スィーフィード世界で楽しく生きてみよう   作:トロンベ

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第3話 ゼフィール・シティの雑貨屋さん

 さて、ゼフィーリア王国の首都ゼフィール・シティに着いた。

 着いたのだが、この国はなんかおかしい。

 いや、おかしいというもの住民が奇抜な行動をとったりとか、言動がおかしいというわけではない。

 

 どうおかしいかと言うと、一つ例を挙げよう。

 ゼフィール・シティへの道中の話だ、とある村で牛が暴れており、農家の人が暴れ牛に突っ込まれそうになっていたのだ。

 俺は直ぐ様反応し、助ける体勢に構えたのだが、農家の人はあろう事かすたすたと落ち着いた表情で暴れ牛に向かい、なんと軽々受け止め ヒョイっと抱えながら「おーよしよし、機嫌が悪かっただか?」と言っていた。

 

 この農家の人だけだったら、たまたま達人が農家をやっているだけの可能性もあるが、他にも素手で薪を割っている木樵や、生身で水上を走り、残像が残る程の速さで腕を振るい池の魚を次々打ち上げる者など、道中かなりの確率で超人と遭遇した。

 

 いや、やろうと思えば俺でもできるけども、一般人ができるかと言われれば首を横に振らざるを得ない。

 

 道中やけに魔物の姿が少なく単に生息数が少ないだけかと思ったが、こんな超人ばっかの国で弱い魔物が生き残れる訳ないな。

 そりゃこの国は平和な国と言われる訳だ

 

この国の住人のおかしさは、もうそういうものなんだと考えるしかないか。

 

 

とりあえず宿を取り、道具や下着などの替えが心許ないので雑貨屋に向かうことにした。

 

 雑貨屋に着くと雑貨屋の前には8歳くらいのオレンジがかった茶髪の女の子がいた。

 女の子はこちらをじっと見つめこちらにとことこと向かってきた。

 

「にいちゃん、にいちゃん、うちの雑貨屋で買い物?にいちゃん装備から見ても剣士ってだけじゃなくて魔道士でもあるでしょ?そんなにいちゃんにおすすめの商品があるんだけど、ちょっとみてくれないかしら?」

 

 どうやら、この少女は幼いながらも立派な商売人の様だ。

 微笑ましげに見つつ答える。

 

「ああ、ちょっと旅の道具と下着を買いに来たんだけど、おすすめの商品ってのは何かな?」

「ふっふっふー、このあたしが作った魔道具なんだけど…おっと子供が作ったからって大したものじゃないと思った?いいから騙されたと思ってみてみてよ」

 

 少女は自信満々のドヤ顔だ。

 この国の住民の異常性は既に分かっているので見かけで判断せず、とりあえずその魔道具とやらを見せてもらうことにする。

 

「それじゃ、商品を見せてくれるかな?」

「お、にいちゃん話がわかるね。んと…これなんだけど」

 

 少女は身に付けたショルダーバッグから魔道具をいくつか取り出した。

 おお、確かに言うだけあって今まで他の街で見た魔道具よりも完成度が高く見える。

 俺も自作で魔道具を作るから分かるが、明らかに自分の作ったものより完成度が高くみえる。

 俺の作った魔道具は例の白い力や黒い力を付与して、無理やり高性能にしているだけなのだ。

 この少女の作った魔道具は技術のみで完成されている。

 これは自分の研究の為の資料として買っておこうか。

 

「それじゃお嬢ちゃん、その魔道具全部買うよ」

「え!?全部!これ一応素材にいいもの使ってるから全部でこれくらいするのだけど…」

 

 少女が提示した金額は確かに高かったが、俺の懐具合からしたら十分払える金額だった。

 

「構わない、全部頂くよ」

「ふへぇー、にいちゃん金持ちだねー」

「まあ、魔物退治やら盗賊狩りやらで稼いでるからね」

「ふーん、盗賊狩りって儲かるんだねー」

「おっと、お嬢ちゃんみたいな少女は興味もっちゃいけない。折角いい魔道具作れるんだからそれで稼いだほうがいい」

「うーん、わかった!」

 

 どうやら分かってくれた様だ

 幼気な女の子に変な事をふきこんで誤った道に進ませるところだった。

 あぶないあぶない。

 

「毎度有りぃ~♪にいちゃんのお陰で新しい魔道書を買う資金ができたよ、ありがとう!」

「へー、お嬢ちゃんくらいの歳で魔道具だけじゃなく、魔道にも精通しているなんて凄いな!」

「ふっふっふー、なんて言ったってあたしはゼフィール・シティが誇る魔導の天才だからね!」

 

 再びドヤ顔のお嬢ちゃん。

 だが、直ぐにドヤ顔を少し歪めて少し頬を膨らませる。

 

「にいちゃん、さっきから嬢ちゃん嬢ちゃんって、あたしにはリナ・インバースって立派な名前があるんだからね!リナって呼んで!」

「ん、ああごめんごめん。えっとリナちゃんって呼べばいいのかな」

「うん!」

 

 リナちゃんは満足なのか、満面の笑顔で返す。

 正に天使の笑顔だ。

 

「リナちゃんの名前だけ教えてもらって、俺の名前を教えなかったら不公平だね、俺の名前はライ、ライ・ラーグ。気軽にライって呼んでくれて構わないよ」

 

「うん!ライにいちゃん!」

 

 おー、素直でいい娘だなー。

 やっぱり子供は素直が一番だな!

 

「さてと、魔道具はいい買い物だったけど本来の買い物もしないとね。リナちゃん店内の商品を案内してくれないかな?」

「いいよ!道具と下着だったね。父ちゃーん!お客さんだよー!」

 

 リナちゃんは店内に向けて大声をかける、と店内から声が返ってきた。

 

「おう、リナか聞こえてるよ!お客さんか、ちょっと待ってろ」

 

 ガチャっと扉が開くと中から出てきたのは、何故か釣竿をかついだ長髪の青年だった。

 この人できる!

 この人も相当な実力を持っているようだ、佇まいに隙がない。

 まあ、この国に来てできると感じた人はかなり多いのだが…

 

「客ってのはお前さんか、剣士、それに魔道士でもあるのかかなりやれるだろ、俺の感がビンビン反応してやがる。まあ、それはいいそれでお客さん何の物入りでしょうか?」

「はい、とりあえず旅の道具一式の補充と下着を数点」

「おう、ちょっと待ってろ今適当に用意するから、そこから選んでくれ」

 

 そう言うとリナちゃんのお父さんは、店内から商品をかき集めテーブルの上に並べる。

 

「それじゃ、これとこれと…うんこれも全部ください」

「お、いい買いっぷりだね~、よっお大尽!」

 

 買い物を済ませ、どうしようかなと思案する。

 

 グゥ~とお腹が鳴る

 そういや、お腹も減ったな飯でも食べにいくか

 

「すいません、飯を食べに行こうと思っているのですが、ここら辺でいいお店ってありますか?」

「んー、そうだなこの近くならうちの上の娘がアルバイトをしている店なんかがオススメかな、娘がアルバイトしてるから贔屓してるって訳じゃないぞ、本当にオススメだから勧めているんだ」

「はは、ありがとうございます。それじゃ早速行ってみます」

「おう、暫くこの街に滞在するならご贔屓にしてやってくれ。勿論お前さんが店の料理を気に入ったなら、だけどな」

 

 リナちゃんのお父さんはニヤリと笑う。

 もう一度礼を言い、雑貨屋を立ち去ろうとすると、リナちゃんが手を振りながら声をかけてきた

 

「ライにいちゃーん、街に滞在するなら今度魔道の事や魔道具のことで色々話しよーね!」

「おー、いいぞー、暫くは観光だから時間はたっぷりあるし、暇な時にまた来るよ」

 

 リナちゃんは再び満面の笑顔で大きく手を振り、こちらもそれに返す。

 今度こそ別れ、オススメの喫茶店「リアランサー」を目指すのだった。

 




幼女リナは天使、はっきりわかんだね

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