あの約束を果たす為に──巡り回る運命 完結   作:レイハントン

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こんにちは。

突然ですが、あと少しでこの物語は完全に完結します。残り6話ですかね。この話を入れて。

そして別のお話を書こうかと思ってます。ヒロインや内容は未定ですが(^_^;

この作品での失敗や成功を生かして頑張りたいと思います。話は長くなりすぎても短すぎてもダメということと、まだご都合主義が抜けていないという点ですかね。

それではどうぞ。


初めてのバイト

 今日は初めてのバイトの日だ。あっさり合格をもらえると思ってなかったから、いろんなバイト先を探したけど無駄になったな。良い意味で。

 

 朝ご飯のトーストをかじりながらテレビを見ていると、バッチリメイクを決め込んでいるお母さんがリビングに入ってきた。今日はテレビ番組の収録なんだと。

 

「バイト今日からなんでしょ?」

 

「そうだよ。お母さんも仕事でしょ? 久しぶりにみたわそのバッチリメイク」

 

「そう? テレビに出るんだもの。ちゃんとメイクくらいしないと」

 

 はっきり言ってうちのお母さんは綺麗だ。性格はややおバカで、頑張り屋。でもスイッチ入るのが遅いのがたまにキズ。インスタント食品が続くいたのが証拠だ。

 

 よく親父と結婚したもんだな。いったいどこに惚れたんだ? あれか。もしかしたら出来婚とかじゃないよね………? 親のそういうのを考えるだけでもう、ね? わかるよな? 読者様諸君。

 

「帰り遅かったらなんか買って食べなさい。絶対に台所に立つんじゃないわよ?」

 

「わかってるよ。そこは気をつける」

 

「ならよろしい」

 

 なぜここまで台所に立つのを禁止されているのか。それはつい昨日の夜の事である。さすがに料理の1つも出来ないと恥ずかしいと思った俺はお母さんに料理を教えてもらうことにした。

 

 だけどそれが失敗だったのだ。

 

 結果は左手を3ヶ所も斬るという不器用振りを発揮してもれなく絆創膏を貼っている。ここで新たな発見と共に心に深いダメージを追った。

 

 新たな発見とは、楽器の扱い以外はほとんど出来ない。不器用というのがわかったのだ。

 

 心に深いダメージとは、料理1つ出来ないのかという情けない気持ち。

 

 以上2つが昨日の夜に得た結果である。そんな事を思いながら、絆創膏が貼られた左手を見つめた。確かに楽器の演奏以外はほとんどやって来なかったけど、ここまで出来ないとはな………辛い。

 

「ふふふ。お父さんとそこは一緒ね。楽器以外何にも出来ないんだから」

 

「その遺伝は要らなかった……」

 

 俺も雅史みたいに全てに置いて器用になりたかったーー!! 親父と一緒なんて嫌だーー!! 同じなのはギターの演奏力だけがいい! そこはまだまだ差は歴然だけども………。

 

「じゃあ後はよろしくー」

 

「はいはい」

 

「返事は1回」

 

「はい……」

 

 笑顔で「よろしい」と言って、鞄を持ってリビングを出て行った。テレビの音だけが部屋に響く中、トーストをひとかじり。

 

 飲み込むまでテレビを眺め、一旦皿に置いて、お茶の入ったコップを右手に持って口に運ぶ。その間、空いている左手でテレビのチャンネルを変えた。今の時間帯はニュース番組が中心。どこの番組もニュースばかりだ。高校生の時はあんまり興味はなかったが、大学生になってからはちょくちょく観るようにはなった。

 

「どこの番組も言ってる事は同じだよな」

 

 そう言ってお茶を飲む。

 

「次の話題はなんと、あの有名ギタリストの神山哲夫さんが映画の主演をするようですね」

 

 話題の内容を聞いた瞬間、噴水のように盛大にお茶を吹いた。

 

「ゲホッ! ゲホッ! はぁ?! 主演?! その監督頭おかしいだろ!!」

 

 あの不器用男が……人のこと言えないけども! なんで主演?! どうして主演?! 世界は狂ったのか?!

 

 なんとも言えない気持ちが頭の中を駆け巡る。頭を掻きむしり、落ち着いてお茶を飲む。

 

「まずは落ち着けー。文句は言うだけ言った。映画がどうなるかはわからないけど、親父には頑張ってもらおう」

 

 そう言って残りのお茶を口の中に運ぶ。

 

「今や人気女優でアイドルバンドに所属している白鷺千聖さんまで出演されるなんて、すごいですね!」

 

 再びお茶が噴水のように吹き出た。

 

「ゲホッ! ゲホッ! え?! 白鷺さんまで?!」

 

「共演するのは実に1年振りだそうです」

 

「…………1年振りか」

 

 ふと1年前に起こった出来事を思い出し、テーブルを拭く手が止まった。今考えれば相当ヤバいことをしたよな……。主演女優と混浴って。それにあんなことまで。

 

 懐かしさと恥ずかしさを感じる中、それでも心配する気持ちが強い。

 

「元気にしてるかな」

 

 たまには思い出に浸るのもいいな。さて………

 

「今日も1日頑張りますかね」

 

 薄いカーテンの隙間から見える青い空を見ながら呟く。

 

 視界の端に映るテレビの画面には白鷺さんと親父の姿が映っていた。

 

 

 

 

 食べた物を片付けて戸締まりを確認してから家に鍵をかけて、バイト先へ向かうべく歩き始めた。

 

 もうすぐ4月だというのに時折吹く風は少し冷たい。去年の日本の冬は寒かったらしいな。twisterでよく寒いっていう呟きがすごかったし。アメリカは寒い時はホント寒かった。冬は外出たくなかったから家に引きこもってたな。

 

 だんだん通り慣れてきた道を進むと、ファストフード店が見えてきた。

 

「そういえば……見知った人が居たような」

 

 こっちに帰ってきてから1度ファストフード店に入った時、店員さんとお客さんが仲良さそうに話してた事を思いだした。

 

 ピンク色の髪ですごい笑顔が似合う人だったんだよな~。声もどこかで聞いた事あったし。・・・・・・ん~ダメだ。やっぱり思いだせん。

 

 最近物忘れが酷いような気がする……。

 

 

 

 

 

 

 数10分くらいでバイト先のライブハウスCircleに到着した。まだ開店前にもかかわらず、外のカフェには人がたくさん来ている。

 

 ライブハウスCircleは外でカフェを開いていて、中ではスタジオの貸し出しやたまにライブが行われている。しかし、2年くらい前まではお客さんはあまり入らなかったらしい。

 

 なぜ今はこんなにお客さんが多いかと言うと。5つのバンドによる大規模なライブの影響とネットには書いてあった。確かガールズバンドパーティーという名前だったかな。

 

 まさか香澄達がね~。情報不足乙。

 

 そのお陰で俺の事を知ってる人が増えた。良い意味なら良いんだけどー。ちゃん呼びが広まってるのがマズい。非常に非常にマズい。ポピパ内で収まると思っていた俺が甘かった。

 

 でも止められることでもない。それはそれで受け入れるしかないか。起こってしまったことは仕方ないし。

 

 裏口から店内に入るとちょうど月島さんが居た。

 

「おはようございます」

 

「おはよう。そこのドアの先にロッカールームあるから着替えてきて」

 

「わかりました」

 

「着替えたらここに戻ってきてね。指導する人、紹介するから」

 

「はい」

 

 スタッフと書いてあるドアをくぐり奥に進む。複数あるドアの内、ロッカールームと書いてあるドアを開けて中に入って、自分のロッカーに荷物を入れた。

 

「指導してくれる人かー。いったい誰なんだろ」

 

 前に来た時に渡されたエプロンを付けながら、どんな人だろうと思い浮かべてみた。

 

「優しい人だといいな」

 

 ポケットからスマホを取り出してマナーモードになってるか確認して再びポケットにしまい、ロッカールームを後にした。スタッフルームを出ると、月島さんとなぜか見知った人物がにこにこしながら立っていた。

 

「・・・・え? え?!」

 

「よっ! 超久しぶりだなー。名人!」

 

「か、風間さん?!」

 

 目の前には風間さんが相変わらずの笑みを浮かべて立っている。確かに超久しぶりだ。最後にお別れを言えなかったのが心残りだったけど、まさかここで会えるとは。

 

「あら? 知り合いなの?」

 

「はい。引っ越す前からの知り合いで」

 

「そうそう。自分と名人は相棒って関係かな」

 

 いつからそんな親しい仲に発展していたのだろうか。別に嫌ってわけじゃないけどさ。せめて俺の了承をもらってからにしてくれませんかね?

 

「また適当なこと言ってー。神山君を困らせないの」

 

「あれ? バレてます?」

 

「2年も見てればわかります」

 

 2年? ってことは風間さんはここで2年くらいバイトしてるのかな? さすがに2年も居れば嘘だっね見抜けるってわけですか。

 

「でも乗せられた名人も名人だけどね」

 

「うっ……。それは否定出来ないです」とがっくり肩を落としながら言うと、月島さんはにこにこしながら俺達の様子を見ていた。

 

「ふふっ♪ 仲良さそうで良かった。じゃあお願いね~風間くん」

 

「りょ~」

 

 手をぷらぷら振りながら、軽い返事を返す風間さん。

 

 正直担当の人が風間さんで助かった~。知らない人よりかは、ね? それにしてもこの人も変わらないな~。軽い所とかアロハシャツの所とかさ。

 

「よし。そんじゃ始めるとしますか」

 

「よろしくお願いします」

 

「堅苦しいのは無しだって。まぁ、よろしく!」

 

「はい」

 

 お互い握手を交わして、初日のバイトが始まった。ミスしないように頑張らないと。

 

 気合いを入れ直して風間さんの後を付いていった。

 

 

 

 

 

 

───────☆

 

 けいが日本を出て2年。花女を卒業したあたしは進学ではなく、就職して働いている。自分が親から受けた事と同じ事されている子供を1人でも多く助けたいと思ったあたしは児童保護施設就職して合格したの。高校で頑張って資格を2つ取った甲斐があって良かった~。

 

 今日は午前中は休みだったから、家で気持ちよーく寝てたのに電話1つでその休日も終わり。なぜかありさに呼び出されて羽沢珈琲店に居る。

 

「早く来すぎたかな………」

 

 頼んだアイスコーヒーをストローでちびちび飲みながら、腕時計で時間を確認すると約束の時間の15分前。けいと付き合ってた頃の癖で早く来ちゃったよ……。遅れないようにって言うのはわかるけどさ~。それにしてもけいは早く来すぎ。ありさには良く……言う必要はもうないんだよね。

 

 でも意外。けいが帰ってくるまで誰とも付き合わないと思ってたのに結構あっさり付き合っちゃったからびっくり。けいが知ったらどうなるのかな……。ありさと喧嘩しなければ良いけど。

 

 アイスコーヒーをかき混ぜるとカランと氷がぶつかる小さい音が響く音を聞きながら、じっーとテーブルを見つめていると視界の端に黄色い髪のツインテールが映った。

 

「遅れてごめん」

 

「大丈夫だよ~。あたしが来るの早かっただけだし」

 

「うわっ、ホントだ。早く来すぎでしょ……」

 

 スマホで時間を確認しながら来てそうそう引くありさ。呼び出したのはそっちのくせに~。なんであたしが引かれなきゃいけないのさ。

 

 ありさがテーブルを挟んであたしの前に座ると店員さんが注文があるか聞きにきた。

 

「有咲ちゃん、優衣ちゃん、こんにちは♪」

 

 茶髪のショートカットの女の子、がありさに挨拶をした。ここには結構くるから仲良くなったんだよね~。つぐちゃんは良い子だよ~熱心に話聞いてくれるし。

 

「こんにちは。アイスコーヒー1つ頼む」

 

「かしこまりました。今持ってくるね」

 

 今日もつぐってるね~。かしこまりって言い方がまたっ。

 

「にやにやするなよ。気持ち悪い……」

 

「ひどーい。つぐちゃん見てにやにやするのが何がダメなの?」

 

「全部」

 

 ジト目であたしの事を見てくるありさ。もう罵られるのも慣れちゃった。こう……クセになると言うかなんというか。きっとけいもあたしと同じ事を思ってたんでしょう。

 

「で、話ってなに?」

 

 いつまでも罵られるのも良いけど話を進めないと。

 

「うん……。実はね……」

 

 急に視線を逸らして話始めた。

 

「けいが帰って来たの……」

 

 ケイガカエッテキタノ……? それってさ。うん。

 

「・・・・・嘘。ヤバくない?」

 

「ヤバいって言うかー。もう会っちゃったし、彼氏居るの知ってるし」

 

「もうオワコンじゃん……」

 

 帰って来てるってこと自体で驚いてるけど、会った上に彼氏居るの知ってるって終わってるよ。けい…落ち込んでなければいいけど。ああ見えて落ち込む時は落ち込むからな~。立ち直れるのかな?

 

 ただならぬ雰囲気の中、つぐちゃんがアイスコーヒーを2つ持ってきた。1つをありさの所に。もう1つをあたしの隣に置いた。

 

「休憩もらったから、わたしも良いかな? ……って言う状況でも…ないみたいだね」

 

「まぁね。この際だからつぐちゃんの意見も聞こう。よし、どうぞつぐちゃん」

 

 椅子を引いて座るように促して座ってもらって話を再開。ちなみに言うと、つぐちゃんはけいの事も知ってる。もちろん有咲とけいがどういう関係なのかも。聞いた時、『素敵な関係だね~♪』って羨ましそうに言ってたっけ。でもね。そこにたどり着くまでが大変だったんだから。

 

「思い出に浸ってる場合じゃねぇだろゆい」

 

「元はと言えばありさのせいじゃん」

 

「そうだけど………」

 

「まぁまぁ2人共」

 

 言い合いになるとだいたいつぐちゃんの一言で止まる。一旦心を落ち着ける為にアイスコーヒーをストローで飲んだ。

 

「深刻そうな雰囲気だったけど、どうしたの?」

 

「うん……。何から話そうかな」

 

「最初からで良いんじゃない?」

 

「そうだな」

 

 話は数ヶ月前に戻る。

 

 

 

 

 

 どうしてあの時ありさの事を止められなかったんだろう………。資格の試験で忙しかったなんて言い訳にしかならない。資格試験なんていつでも受けられた。でも、ありさとけいの関係はここで終わるかもしれない。そう考えるだけで、罪悪感が湧いてくる。

 

 けい……あたしはどうすれば良かった?

 

 




恵「カミヤマラジオ! 本日のゲストは丸山彩さんです! よろしくお願いします」
彩「よろしくお願いしまーす♪」
恵「いきなり終わるというね。まさに急展開。作者の18番だな」
彩「私、2回しか出てないよ~。初登場の出番少なかったし……」
恵「あー確かに。詳しくは『あの時の約束』を読んでみてねー。文化祭辺りかな?」
彩「神山君は良いよね~。毎回出番あって」
恵「主人公ですから(キリッ)」
彩「学習しない主人公の間違いじゃ」
恵「言わんといて~。事実なんだから。完結するまでには学習することを覚えたい」
彩「そうだねっ! 感想、評価ありましたらよろしくお願いします!」
恵「えー?! 勝手に締めるなー!」
恵・彩「次回もお楽しみに!」
(なぜ最後ハモるし……)


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