あの約束を果たす為に──巡り回る運命 完結   作:レイハントン

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こんにちは。

早めに投稿したくなったので投稿しました。

さて今回はあの時の約束の続きとなっております。舞台は2年後で、主人公の神山恵(かみやまけい)がいろんな事をするお話です。あんなことやこんなことも……ラッキースケベとかもあるかもですよ~。昼ドラみたいなドロドロな恋愛とか立ちはだかる壁がすごいとか。

最近勉強で忙しいので投稿は週1を予定しておりますのでご了承ください。意見やこんなお話を書いてほしいなどありましたら、Twitterまで申しつけてください。

それではどうぞ。


帰ってきたはいいが、居場所がなかった

 心地よい春の風が吹く4月某日。墓参りの日でもないのに、俺は黒いスーツの上に黒いコートを着て神山哲夫之墓の前に居る。右手には色とりどりの花。備えるのに持ってきた。

 

「…………もう少しだけ待っててくれ。後1人なんだ。そいつを殺れば俺もそっちに行くから……」

 

 花を添えて手を合わせる。

 

「それまで待っててくれ」

 

 

 

 

 

 現実は残酷だ。手を伸ばしても掴めないものがある。どれだけ努力しようが、あらがおうがお構いなしに残酷な現実を突きつけてくる。でも……現実は残酷でも未来は変えられる。どこがで俺の未来が変わってくれる事を今の俺は祈るしかない。

 

「笑いたければ笑えよ。復讐に駆られたアホな俺を……」

 

 誰も居ないお墓が並ぶ場所で1人、その場に立ち尽くす。

 

 

 

 

 

 俺の未来はどこで狂ったんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 4月某日。約2年振りに帰ってきた、俺──神山恵。とお母さん。本当は1人で帰ってくる予定だったんだけど、心配だからって一緒に帰ってきてくれたんだ。

 

 にしてもあの親父、最後の最後まで反発してきやがってよ。でもまぁ……いつもの心配だからなんだろうけどさ。あの夏の出来事以来、親父との仲は普通に戻った。白鷺さんには感謝してもしきれない。

 

 お母さん変わらず優しくしてくれる。正直気持ち悪いと思うくらい。アメリカで通ってた高校から帰ってくると、『いじめられなかった?』とか『友達出来た?』とかしつこい程に聞かれ過ぎて、聞いてるようで聞いてないという技を習得した。まぁバレるようになったんだけどな………母親恐ろしや~。

 

 今は新しい部屋に引っ越してきて数日が経った。部屋はアパートなんどけど、結構高そうな所で場所は~羽丘女学園が近い場所かな。家賃は俺とお母さんの2人で払うことになってる。今年の4月から、また芸能活動再開するらしい。

 

「こんなもんでいいだろ」

 

 たった今荷物の整理とダンボールの片付けを全て終わらせ、自分の部屋に置いてあるベッドに寝転がって少し休憩。早速スマホをいじり始め、画面に映るalmondの友達一覧を見ているとここ最近連絡した記録がない。

 

「なんかこっちから連絡するのもあれだしな………」

 

 帰ってきたとかみんなに言っても、だから? みたいな反応されたら悲しいし、ただの寂しい人じゃん。そんなんだったら街で会った時に声をかけてもらった方がいいし。でもな~~~暇なんだよな~~。

 

「思い切りも大事か」

 

 almondの連絡先からハードルの低い徹に連絡をしようと画面をタッチする。しかし反応しなかった。もう一度押そうと親指を画面に近づけると、画面が急に電話の画面に切り替わる。相手は意外にもおたえだった。

 

「マ、マジか・・・・」

 

 一度起き上がり、すぐに電話に出ようとしたがすぐに切れてしまった。するとalmondにおたえから、『ごめん。間違えた』と連絡が入ってきたのを確認して、ベッドにスマホを投げつけてツッコミを入れた。

 

「紛らわしいんじゃーー!!」

 

 落ち着きを取り戻してスマホを手に取り、almondを起動して、『大丈夫だ』と返事を返した。そのままスマホの画面を閉じ、両手を頭の下にしてベッドに寝転がる。白い天井と電気だけが視界に入ってくる中、スマホが震えた。画面にはおたえから、ウサギとOKが描かれたスタンプが映る。しばらく眺めていると自然と画面は真っ暗になり通知を知らせるランプが一定のリズムで黄色に光るだけ。

 

 本格的にどうしようかな………。なんか声かけづらくなっちまったよ。俺が帰ってきたのなんか知ってもどうでも良さそうだな。

 

 正直Poppin'party略してポピパ面子とは、丸2年話していない。つうか今さっき連絡ついたんだから気付けよな。海外と日本では連絡をとる手段は手紙くらいだが、あいにく俺はあいつらの住所まで把握しているストーカーではない。そもそもストーカーではない。

 

 話は変わるけど、有咲の事は今でも好きな気持ちは変わったことなんて一度もない。そのために帰ってきたようなもんだからな。

 

「ホント……どうしよう」

 

 考えても答えが出てくるわけじゃない。ここはアクティブに行こう。じーっとしててもどうにもなんねぇ! だ。このネタはわかる人にはわかると思う。そのセリフを言ったからと言って、融合はしない。…………準備して有咲に会いに行くか。

 

 スマホと財布を持って自室を出てお母さんに一声かけるためにリビングに向かい、ドアを開けた。リビングではお母さんがバラエティー番組を見て笑っている。あんまり邪魔するのもあれだと思ったが、声をかけた。

 

「お母さーん。少し出てくる」

 

「夕飯までには帰ってくるのよー」

 

 こっちを見ずに答えるとなにやらメモをし始めた。芸能活動再開に当たってなにか調べごとしてるんだろうな~。努力は欠かさない。さすが俺のお母さんだ。ってことは俺の努力する部分はここから来てるのか? なんか少し嬉しいな。

 

 リビングを出てドアを閉めようとした瞬間。「ちょっと待って!」と大きめの声で呼び止められた。お母さんの元に歩いていくとメモ用紙を1枚俺に渡してきたのを受け取り、タイトルに目を通す。

 

「前言撤回」

 

「なにが?」

 

「なんでもない。行ってきます」

 

 ・・・・・芸能活動の為のメモではなく、ただ単に今日の夕食と書かれたの買い物メモだった。今すぐビリビリに破り捨ててやろうか。いや待て、落ち着け俺。ここで破いてしまったらどうなる。夕食がカップ麺とかインスタント食品になってしまう。それだけは避けるんだ! ここ最近引っ越しの疲れで全くご飯作ってくれないから、買い物メモを破り捨てるわけには! 今度は買ってくる物の一覧に目を通す………がしかし。ほとんど手軽に作れるインスタント食品だったからすぐにくしゃくしゃにしてポケットに突っ込んだのは言うまでもない。

 

 外に出た俺は若干機嫌が優れなかった。今日こそ普通のご飯が食べられると思っていたのに、またインスタント。これで5日連続だよ………全く……これだからお母さんは。・・・・・そうか! 自分で料理出来るようになればこんな思いしないで済むじゃん! なーんだ簡単だなおい。

 

 この時はそう思っていた。しかし料理は甘くないと知るのはもう少し先のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 数10分かかってやっと着いたのは商店街。この商店街に来るのも2年ぶりだ。この忘れもしないパンの匂いと、コロッケの匂い。思い出に浸りながら、商店街を眺めて歩く。そん時、ふと目に入ったのは羽沢珈琲店。一度元カノ姫川優衣(ひめかわゆい)と入った喫茶店だ。2年そこらじゃ変わらずって感じだな。

 

 横を通り過ぎようとした俺の視界の端に見逃せないものが見えた。思わずそれを2度見してしまう程。喫茶店の窓ガラスの向こうには謎の男とお茶をする有咲の姿があったからだ。

 

「え? え? あれは誰? ここで何してるの? 俺は誰?」

 

 もう混乱するしかない。だってしらん男とお茶してるんだぞ?! しかもその男が後ろ姿だけでこっちから見えない! 黒髪でジャ◯ーズに居そうな髪型の男。あれで女と言われた暁には、喜んで商店街をギター弾きながら歩き回ってやろうじゃないか!!

 

 じーっと見ていると、男の向かい側に座っている有咲と視線があってしまった。俺は見てない見てないと言わんばかりの表情を浮かべてその場から全力疾走した逃げ出した。きっと今頃、『あれ? 恵?』とか思ってる頃だろうけど、俺は日本になんか帰ってきてませーん!! ちくしょー!! 聞いてねぇぞ! だってここ数ヶ月連絡とってないんだもん! わかるわけないじゃんかーー!

 

 しばらく走りいつの間にか商店街を出てしまった。そのまま商店街に戻る気にはなれず、ちょうどあった公園に入って木の陰にあるベンチに座って顔の前で、どこぞの逃げちゃダメだを連呼する子のお父さんのように手を組む。

 

 今の状況を整理しよう。俺は2年前に日本を出てアメリカに引っ越して、2年経ってから日本に帰ってきた。日本を発つ前にあの男は居たか? 答えはNOだ。じゃあ2年の間に現れたってことになる・・・・・・・

 

「詰んだんじゃね?」

 

 ふと顔を上げて、青い空を見つめた。ここはアメリカと違って見上げても大きな建物が目に入ってこない。昼間なのに人がたくさん歩いているわけでもない。ものすごく────

 

「………静かな場所だな」

 

 時折吹く風が周りの木々や俺の髪を揺らす。実際、2年も離れていればみんなに彼氏の1人や2人出来てもおかしくはない。なんて言ってる俺もこの2年で彼女の1人や2人……………つくれてない。むしろ作らなかったって言った方が正しい。必ず帰るって約束したのに彼女つくったらおかしいだろ? ってことで俺の気持ちは変わらないわけだ。

 

 そうは思ってもどうしようもないわけでただ公園を眺めるしか出来なかった。もし聞きに行って本当に彼氏だったら、俺はその場で燃えて灰になって土の肥料になってやろう。いや……海に沈むのもいいな………。ビルの上からI can flyするのもいいかも。

 

 なんてアホ極まりないことを考えていると、最近は聞かなくなった音が聞こえてきた。それでもわからないわけではない。風に乗って聞こえてくるのはギターの音。大きさ、音からするとアコギではなく、エレキだ。

 

 周りを見渡すがそれらしき人は見つからない。ベンチから立ち上がって、少し移動すると小学生くらいの少女がベンチに座って青いギターを弾いていた。聞こえてくるのはギターの音だけじゃなく、声も聞こえてくる。

 

「誰も居ないと思ったのかな?」

 

 なんで気付かなかったんだ? と考えると、理由はすぐにわかった。俺が座っているのは、大きな木の陰の下のベンチ。ギターを弾いている子がいるのはここから、少し立って移動しなければ見えない場所だから。それよりも気になったのは───

 

「この歌は………」

 

 少女が歌っている曲は俺もよく聞いている『前へススメ』でポピパの曲だ。この曲にどれだけ助けられたか、今では数え切れないほど。なぜアメリカに居るのに聞けた理由は簡単。あいつらはYuo tubes(ヨウチューブズ)に動画を上げるという画期的な方法を思いついた。だから聴けたんだよ。

 

 俺はいつの間にか歌に誘われた様に少女のもとに歩いていた。目を瞑って演奏しているからか、俺に気付く様子はない。

 

 聴き入っていると、やっと俺に気付いたのか演奏が止まって顔を赤くしてこちらを見てきた。とりあえず不審者じゃないのを証明しなければ。

 

「最初に言っておくけど不審者じゃないからね?」

 

 一歩近づいて言うと、女の子は一瞬ビクッと体を引く。正直やってしまった………アメリカではもっとフレンドリーな感じだったからついクセ的なものが出た。これじゃあ余計に怪しむよな。

 

「不審者の人はみんな不審者じゃないよって言うから気をつけてって教わったよ?」

 

「それはそうなんだけど………」

 

 こじゃあますます怪しくなるじゃないか。なにかこの状況を乗り切れる手段は・・・・・・なんで俺は不審者じゃないことを証明しようとしてるんだ? いきなりそんなこと言ったら怪しまれるに決まってるじゃんか。

 

「さっきの歌、『前へススメ』だよね? ポピパの」

 

「不審者さん知ってるの?!」

 

「うんとりあえずその不審者さんはやめようか。本当にそうなっちゃうから」

 

 なんとか不審者じゃないことを証明出来そうだ。それにしても率直な呼び方だな~。前にも似たような経験したような気が…………。あれか俺じゃない、香澄だ香澄。おたえに変態だって言われたんだっけ。そんな話は置いといてだ。

 

 他に話せることがないかと考えた結果、次に話したのは一番記憶に残ってる曲────『STAR BEAT──星の鼓動』の話。

 

「他にも『STAR BEAT』知ってるぞ。文化祭で初めてポピパの5人で演奏した曲」

 

「いや、そこまで知ってると気持ち悪い」

 

「えー………」

 

 なんだこの子。ドストレートに言ってくるし、さっきまで怯えてたくせに今はゴミを見るような目で俺のことを見てくるんですけど………。最近の子は冷たいのね。

 

 改めて日本の厳しさを知った俺であった。

 

「…………あの」

 

 次はどうしようかと考えていると、意外にも女の子の方から声をかけてきた。「なにかな?」と返事をすると、一旦俯いてしまった。その様子を見ているとなんだか不安気持ちになってくる。そっとズボンのチャックに手を伸ばした。

 

 よし……大丈夫。チャックは閉まっている。

 

「2年前くらいに花園たえさんと一緒に居たけいちゃんさんですか?!」

 

「うん待とうか。けいちゃん情報誰から手に入れのかな?」

 

 恐らくというか香澄、おたえ、沙綾しか俺のことをちゃん付けて呼んでいないからこの中の誰かだ…………おたえだな。なんとなくだけど。それより、今は目の前のことに集中集中。

 

 犯人を考えるのを一旦やめて、詳しく聞くことにした。

 

「ワタシ、2年前にギター初めて、ギター教室にも通よってます。将来バンドもやりたいな~って思って体力つけるために走り始めたんです!」

 

「それで?」

 

「こことは違う公園で師匠に出会ったんです!!」

 

「お、おう」

 

 興奮気味に話す女の子からは熱い熱い思いが伝わってくる。熱すぎて思わず一歩引いてしまった。もうどっちが不審者だかわからねぇよ。

 

 

 

 

 

 

 

 その後もこの2年間の話を熱く語られたわけだけど………ずっと立って聞くことは出来なかったから、途中許可をとって隣に座らせてもらった。おたえといや……ポピパとの思い出を話す彼女はどこか。いや、かなり楽しそうで夢中で話てくれた。お陰でこの2年であったことがだいたい理解することができたわけなんだけど………さすがというか、無茶したなというか。

 

 それでも一番驚いたのはライブハウス、spaceがなくなってしまったこと。香澄達は最後にライブをしたみたいで、夢を叶えたのはよくわかった。

 

「なんかいろいろあったんだな」

 

「はい! でも師匠達は笑ってましたよ?」

 

「マジで? 強いんだか、アホなんだかよくわかんねぇけどな」

 

 この後、彼女は用事があるのでと言って帰っていった。結局名前を聞くのを忘れてしまったけど、またいつか会えるだろうと思いそこまで焦りはしなかった。

 

 やることないし、そろそろ帰るか…………。

 

 1人、「よっこらせ」と言いながら立ち上がる。ジジイかとツッコミたくなる気持ちはわかる。このままだとノリツッコミしちゃいそうだもの。…………1人って寂しいんだね。

 

 悲しい気持ちで入ってきた場所から公園を出てすぐ、右に曲がった。ここら辺も昔と比べてもまるで変わらない。この街は変わらず俺の事を待っててくれた。みんなはどこか遠い場所に行ってしまったような気がする。

 

「恵!!」

 

 とうとう幻聴まで聞こえるように……。俺は幻聴を無視して歩き続ける。

 

「おい! 無視すんなよ!」

 

 あー有咲の声が聞こえてくる~。・・・・・・有咲…の声?

 

 その場で立ち止まり、ゆっくりと後ろに振り返る。

 

「有…咲?」

 

 そこには俺がずっと会いたかった人が、息を切らして立っていた。

 

「………恵」

 

 有咲が一歩踏み出したその瞬間───左手を誰かの手が掴んだ。

 

「ちょっと待てくれよアリサさん」

 

 俺の視線の先には喫茶店で見た男の姿があった。あの髪型、間違いない。いったい誰なんだ?

 

「お前が神山恵か」

 

「は? なんで俺の名前を?」

 

「聞いたんだよ…アリサさんから。よく2年も待たせられたよな~」

 

 そう言う男は有咲の隣に立って肩に手を回して衝撃の発言をしたのであった。

 

 

 

 

 

「まっ、今のアリサさんはおれの彼女だけどな」

 

 

 

 

 

 男がそう言うと俺から視線を逸らす有咲。どうやら嘘ではないらしい。

 

 




恵「今作から始まりました、カミヤマラジオ! このラジオでは様々なゲストを迎えてお話しするコーナーです! 最初のゲストはこの方!」
作者「あっ、どうも」
恵「なんなのこのラジオ。ふざけてるの?」
作者「いや~後書きでなんかやりたくて面白そうじゃん」
恵「俺の負担が増えるだけだろ。ゲストによっては疲れるんだぜ?」
作者「そこは頑張ってもらわないと。次回のゲストは少し絡みずらい人にしとくわ」
恵「はぁ?! 作者だからって調子に──」
作者「次回もお楽しみに!」
恵「俺のセリフ!! 感想、評価等お待ちしております!」


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