ここに来た経緯はわかった。でも……親友のお前に約束も守れないバカって言われる筋合いはない」

 

 いくら徹でも俺と有咲の話に入ってこられると困る。それに話を知ってること自体おかしいだろ。

 

「そうか? だって本当の事だろ?」

 

「これは俺の問題で、他人に意見を仰ぐようなことじゃない。自分で決めないといけないんだ」

 

「はっ。笑わせんなよ。自分で決められてないだろ。決めるどころか、全く学習出来てない」

 

 徹の言葉が妙に心に突き刺さった。どう考えても久しぶりに会った友達にかける言葉ではない。つまり……徹は本気ってことだ。

 

「いつになったら向き合うんだ? いつまで自分の気持ちを押し付ける? お前は変わる気持ちがあるのか?」

 

「そんな簡単な問題じゃないんだ。今でも有咲が俺の事を好きかなんてわからない。俺の気持ちだけであの2人の間に入るわけにはいかないんだ」

 

「なんだそれ……。結局、そうやって本人には確かめないのか? お前の事を好きじゃない奴が本当に好きだったのか聞いてくると思うか?」

 

 ん? それってどういう……好きじゃない奴が、本当に好きだったのか聞いてくる? 有咲が……徹に?

 

 徹が嘘を付いているようには思えないのが、余計に俺の頭を混乱させた。彼氏が居るのに俺が有咲のことを本当に好きだったのか聞く必要があるか? 

 

「後は自分で確かめろよ」

 

「………わかったよ。帰ってきて説教されるとはな」

 

「悪い悪い。今度はどっか行こうぜ」

 

「ああ」

 

 本当に説教をしに来ただけらしい。手をひらひらと振って帰っていった。有咲の今の気持ちかはわからないけど、少なくとも前は俺のことを好きだったらしい。

 

 このなんとも言えない感情が俺の中で渦巻いていた。

 




恵「さて今回はどんなボツアイデアだ?」
作者「そうだなー。恵がもの凄くかっこよくボロボロになるシーン笑」
恵「その笑ってなんだよ。腹立つわー」


そう思っていると、暗い道を歩いてくる人を優衣越しに目に入った。その人は全身を黒い服で身を包み、まだ冬でもないのにニット帽を被っていて、さらにマスクをしていた。明らかに怪しい。すると徐々に歩くスピードを上げてやがて走り始めた。

「どうかしたの?」

 首を傾げて聞いてくる優衣に視線を向けることなく「逃げるぞ」と一言だけ言った。

「え? どうして?」

「いいから早───」

 全身黒服の人はポケットから大きめのナイフを出して、優衣に向かって突き出した。








 ポタポタと赤い血が地面に落ちる。直前でナイフを左手で受け止め、激痛が走る中しっかりと相手を見つめた。よく見ると相手は男で、目はギラギラしている。








「なんだよ……殺したかったのはお前じゃないんだけどな」

「………っ! わ、悪いな。……簡単に殺せるとか思うなよ」

 ナイフは優衣に刺さることはなかった。直前で引き寄せて俺の後ろに突き飛ばしたからだ。激痛に耐えながら相手と話す中、なんとかナイフを奪おうと相手の右手首を掴む手に力を入れる。







 しかし、すぐに振りほどかれ一旦距離をとる。左手に感覚などもうない。血は止まることなく、地面に落ち続ける。

「ちっ。大人しく死んどけば楽になれたのによ~」

「喋るな。環境汚染だぞ。ちゃんと世界中の人に謝れ」

 殺されてもおかしくない状況で冗談を言える程余裕があるのかと思うが、答えはNOだ。今はどうやって逃げるのか考えてる。運の悪いことにここら辺にはあまり人が住んでない場所だ。なんで今日に限って遠回りしたんだろうか。

「あー? 調子乗んなよ!!」







 男がナイフを構えて距離を詰めてきた。横の大振りを何度か躱わす。当たらないとわかったのか、次はナイフを突き出してきた。思ったよりも早くて右肩をかする。






 一瞬肩に痛みが走る。その隙を逃さなかった男は再びナイフを突き出してきた。






 来た!! ここだ!!




 ナイフは右わき腹をかすって刺さらなかった。その瞬間に右腕をグッと押さえつける。

「今のうちに逃げろ、優衣!!」

「でも! それじゃあ恵が!」

 押さえつけられて抵抗しないわけがない。左手で俺の体を思いっきり殴りつけてくる。痛みに耐えながらも優衣に訴えた。

「早く!!」

「いい加減放しやがれ!!」

「離すわけないだろ! お前はバカか?!」

 もうそろそろ限界が近かった。男の膝蹴りがもろに溝に入った俺は力なくその場に倒れこむ。

「ずいぶん調子に乗ったな……ただで死ねると思うなよ!」

 地面にうつ伏せで倒れる俺を蹴る、踏みつけるなどしてくる。顔を両手で覆って守りつつ、声をあげた。

「逃げろ!! 優衣!!」

 泣きながら震える両手を強く握りしめて優衣は立ち上がった。

 そうだ……それでいい。

「待ってろよ……。こいつを殺ったら、すぐにお前も同じようにしてやっから」

 優衣を見ながら男が言うと俺のことを見下すように視線を向けてきた。

「はぁ……はぁ。…優衣を、、殺せるとか、思うなよ?」

「あ?」

「俺はまだ……終わってねぇんだよ」

 なんとか立ち上がろうと体に力を入れて起き上がる。

「そうか。じゃあ死ね」

 このまま終わる。そう思った。





 しかしいつになっても背中に痛みはこない。それどころか男は横に吹き飛んでいた。






「待たせたな名人」




 とても聞き覚えのある声だ。なんとかうつ伏せから体を起こすと、そこにはアロハシャツを着た風間さんの姿があった。

「どうしてここに?」

「まぁ~ちょとね」

 男から目を離さずに答える風間さんがかなりカッコ良く見える。吹き飛んだ男は立ち上がると怒りをあらわにして、大声を出す。

「てめぇ! 見張りしてろって言っただろうがよ!」

「あれ~? もしかして、乗せられちゃたー?」

「ふざけんなよ!!」

 男はナイフを構えて風間さんめがけて距離を詰めくる。でも、そこからが早かった。






 突き出してきたナイフをあっさり右に躱し、右手を掴んで地面に押し倒して乗っかる。腕をそのまま捻ってナイフを落とさせて蹴り飛ばす。

「はい終わりー。怒りにまかせたあんたの負け」

 どこからか縄を取り出して両手を縛り付けて男はあっという間に動けなくなった。ここまで来ると風間さんがどういう人なのか気になってしょうがない。

 驚きの眼差しを風間さんに送っていると、優衣が俺の隣に寄ってきた。

「大丈夫?!」

「一応……。なんで逃げなかった?」

「1人で逃げられるわけないじゃない……。せっかく分かり合えたのに」

 あれだけ嫌いだった優衣の心配する表情が酷く自分の心を締め付けた。本当はもっと早く優衣を連れて逃げれば良かったんだ。判断の遅れがこうなったのか。



恵「なんやこれ」
作者「かなり強引だったからやめた」
恵「やめて正解だな。ご都合主義過ぎるだろ」
作者「次回のはね………結構なやつだよ。ギリギリ15かな」
恵「え? 次回最終回なのに?」






「今、救急車呼ぶから待っててな」

 スマホを出して救急車を呼ぼうとする風間さんを止めるために言った。

「待ってください。救急車は呼ばなくて大丈夫です。蹴られて体中痛いだけなので」

「いや、でも」

「本当に大丈夫なので!」

 そう言って俺は立ち上がり右手で鞄を持った。風間さんは「本当に大丈夫か?」と心配してくれたが、なんとか振り切った。病院に行かなくても警察からの事情聴取があるらしいが、そこは全て風間さんが目撃していたらしいので、全て話しておくって言ってくれた。じゃあ早く助けられたじゃんと思った俺だが、他にも仲間が居たらしくそっちを処理してて遅れたらしい。



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