スィーフィード世界で楽しく生きてみよう   作:トロンベ

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第9話 夏だ!海だ!水着だ!

 出発前に色々あったが、なんとか出発し目的地である浜辺に着いた。

 目的地にかなり近いという場所になっても海など見えなかったのだが、山にポカっと開いた洞窟を抜けると、そこには見事なマリンブルーに輝く海と白くサラサラとした綺麗な砂浜があった。

 海以外の三方は山に囲まれており、緩やかな上り坂の先を見ればログハウスらしき物も見えた。

 リュートさんはマル秘スポットと言っていたが、これを見れば納得だ。

 

 さて、冒頭で言った色々。

 レナさんに見蕩れていたという、あらぬ誤解を回避する為にプレゼントを渡したところはでは良かったが、その後…

 その場の勢いと雰囲気でつい告白してしまい、受け入れられてしまった訳だ。

 今思えば、アレってルナちゃんの作戦だったかもしれない。

 なんかあの後、リナちゃんが「ルナねーちゃん、良かったね計画通りだね!」とか言ってたし。

 小声だったが、今回は難聴系とはいかずきっちり聞こえてしまった。

 

 ――あ、例えそうだったとしても、俺も冗談や酔狂で告白した訳じゃないし、俺もルナちゃんに前から少なからず好意はあったのだ。

 それにこの前のルナちゃんの泣いている顔を見てから、支えたいと思った時から妹みたいな女の子から、意識する異性へとなっていたのかもしれない。

 ともかく、告白した以上、男としてしっかりと真剣に付き合うつもりだ。

 

 

 まあ、そのことはいいんだよ。

 もう解決した話だし、俺とルナちゃんが付き合うことに誰も反対していないし。

 むしろ、その場の皆が祝福してくれた。

 

 

 だが、問題はそこではなく…

 今俺は、微妙に顔が引きつっているかもしれない。

 

「ライさ~ん、あ~ん」

「あ、あ~ん」

 

 ビーチに到着してから浜辺にパラソルを立て、休憩と食事をしていた訳だが、ルナちゃんがもう非常にデレデレのベタベタなのだ。

 いや、俺も女の娘に甲斐甲斐しくされるのはとても嬉しいしその事自体は吝かじゃないんだが、なんせルナちゃんの親であるリュートさんやレナさんが目の前にいるのだ。

 気になって仕方がない。

 

「ル、ルナちゃん、自分で食べられるよ。それにリュートさん達がみてるし…」

「駄目よ♪周りなんて芋とでも思えばいいのよ。今日の料理はお母さんと一緒に私も作ったのよ、ライさんに食べて貰いたいの。はい、あ~ん」

 

 どうやら避けられない様だ。

 ま、まあ早起きして作ってくれた弁当を食べないのも失礼だし、外野の生暖かい視線は気にしないことにするか。

 ちなみにインバース夫妻は一緒に昼食を食べているが、リナちゃんは早々に食べて向こうの岩場で遊んでいる。

 

「ヒュー、お熱いねぇ。レナ俺たちの昔を思い出すな」

「そうですねぇ~、若い頃を思い出しますね」

「今のお前も若いし、綺麗さ…」

「まあ、あなたったら…ぽっ」

 

 なんか向こうは向こうでイチャイチャしてるし…

 リナちゃんが早々に立ち去ったのって遊びたいというより避難だったんじゃ…

 そりゃ自分以外がイチャイチャしてたら居心地悪いよね!

 ごめんねリナちゃん、後でなんか埋め合わせするよ!

 

 その後、慣れない空気を乗り越えなんとか食事を終えた。

 この空気、いつか慣れる日が来るのだろうか。

 

 食事の後は寝床を確保する為にログハウスの掃除や、夕飯の為にルナちゃんとリナちゃんは山へ食材の確保に、レナさんは持ち込んだ材料の下ごしらえで残り、俺はリュートさんに付き合って欲しいと言われ、一緒に釣りをすることになった。

 

 浜辺を少し行った所にある岩場を少し進んだ場所に穴場があるらしく、俺とリュートさんはそこで腰を落ち着け、糸を垂れるのだった。

 暫くは、会話もなく釣りの気分を味わっていたのだが、釣りを初めて少し経った頃リュートさんから何気なく話しかけてきた。

 

「ライ…ありがとうな」

「なんですか、いきなり」

 

 ――本当はわかっているルナちゃんの事だろう。

 だが、面と向かって礼を言われるのは気恥ずかしいもので、ついとぼけてしまう。

 

「わかってんだろ、ルナのことだよ」

 

 俺は黙ってコクりと頷く。

 

「……あいつはな、今まで弱音なんて誰にも言わなかったし、自分の事は全部自分で解決してきたんだよ。今回の心の問題だっていつかは成長していくうちに自己解決していたんだと思う。」

 

 リュートさんは寂しげな顔をしながら、こちらは見ないで海の方を見る。

 

「けどな?あいつの悩みを受け止めてやれなかったってのは、親としては悔しいもんだ。あいつはたまにどこか厭世的な表情をしていたんだが、お前さんが受け止めてからそんな顔をしなくなりやがった。お前さんはあいつの心の重りを取り除いたのさ。あいつが自己解決したとしてもあんないい顔はしなかっただろうよ」

 

 そしてどこか照れくさそうに頬を掻いて。

 

「だから、おまえさんには感謝してんだよ。こんなしんみりしたの柄じゃないから、もう言わねぇぞ!」

「はは、そう言ってもらえると俺も嬉しいです。ルナちゃんの事は任せてください!」

「お、言うねぇ!ま、だからこそお前さんに任せるのに不安はないわけだがな!」

 

 俺は嬉しかった、ルナちゃんがこんなにも両親に愛されているんだと分かって。

 そんな両親に愛されているルナちゃんに好きだと思って貰って。

 前世の記憶なんて、知識のみで「個」としての記憶は一切ないので、今世での出来事が俺の人間関係の全てだ。

 この世界に来て一年半、俺はまだ生まれてから1年半ほどしか経ってないとも言えるかも知れない。

 この世界に来てガーヴと出会い、インバース一家と出会い。

 俺は出会いに恵まれたと思う。

 

「少なくともルナちゃんを悲しませるような事はしませんよ。――() () () () ()

 

 俺はニヤリと笑いそう言う。

 

「てめ、まだそれは早いわ!っておい引いてるぞ!釣竿!こりゃ結構大物だぞ!」

「お、おお!うおおおおおおおおお」

 

 気合を入れて糸を引くと、水中からかなりの大きさの魚の影が踊った。

 

「おお、こりゃ大物じゃねーか!やるな俺も負けてらんねーな!」

「ビギナーズラックってやつですかね」

 

 釣れた魚は黒鯛の様な魚で、非常に元気でピチピチと跳ねていた。

 その後、その釣果を切っ掛けとして、正に爆釣といった具合になったのだった。

 そして、魚を入れる魚籠はアッという間にいっぱいになったので、引き上げることになった。

 しかし、爆釣なのは俺だけでリュートさんはというと…

 

「いや、これは何かの間違いだ!俺がボウズなんてありえん!いつもはこんなハズじゃないんだ!本当だぞ!?」

 

 俺は曖昧な笑いで、リュートさんをなんとか宥めすかし、ログハウスまで戻るまでには機嫌を直してもらった。

 まあ、あとでリナちゃんとルナちゃんにからかわれて膝を落としていたが。

 

 

 

 そして次の日

 今日は、予定通り海で泳ぐことになった。

 俺とリュートさんは男なので水着といえば服を脱いで履くだけだが、女子達は色々準備があるので、俺たちは先に浜辺で待つこととなった。

 そして浜辺で待つこと20分程…

 

「ライにーちゃーん!お待たせ!」

 

 リナちゃんが元気な声で手を振りながらこちらへやってくるのが見える。

 リナちゃんの水着はオレンジ色のワンピースタイプで、白い花柄の模様が数箇所ポイントとしてあり、リナちゃんの元気な雰囲気にピッタリでとても似合っていた。

 

「リナちゃん、似合ってるよ。リナちゃんにピッタリな水着だと思う」

「えへへ、ありがと!」

 

 リナちゃんの水着を褒めていると。

 

「ライさん、お待たせ…」

 

 ――そこにいたのは天使だった。

 いや、女神だろうか?

 普段のウエイトレス姿も似合っているが、基本的に露出は少なめの制服である。

 それが白い肌を白日のもとに晒されている!

 彼女の着ている水着はビキニタイプの水着である。

 色は白でルナちゃんの年齢にしては発育の良い、少女から女性への成長途中の魅力を十分に引き出している。

 白磁の如き白い肌と合わさり、まるで芸術品かのように昇華されている。

 腰には赤色のパレオを付けており、それがビキニとの組み合わせでウエイトレスの制服と同じような色合いを醸し出しており、何が言いたいかというと、非常に似合っている。

 こんなに可愛い娘が本当に俺の彼女なのか?これは夢ではなかろうか?

 思わず夢見心地になり、言葉が出なくなってしまう。

 ――俺が呆然と無言でいるのを見て、彼女は不安そうな顔でこちらを見ている。

 

「ど、どうかなライさん、似合ってるかな?」

 

 い、いかん!馬鹿みたいに黙って彼女を不安にさせるとは!

 俺は慌てて――

 

「い、いやとても魅力的でつい見蕩れてしまって…つい言葉がでなくなってしまったんだ。…とても、うん、言葉じゃ表現出来ないほど可愛いし似合ってる」

 

 となんとか取り繕う。

 だが、本当に思っていることだ。

 すると彼女は顔を赤くし破顔する。

 

「あ、ありがとう…」

「あ、ああ…」

「…ライさん」

「…ルナちゃん」

 

 普段は言葉の多いルナちゃんも、今ばかりは言葉少なめになり、何処ともなくお互いに沈黙が訪れ、お互い見つめ合ったまま時間が止まったように感じるのだった。

 お互いに見つめ合っていると――

 

「あー、ゴホン」

 

 横から咳とともに呆れた様なジト目でこちらを見ているリュートさん達がいた。

 レナさんも合流していた。

 ……いつの間に。

 

 まーた、親の前でいちゃついてしまった…

 俺達は思わず顔を赤くし、なんというか少女のルナちゃんはともかく、魂年齢?数十歳の俺も思春期の少年みたいな恥ずかしさを味わうのだった。

 

 ちなみにリナちゃんは「あたしもいつかライさんみたいな彼氏できるのかなぁ」と羨ましそうにこちらを見ていた。

 

 その後少しの間、気まずかったもののなんとか気分を取り戻し、バカンスを楽しむのだった。

 




今回はブラックコーヒーを片手にお読みください。
…て、あとがきで言っても意味ないね。

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