あの約束を果たす為に──巡り回る運命 完結   作:レイハントン

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こんにちは。

さて最近いろんな小説が完結していくなか、続きを書き始めましたが、どこで終わりにするか悩んでおります。大人な描写も今回は考えてたり……。18とまではいかないので大丈夫ですよ?

最近寒かったり、暑かったりするので風邪を引かないようにしてくださいね(^-^)

それではどうぞ。





失った灯火

「好きな人を取られるってこんな気持ちなんだな」

 

 時間帯は夕方。自宅のベッドで天上を見上げてふとそんな事を言ってみた。どうやら2年間で俺の居場所というものは本当になくなってしまったらしい。その証拠に有咲は他の男と付き合っている。普通ならあそこでどうにかなりそうなものだが、なんでかはわからない。でも、怒りすら湧いてこなかったのだ。

 

 それよりも引っかかっているのは、有咲のあの表情。あの男が“彼女”と言った瞬間、俺から視線を逸らしたのを見逃さなかった。あの表情はなんだ? 愉快過ぎて目も当てられないとか、バカにしてる感じじゃないんだよ。

 

 なんかこう……申し訳ない感じ。だとしたら有咲は間違えている。俺の最後に言った言葉を忘れたのか? 花女の学年トップがどうしたものかね。

 

 別に有咲が男と付き合うのは勝手だ。俺が決める事でもない。むしろそう言う人が見つかって、安心している。こんな俺が幸せに出来るとは思えないし。約束したのに薄情だよな………。

 

「明日もう1回行ってみっか」

 

 と言っても明日はバイトの面接あるんだよな~。その後にでも……行く……か。

 

 アメリカに2年住んで、日本に帰ってくると時差でこの時間は眠くなるんだよな。

 

 

 

 

 

 

 ふと目を覚ますと部屋は真っ暗で何にも見えない状況。手探りでスマホを探して、時間を確認すると夜の9時だった。通知欄には数件来ている。通知が来た時間は夕方。たぶん俺が寝たあとに来たんだろう。almondを開と香澄、おたえ、りみ、沙綾、徹から。有咲からは来ていない。………それもそうか。

 

 寝起きということもあり、返事を返すのに結構時間がかかってしまった。一番困ったのは、おたえへの返事。何が困ったかって、普通はお帰りから始まると思うけど、おたえは違う。

 

『よく生きてたね』

 

「お前はどこに行ったと思ってるの?」

 

 そんな危険地帯に行ったわけじゃないんだぞ? ……でもまぁおたえらしいよ。帰ってきたって感じ。そんなおたえには、『生きてるわ笑』とだけ返した。沙綾も沙綾で人を軽くからかうのは変わんないんだな。

 

『お帰りー。あたしに会えなくて寂しかった?笑笑』

 

 ここで焦りを表現すると、さらなめんどくさい事になりそうだからこっちから仕掛けてまた。

 

『寂しかった……』

 

 なんか新しい問題が出てきそうだけど……大丈夫だろ。この自信はどこから湧いてくるのやら。一番普通の反応だったのはやっぱり、りみだ。

 

『お帰り。外国どうだった?』

 

 な? 普通だろ? もはや天使の域だよ。ポピパの中で唯一俺に対して普通に接してくる人だ。香澄とかおたえは普通なんだろうけど、俺からすれば普通ではない。いつも予想の斜め上を行きやがって。

 

『お帰り!お土産とかある?』

 

「あると思ってんの?」

 

 その答えはYesだ。つまり買ってないって事だな。言い訳をさせてもらうと、普通に忘れていたわけだ。なぜ? って聞かれるとあれなんだが、一番の理由は旅行ではなかったからかな。旅行気分ならあ、お土産買っていこうってなるけど、2年も住んでればお土産買っていこうなんて思わなくなる。はずだ!

 

「アホらし。腹減ったからなんか食うか」

 

 自分の部屋を出てリビングに向かう。ドアを開けると、美味しそうな匂いが漂ってきた。テーブルの上には、いつ食べたか覚えていない、久しぶり過ぎる野菜炒めが盛られている皿。

 

 目を丸くして見ていると、お母さんが、「どうかしたの?」と若干笑いながら言った。

 

 だって……ね? 昨日までインスタントだったのが、これだもの。驚くのも無理ないよ。

 

「いや、珍しいな~と思って」

 

「失礼しちゃうわね。私だって母親よ?」

 

「昨日まで朝、昼、晩インスタント食品でまかなおうとしたのはどこの誰?」

 

「うっ……」

 

 全く………。楽したい気持ちはわかるけど、さすがに帰って来てから数日全部インスタントはどうかしてると思う。まぁ、そうならない為にも料理を学んでおいて損はないな。

 

 そう思って椅子に座ると炊きたてのご飯が運ばれてきた。お母さんが椅子に座るのを待つ間、じーっと白い湯気が上がる野菜炒めを眺めていた。

 

 ふと思い出すのはやっぱり有咲とあの男の事。関係性をもっと詳しく知りたい気持ちは強い。キスしたのか? とかではないから悪しからず。いつ頃から付き合っているのかだ。俺が居なくなったタイミングなら、計画的の可能性が高い。そうなると、なかなか頭が良いような気がする。

 

 たまたま出会って一目惚れしたのなら計画性は薄い。やっぱ2年は長かったかな~。飛び級して帰ってくるって方法もあったけど、クソ親父に止められた。ホントクソだな。

 

「恵? 聞いてる?」

 

 お母さんに話しかけられふと我に帰り、視線を野菜炒めからお母さんに移して言った。

 

「なにを?」

 

「あんた、考え事してると一点を見つめるから気をつけないさいって話よ」

 

「あ、うん」

 

 アメリカに引っ越してから着いた癖なんだけど、考え事をしてる時はなんか一点を見つめちゃうんだよ。でも、1人で考え事をするときにはちょうど良い。……今は有咲の事よりも、減った腹を膨らませる為に飯を食べるとするか。

 

「いただきます」

 

「どうぞ~」

 

 それにしてもなぜ今の時間に起きて来るのがわかったんだ? ・・・・お母さんという生き物は時々怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 次の日。今日はバイトの面接で、今まさにバイト先に来ているわけだが、相変わらず女子が多い。さすがガールズバンドの聖地があった場所だ。俺が来ている所はライブハウスCircle。やっぱ音楽が好きだからこういう所でバイトしたくなるんだよ。実はアメリカ

のライブハウスでバイトしてたり。

 

 で、着ちゃったってわけなんだけどー。相変わらずの女子率の高さ! 1人男子が居ると気まずい。だがしかし。そこを除けば最高の場所だ。スタジオあって、ライブも出来るという。SPACEよりも広い。なにより怖そうな人が居なさそうだし。オーナーは今頃なにしてるんだ?

 

 今は面接をしてくれる人が来るのを待ってるわけだけどー・・・・まだかな。来てから10分くらい経つんだけども。

 

 周り見てるといやらしい視線送ってるとか思われそうだから、スマホで時間潰すか。

 

 

 

 

 

 

 

 それから数分経っただろうか。スマホをいじっていると声をかけられた。視線を上げるとそこには、黒い髪を肩より下くらいに伸ばした女性の人。

 

「君がバイトの面接に来た子かな?」

 

「はい。神山恵です。よろしくお願いします」

 

「よろしく。じゃあ、着いてきて。部屋に案内するから」

 

「はい」

 

 荷物を持って面接官の人の後ろに着いて歩き、スタッフと書いてあるドアをくぐった。

 

 この人が面接してくれる人か。見るからに優しそうな人だな~。SPACEのオーナーとは大違いだ。もし受かったらやっていけそう。

 

 部屋に着くと、テーブルを挟んで椅子が1つずつ置いてある。面接の時はすぐに座っちゃダメなんだよな。

 

 椅子の横に立って待っていると、面接官の人が座り一段落着いた。

 

「あっ、どうぞ」

 

「失礼します」

 

 持っていた荷物を下ろして、ポケットからメモ帳とペンを。鞄から履歴書が入っているクリアファイルを出してから座った。

 

「改めて。ここで働いてる月島まりなです。よろしくね」

 

 にっこりと笑顔で挨拶をする面接官の月島まりなさん。第一印象は優しそうな人。これの一点だ。

 

「よろしくお願いします」

 

 ぺこりと頭を下げて挨拶をした。

 

「アメリカの高校出てるんだ~。しかも結構有名な所ね」

 

「あ、はい。高1の時に親の都合で転校しまして」

 

「そっか~。外国に引っ越しって大変だよね?」

 

「はい……」

 

 って言っても俺はなんも手伝ってないから大変さは知らん。だって勝手に決められて行ったんだもん。でも今はそれでも良かったかなって思えてる。

 

 面接官の人が、「そっか」と笑顔で言うと俺への質問は終わったのか本題に入った。

 

「まずは、履歴書持って来てる?」

 

「はい。これです」

 

 クリアファイルから履歴書を出して面接官の人に渡した。すると、履歴書を見るなり「へぇ~」と感心された。そこまで感心されるような事を書いただろうか。答えはNOの……はず。いったいどこに反応したんだ?

 

「君、もしかしてだけどPoppin'partyの人と知り合いだったりしない?」

 

「はい……まぁ」

 

 なぜここでPoppin'partyという単語が出てくる? ・・・・・これは嫌~な予感。まだ冬がくれたよかんの方がマシだぞ。

 

「香澄ちゃんの言ってた、人って君だったんだね」

 

「香澄がですか?」

 

「うん。話はよく聞いてるよ。すごい人だって」

 

 なんだそれ……香澄が俺の事をすごい人って思ってたなんて知らないんだけど? 一緒に居る時なんてほとんどそんなこと言わなかったじゃん。……ったく、仕方ねぇ奴だな。

 

「いろいろテクニックがすごいって」

 

「それ聞く人によっては別の方向にねじ曲がりませんか?」

 

 言い方考えて。楽器の演奏のテクニックって言わないと………。なにこれ自分で言うことじゃなくね?

 

「って事で、明日から来れたりする?」

 

「え? ご、合格なんですか?」

 

「うん。男手足らなくてね…。神山君が来てくれて助かった」

 

「そういう事なら。明日からよろしくお願いします」

 

 頭を下げて挨拶をして顔を上げると、面接官の人はニコニコしながら右手を差し出してくる。ペンを置いて、ズボンで拭いてからその右手を握って握手を交わした。

 

 女子の手ってみんな柔らかいのかな? ギターやってる人は硬いのはわかるんだけどな。まっ、そんなことは置いといてだ。明日から頑張りますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 Circleを後にした俺はある人物と会うために待ち合わせ場所のカフェに向かっていた。ある人物って言っても香澄なんだけどな。なんでも会わせたい人が居るとか居ないとか。あいつの事だ、どうせ新しい友達とかだろ? どんな所でも生活していけそうだもん。香澄のコミュニケーション能力さえあれば。

 

 それか彼氏とか? でも、香澄に彼氏か~。ありそうでなさそう。もし仮にたぶん恐らくそうだったとしても、香澄と感性が一緒だったらどうしよう。これから先、香澄2人を相手にしなければいけないのか? 

 

 そう考えるだけで背中がぞっとする。まぁ、なんにしても普通に接すれば大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

 

 歩いて数10分。目的地の場所に着いた。遠くからでもわかったが、香澄越しに見える男。あれは友達か? それとも彼氏か? いや、平気な顔しておれと仲良くなるような輩だぞ? 男友達、つまりBoy friendの可能性が大だ。さて………どうする。落ち着け餅つけ砕け散れ。いや、散っちゃダメだ。

 

 結局すぐに2人の元には行けなかった。行こうという決心が付いたのは、約束の時間の5分前。一歩踏み出し、覚悟を決めて前に進む。落ち着け……落ち着け俺。Cool downだ。

 

 香澄の後ろまで歩き軽くチョップをかました。すると、後ろに振り向いてくる。目の前の男は驚いてるのか、じーっと俺の事を見てくる。その視線は痛い。

 

「急に呼び出してなんの用事だバ香澄。こっちは忙しいんだよ」

 

「え~良いじゃん! せっかく会えたんだから!」

 

「はいはい」

 

 相変わらず変わんないのなお前は。なんか安心したわ。すると思い出したように香澄が目の前の男を紹介してきた。

 

「あっ! この人私の彼氏の石川優都くんだよ!」

 

 ヘェーソウナノカー。どう考えても順番おかしいよね? 普通俺の紹介が先だよねー? ほらー向こうの人も驚いてるよー。

 

「つうかさ。お前の彼氏の紹介よりも、俺の紹介しろよな」

 

「ごめ~ん。コホン。改めて紹介するね! 優都くんに会わせたい人! 神山恵ちゃん!」

 

「おい。紹介するときくらいちゃんはやめろ。………あ~俺は神山恵。よろしく」

 

 そう言って右手を石川君? に差し出しすと、相手も立ち上がって俺の手を握り返してきた。その瞬間──あることに俺はすぐに気づいたのだ。

 

 手が硬い………しかもこの硬いさは……ギターだ。

 

「石川優都です。よろしくお願いします」

 

 ギターの事は後で聞くとして、それにしても好青年だな~。俺の第一印象はそれだった。

 




恵「カミヤマラジオ! 今回のゲストは本編で全く絡みがない松原花音さんです。よろしくお願います」
花音「こちらこそ。……初めましてですよね?」
恵「ですね。本当に絡みないですから」
花音「なんかすいません……。2回目のゲストが私なんかで……」
恵「いえいえ。全部作者が悪いので気にしないでください。さて、松原さんにたくさんの情報が寄せられてますがー。……方向音痴なんですか?」
花音「はい。スタジオに集合する時とか、なかなかたどり着けなくて……」
恵「なるほど。出かける時は誰かと一緒に?」
花音「はい。友達や家族と一緒に行きます」
恵「へぇー。なかなか大変そうですね。友達に愛想尽かされたら終わりですね」
花音「そうですね……。そうならない為にも頑張ります!」
恵「では是非頑張ってください。感想、評価等ありましたらよろしくお願いします!」
花音「次回もお楽しみに♪」
恵「セリフ取られた……」



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