今日もリアランサーで食事をした。
最近なんだけど、食事をする度にルナちゃんが俺の隣の席に座って話をしていくのだ。
ウエイトレスの仕事はいいのか?と聞いても、店長から許可を貰っているという。
ならいいのか?
俺もルナちゃんと話をするのは楽しいからいいけどね。
「今日も料理美味しかったよ、ルナちゃんまた明日も来るよ」
「うん、お粗末様です。明日も待ってるわ」
ルナちゃんに別れを告げ帰路につく。
ゼフィーリアで観光しつつ、魔術の研究をしていたのは前に言っていたが、その研究の成果がいくつか完成した。
完成といっても、まだ改善の余地はあるのだが――それでも現状でとりあえずの完成としたのだ。
一応、安全確認は出来ている。
それで肝心の研究成果だが――
オリジナルの魔法をいくつか開発した。
まずは結界系の術式である。
これは魔法陣を利用した術式で、結界内の力を結界外部に感知されるのを防ぐという効果がある。
この術式は今自分が旅している東大陸の半島部分――ヨーロッパくらいの広さはある――に覆われている神封じの結界を参考にしている。
神封じの結界とは約千年程前にあった降魔戦争のおり、魔族の本拠地――かつて水竜王が座していた聖地――であるカタート山脈を中心に北の魔王が4人の腹心に張らせた結界である。結界はカタート山脈が中心で、それぞれ四方の拠点を起点として張られている。
各拠点の俗称・腹心の配置を以下に並べる。
北・【北の極点】 覇王グラウシェラー
東・【滅びの砂漠】 冥王フィブリゾ
南・【郡狼の島】 獣王ゼラス・メタリオム
西・【魔海】 海王ダルフィン
5人の腹心の中で魔竜王ガーヴだけ結界に関わってないのは、対水竜王において、ガーヴは捨て駒にされたからだ。
水竜王に対峙した際、北の魔王は水竜王と同じ竜の属性を持つガーヴを介して攻撃を行ったのだ。
いくら神封じの結界で弱体化していようが
滅びこそしなかったが、ガーヴは大ダメージを受け動けなかったところを、水竜王が最後の力を振り絞り、逆に同じ竜の属性を利用され人間として転生させられてしまったのだ。
ガーヴがこうなったのも、殆ど北の魔王のせいである。
だから、ガーヴは北の魔王を恨んでいるというのもあるのだろう。
まあ、その北の魔王も水竜王によってカタート山脈に氷漬けにされ封印されているわけだが……
しかし、ガーヴと北の魔王を同時に封印するとか水竜王半端ないな。
――話は戻り
新しい結界の術式だが、空間を封じ隔絶する結界という意味で封絶結界と名付けた。
封絶結界は、通常の魔道士でも小範囲ならば展開できるくらいの燃費だ。
もちろん、広範囲に展開しようと思ったら、相応の魔力を消費する。
俺やガーヴならば超広範囲の展開も可能だろう。
最初はこの結界術式に侵入防止の防御結界も組み込むつもりだったが――参考にした神封じの結界の機能に含まれていた――それだと消費魔力が一気に膨れ上がってしまった。
常時展開が望ましい結界の燃費が悪くなったら本末転倒だし、防御結界は別で張ればいいという結論をだしその機能をオミットしたのだ。
そのおかげで術式構成の簡易化と消費魔力の低減に成功した。
ちなみに神封じの結界が何故あれ程の範囲に高威力の結界を維持出来ているかだが、神封じの結界は先述した通り4つの拠点を起点としている。
直接見た訳ではないが、参考にした時の研究結果から見ても大規模な結界装置を利用している事はほぼ確実だろう。
でないと魔王の腹心4人といえど、あれ程の結界を千年単位で維持し続けるなど不可能だからだ。
その4つの結界は4つの面をそれぞれが担当することで、あそこまで強力な結界となっているのだ。
恐らくだが、結界を維持している腹心のうち、一人でも倒れれば結界は維持できなくなり解除されることだろう。
ガーヴにはこの結界の術式を組み込んだ魔道具を渡すつもりだ。
次の成果だが、長距離転移魔術である。
現在の俺の活動範囲は神封じの結果内だが、ヨーロッパくらいの広さはあるので広大だ。
ガーヴの緊急時に駆けつけるには、距離の問題を解決しなければならないと考え開発したのだ。
魔族や神族の転移はアストラル・サイドを介した移動なので長距離の移動には向かない。
既存の魔術に距離を無視した召喚系の呪文がある。
俺はこの召喚系の呪文をアレンジし、召喚とは逆にこちらから向こうへ渡るというアプローチを試したのだ。
この術式の開発は大変だった…
召喚系の呪文のアレンジとはいったものの、殆どの部分をオリジナル構成して作り直した様なものだったのだ。
召喚とは逆と簡単にいうが、殆ど別の呪文になってしまった。
魔法陣の技術も応用したこの魔術は、距離に比例して消費魔力も莫大である。
恐らく一般の魔道士が使おうと思ったら、干からびてミイラになる可能性がある。
少なくともリナちゃんくらいの魔力キャパシティがないと、使用は止めておいたほうがいいだろう。
この魔術は起点となる自分の魔力を目印に、その魔力のある場所に逆召喚で転移の為の魔力を送り、転移先と転移元にゲートを作成、固定、同調させそれを潜り抜け移動するというものだ。
その特性から転移するには目印が必要の為の為、目的地に転移用の魔法陣を設置するか、魔力の籠った
何故わざわざ魔法陣を設置するのか、魔法陣を設置するより魔道具を目印にした方が楽じゃないか、と思うかもしれないが魔道具はあくまで魔力の目印にすぎず、ゲートを安定させるのに多く魔力を消費してしまう。
補助術式を組み込んだ魔法陣の方が燃費がよく、転移するなら魔法陣の方がいいのだ。
燃費は魔法陣を利用した転移の消費魔力に対して魔道具を目印にした転移の場合はおよそ3倍の消費である。
転移に魔法陣を必要とする訳で必然的に自分が直接そこに行く必要がある。
つまり基本的には自分の旅したことのある場所しか行けないのだ。
あ、魔道具を目印に出来るなら魔道具を各地に運んで貰えばいいとか思う?誰もが考えるだろうけど、そんなに都合良くはいかない。
魔法陣の場合、組み込まれた補助術式により転移先の安全が確認出来るのだが、魔道具を目印にした場合はそれが出来ないのだ。
なので信用出来る者が持っている魔道具くらいしか転移先に出来ないのである。
今のところ該当するのはガーヴくらいである。
この転移は現在神封じの結界内部でしか使用出来ない。
もし俺が神封じの結界の外に出ようと思ったら、結界の端まで近づき結界の構成に干渉して中和し、穴を開けて通過するしかない。
まあ、この神封じの結界内も相当広いので、当分の間は結界内で旅を続けるつもりだが。
ああ、ちなみに魔族であるガーヴの場合はすんなり通過できる。
あの結界は主に対神族の結界であるので。
次に最後の研究成果は飛行魔術である
この魔術は有名ではあるが非常に使い手の少ない術の一つである。
さらに風の結界により防御魔法としても作用する。
これだけ聞くといいこと尽くめの呪文に聞こえるのだが、この呪文には落とし穴がある。
習得・制御が非常に困難なのだ。
あまりの難度にこの術は「滅び行く術のひとつ」なんて言われることもある。
運ぶ重量・高度・速度などの総和が術者の技量・力量に比例するのだが、重い荷物をもっていたりすると、飛行どころか浮かび上がることすら出来ないのである。
しかも
しかも集中を切らした場合、その時点で術は解除されてしまう。
高速移動している最中に風の結界が解除されたら、生身で放り出されるため墜落したら命に関わる。
それらの理由からこの魔術の利用者は少ないのである。
この魔法の利用者が少ないのは制御の難しさ故というのは説明した通りだ。
なら制御を簡単にする魔道具があればいいんじゃない?と考えたのだ!
魔道士をコンピュータ、術式をプログラム、術式のコントロールを演算と考え、困難な演算の部分を一部魔道具に肩代わりさせる物を作ったのだ。
コンピュータは応用が利かないが、演算速度に関しては人間の比じゃない。
流石にコンピュータそのものは作れないが、元々魔道具とは魔力で機械的なことのできるものである。
古代には魔法と科学が融合した文化もあったみたいだし、そういうことなのだろう。
ともかく、
応用の必要な術の挙動の変化などは術者の判断に任せ、演算部分を魔道具に負担させる、この試みは果たして成功した。
まず術の難度は大幅に下がり、制御が簡易になったお陰でリソースを他の魔法に回せるようになった為、飛行中に別の魔法の使用も可能となった。
制御が楽になったので無駄なムラが無くなり、消費魔力自体も低下したのだ。
術式の難度、魔力消費の低下でこの魔道具を使えば、恐らく一般の魔道士でも
この魔道具をリナちゃんに見せたところ大興奮で。
「ライ兄ちゃん!この魔道具すごいよ!
と大はしゃぎだったのだ。
それでこの魔道具はとても凄いもので、魔道士協会に研究結果を提出し保護してもらうべきだと言って来た。
――この世界の特許みたいなものがあるらしく、登録すれば魔道士協会が複製品を販売する時に、特許料が一定割合入るらしい。
別に俺としては
「お金は大事だよ!お金がなければ魔法の研究も出来ないし、魔道具の高価な素材だって買えないし、何事も自由度が違うよ!」
とお叱りを受けたので、まあ広めても危険な魔道具でもないし魔道士協会に提出したのだ。
そしたら魔道士協会は大騒ぎのお祭り騒ぎになり、あれよあれよのうちに魔道士協会に対する貢献多大ということで、魔道士協会より称号を授かった。
俺に対する称号の色は「黒」らしい髪と瞳が黒だからか?
称号と共に同色の
まあ、
一回着てみたが、ルナちゃんに見られ、クスクス笑われた。
うん、やはりこれはクローゼットに仕舞っておこう。
ということで以上3つが、ここ暫くの研究成果である。
会話、会話が少なすぎるうううう
今回は、独自設定のオンパレード
原作の設定を大事にしつつ独自の要素や解釈を入れ魔改造をするのは、二次小説の醍醐味の一つだと筆者は勝手に考えてますので、つい盛ってしまいました(ノ∀`)