スィーフィード世界で楽しく生きてみよう   作:トロンベ

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第8話 夏の日差しと告白

 夏!夏だ…

 うーーーーーん、暑い!

 いくらゼフィーリアが半島の北にあるといっても、夏はやっぱり暑い!

 最近研究ばかりで部屋に篭ってばかりだったからなぁ…篭ってる間にいつの間にか夏になっていた。

 ゼフーリアに来たのが冬だから丁度半年くらい経ったのか。

 

 あ、部屋っていっても宿屋じゃないよ。

 魔道の研究をするに際して、流石に宿屋で研究する訳にもいなかいし、研究資料や素材だって宿屋に置いておくもの防犯上危ないし場所も取る。

 それでゼフィーリアの拠点として、空き物件を探していたところ雑貨屋をやっているリナちゃんのお父さんの伝手で、格安の値段で屋敷を購入したのだ。

 

 屋敷は値段の割にそこそこの広さで工房に向いた部屋もあったので、即決購入だった。

 なんでも、この屋敷はさる商人が建てたそうなんだが、住み始めて半年経たずに一家のうち2人が謎の変死を遂げたらしく、この屋敷は呪われていると格安で売りに出したのだそうだ。

 ――ってそりゃこの値段だもん、曰くつきだよね!

 購入してから言うなよ!インバースさんも勧めるなよ!

 まあ、魔法で検査した所、呪いなども掛かっておらず、一応念のため浄化魔法も掛けておいたので大丈夫だろう。

 

 今じゃこの屋敷は、各種防御結界や侵入者用のトラップなどが設置されたセキュリティ万全の立派な魔術工房になりましたとさ。

 転移用の魔法陣も設置した。

 

 あと窓ガラスなのだが、この世界のガラスは透明度も低くガラス越しの景色が歪む。

 気になったので前世の知識の欠片からフロートガラスを作ってみたのだ。

 加工に魔法使うと楽だね。

 錫やガラスを溶かすのは普通なら大変なんだけどね。

 思ったよりも簡単に出来たので、調子に乗って屋敷の窓ガラスを全てフロートガラスにしてしまった。

 

 後日リナちゃんが屋敷に遊びに来た時、窓を見てとても驚いていた。

 

 この世界に鏡もあるが、やはり歪みのないガラスは高級品なので鏡も高価だ。

 なので喜ぶかなーと思い鏡を作り、リナちゃんとルナちゃんにプレゼントしたのだ。

 二人共思ったより、大袈裟に喜んでくれた。

 特にルナちゃんは頬が赤かったけど、風邪でも引いていたのかね。

 

 さて、屋敷の事はいい…暑いのだ。

 俺は暑さには弱いのだ。

 

「とりあえず、外に出るか」

 

 屋敷から出て、適当にぶらぶら散歩する。

 暫く歩くと突然声を掛けられた。

 

「おまえさん、ぼーっとしてなにやってんだ?」

 

 リュート・インバースさんだった。

 いつの間にかインバース雑貨店の前だったようだ。

 リュートって誰だ、だって?

 リュートさんこそインバース雑貨店の主でリナちゃんとルナちゃんのお父さんの事である!

 この街に滞在し始めて少し経った頃にインバースさんじゃ、娘もインバースだから紛らわしいって言われ、名前で呼ぶことにしたのだ。

 

「いやぁ~、屋敷で研究してるのも暑くて…気分転換の散歩ですよ」

「ふぅ~ん、俺なんかは夏は好きだけどな!ゼフィール・シティの夏男といえば俺のことさ!」

「はは、そうですかー」

「いや、マジでゆだってるな…棒読みで返されてもなぁ…うーんそうだな――そうだ!海と山へ行かないか?」

 

 ん、海と山?どういう事?

 

「海と山ですか?日を分けて行くのですか?」

「いや、そうじゃねぇ。山の景色と海を同時に楽しめるマル秘スポットがあるのさ!実はな、たまには家族サービスなんてもんをやろうかと思ってな、かーちゃんと娘2人を連れて行こうと思ってたのがそこなのさ」

「え、それじゃ家族水入らずなんですよね、俺が入ったら迷惑じゃ…」

「っかー!水臭いこと言うなよ!いつも娘2人が世話になってるしな!――…それにルナの奴は喜ぶだろうしな」

 

 ん?最後の方は小声で聞き取れなかった。

 

「そうですか…じゃあご一緒させて頂きます」

「おう!それじゃ明日から2日間の小旅行だがいいか?」

「はい、大丈夫です。今は研究も一段落ついて暇なので」

「そりゃよかった。それじゃ明日の朝頃うちに集合な」

「分かりました、ではよろしくお願いします」

 

 リュートさんにお礼を言い別れ散歩を続ける。

 海かー、泳ぐのは久しぶりだ。

 そういやこの世界って何故か水着があるんだよな。

 生地も薄くて丈夫なの使ってるし、この世界ガラスがアレなのに縫製技術は優れてるのかな?

 

 

 次の日、俺は約束通り朝インバース雑貨店に向かった。

 流石に朝方は涼しいな。

 

 道なりに歩くとインバース雑貨店が見えてきた。

 店の前には相変わらず釣竿を担いだリュートさんとリナちゃん、ルナちゃん、それともう一人の女性はリュートさんの奥さんかな?

 リナちゃんとルナちゃんはこちらに気づいたのかこちらに手を振ってくる。

 こちらも軽く手を振り応える。

 

 この街に滞在して結構経つが、今までタイミングが合わなかったのか奥さんと会うのは今日が始めてだ。

 奥さんと思わしき女性は、リナちゃんが大人になって大人しくなったような見た目の女性だった。

 とてもか弱そうに見えるが、それでもゼフィーリアの女性見た目で判断してはならない?

 ――っと、いつまでも人妻をジロジロみたら失礼だな。

 

「おはようございます、今日はお誘いありがとうございます」

「おう!おはようさん!んでなこっちの美人で可愛いキュートなのがうちのかーちゃんのレナだ」

「もう、あなたったら…はじめまして。リュートの妻のレナです。いつも娘2人からライさんのお話を聞いてます。2人がいつもお世話になっているようで、ありがとうございます」

 

 おっとり声で話しかけてくる。

 

「あ、はい。はじめましてライです。こちらこそリュートさんにお世話になってます」

 

 やはり、レナさんに強そうな気配はない。

 見た目通りなのだろうな、いやゼフィーリアの女性ってみんな強者ばっかだから、つい強さを測ろうとしちゃうんだよなぁ、流石に失礼だよな。

 よく見るとレナさんは髪や全体的にはリナちゃんに似ていて、目元はルナちゃんに似ている。

 

「おいおい、うちのがいくら美人で可愛くてキュートでプリティでチャーミングだからって、俺の奥さんだぞ、惚れるなよ?」

 

 ってまた見すぎたか!勿論そんなつもりはない。

 

「いえ、すいません。リナちゃんとルナちゃんに似ていると思いまして」

「まあな、二人共将来は美人になるぜ」

 

 なんとか誤魔化してると横からむーっと声が聞こえた。

 ルナちゃん?

 

「ライさん!お母さんに見とれてないで!」

「え!?だから違うって!」

「ふんっ、どうだか」

 

 あー…怒らせてしまったか?

 そりゃ自分のお母さんに父親以外が見とれてたと思ったら怒るよな。

 誤解なんだけどなぁ…

 向こうで我関せずな感じのリナちゃんに視線で助けを求めるが…

 ――口笛を吹きながら無視されたわ。

 くっ、なんとか誤解を解くには…

 そうだ!丁度ルナちゃんに渡そうとしていたアレがあった!

 

「ルナちゃん!」

 

 真面目な顔をしてルナちゃんに話しかける。

 

「は、はい」

 

 よし、聞いてくれる様だ

 

「ルナちゃんに受け取って貰いたいものがあるんだ。これなんだけど」

 

 懐から、手のひらサイズの箱を出して、箱から指輪を出す。

 これはルナちゃん用に作った魔道具で、前々からルナちゃんは包丁片手で雷撃竜(プラズマ・ドラゴン)を狩っているのを見て、なにか武器になるような物を用意してあげようと考え、魔力を与えると膨張し任意の形に変形し硬化するという特殊金属を作ったのだ。

 武器の硬さは使用者の魔力依存だが、ルナちゃんなら決して折れることのない武器になるだろう。

 ルナちゃんには前に作ると約束していた品で、怒りを誤魔化すのに使うのは気が引けるが、まあしょうがないよね。

 

「あ、約束の…ありがとうございます…ライさん嬉しいわ」

「ああ、喜んで貰えて良かったよ」

 

 ルナちゃんは受け取った指輪を自然な仕草で()()()()()にはめた。

 え!?なんで左手の薬指!

 この世界って結婚指輪の文化ってあったっけ?

 チラッとルナちゃんを見ると頬を赤らめてはにかんでいる。

 チラっと他の人を見ると

 

「あらあら、ルナちゃん良かったわね~」

「あいつ、親の前で娘口説きやがったぜ」

「ねーちゃん、ライ兄ちゃんの前だと信じられないくらい乙女になるなぁ」

 

 なんか今度はこっちに別の誤解が!

 いや、誤解でもないのか…?

 今思えば、この状況やっちまったなぁ

 

 俺もね別に朴念仁を気取る気はないんだよ。

 一応ルナちゃんが俺に好意的なものを持っているのは気づいてたんだ。

 リアランサーに行く度に隣の席に座るし、距離が近いし。

 魔道具の形状をどうするか聞いたら迷わず指輪って答えたし。

 

 最初はルナちゃんの年齢から思春期特有のものかと思ってたんだ。

 でも前髪の隙間から見えるルナちゃんの眼差しは本気に見える。

 流石に、本気の気持ちにはぐらかすのは失礼だ。

 それにこの前ルナちゃんを支えるって言ったしな。

 あれも今考えれば告白みたいなもんだったよな、アレから一気に距離が近くなったのも確かだ。

 こうなった以上真剣に答えよう。

 それに言葉にするのはやはり男からだ。

 

「ルナちゃん、もしかしたら俺の勘違いかもしれない、もしそうだったら勘違い野郎と笑ってくれて構わない」

 

 一先ず、呼吸を整える。

 ルナちゃんは口を挟まず真剣な目でこちらを見ている。

 ニヤニヤしているリュートさん達は無視だ!

 

「ルナちゃん、正直自分の中にある感情が好きという感情かはまだ分からないんだ。…だけどルナちゃんの事は魅力的だと思ってる。それに俺の過去を聞いても受け入れてくれて嬉しかった。だからルナちゃんともっと仲良くなれたら嬉しい。もし、こんな俺でもそれでもいいと言ってくれるなら、俺と付き合ってくれないか?」

 

 なんというか自分の気持ちが定まってないで付き合ってくれなんて、最低かもしれない。

 ――がこれが俺の今の精一杯だ。

 静寂が辺りに満ちる。

 一瞬であるはずの時間がまるで永遠かのように錯覚する感覚に陥る。

 

 

 

 

 

 

 ――そしてついに止まったかの様な時が動き出す。

 

「はいっ、ライさんよろしくお願いします!」

 

 それは今まで見た笑顔の中で一番の笑顔だった。

 

 




はい、という訳でヒロインはルナです。
迷いに迷いまくったのですがこうなりました。
一応主人公の外見年齢は16くらいなので、ルナは13歳で3歳違いだったら別に普通の範疇だよね!
ルナちゃん発育良い設定だし。

あとリナ父・母の名前は捏造しました。
原作に名前一切出てこないので…

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