この神封じの結界の中には過去幾多の文明が栄え、そして滅んでいった。
世界全体で見ればそれほど広くないヨーロッパ程度の大きさだが、その内部では高度な魔法文明が栄えたこともある。
有名な文明と言えば現カルマート公国がある場所に存在したという、レティディウス公国という魔法文明だ。
五百年程前に英華を極めたらしいが、時の公王が不老不死の研究を推奨した結果、国は乱れに乱れたった二年程で滅んだらしい。
ちなみに、そのレティディウス公国の金貨は希少価値が高くマニアに高く売れるらしい――リナちゃん情報――
そしてそんな滅んだ文明の遺跡が各地に存在しており、ヨーロッパ程の広さの中に数え切れないほどの遺跡がある。
だが遺跡は巧妙に隠蔽されており、数が多い割に見つけるのは至難の業らしい。
大抵はその遺跡に関する古文書や地図などを手がかりに探すのが一般的な発見方法だ。
斯く言うオレも過去に遺跡を発見したことがある。
その時は、多少の金貨と宝石、後は魔道書の類が数点あったくらいで遺跡の規模としてはかなりしょぼいのだが。
さて、今回何故遺跡の話をし始めたかと言うと…
「ライさん!宝の地図ですよ!探検です!探しに行きましょう!」
「お城にある蔵からみつけました。ライ様、探索には是非とも私を連れてってくださいね」
そう、アメリアちゃんとグレイシアちゃんが宝の地図を発見したのだ。
そしてそれをオレの所に持ってきて一緒に探索をしようと持ちかけてきたのだ。
とはいえ…
「いや二人共、仮にもお姫様でしょ。そんな冒険なんてフィリオネルさんだって許してくれないんじゃないかな?」
「ほーっほっほっほっほ。ライ様、お父様は可愛い子には旅をさせろ!と申しておりました。ですので私達を連れてっても大丈夫です」
「それに父さんはライさんが一緒なら、大丈夫だろうと言ってました!ですので是非一緒に宝探しを!」
おいおい、フィルさんそれでいいのか、相変わらず無茶苦茶な人だなぁ。
それと、グレイシアちゃんは最初の頃は人見知りしていたらしい。その証拠が高笑いである。
アイシアさんの真似をし始めたらしいが、まだ慣れてないらしく他人の前では抑えていたらしい。
まあ、それは兎も角だ、宝の地図かぁ…
セイルーンの城で発見したらしいし、期待は出来る。
うーむ、オレも遺跡自体には興味あるんだよな。
二人から受け取った地図を見る限り、セイルーン・シティからそんなに離れてないらしいし、まあ、フィル殿下の許可が出てるなら仕方ないか。
「うーん、仕方ないな、だけど連れてくのはいいけどこれだけは守ってくれ。絶対にオレの指示には従う事、じゃなければ二人の身を守ることが出来ない」
「はい」
「分かりました!」
うん、いい返事だ。
とりあえずそれを信用し、二人を連れて遺跡探索をすることになったのだ。
そして次の日。
本日は快晴であり、非常に探索日和な空模様であった。
地図の示す場所は、セイルーン・シティから半日ほど離れた場所に存在しており、遺跡の探索を考えると一泊は必要な計算だ。
一応、彼女もちとはいえ男のオレと女の子二人を泊りがけの冒険に送り出すなんて、フィル殿下の教育法が心配だ。
ふと二人を見てみる。外での探索ということもあり、二人は普段より活動的な格好をしている。
アメリアちゃんは白い服にズボン、腕には五芒星の入った
グレイシアちゃんは黒色のやや露出の多い革の服で、年頃の女の子がそんな格好していいのか?と思う格好である。
というか、これ確実にアイシアさんの影響だな――アレよりは露出控えめだが。
「ライさん、グレイシア姉さんは私よりも白魔術が得意なんですよ。白魔術の大天才っていわれてます!ただ人に教えるのがちょっと不得意なので、ライさんには私が教えてましたが」
「やだわアメリアったら、でも私白魔術は得意だけど精霊魔術の方が好みだわ。なんというか魂に響くものがあって。特に氷系の精霊魔術は相性いい気がするの。あと最後のは余計よ」
「そっか、精霊魔術だったらオレもいくつか教えられるかもね。氷系はレパートリーが少なめだけど、覚えているものもあるし」
「はい!是非教えてください」
「あー、ライさん!私にも教えてください。私はライさんの弟子なんですから!」
あー、そういや弟子設定あったな。一応、彼女には盗賊退治の話や格闘の稽古などをしている。彼女は才能があり、格闘は既に一流の実力があるように思う。
話の流れからして、グレイシアちゃんも弟子になりそうな感じだが。
セイルーン・シティを出発してから、チンピラに絡まれる事もなければ、魔族に遭遇することもなく、はたまたドラゴンの襲来などというイベントもなく無事に地図の示す地点へ到着した。
「さて、地図によるとこの辺りだけど…なになに、一本杉の近くにある大岩の影にある印から東に二十歩の場所にある壁にある突起を押せ?一本杉って…」
辺りを見回すがどこにも一本杉など見当たらない。
いや、そんな数百年前の一本杉が今もあるわけないだろ…
「うーん、見当たりませんね~一本杉。まあ、かなり古い地図の様ですから無くても不思議じゃないですね」
「まあ、仕方ないわね。一旦休憩してから地図に書いてある大岩を探しましょうか」
とグレイシアちゃんがバッグから水筒を取り出そうとした時、グレイシアちゃんがよろけて、立て直そうと「壁」に手を付いた時それは起こった。
カチッ
バコン!
「キャアアアアアアアアァァァァァ…」
バタン!
グレイシアちゃんが押した壁が開き、その開いた空間にグレイシアちゃんが倒れこみ中に消えて行き、その後それが閉じた。
「――グ、グレイシアちゃーーーーーーん!?」
「グレイシア姉さん!?」
オレは一瞬呆けたが、すぐに正気に戻り慌ててグレイシアちゃんが入っていった壁を調べる。そこには突起があり一旦稼働したせいか他の場所と違う色をしていた。
「これ地図に書いてあった突起か!まずはグレイシアちゃんを追わないと」
オレは壁の突起を押す。
――カチッ
――バコン!
すると壁が開く。オレは急いで中を確認するとグレイシアちゃんがびっくりした顔で女の子座りしている姿が確認できた
「ふぅ…良かった無事か」
「びっくりしたわ。急に壁が開くなんて」
「姉さん昔から変な運ありますよね」
急に壁が開いてビックリはしたが無事、入口を見つけることが出来たということは運が良いということにしてもいいだろう!(強弁)
「さて、ここからは一応罠とかあるだろうし慎重に行こう」
入口を入り中を覗くと真っ暗闇だったので
光源により、中を見通すと中は石造りの通路になっており、保存魔法がかけられているのか、数百年前の建造物とは思えない保存状態だった。
俺達は地図の裏側に書いてある遺跡内部の地図を頼りに進む。
「えっと右にある壁にあるボタンを…」
「あったわ!これね」
「…押してはならない」
流石に地図便りに進むだけあって道中の罠は全部回避できている。
攻略本あると探索楽だわ。
ん?グレイシアちゃんが立ち止まって、どうしたんだ?
グレイシアちゃんの様子がおかしいので、訝しんで見てみると。
「ボタン押しちゃったわぁぁぁぁぁぁ」
なにぃぃぃぃぃぃぃ!?
――ガコン!
音と共に床全体が開き、オレ達は底の見えない暗闇に放り込まれる。
オレは咄嗟に思考を高速化させ、放り出された二人に指示を出す。
「飛行呪文を使うんだ!」
「は、はい!
「えぇぇぇぇっと
ビュン、バキィ!
なにぃぃぃぃぃぃぃ!?何故に
オレとアメリアちゃんは
っていうか、今人体がしちゃいけない程の音が鳴ったんだが!
「――グレイシアちゃん!」
急いでグレイシアちゃんの元へ飛んでいくと、グレイシアちゃんは頭にでかいタンコブを作り、目を回して気絶していた。
「きゅぅ…………」
「これは…急いで回復呪文を唱えないと」
頭を打っているので、急いで回復呪文を唱えようとする。
唱えようとしたところで急にグレイシアちゃんがガバっと飛び起きた。
「い、痛いわ!ふっ私もまだまだねこの程度の罠にかかるなんて…!」
「グレイシアちゃん!頭大丈夫?」
勿論、頭の出来を聞いたわけじゃなく頭のタンコブの事だ。言うまでもない。
「ホーホッホッホッホ。大丈夫です、この程度日常茶飯事です」
「姉さんは、普段お淑やかに見えるんですけど結構お転婆で、しょっちゅうどこかにぶつかったり、転んだりしてるせいで鍛えられたのか、かなり丈夫なんです」
そ、そういう問題なのか?
っていつの間にかあんなに見事なタンコブが消えてる!?
「ま、まあ無事で良かったよ。一応回復呪文はかけておくよ。しかしグレイシアちゃん、なんで
回復呪文をかけながら疑問に思ったことを聞くと、グレイシアちゃんは頬を赤く染めながら視線を逸らす。
「そ、その私お恥ずかしながら
――まじか…
「姉さん、白魔術や他の精霊術はかなり器用なのに何故か
「うーん、それじゃあ今みたいな時困るんじゃ…でもそうか
オレは自分の腕に填っている腕輪型の魔道具を外し、グレイシアちゃんに渡す。
「あ、ありがとうございます」
「姉さんいいなぁ、でも帰ったら私にもくれるって話だし、ライさんありがとうございます」
トラブルがあったので、その後注意度を上げて探索を続けた。
すると、突き当たりに一際目立つ豪華な扉が見えた。
「どうやらここが、終着点みたいだ」
「何が待っているのか、ドキドキしますね!」
「楽しみね!古代のお宝かしら?それとも魔道具かしら?」
オレは慎重に扉を押し開ける。
ギィィ
扉がゆっくりと開く、部屋の中は暗い通路とはうって変わって光に溢れていた。
そしてそこに待ち構えていたのは…
「待っていたぞ!侵入者諸君!この数百年遺跡の中で一人待ち続けていたが漸く人に会えた!思わず人恋しさに気が狂うと思ったこともあったが、私の野望を胸になんとか正気を保って待っていた甲斐があった!歓迎しよう!」
メガネを掛けた痩せ型で黒髪の
20年程前、近所に偶につり銭が少なかったり、多く返ってきたりする自販があって、店の人に報告したら直すっていってけど、その後一向に直ってなかったという。
つり銭が減るか増えるかのギャンブルで密かな楽しみだった思い出。