デュエルバンドなんてなかった。   作:融合好き

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───え? なんで彼女にこんな謎スキルを付けたのかって?

だって、こうでもしなきゃバリアン達と(闇のゲーム的な意味で)闘えないじゃないか! 結局はデュエルなのにいちいち理由付けとか苦痛を受けるシーン入れたりとか面倒なんだよ!(本音)


そんなわけで、あまり深く考えないでください。あくまでデュエル用の補助スキルですので。なお、その辺りの制約がなかったらさなぎちゃんは多分転生オリキャラにはならなかった。






恐怖! スフィアフィールド砲!

「ん…………?」

 

 

辺りを包み込む喧騒によって目を醒ます。

 

いつも浴びてるはずなのに、常とは違う、耳障りなそれ。どうしようもない違和感が私を掻き立てて、意識が急速に覚醒していく。しかし。

 

 

(───そっか、私は…………)

 

 

負けた。無様にも。あれだけ大口を叩いておきながら。

 

その事実に、覚醒した意識が一気に冷え込む。瞬間凍結もかくやといった速度による感情の変化は、そのまま私の心に名状し難い軋みを練り込んだ。

 

 

「あ、あはは…………」

 

 

ゆっくり、無理矢理声に出して笑う。しかし、一度キンキンに冷えた心がそう簡単に解れるはずはなく、はっきり空元気と分かる渇いた笑いしか出せない。…………やばい、どうしよう。

 

───落ち着こう。この痛みは一時的なものだ。かつての私ならいざ知らず、死ぬまで苦痛が全身を襲い続けるなんてそんな馬鹿なことがあってたまるものか。まして、この痛みは明らかに心的外傷によるもの。だから大丈夫、大丈夫、大丈夫…………って、なにこれ。

 

 

「うるさっ…………何が起きてるの?」

 

 

冷静に(強調)周りを見渡せば、九十九くんに集っていた運気が周囲へと霧散、ないしは消滅し、代わりに奇妙な力場が周辺を満たしているのが見て取れる。

 

これは一体、如何なる事象か。真っ当でもそうでなくてもデュエルでこんな現象が起こるなんて聞いたことがないし、おそらくは何らかの外的要因によるものだと思うんだけど。

 

 

「九十九くん───って、大丈夫!?」

 

「『ぐっ…………いや、ああ、大丈夫、だ…………!』」

 

 

この力場が私を阻害しないことに気づいた私は、気持ちをどうにか切り替えて周囲の喧騒を収めようと立ち上がって、直ぐ様目の前で苦しそうにしている九十九遊馬の姿に声を荒げる。

 

彼は気丈にも大丈夫と言ってるが、どう見ても大丈夫そうには見えない。敗者が勝者を心配するなど決闘者としてあってはならない姿ではあるのだが、急病の類なら別だ。処置が遅れて手遅れになった人の末路、その悲しみは、私が誰よりも知り得ているのだから。

 

 

「ああ、もう! どういうことなの………!」

 

 

とりあえず九十九くんをその場に寝かせて(フィールドのせいで空中に寝かせる変な構図になったけど)介抱し、その際に見えた観客が逃げ惑う姿に更に困惑を強める。

 

 

(───いえ、待って。思い出してきた。そうだ、この大会は…………)

 

 

『何故、貴様はこのスフィア・フィールドの影響を受けていない…………?』

 

「っ───!」

 

 

中空に存在するデュエルフィールド、その更に遥か上空から呼びかけられた声に反射的にそちらの方向を見上げる。

 

見覚えがないが、覚えのある顔。かつての私がふざけて「ワイリー」と呼んでいた如何にも科学者然とした姿。そう、彼は───

 

 

『まあいい。今更イレギュラーの一人や二人、どのみち貴様がその場にいる時点で結末は変わらん。

 

あの忌々しいトロンを倒してくれた褒美だ。全てが終わるまでそのスフィア・フィールドの中で大人しくしているがいい』

 

(───Dr.フェイカー!)

 

 

そう、彼こそはDr.フェイカー。この大会の実質的な主催者にして関連する一連の事件の黒幕、そして、遊戯王ZEXAL一期におけるラスボス!(メタ) その立体映像!

 

 

「貴方は…………って、この際、それはいいか。それで、大人しくって言われても、そもそも私、何が起きてるのかもはっきりしてないよ?

 

だったら普通に、健常なこの私は、この場を治めるべく行動すべきだと思うんだ」

 

 

言いながら九十九くんを肩に担いで移動し、スフィアフィールドの壁面に片手で触れる。

 

奇妙な感覚。先に触れた時と変わらない、不自然に硬く柔らかで堅牢な檻。こうして触れているだけで凄まじい拒絶感と嫌悪感が私を容赦なく襲ってくる。しかし───

 

 

(───この私、なら)

 

 

メタ情報からの推測及び先に確かめた感覚が正しいのならば、この力場を形成している物理的な部分はおおよそが「精霊」の力によって成り立っている。

 

この世界において、精霊の力とはとても強大だ。極めるとカードの創造なんて意味不明な現象を容易く引き起こすことができるし、かめはめ波(直喩)が打てたりするトンデモパワーだ。

 

 

(───だけど)

 

 

だが、そんな強大な力にも、否、強大な力だからこそ、弱点もある。いや、弱点という表現は適切でない。何故ならこれは、弱点などではなく───

 

ゆっくりと浸透させるようにスフィアフィールドに手首を沈める(・・・・・・)。凄まじい脱力感が全身を襲うが、抵抗されたりはしない。これは決して物理的なものではないのだ。故に、この世界の人間にはいざ知らず、この私にだけは通り抜けられる(・・・・・・・)

 

 

『何っ…………!? 馬鹿な…………!!』

 

 

(───よし、成功した。ナンバーズでもそうだった(・・・・・・・・・・・・)からもしやと思ったけど、やっぱりね)

 

 

そう、弱点などというモノでは決してなく、これはあくまで素質の問題。

 

あまりにも遠い異世界人であるこの私には、精霊なんてモノには干渉できない(・・・・・・)───そんな、あまりにもあんまり過ぎる、ある意味では当然の理由である。

 

 

(───違和感として感じる(・・・)ことはできるんだけどね。そういう現象を利用するのも…………でも)

 

 

ナンバーズですらこの私に触れなかった。せいぜいが感情を揺らすのみ。それさえも今まで出会えなかったのだと考えるとナンバーズも凄い力を持つのだろうが、それでもかつての私を揺さぶるには力及ばない。

 

私の所有物として同様に引きずり出した九十九くんを本格的に背負い、とりあえず負の違和感が凄い方向へと駆けていく。ぶっちゃけ闇雲に走っているけど、こういうのは大体が暗い雰囲気の場所に原因がいるのだ。というか私、実のところ最初から黒幕がいそうな場所には当たりをつけてたし。

 

 

「ん…………あれ、ここは…………」

 

「起きた? って、いつのまにか変身が解けてる? まあ、そんなのはいいや。で、九十九くん、状況わかる!?」

 

「あ…………?

 

いや、ああ、ある程度は…………」

 

「じゃあ、説明して! 私(詳しく覚えてないから)あれからどうなったのかわからないんだけど!」

 

 

スフィアフィールドから離れたからか、いつの間にやら気絶していた九十九遊馬がしばらくして意識を取り戻す。

 

ちなみに、ここまでで既に怪しい地下へと突入しています。アイドルとしてもデュエリストとしても、力仕事は大切だからね。

 

そうしていると、私の勢いに押されたのか、九十九くんが彼の知り得る範囲での現状を事細かに語る。曰く、この大会そのものがナンバーズの乱獲場で、さっきのフェイカーが黒幕で、彼の目的はナンバーズのエネルギーによってアストラル世界を滅ぼすこと………等々。

 

 

(───だいたいはアニメと同じかな? でも私、肝心のアニメをうろ覚えなんだよね…………)

 

 

これである程度記憶の擦り合わせは完了したが、私は特に一期は殊更にすっかすかだ。正直、フェイカーが何のためにこうしているのか全く覚えてなかった。トロン戦はなんとなく印象深いから割と覚えてはいたんだけど。

 

 

「じゃあ、上の騒ぎを止めるには、そのフェイカーさんを倒せばいいの!?」

 

「ああ、多分だけど、それが一番早いはずだ…………!」

 

 

駆ける、駆ける、駆ける、駆ける。

 

かつての私、その特異性だけを頼りに、私は地下への階段をひたすらに駆けていく。広い広い地下の空間。おそらくはここハートランドに点在しているゴミ処理施設の一つと思われるそこは、しかしてDr.フェイカーが残したのであろう怪しげな実験機器により、異様な光景を醸し出している。

 

 

(───正解っぽいかな? 薄々は勘付いてたけど、やっぱり私って、本当に異端なんだね)

 

 

スフィアフィールドを抜けられた時点で証明は済んでるとはいえ、改めて認識すると割と凹む。いやまあ、アイドル目指した段階で「人と違う」何かになりたかったのは明白なんだけど、世界そのものから外れていると認められるのは流石にショックというかなんというか。ま、別にいいんだけどね!

 

 

「だからこそ、こうして出来ることがあるわけだし」

 

「───?

 

今、何か言ったのか?」

 

「なんでもないよ。…………それより、ほら。見えてきたよ」

 

 

しばらくして見えてきた不自然に広大な空間。まず目に付いたのは地の底、地獄へと繋がっているような深い深い穴。そして、その直上に取り付けられている巨大な大砲のような何か。

 

話からして、あれがスフィアフィールド砲。ならば、その近くで何かを今か今かと待ち構えているその人こそ…………。

 

 

「貴方が、Dr.フェイカーでいいの?」

 

「ほう───貴様は。そうだ。如何にも、私がフェイカーだ。

 

丁度いい。貴様には少し、聞きたいことがあったのだ」

 

「え?」

 

 

UFOみたいな乗り物に乗りながら、開口一番にフェイカーは告げる。

 

それは、私がおそらくは今一番聞かれたくない質問で、同時に私の存在を更なる疑念に包み込むものだ。

 

 

「カイト…………否、貴様の持つギャラクシーアイズ。それはすなわち、私の求めるバリアンの力の一端。

 

答えよ。貴様は何故、ギャラクシーアイズを所有している?」

 

「…………」

 

「バリアン…………?」

 

 

彼とこうして相対してしまった以上、それを聞かれる可能性は考えていた。

 

しかし、実際にそうなるとどうか。色々と考えて来た言い訳も弁明も、まるで頭から捻り出せない。

 

緊張か、萎縮か、ストレスか、疲労か───原因はイマイチ分からないけど、咄嗟の言葉に詰まってしまったのは確かだ。そして、一度そうなってしまえば、疑念を抱かれてしまったならば、彼のような人物には、きっと言葉は通じないのだろう。

 

彼のような目は、見覚えがある。良くも悪くも一つのことに集中し、それ以外を露骨に蔑ろにする目。研究者やゲーマー特有の、ある意味での狂気の瞳だ。

 

特に彼の場合、蔑ろにする範囲が広すぎて少し笑えない。彼はハルトくんを救うためにこんな大事をやらかしているらしいが、これをしてさらにハルトくんが苦しむとは考えなかったのか。

 

それとも、それさえまともに判断できなくなってしまったからこそ、彼はバリアンなんて禁忌に手を伸ばしたのか。どちらにしろ彼はトロンさんを見捨てた時点で人として一つ堕ちている。同情の余地はあれど、叩き潰すのに異論はない。

 

 

「さぁ、ね。バリアン世界もアストラル世界も、私にとってはどうでもいいことだから。

 

どうしても知りたいと言うのなら、私を倒せばいい。尤も、バリアン如きの力も扱えず、対極の力であるナンバーズをわざわざ集めてる時点で底が知れるけどね?」

 

 

似合わないのは自覚しているが、私なりに精一杯挑発する。

 

私は彼らの謎パワーの影響を受けないとはっきりしてしまったが故に、だからこそ私には彼らを止める手段がない。未だに背負ってる九十九くんを彼へぶん投げればゼアルパワー(仮)でどうにかしてくれるのかもしれないけど、アイドルとしての矜持がファンを蔑ろにしてはならぬと雄叫びを上げる。

 

ならばどうするか。決まっている。「おい、デュエルしろよ」作戦しかない!

 

デュエルが全てのこの世界。私はなんか彼の計画のおかげで難を逃れたが、基本的にこの世界では敗者は全てを失う運命。それは、人生を懸けた計画であろうとも同じ。

 

なのに、みんなデュエルは受けて立つ! 何故かって? 私も含めて、みんなデュエルが大好きだから! ここはそういう世界だから!───という冗談はさておき、単にあれです。まだ見た感じスフィアフィールド砲?とやらにエネルギーとかがあんまり溜まってないように見えたから、暇つぶしに受けてくれるんじゃないかなーって。

 

 

「ふむ。よかろう───スフィアフィールド砲にエネルギーが溜まるまでの時間潰しにはもってこいだ」

 

 

(───乗った!?!?!??!?)

 

 

なんたるデュエル脳。おい、マッドサイエンス枠のお前がそんなに素直でいいのか。普通に考えてハルト>>>>私だろうに、こんな小娘の戯言なんか聞き流して少しでも準備を進めろよこのお馬鹿!

 

…………まあ、いいや。受けてくれるならこれ以上はないわけだし。

 

 

「───なら、俺も」

 

「九十九くん?」

 

「遊馬でいい。───俺だって、あいつを止めたいんだ。いいだろう?」

 

「うん、じゃあよろしく。…………あ、私もさなぎでいいよ。

 

でも、いいの? ほら、私は貴方の友達であるアストラルくんと対極の力を持っているわけだけど?」

 

「いいさ。今はアストラルはちょっと休んでるけど、きっとあいつもそう言うはずだ」

 

「…………え。

 

───その、大丈夫なの?」

 

「大丈夫とは言えねぇかもな。でも、逃げる理由にはならねぇだろ?」

 

 

───あ、やばい、超カッコいい…………!(素)

 

寂しげにしながらも気丈に、精一杯胸を張って前を見る遊馬くんの姿に思わず見惚れる。私はあれだ。どこまでもアイドルだから、こういう元気に頑張ろうとする人間には弱いのだ。

 

特に、その、明らかに弱っているのも滾る。私の起源は、かつての私が感じたものによる感覚が大部分だから。前世は多分男性っぽかったとは思うんだけど、そんなのもうあってないようなものだし。ま、アイドルはしばらく恋愛厳禁だから「いいな」以上にはならないけどね!

 

 

 

 

 

「「「───」」」

 

 

 

自然とお互い無言になり、デュエルディスクを構えて相対する。

 

 

…………彼を倒せば、この騒動は終結する。だから、私は───

 

 

 

 

 

 

「「「決闘!!!」」」

 

 

 

 

 

 

(───絶対に、勝つ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

ルールは海馬スペシャル…………じゃなくて、基本的にはバトルロイヤル。ただし、実質一対二なので、私と遊馬くんのフィールドは共通、フェイカーは無条件で先行、かつライフが私達の合計である8000になった。

 

それだけか、とも思う甘いハンデだけれども、油断はできない。何故なら今の私はぶっちゃけ足手まといになる可能性が高い。運命力の格差というのは、それほどまでに残酷であるのだ。

 

 

(───というか、また手札が…………)

 

 

そもそも、さっきから手札の偏りが酷くて目も当てられません。なんです? 私はかつての私と同じ感覚でデュエルしてるはずなのに確率論とかガン無視ですか?

 

通常召喚どころか、手札に魔法罠しかない。なんだこれは、私はどうすればいいのだ! ───とりあえず勝てばいいんですねわかります。

 

 

「私のターン!

 

私は手札の《ガーベージ・オーガ》の効果を発動!

 

このカードを手札から墓地に送り、デッキから《ガーベージ・ロード》を手札に加える!

 

そして、手札の《ガーベージ・ロード》の効果発動!

 

1000ポイントのライフを払い、手札のこのカードを特殊召喚!

 

来い! 3体のガーベージ・ロード!!」 フェイカー LP 8000→5000

 

 

 

 

 

 

 

《ガーベージ・オーガ》

効果モンスター

星3/闇属性/悪魔族/攻 800/守1300

①:自分のメインフェイズ時に、

このカードを手札から墓地へ送って発動できる。

デッキから「ガーベージ・ロード」1体を手札に加える。

 

 

 

《ガーベージ・ロード》

効果モンスター

星5/闇属性/悪魔族/攻 0/守2400

①:このカードは1000ライフポイントを払い、手札から特殊召喚できる。

 

 

 

 

 

 

(───うわぁ、贅沢)

 

 

ライフが本来4000しかない世界で、3000ものコストと引き換えに現れたのはレベル5の半上級モンスター3体。

 

私にすればこれは前世の感覚でさえ贅沢と感じる展開だが、それはきっと、次に出てくるモンスターが覆してくれるのだろう。

 

レベル5が3、フェイカーと来れば、出るのはあのナンバーズ。流石の私も、進化前のアニメ効果までは覚えていないし、さて。

 

 

「私はレベル5のガーベージロード3体で、オーバーレイネットワークを構築!

 

───これがナンバーズの頂に立つ最強のナンバーズ!

 

超然の鎧を纏い、世界を震撼させよ!

 

現れろ、《No.53 偽骸神 Heart-eartH》!」

 

 

 

 

 

 

 

 

《No.53 偽骸神 Heart-eartH(ぎがいしん ハートアース)》

エクシーズ・効果モンスター

ランク5/闇属性/悪魔族/攻 100/守 100

レベル5モンスター×3

①:このカードは「No.」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない。

②:このカードは相手の効果を受けない。

③:このカードが攻撃対象になった時、墓地のモンスター1体を対象に発動できる。

対象モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

この効果で装備カードを装備している時、このカードの攻撃力は攻撃モンスターの元々の攻撃力分だけアップする。

④:このカードが破壊される時、代わりにこのカードに装備されているカードを墓地に送ることができる。

この時、このカードの攻撃力が変化した場合、その数値分のダメージを相手プレイヤーに与える。

⑤:1ターンに一度、このカードのX素材を一つ取り除き、以下の効果から一つを選択して発動できる。

●このカードが相手にダメージを与えた場合に発動できる。

与えたダメージと同じだけ、自分のライフを回復する。

●自分がダメージを受けた場合に発動できる。

そのダメージ分のダメージを相手に与える。

⑥:X素材のないこのカードが攻撃対象に選択された場合に発動できる。

エクストラデッキから「No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon」1体を選択し、このカードの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

 

 

 

 

 

 

奇怪な出で立ちのオブジェ、偽骸神、Heart-eartH。

 

前世で超絶弱体を受けたナンバーズの一つにして後頭部に続くその筆頭であり、確か凄まじく面倒なバーン効果とかを持ってた記憶がある。あとはその、互いのライフがゴリゴリ削られてたりとかそんな。

 

 

「私はカードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

 

「俺のターン!」

 

 

続くのは遊馬くん。大口叩いたのはいいんだけど、私は手札が相変わらずだからここで彼に頑張ってもらわなくては。

 

 

「カード効果を受けないナンバーズ…………でも、攻撃力は大したことないね。それが逆に怖いけど。

 

遊馬くん、なんかバーン効果持ちのナンバーズとかいないの?」

 

「え? …………いや、今の俺のナンバーズは、ホープしか残ってねぇ。みんな、あいつに盗られちまった」

 

「へ、へぇ…………ごめんね」

 

 

なんとなくなら効果も覚えているから、メタ知識から誘導しようとしてみたが、あえなく失敗。

 

私の助言も甲斐無くして、遊馬くんはレベル4のモンスターを2体揃えてホープホープする。よく考えたらむしろ私の場合がおかしかっただけで、彼はいっつもホープだから普通だな!

 

 

「バトルだ!

 

俺はホープで、ハートアースを攻撃! ホープ剣・スラッシュ!」

 

「この瞬間、ハートアースの効果発動!

 

このカードが攻撃対象となった時、墓地のモンスター、ガーベージオーガをこのカードに装備する!

 

そして、この効果でモンスターを装備している限り、このカードの攻撃力は攻撃モンスターの元々の攻撃力分だけアップする!」

 

「あー…………」

 

 

やっぱりそういう類だったか。ていうか、この辺は微妙にOCGの方が強くなってる? んだね。いや、回数制限があるから弱体化しているか。過程が面倒だけど、こっちは聞く限り何度もパンプアップができるみたいだし。

 

 

「やべぇ!

 

俺はホープの効果を発動! その攻撃を、無効にする!

 

…………俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

 

そういう意味では、ホープはこの場面で理想的だったのかもしれない。

 

自身の攻撃さえも無効にできる地味に珍しいその効果は、初見殺しの敵にはピッタリの偵察用として機能する。まあ、彼にとってホープは名実共にエースモンスターなんだろうから、そんな意識さえもないんだろうけどね。

 

 

「私のターン───」

 

 

さて。どう出るか。そもそも私のデッキにあんな面倒なカードに対応できるモンスターはいたかなぁ?

 

いや、頑張ったらランク4や8は出せるだろうから、いざとなればハートランドラコやランスロットさんを出してライフを直接削ればいいんだけど───っと。

 

 

(───まあ、まずはドローしてからだよね)

 

 

「ドロー…………!」

 

 

アンドレさんも言っていたし。もしかしたら、この状況を打破できるカードを引ける可能性も───!!

 

引いたカードを見て、固まる。そんな馬鹿な。このカードは、今の今まで万を超えるだろうデュエルの中、一度足りとも引けなかったのに───!

 

 

「いや…………これもまた、運命なのかな?」

 

「───え?」

 

「いや───なんでもないよ。そう、なんでも、ね。

 

…………私は手札から、《RUMーバリアンズ・フォース》を発動!」

 

 

 

 

 

 

 

《RUMーバリアンズ・フォース》

通常魔法

①:自分フィールド上のモンスターエクシーズ1体を選択して発動する。

選択したモンスターよりもランクが1つ高い

「C(カオス)」と名のついたモンスターエクシーズ1体を、

自分のエクストラデッキから、選択したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる。

この効果でエクシーズ召喚したモンスターエクシーズは

「戦闘では破壊されない効果」を無効にする。

②:相手フィールド上に存在するモンスターエクシーズ1体を選択して発動できる。

選択したモンスターのエクシーズ素材全てを、

このカードの効果でエクシーズ召喚したモンスターエクシーズの

下に重ねてエクシーズ素材とする事ができ、選択したモンスターの攻撃力は、

このカードの効果で奪われたエクシーズ素材の数×300ポイントダウンする。

 

 

 

 

 

 

 

「バリアン、だと…………!?」

 

 

バリアンズ・フォース。遊戯王ZEXALⅡにおけるキーカードで、バリアンと名乗る存在の力によってエクシーズモンスターをランクアップさせる魔法カード。

 

実は当然のようにエクストラにひっそりと忍んでいる私のタキオンちゃんのほぼ専用カードとしてピンで投入し、今まで一度も引けなかったからこそ存在を忘れていたこのカード。

 

しかし、それをこの場面で引けたということは、すなわち。

 

 

(───やるなら徹底的に、か。やれるかは、まだわからないけど)

 

 

「このカードは、自分のエクシーズモンスター1体を対象に発動し、そのモンスターをランクが一つ上の『C』エクシーズモンスターにランクアップできる。

 

この効果で、私はランク4の希望皇ホープをオーバーレイ!」

 

 

ランクアップ。異世界の力。私が当然のようにこの世界でもこれを扱えるのは、やはり私が異世界人であるからなのだろう。

 

アストラル世界でも、バリアンでもない別の世界。本当の意味で、この世界から外れた位置にあるかつての世界。しかし、そんな私であるからこそ、どちらの力も、過不足なく利用ができる。

 

 

(───まあ、肝心な『この世界の力(カードの精霊)』を使えないなら、頭落ちなんだけどね)

 

 

「───出でよ。CNo.39。

 

混沌を統べる赤き覇王。悠久の戒め解き放ち、赫焉となりて闇を払え。

 

ランクアップ・カオスエクシーズチェンジ!

 

降臨せよ、ランク5、希望皇ホープレイV!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《CNo.39 希望皇ホープレイV》

エクシーズ・効果モンスター

ランク5/光属性/戦士族/攻2600/守2000

レベル5モンスター×3

①:このカードが相手によって破壊された時、

自分の墓地のエクシーズモンスター1体を選択して

エクストラデッキに戻す事ができる。

②:このカードが「希望皇ホープ」と名のついた

モンスターをエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、

相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターを破壊し、

破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

 

 

 

 

 

 

「ホープが、進化した…………!?

 

「貴様───何故貴様如きが、バリアンの力を…………!」

 

 

 

 

 

(───そんなの、私が一番知りたいよ。未だ私は、この世界にどうして生まれ変わったのかを知らないのに)

 

 

 

 

こちらを殺す目付きで睨んでくるフェイカーの視線にやや怯えながらも、今も混乱しているだろう私のファンのことを想って踏みとどまる。

 

そんな私を見かねてか、本来ならば悪の存在(バリアン側)である私のホープレイVが、私の方を心配気に見ている気がした。





原作と違う点。

①フェイカーがデュエルを受ける理由が微妙に違う。原作では確か制御コンピュータが壊されてそれが自動修復されるのに時間がかかるからとかだった。今作は原作に比べて到着がやや早いためにエネルギーが未だ溜まってない。

②カイトやシャークはまだ到着していない。これも彼女達の到着が原作よりも早くなったためである。まあ、普通に考えたらそれぞれが勝手に行動してるのにアニメみたいにみんなベストタイミングで集うとかないよね。従って彼らは多分途中で合流してリアクション役になります。

③アストラルへのダメージが増大。これはスフィアフィールドによって与えられるトロンへのダメージが、トロン役であるさなぎちゃんにはまるで効果なく、その分の皺寄せがアストラルを襲ったから。原作では「力が抜ける」程度だったのに遊馬が気絶してたのはそのためです。ただしその代わり、アストラルがスフィアフィールド内に閉じ込められはしてない。

④そもそも原作にはさなぎちゃんなんて脇役は(ry




ちなみに、描写がカットされてるだけでフェイカーは既にサイボーグ化しています。

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