あの約束を果たす為に──巡り回る運命 完結   作:レイハントン

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こんにちは。

前回自分の作品をよく読んでくれた方の感想は非常にありがたかったですね~。学習しない主人公をこれからも見守って頂けるとありがたいです。(今回の作品のコンセプトに気付いてらっしゃる……)

それではどうぞ。


新たな灯火

 香澄の紹介で出会った青年。名前は石川優都。彼とはすぐに意気投合し、名前で呼び合う関係に至った。アニメとかドラマですぐに名前で呼び合うとかしてるけど、正直有り得ないと思っていたけどアメリカではすぐに下の名前で呼んでたから対して違和感はない。

 

 その後カフェでいろんなのろけ話を香澄から聞かされたが、「本当にごめんね」と謝ってくる優都に免じて許すことにした。話を聞く限りでは、優都と俺は同じ高校に通っていて、ギターという共通の趣味もある。今の世の中を考えるとギターとか楽器系の演奏が出来る人は珍しくない。こうしてギターが弾ける人が3人も居るんだからな。

 

 ここまで話して本当に変わらない香澄に驚いている。もう少し大人しめになってたり、落ち着いてる所があってもいいんじゃないか? そんなのはここまでの会話で全く感じられない。よくこんなのと付き合ってこれたな優都。尊敬するよ。

 

「本当に夢じゃないんだよね?」

 

 話が一段落し、頼んだお茶を飲んでいるとふいに優都が尊敬の眼差しにも似た視線を送りながらそう言ってきた。

 

「ん? 急にどうした?」

 

「カスミちゃんが話してた人が目の前に居るからさ。最初はおとぎ話かなにかかと思っちゃったよ」

 

 おとぎ話って………俺は赤ずきんかなにかと一緒にされてるのか? 失敬な。俺はちゃんと実在してるわ。

 

「それにしてもよくこいつと付き合えるよな」

 

 香澄を指差ししながら言うと、それに気付いたのか「よくってどういうことー!?」と講義してくる。

 

 いやいや。独特な感性をお持ちのあなたと付き合えるって相当すごいから。これマジな?

 

「そうかな? 僕は好きだから付き合ってるだけだよ?」

 

「お、おう……」

 

 そんな言葉を正面きって言えるのすごいな……。見ろ、あの香澄が茹でタコのように顔を赤く──してないだと?! いったいどういう事だ?!

 

 よく見ると若干顔が赤くなっているが、「えへへ♪ ありがとー、ゆーくん」とお礼を言っていた。その瞬間──俺の心に申し訳ない気持ちが湧いてくる。

 

 昔からそうだった。友達と遊ぶ時にその友達が別の仲良しの友達を呼ぶと決まって俺は行かない。なんか邪魔しちゃ悪いよなって思うから。アメリカに行った時もそうだったな……。友達が出来たは良いけど彼女を入れて3人で遊ぶとなると、俺は嘘を付いて逃げた。

 

 邪魔しちゃ悪い。その感情が強く俺の中にあったから。

 

「けーちゃん? どうかしたの?」

 

 また悪い癖が出たみたいだ。

 

「女の人じっと見つめて」

 

「もしかして一目惚れ?」

 

 ん? 話がおかしな方向に進んでるぞー。ただ一点を見つめてただけなんだけどな。待てよ。この癖は見る方向によってはそうなってもおかしくはないのか。

 

「違う違う。考え事をしてる時、一点を見つめる癖があるんだよ」

 

「ものは言いようだね」

 

「おい」

 

 なぜ恋い沙汰に発展させようとするんだこいつは。

 

 この場に長居するのはよろしくないと思いスマホ出して嘘を付いた。

 

「悪い。用事あるから帰るな」

 

「えーもう?」

 

「えーじゃないの。また話す機会はあるって。そんじゃな」

 

 そう言いつつ財布から500円を出してテーブルに置いてから背を向けて歩きだす。数本歩いた所で「けーちゃん!」と大声で香澄に呼び止められた。周りの人みんな見てんじゃん。恥ずかしいな……。

 

 少し赤くなっているであろう顔だけ向ける。

 

「お帰り!」

 

「いや。今から帰るんだよ」

 

「「えー!?」」

 

 夫婦かお前らは。見事に声をハモらせて。ハモったって何にも景品は出ねぇぞ。

 

 前を向いて再び歩きだす。買い物袋を持って歩く人が目立つ中、空を見ると少し赤い。

 

 小さい子供達はそろそろ帰る時間か。俺もよくこの時間に家にー・・・帰ってないな。そりゃそうだ。家にこもってギターを弾いてたんだから。だからあんまり時間にルーズじゃなかった。今はきちんとしてるぞ? 5分前行動は基本だ。そのせいでいろいろ厄介な事にもなったけど。

 

 ふとおたえに声をかけられた次の日の事を思い出した。5分どころか、15分前に江戸川楽器店に着いてgoggleで調べものしてたら、会ったんだっけか。氷川紗夜先輩と氷川日菜先輩。

 

 そう言えば2年前に親父がパスパレの特番を録画するのを忘れてたってすげー嘆いてたな。結局ダビングしてもらってたまに酔いなが見てたっけ。

 

 

 

 気が付くと俺は不思議と商店街の方に向かって歩いていた。今の家は反対方向だ。なぜ商店街に………。

 

「はぁー。やっぱ真実を確かめたいってわけか」

 

 頭では良いと思っていても、片隅にはどうしても真実を聞きたいって思いがあるみたいだ。話すだけだし、そんなに時間はとらないだろう。

 

 引き返す事なく有咲の家に向かった。

 

 わがままは今回だけだ。2度はないと思えよ………俺。

 

 これ以上有咲の邪魔はしたくない。理由も聞かずに引き離す。これも悪い癖の1つだけど、やっぱり相手に悪いと思ってなかなか言えない。

 

「ポンコツだよな……ホント」

 

 賑やかな商店街を歩きながらボソッと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 商店街を抜けてようやく人とすれ違う事がなくなった。この時間はあまり人が居ないのも変わらないんだな。それはそれで物騒だ。

 

 2年前に久しぶりに有咲と再開した十字路を過ぎ、少し歩くと変わらず黄色の星のシールが張ってある道に出た。少し色あせてるものの、まだぴったりと張り付いている。

 

 小さい頃曲を弾けたご褒美のシールを有咲が張ったんだっけなー。もう10年以上経つのか。

 

 昔の思い出に浸りながら歩くとようやくたどり着いた大きな門。表札には市ヶ谷と彫ってある。これも2年前よりは風化しているように見えた。

 

 少し眺めてから門をくぐって敷地内に入った。石畳の真ん中を歩きながら周りを見る。左にはいつも有咲達が練習している蔵。正面には有咲とばあちゃんが住む家。

 

 あと数本でドアにたどり着くという所で足を止める。ふと右を見ると、有咲が大事に大事に手入れをしている盆栽。前よりも数個増えてる気がする。

 

 今度はいったいどんな名前を付けたんだろう………。変わらず川の名前だろうけど。2代目利根川とか付けてそう。

 

 ふっと鼻で微笑むように笑い、数本歩いてインターホンを押した。少しするとドアがガラガラと音を立てて開く。俺を出迎えたのは茶髪の男。人の顔を見るなり、睨むように視線を向けてきた。

 

「なんのよう?」

 

「有咲に用があってきた」

 

「はっ、取り返しにでも──」

 

 相手の言葉を遮るように淡々と真顔で話す。

 

「勘違いすんな。話があるだけだ」

 

「そ、そうか。呼んで来るから待ってろ」

 

 さっきまで俺を睨んでいた目は一瞬で戸惑いに変わった。今まで睨んできた奴に真顔で接してくる奴は居なかったのか? と言いたくなった。

 

 ドアを一旦閉めると足音が遠ざかって行く。数本下がって、ため息を吐いた。

 

 本当に有咲はあの男を好きになったのか? なんかいざって時の根性無さそうだし、カッコつけるだけつけて滑ってそうだ。でも……本当に好きならそれでも許そう。他ならない有咲が好きになった人だから。

 

 そんな事を思っていると再びドアがガラガラと音を立てて開く。そこには若干息を切らしている有咲の姿があった。

 

「いきなり押しかけて悪いな」

 

「べ、別に。話があるって本当?」

 

「無いのに来るかよ。すぐ終わるから外で良いか?」

 

「わかった」

 

 そのまま外に出てドアを閉めた。会ったのは2度目なのに、緊張してるのか目を合わせようとしない。

 

「話って……?」

 

「他でもない。さっきの男の事だよ」

 

 すると少し間が空いてから、小さい声で「………ごめん」と謝ってきた。別に俺は責めてるわけでも、バカにしてるわけでもない。

 

「なんで謝る?」

 

「約束したのに……破っちゃったから」

 

 約束、か。確かに俺は別れ際に約束をした。有咲を他の男にとられたくないと思ったのかな。あの時、どんな事を思って言ったのかはもうわからない。でも……あの言葉の意味を有咲は間違えている。

 

「お前はバカか? それで花女のトップだったとか笑えるな」

 

「なっ! バカってなんだよ! こっちは真剣に悩んでるのに!」

 

「怒んなってー……だってよ。俺が有咲に言ったのは、気持ちが変わらなかったらだぞ?」

 

「気持ちが…変わらなかったら?」

 

 何を思って言ったのかはわからないけど、言った言葉ははっきりと覚えている。

 

 

『有咲の気持ちが変わってなかったら俺と付き合ってくれ 』

 

 

 そう。気持ちが変わらなかったら付き合ってくれって俺は伝えた。だから他の男と付き合ってても俺は文句を言う気は一切ない。むしろ俺より良い人が見つかってなによりって感じ。一瞬なんか心にぽっかり穴が空いたような感じはしたけど、すぐに忘れた。

 

「せっかく恋いしたんだから……俺なんかもう気にするな。前と変わらず、仲の良い友達って事でよろしくな」

 

 しかし有咲は何かを言うことも頷く事もなかった。悲しそうな表情でじっと俺を見つめ何かを言おうとしたが、俯いてしまった。これ以上は何も話す事はないと思った俺は「じゃあ」と一言声をかけ振り返って歩き出した。

 

 これで……良いんだ。これ以上俺が有咲を縛り付けるわけにはいかない。失恋にも似た感覚が心にどっと押し寄せてきたのを振り切るように走りだした。

 

 

 

 

 

 

───────☆

 

 走って行く恵の背中からは寂しさを感じた。それと同時に私の心に押し寄せる罪悪感。姿が見えなくなるまで目を離せなかった。帰った後もじっと門の方を眺めて、もしかしたら帰ってくるかもと……有り得ない思いも抱いた。

 

 戻って来るのが遅いのが気になったのか、ガラガラと音を立ててドアが開いて聞き慣れた声が聞こえた。

 

「アリサさん? 大丈夫か?」

 

「……うん。大丈夫」

 

 絶対に大丈夫じゃない。大丈夫だったら、涙なんて流してないもん。こんな…悲しい気持ちなんてなるはずがない。

 

 バレないように涙を拭いてから振り向いた。

 

「戻ろ?」

 

「お、おう。もうご飯出来てるってよ」

 

「そ」

 

 振られたわけじゃないのに私の心には失恋に似たような感覚が押し寄せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 あの時……恵を止められたら変わってたのかな? 私と恵が笑って過ごせる未来に。恨みや妬みしか心に残らないような残酷な未来から。なんの躊躇いもなく人を───してしまう人生から救えたのかな? この時の私にはそんな事、想像も付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

───────☆

 

 遠い未来。

 

 薄暗い廃虚の一室。目の前にはパイプ椅子に座らせられ、縄で縛られて身動きが1つも出来ない男。そいつが俺を見る表情は怯えている。その様子が余計にムカつく。

 

 俺は懐から拳銃を取り出して男に向けた。

 

「やめてくれ!! 頼む!! 命だけ───」

 

「喋るな」

 

 薄暗い廃虚に一瞬だけ大きな音が響く。

 

 俺は戸惑う事なく引き金を引いて男を殺した。拳銃から白い煙と硝煙の香りがする。

 

「あと……9人」

 

 後ろに居る部下2人に聞こえないくらいの声でボソッと呟いた。

 

 




恵「カミヤマラジオ! 今回のゲストは全く作品に関係ない上に接点が全くない金持ちお嬢様弦巻こころさんです。パチパチパチパチ」
こころ「みんなーこんにちは!」
恵「(いや~元気良いなこの子) それではね。いくつか質問したいと思います。・・・・バンドを始めたきっかけは?」
こころ「世界中の人を笑顔にするため。もちろんあなたもその1人よ?」
恵「お、おう。別の意味で笑顔が出てくるよ(苦笑い)」
こころ「そう! なら良かったわ! そうだ! このラジオを全国放送にしない?」
恵「なぜ日本に俺の醜態を晒さなければいけない? ある意味全国だけども。この作品読んでくれてる人だけで良いんだけど……」
こころ「じゃあ早速準備するわね!」
恵「(全く話を聞いてないよこの子) みなさんこれはここだけのお話なので全国放送はされませんよー」
こころ「全国じゃなくて、全世界よ?」
恵「(ヤバいヤバい!!) 感想、評価等ありましたらよろしくお願いします!」
恵・こころ「それでは次回もお楽しみに!」
(なぜハモったし………)













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