スィーフィード世界で楽しく生きてみよう   作:トロンベ

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第16話 歓迎と黒の…

 今エドワードさんの案内でセイルーン城の廊下を歩いている。

 先程もいったとおり、城内は品の良い内装であり、所々魔力を感じさせる装飾もあることから、なにやら仕掛けなどありそうだ。

 流石に大国の王城なだけあるか。

 一緒についてきているアメリアちゃんは、後ろをトコトコ付いてくる。

 その姿は、元気なカルガモの子供のようで微笑ましい。

 しばらく歩き、曲がり角を六つくらい曲がった所で、一際大きな扉が見えた。

 

「ライ様、こちらでフィリオネル殿下がお待ちでございます」

「はい、案内ありがとうございました」

 

 ガチャッ

 

「――おお、ライ殿!来てくれたか!待っておったぞ!」

 

 扉を開けた瞬間、フィリオネル殿下が待ち構えていた。

 いきなりだからちょっとビックリしたよ。

 地味に気配消してるんだもの、ここら辺王族といえど、実力を感じさせる所だね。

 ちらっと室内を見回すと、フィリオネル殿下の他にグレイシアちゃんがいた。

 フィリオネル殿下の後ろで大人しくしていおり、こちらを見るとちょこんとお辞儀をした。

 今日のグレイシアちゃんは黒と白のプリンセスドレスを着ている。

 長い髪と合わせて、まさにお姫様といった様相である。

 

「本日は突然の訪問失礼しました」

「何を言うか、ワシがいつでもお主を歓迎するといったではないか!それに今日は丁度予定もなかったところだしな!第一王子といっても、父上に比べたら暇なものよ!おお、そうだ!ライ殿があの時妻を助けてくれた時の精霊の泉で手に入れた秘薬にて父上はすっかり元気になった!あの時妻に万が一の事があったら、間に合わなんだところだったかもしれぬ、その事も礼を言うぞ!」

「ライ様、ありがとうございます!」

 

 フィリオネル殿下に続けてグレイシアちゃんもお礼を言って来た。

 そういえば、あの時精霊の泉に白魔術の触媒たる秘薬を取りに来ていたと言っていたな。

 しかし、白魔術の本場セイルーン・シティの白魔術で触媒が必要な程の病って結構やばかったのかもしれない。

 さて、王族から礼を言われて謙遜するのも逆に失礼かな?素直に受け取っておくほうがいいかな。

 

「自分の行動でお役に立てたなら光栄です」

「うむ!今夜は歓迎の為に晩餐を用意させておる、是非とも食べていってくれい!アイシアは今所用でおらぬが、晩餐の頃には戻るだろう。――所で、後ろにアメリアの姿が見えるが、どうしたのだ?」

 

 後ろにいるアメリアちゃんは今まで発言していなかったが、フィリオネル殿下が気付き聞いてきた。

 後ろにいたアメリアちゃんはぴょこんと俺の前に出てきて、フィリオネル殿下と俺の間に来て言う。

 

「父上、私は正義の味方たるライさんに是非弟子入りをさせて頂きたく、ライさんにお願いをしていたのです!その為に、ライさんに許可を貰うために着いて来たのです!」

「ふむ、なるほど!確かにライ殿は近年希に見る正義の使徒!正義に憧れるアメリアが弟子入りしたいというのも頷ける!だが、ライ殿もお忙しい身迷惑ではないのかな?」

「そ、そんなぁ、ライさん、駄目でしょうか…?」

 

 そんな泣きそうな目で俺を見ないでくれ!俺は泣くルナちゃんと子供には弱いんだ。

 仕方ない、子供の期待を裏切る訳にはいかないからな。

 

「えっと、何を教えていいかは解らないけど、とりあえず冒険の心得くらいならこの街に滞在している間でいいならいいよ」

「――本当ですか!ありがとうございます!ライさん!」

「アメリアったら、ライ様に甘えて…ずる…図々しいわよ?」

「ガハハハ、アメリアめ、アイシアの昔のねだり方にそっくりだわい!」

 

 さっきの泣きそうな顔はどこへか、一瞬で満面の笑顔になるのを見ると、どうやらしてやられた様だ。

 子供といえど、女ということなのか…

 

「にしても、ライ殿。プライアム・シティからここまで来るのに随分時間がかかったの、何かあったのかと心配しておったぞ!」

「えっと、ハハ。実は各地の特産や名物料理を巡っておりまして…随分回り道をしてしまいました」

「ふむ、なるほど!セイルーンの名物を楽しんでくれたなら、セイルーンの王族として嬉しいことだわい!」

「はい、各地の料理、肉料理や香辛料を使った料理など色々楽しめました」

 

 というか、楽しみすぎてセイルーン・シティに着いてから一週間、カルィーの研究を手伝ってたのはここでは秘密だ。

 

「うむ、ときにライ殿。お主にあの時渡した報酬では此度の礼には全然不足しておると思っておる。別れ際に言っていた通り、何か考えてきてくれたかの?」

 

 あ、そういや報酬に何か考えておくって言ったんだった。

 あー、どうしようかすっかり忘れてたとは言えない…

 う~ん、そうだな…あ!そうだ丁度着いて探そうと思ってたあれを頼むか。

 

「えっと、セイルーンの拠点が欲しかったのですが、そんなに広くなくていいのですが、セイルーン・シティの郊外に家を一軒お願いできますか?」

「その程度ならお安い御用じゃ!しかし郊外?郊外じゃなくとも街の中にも用意出来るが?遠慮することはないぞ」

「いえ、魔術の研究をする関係で街の中だと結界に干渉する恐れがあるので…」

「ふむ、そういうことか!解った!確か丁度いい物件があったはず、手配しよう!」

「ありがとうございます」

 

 ふー、これで拠点を探す必要も無くなったし、一軒家くらいなら過剰なお願いにもならないだろうし、丁度良かったな。

 

「ライ殿、晩餐までは時間が掛かる。それまでの間ゆっくりと寛いでくれい!悪いがワシは執務が少し残っておってな、それを片付けなければならんのだ」

「わかりました、ありがとうございます」

「ライ様、晩餐までの間旅のお話聞かせてください」

「あー、姉さまずるい!ライさん私にも旅の間の正義のお話聞かせてください!」

 

 正義の話は出来るか分からんが、旅の話ならいくらでもある。

 晩餐までの丁度いい暇つぶしになりそうだ。

 

「そうだなぁ、それじゃあ俺がプライアム・シティに着いてから一週間くらい経ったときの話をしようか。あれは………――――」

 

 

 

 

 

「――――………という訳で、あの時は3つの盗賊団の三つ巴に飛び込んだ末に退治したわけなんだ」

「流石、ライさんです!正義の行い感動しました!」

「ライ様、お母様を助けるだけではなく、いつも正義の行いを心がけているのですね」

 

 グレイシアちゃんとアメリアちゃんに話したのは盗賊団3つを退治した時の話。

 まあ、退治といってもちゃんと彼らのお宝で持ち主がわからないものはしっかりと頂戴しているわけだが、勿論二人の少女にはその部分は言ってない。

 うん、正義の味方と崇められてるのにお宝は頂いたなんて言えないよなぁ。

 仕方がない。

 

ガチャッ

 

 扉が開き、入ってきたのは執事のエドワードさんだった。

 

「ライ様、グレイシア様、アメリア様、晩餐の準備が整いました。食堂へご案内します」

「わかりました、お願いします」

 

 エドワードさんの案内に従い移動する。

 しばらく歩くと、食堂らしき部屋の扉が見えた。

 

「こちらでございます」

 

 エドワードさんが扉を開くと、長テーブルには豪華な食事が用意されていた。

 おお、こりゃすごいな。

 セイルーン牛のローストビーフのでかい塊とかあるぞ、他にもセイルーン・シャモの料理や、あれはセイルーン湖燕の巣のスープ、うお!あれは貴重なゴールデンピーチじゃないか。

 

「うわ~、すごい料理ですね」

「普段は豪華な料理は食べないんだ?」

「ライ様、いくら王族でもこの様な贅沢な料理は特別な記念やパーティくらいしか食べないです。今日はライ様を歓迎する為に奮発したのだと思いますわ」

 

 アメリアちゃんが料理を見て感嘆し、俺が疑問に思うとグレイシアちゃんが答えてくれた。

 

「ライ様はこちらのお席へどうぞ、フィリオネル殿下とアイシア様は直ぐにいらっしゃいますので、少々お待ちください」

 

 エドワードさんの言う席に着き待つことにする。

 俺の両隣の席、右側にグレイシアちゃん、左側にアメリアちゃんが座る。

 席で待つこと5分ほど、エドワードさんが入口の方へ向かう。

 

「フィリオネル殿下、アイシア様、ご入来でございます」

 

 俺は慌てて席から立ち上がり、扉が開くのを待つ。

 そしてゆっくり扉が開き、中に入ってきたのは…

 

「ホーッホッホッホ!ライさんお久しぶりです。今日はようこそいらっしゃいました。あの時の事もう一度御礼申し上げますわ。今日はライさんの為に特別に豪勢な料理を用意しました。是非ごゆっくりご賞味くださいまし」

「うむ!先程も言うたが、もう一、妻を救ってくれたこと礼をいうぞ!用意した料理楽しんでいってくれい」

「あ、は、はい。…ありがとうございます」

 

 もう一度お礼を言われ、もう少し良い返し方がありそうだが、今俺は相手の言葉が言葉半分で脳内を通り過ぎていく状態であった。

 何故かというと、入ってきたフィリオネル殿下は先程と変わらないのだが、今日始めて会うアイシア様の格好が…

 まるで前世にあった特撮に出てくる悪の幹部の様な…まるで女王様とお呼び!といっても何も不思議ではない格好なのだ。

 具体的に言うと、ボンテージタイプの黒のビキニアーマーに首には髑髏の首飾り、肩はトゲだらけのショルダー・ガード、布面積的に殆ど裸に近い。

 王族の、それも夫の前でその妻をじろじろ見るわけにはいかないのだが、どうしても気になってしまい、チラっと見てしまう。

 そんな俺の様子に気づいたのかフィリオネル殿下は、言う。

 

「おお!妻の格好が気になるか。これは妻の趣味らしくてな!わしは構わないのだが、他の王族の連中が城外でするなと言うのでな、城内では許可しておるのだ。趣味くらい別に構わんと思うのだがな、まあ、仕方あるまい」

 

 いや、構ってください。

 どう考えてもあの格好の王族は問題あると思います。

 だが、アイシア様の格好を見たこと自体は特に言われなかった。

 恐らくだが、断言できる、よくあることなのだろう。

 っていうか、ほかの王族の人達反対するってことは比較的常識人だったみたいだね。

 

「ホーッホッホッホッホ、この格好の良さが解かるのは、センスある貴族やセレブ達だけですわ。一部のセレブの集まりではこの格好は流行り始めていますの」

「お母様素敵ですわ」

 

 これ流行り始めてんのかい!しかもグレイシアちゃんまで…

 ああ、無垢な女の子が変な思想に染まっていく…

 アイシア様の格好は今に始まったことじゃないだろうし、もう手遅れなのだろうか…

 というか、セレブや貴族が皆普段からこんな格好している国とか嫌だ。

 不幸中の幸いは、アメリアちゃんの顔が引きつっていることだ、どうやらアメリアちゃんのセンス的にはなしらしい。

 それだけが救いだ。

 

 それから暫く、気持ちが落ち着くまで少々の時間が掛かったが、なんとか視線を向けないことで平静を保ち、晩餐を楽しみ、フィリオネル一家と会話を楽しむのだった。

 

 あ、食事は物凄く美味しかったよ。

 カレーは別枠として、この国に来て一番美味しかったと断言出来るくらい。

 




独自設定の裏話
アイシア暗殺の真相は、このアイシアの格好を嫌った伝統を重んじるある王族の一人が起こしたものだったり。
ちなみにその貴族は既に粛清されており、その話は作中では一切書く予定はありません。
原作には一切登場しない王族の一人と考えてください。


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