デュエルバンドなんてなかった。   作:融合好き

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剣豪終わった。楽しかったです。では投稿します。しました。

タイトルは嘘です。





進撃! コートオブアームズ!

「───俺のターン、ドロー!」

 

 

エンド宣言からしばらく経って、何やら虚空へとぶつぶつ独り言を呟いていた彼が決意と共にカードを呼び寄せる。

 

纏う運気は、未だ私の方がやや高いくらい。それは、この状態の私に抗えるほど凄まじい彼の運命を讃えればいいのか、ドンさんなんかより遥か上にある超常的な存在が全力で援護してなおこの程度の運命しか味方しない自身を笑えばいいのか。さて。

 

 

「自分フィールドにモンスターがいない時、《トイナイト》は手札から特殊召喚できる!」

 

 

(───ん?)

 

 

 

 

 

《トイナイト》

効果モンスター

星4/地属性/機械族/攻 200/守1200

①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、

このカードは手札から特殊召喚できる。

 

 

 

 

 

感じた違和感に、虚空へと彷徨わせていた視線をフィールドへと向ける。

 

モンスターを特殊召喚。それはいい。エクシーズ主体のこの世界では緩い召喚条件の低ステータス持ちは重宝されてるし、私だって似たようなカードは持っている。しかし。

 

 

(───あれ? このルール、使わないのかな?)

 

 

違和感の正体は、現状との照らし合わせの結果。私の予想では、彼の性格ならば間違いなくこのルールを活用し、原作みたいにテラバイトやらクリムゾンシャドーやらを出して一喜一憂するんじゃないかと思っていたのだが…………どうやら微妙に違うらしい。

 

手札が悪いだけ、とも取れるが、運気を見定められるこの私にその辺りの理屈は通用しない。今の私と同等、つまりは原作沿いの流れに乗っているのなら、手札の差異はあれど用意された舞台(スフィアフィールド)を利用できないなんてことはないはずだ。となると。

 

 

(───意図して使わない。そうなると、理由はあの人かな?)

 

 

先の独り言。正直不気味だったが、妙に長かったし、アストラルの助言でもあったのかもしれない。

 

すなわち、私が当初に予定していたのと同じく、ルールを完全に無視、乃至は利用できそうな時にだけ無理せず活用し、普段通りのデュエルを心がける戦い方。

 

 

(───つまり、出したいモンスターがいる、と)

 

 

考えてみれば、この時点での彼らはそこまでナンバーズを所持しているわけではない。アニメでは断片しか語られてない&記憶が曖昧なせいで断言できないが、持ってて20枚そこそこ程度だろうか。更には初期は効果も控えめなナンバーズが多かったから、ただでさえ単体としての火力が神クラスのカオスオブアームズを相手にして、ランダム頼りに行動するのは流石に控えたのだろう。

 

 

(───しっかし、常時セコンドって割と卑怯だなぁ)

 

 

タッグは別にして、デュエルとは基本決闘の文字通りに一対一のぶつかり合いだ。それが主人公としての特権とはいえ、こうも堂々と無粋をされると腹も立つ。

 

これは私が、仮にも怒りの化身(笑)を操っているから浮かぶ感想なのか───いや、この私が考えていいことではないといえ、事情を知っている人なら文句の一つ二つ、普通に呈していい気がする。うん。───というか、いや、むむ。

 

 

(───またちょっと思考が…………いい加減、どうにかしないと)

 

 

アイドル業なら「アイドルとしての自分」にしかなれないが故に考えがぶれることはないが、プライベートだと途端に霞がかかってしまう。それは「アイドルじゃない自分」がかつての私に被るからで、この私がそうありたいといつも思っているからこそ。直すべきだとは自覚しているのだけど、なんとも度し難い。

 

…………気を、引き締めないと。でないと、本当に負けちゃうから。

 

 

「そして俺はトイナイトをリリースして、《ガンバランサー》をアドバンス召喚!」

 

(───んん??)

 

 

 

 

 

《ガンバランサー》

効果モンスター

星5/光属性/戦士族/攻1000/守2000

①:このカードをX召喚の素材とする場合、このカードは2体分の素材にできる。

 

 

 

 

 

随分と久方ぶりに見た気がするアドバンス召喚によって現れたのは、レベル5・低ステータスのおそらくはダブルコストモンスター。

 

ホープじゃないのか、と首を傾げ、ランク5に何かいたかなと記憶を漁り…………一つ、有名にして凶悪な、後に量産される類型効果の代名詞として語られるモンスターの存在を思い出す。

 

 

(───あれ? これってもしかして、とってもピンチ?)

 

 

今の私の伏せは2枚。しかし、その中にアレを凌げるカードはあっただろうか?

 

 

「エクシーズ召喚! 現れろ!

 

《No.61 ヴォルカザウルス》!」

 

 

 

 

 

《No.61 ヴォルカザウルス》

エクシーズ・効果モンスター

ランク5/炎属性/恐竜族/攻2500/守1000

レベル5モンスター×2

①:このカードは「No.」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない。

②:このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、

相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動できる。

選択した相手モンスターを破壊し、

破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

 

 

 

 

 

(───うわぁ)

 

 

灼熱の肌を纏う怪獣。ヴォルカザウルス。

 

調整されたOCGにおいてもなお脅威と呼べる恐ろしい力を持つ、単純明快にして強力なモンスター。無論、まともに暴れてもらったら私は負けちゃうから、どうにかして凌がないといけないんだけど…………うーん。

 

 

(───あのカードを使えば2000に1250。残るのは750、1500以上を追加で出されなければ…………)

 

 

既に召喚権も使っている以上、更に追加でモンスターを召喚してくるとは考えづらい。しかし、1500といえば彼のお気に入りモンスターの攻撃力がジャストでその数値だったはず。彼がトチ狂ってガガガウインド辺りを使われる可能性もないわけじゃないから…………うん、まずいねこれ。

 

 

(───最初の事故がねぇ…………いや、一応は防御札があっただけマシ、かな?)

 

 

なにせ、本来なら通常召喚できない、防御札も一枚しかない、後の手札は条件が整ってないの三重苦だったのだ。これ以降はだいぶ向上する感覚があるが、そのためにはどうにかしてこのターンを乗り越えなくてはならないわけで。

 

 

「ヴォルカザウルスの効果を発動!

 

オーバーレイユニットを一つ使い、相手フィールドのモンスターを破壊! 更に、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!

 

マグマックス!」

 

「罠発動! 《ダメージ・ダイエット》!

 

発動後、ターン中のダメージを全て半減する!

 

…………っ」 さなぎ LP 4000→2000

 

 

 

 

 

 

《ダメージ・ダイエット》

通常罠

①:このターン自分が受ける全てのダメージは半分になる。

②:墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動できる。

このターン自分が受ける効果ダメージは半分になる。

 

 

 

 

 

 

(───痛い(・・)?)

 

 

初めて経験する不可解な苦痛。かつての私に比べたらなんてことのない些細な感覚だが、確かに身体中へとよくわからない衝撃を感じた。まさかとは思うが、これがナンバーズによるダメージなんだろうか?

 

 

(───)

 

 

私はこの世界のイレギュラーだ。だから私は彼らデュエリストがARヴィジョンに影響される理由がわからなかったし、そういうゲームなんだからそういうリアクションをするんだな、などと考えていた。つまりはそう、あれは演技なんだと。実際、私も衝撃を受けたフリをする程度ならまるで恥ずかしくないくらいこのゲームが好きだと断言できるから、私もそれを今の今まで抵抗なくやっていたわけなんだけど。

 

 

(───効果ダメージでこれなら、直接攻撃は…………)

 

 

慣れているからといって、苦痛は望んで受け入れたいものではない。特に酷いものだと、かつての私が脳裏によぎるから。

 

どこまでいっても、私は私だ。だから───いや、私も彼も互いの事情は何も知らないんだから、お互い様か。なら、いいや。

 

 

「バトルだ! 俺はヴォルカザウルスでダイレクトアタック!」

 

「っ、くっ…………!」 さなぎ LP 2000→750

 

 

気のせいかも、とは考えたが、やっぱり痛い。それもどうやら物理的なものでなく、精神的な何かっぽい。文字通り、心に響く。

 

ならば何故彼らはこのダメージで吹き飛んで───などと考える暇はない。だって私のことだから、また思考が明後日の方向へと行ってしまうしね。

 

あっさりカオスオブアームズを破壊できたのと、《ダメージ・ダイエット》の効果に首を傾げながらも、彼がカードを2枚伏せてターン終了を宣言する。…………あっさり逆転かぁ。でもまあ、事故ってたらこんなんだよね、普通。

 

 

「私のターン───」

 

 

私のフィールドは、伏せカードが一枚だけ。手札も一枚。それも、どちらも使えないカード。ならば現状は、とっても危険な状態なのだろう。

 

だけど私は、不思議と緊張はしていなかった。何故なら、コートオブアームズがフィールドにいない以上、神様がそれを召喚できる運命へと修正してくれると半ば確信しているからである。

 

それに私が従うかは別にして、そうなると引けるカードは自ずと限られる。そして、該当するカードを引けさえすれば、私のカードパワーなら、割とどうにでもできるのだ。

 

 

「ドロー…………!」

 

 

(───ほら、予想通り。ちょっと悔しいけど、状況だって使える手札だから別にいいよね)

 

 

具体的にはサルガッソとかヌメロンネットワークとか。あんなインチキに比べたら、私のやってることなんて大したことはない。というか実質私は何もしていない。ただ神様とやらが支援せざるを得ない方向へと、戦況を誘導しているだけだ。

 

 

「私は手札から、《グローリアス・ナンバーズ》を発動!

 

自分フィールドにモンスターがいない時、墓地のナンバーズを特殊召喚し、カードを一枚ドローする!」

 

『ナンバーズ専用のマジックカード…………!?』

 

「…………ん?」

 

 

 

 

 

 

《グローリアス・ナンバーズ》

通常魔法

①:自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。

自分の墓地から「No.」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚し、

自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 

 

 

 

 

 

今、何か聞こえたような…………気のせい? まあ、いいか。

 

 

(───ただ、蘇生するのは当然…………)

 

 

「戻ってきて、カオスオブアームズ!」

 

 

選ぶのなら強い方。当たり前だ。どうやら神様とやらは理論的にできる方法を示しても、それで当人がどう選択するのが自然なのかを考慮していないっぽい。まあ、神様神様言ってるけど、多分これ誰かが意図してじゃなくて修正力的なアレだしねきっと。

 

そして、基本的に優位だった彼の役目を継いでいるから引いたカードも良好。実際に盤面を逆転できるかはさておき、これならどうにかなりそうだ。

 

 

「そして、魔法カード、《エクシーズ・トレジャー》を発動して、更にカードを2枚ドロー。

 

更に更に、私は手札から、《RUMー幻影騎士団 ラウンチ》を発動。

 

このカードの効果により、カオスオブアームズを一つ上のランクのエクシーズモンスターへとランクアップする」

 

 

 

 

 

《エクシーズ・トレジャー》

通常魔法

①:フィールド上に表側表示で存在するモンスターエクシーズの数だけ、

自分のデッキからカードをドローできる。

 

 

 

《RUMー幻影騎士団 ラウンチ》

通常魔法

①:自分フィールドのXモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターよりランクが1つ高いモンスター1体を、

対象の自分のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

②:自分フィールドの「幻影騎士団」Xモンスターまたは

「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」を対象として

このカードの①の効果を適用した場合に発動できる。

このカードをこのカードの①の効果で特殊召喚したモンスターの下に重ねてX素材とする。

③:自分スタンバイフェイズにこのカードの①の効果で特殊召喚したモンスターが

自分フィールドに存在する場合、そのXモンスター1体を対象として発動できる。

自分の墓地のこのカードを対象のモンスターの下に重ねてX素材とする。

 

 

 

 

 

 

『RUM…………!』

 

 

(───気のせいじゃないなぁ、これ。今のははっきり聞こえたね。

 

いやぁ、役割を押し付けるって、思った以上に難儀なんだねぇ)

 

 

あはは、と苦笑しつつも、これは違うだろ、と内心でツッコミを入れる。最初は聞こえなかった以上、原因は明らかに神様なんだろう。スフィアフィールドとも思ったが、それなら最初から見えてるはずだしね。なんともまあ、融通が利かないというかなんというか。

 

なんだろうか。このまま時間をかけると紋章の力を使えるようになってしまうのか。多少の興味はあることはあるけど、顔に影響が出るのだけは本気で勘弁して欲しいかな。ま、まだ彼の姿も認識できないから、そうそうとそうはならないとは思うんだけど。

 

 

「私はランク5のカオスオブアームズで、オーバーレイネットワークを再構築。

 

ランクアップ・エクシーズチェンジ!

 

顕現せよ、ランク6。《No.24 竜血鬼ドラギュラス》 !」

 

 

 

 

 

 

《No.24 竜血鬼ドラギュラス》

エクシーズ・効果モンスター

ランク6/闇属性/幻竜族/攻2400/守2800

レベル6モンスター×2

①:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

エクストラデッキから特殊召喚された表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを裏側守備表示にする。

この効果は相手ターンでも発動できる。

②:表側表示のこのカードが相手の効果でフィールドから離れた場合に発動できる。

このカードを裏側守備表示で特殊召喚する。

③:このカードがリバースした場合に発動する。

フィールドのカード1枚を選んで墓地へ送る。

 

 

 

 

 

攻撃力はだいぶ下がったが、結果として与えるダメージは上になる予定だから構わない。これで私が彼ならばコートオブアームズに拘りそうだが、私にとっては逆にあのカードは避けるべきものであるのでそれも問題はない。

 

強いて言うならコンバットトリックがやや恐ろしいが、その場合にもこのカードならば柔軟に対応できる、はず。

 

 

「新しいナンバーズ!?

 

だけど、わざわざ攻撃力を下げた…………?」

 

「あー、それはね。まあ見てればわかるよ。具体的には、そのまま大人しく何もしないでくれたら」

 

「効果破壊………?」

 

「惜しい。私はドラギュラスの効果を発動。

 

オーバーレイユニットを一つ使い、フィールドのモンスター1体を裏守備表示へと変更する。

 

対象は当然、ヴォルカザウルスだよ」

 

『───表示形式の変更…………もしや、貫通効果か?』

 

 

あ、鋭い。流石は天才デュエリスト。でもちょっと違うかな。かつての私なら迷わずそうしたんだろう(ガイアドラグーンを出した)けど、この世界だとナンバーズ耐性があるしねぇ…………。

 

というか、だんだんと言葉が明瞭になって来ているね、アストラル。これは早いとこ決着をつけないとやばい?

 

 

「そのままバトル!

 

私はドラギュラスで、裏守備となったヴォルカザウルスを攻撃!」

 

「くっ…………!」

 

「更に、リバースカードオープン! 速攻魔法《RUMーダーク・フォース》!

 

この戦闘でモンスターを破壊したドラギュラスを墓地へと送り、その一つ上と、二つ上のランクのエクシーズモンスター2体を、効果を無効にしてエクシーズ召喚する!」

 

「何だって!?」

 

『一気に2体のランクアップ…………!』

 

「ランクアップ・エクシーズチェンジ!

 

まずはランク7、《No.89 電脳獣ディアブロシス》!

 

そして───降臨せよ、我が魂! ランク8、《銀河眼の光波竜》!」

 

 

 

 

 

 

《RUMーダーク・フォース》

速攻魔法

①:自分フィールド上のモンスターエクシーズ1体が戦闘によって相手モンスターを破壊した時、

そのモンスターエクシーズ1体を選択して発動する。

選択したモンスターを墓地へ送り、

選択したモンスターよりもランクが1つ高いモンスターエクシーズ1体を

自分のエクストラデッキから表側攻撃表示で特殊召喚できる。

さらに、選択したモンスターよりもランクが2つ高いモンスターエクシーズ1体を

自分のエクストラデッキから表側守備表示で特殊召喚できる。

このカードの効果で特殊召喚したモンスター2体の効果は無効化される。

また、この特殊召喚はエクシーズ召喚扱いとする。

 

 

 

 

《No.89 電脳獣ディアブロシス》

エクシーズ・効果モンスター

ランク7/闇属性/サイキック族/攻2800/守1200

レベル7モンスター×2

このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

相手のEXデッキを確認し、その内の1枚を選んで裏側表示で除外する。

②:このカードが戦闘でモンスターを破壊したバトルフェイズ終了時、

相手の墓地のカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを裏側表示で除外する。

③:相手のカードが裏側表示で除外された場合に発動できる。

裏側表示で除外されている相手のカードの数だけ、

相手のデッキの上からカードを裏側表示で除外する。

 

 

 

 

 

 

『現れたか…………ギャラクシーアイズ───!』

 

「それに、新しいナンバーズまで…………だけど、守備表示?」

 

「この効果で特殊召喚したモンスターは、ランクが高い方は守備、低い方は攻撃表示でしか出せない。

 

だけど、私にとってはそれはどうでもいいんだ。ただこの子が、ここに駆けつけてくれた。それだけで私は、更なる追撃ができる───!」

 

 

流石にランク4から登りつめるのは厳しかったが、出来たからにはそれまでの苦労などどうでもいいことだ。

 

アイドルとは、日々の修練を内々に秘めるべきもの。これ見よがしに努力する姿なんか見せても、人の心は寄ってこない。泥臭い偶像なんて、華やかとは言い難いから。当然、一概にそうとは絶対に言えないし、私にしてもこれは正確性を欠く偏見だと思うけどね。でも。

 

苦しいのなんて、現実で充分。だから私は、笑顔を振りまくのだ。少しでも、誰かがその重みを忘れられるように。

 

 

「速攻魔法、《RUMー光波追撃》!

 

このカードの効果により、サイファードラゴンをランクアップさせて、一つ上のランクのサイファーモンスターへと進化させる!

 

───そして、この効果で特殊召喚したモンスターは…………」

 

「エクシーズ召喚に成功した時、オーバーレイユニットを使う効果を発動できる…………!」

 

 

お、詳しい。ちょっと嬉しいな。たまぁにテレビで漏らしちゃったりした趣味を握手会とかでファンが覚えてくれると感動するよね。ああ、この人はちゃんと私を見てくれてるんだなぁって。

 

ストーカーとかも怖いんだけど、実は私は居てくれたらちょびっとだけ嬉しかったりする。こればっかりは誰にも理解されないしして欲しくもないけれどね。あ、被害が出るようならノーセンキューです。警察に通報します。その辺りはきっちり、ね。

 

…………本音を言えば、ホープを出される前にディアブロシスの効果を使って(ホープを封じて)おきたかったけど、いいや。別に。

 

 

「私はランク8の光波竜で、オーバーレイネットワークを再構築!

 

ランクアップ・エクシーズチェンジ!」

 

 

にっこりと笑顔で、懸命にデュエルをする。彼が多少なりとも私のデュエルを覚えてくれたのなら、それこそが私の励みになるから。…………まあ、実際は警戒していた、ってのが正しい理由なんだろうけど、そこは考えてはいけない。考えては、いけないのだ…………!

 

 

「───闇に輝く銀河よ。とこしえに変わらぬ光を放ち、未来を照らす道しるべとなれ。

 

ランク9、《銀河眼の光波刃竜》!」

 

 

 

 

 

 

《銀河眼の光波刃竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ブレード・ドラゴン)》

エクシーズ・効果モンスター

ランク9/光属性/ドラゴン族/攻3200/守2800

レベル9モンスター×3

このカードは自分フィールドのランク8の

「ギャラクシーアイズ」Xモンスターの上に重ねてX召喚する事もできる。

このカードはX召喚の素材にできない。

①:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

②:X召喚したこのカードが相手モンスターの攻撃または

相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合、

自分の墓地の「銀河眼の光波竜」1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

 

 

 

 

ふははー、すごいぞー、カッコいいぞー、と顕現せしは、多分私の持っているカードの中でも単純な効果だけならぶっちぎりの壊れ性能を持つマジモンの切り札、超銀河眼の光波龍…………ではなく、ランクは同じながらもパワーと引き換えに性能を利便性に振った便利カード、ブレードちゃん。

 

もちろん、モンスターがいたならネオの方を出したんだけど、こっちもこっちで強いから別に私は気にしないのだ───ええ、単なる自慢ですが、なにか?

 

 

「トロンの時とは、また別のモンスター………!?」

 

「それはねぇ。進化が一系統しかないと思うのは甘えだよ、九十九くん。

 

ちなみにこの子はオーバーレイユニットを一つ使って、君のフィールドのカード1枚を破壊できる。光波追撃の効果で、その効果をこのタイミングで発動するね。

 

対象は…………そうだね、左のカードで」

 

『むっ…………!』

 

 

破壊したのは、《聖なる鎧 ーミラーメールー》。ミラフォをオマージュした通常罠で、確かブリージンガメンに似た効果だったかな? 要するにハズレか。まあ、この辺りはどうしようもないね、運だし。

 

 

(───さて、通るかな?)

 

 

正直、このターンでは厳しいだろう。

 

彼の伏せは1枚。とはいえ、手札は2枚もあるし、彼は手札誘発をアニメだけでも割と積んでいたはずだ。ガガガガードナーとかジェントルーパーとか。

 

現在の攻撃力は2800と3200でぴったり6000。攻撃表示でしか出せないアニメガードナーなら…………いや、戦闘耐性があるから無理だったっけ?

 

 

(───まあ、とりあえずやってみよう)

 

 

「今はまだ、バトルの途中。

 

私はナンバーズ89、ディアブロシスで九十九くんに直接攻撃!」

 

「させるか!

 

手札の《ガガガガードナー》のモンスター効果発動!

 

相手モンスターの直接攻撃宣言時、手札のこのカードを、攻撃表示で特殊召喚する!」

 

 

 

 

 

《ガガガガードナー》

効果モンスター

星4/地属性/戦士族/攻1500/守2000

①:相手モンスターの直接攻撃宣言時、このカードは手札から攻撃表示で特殊召喚できる。

②:このカードが攻撃対象に選択された時、手札を1枚捨てて発動できる。

このカードはその戦闘では破壊されない。

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

ですよねー、わかってましたとも。あの九十九遊馬が、こんな簡単にやられはしないって。

 

さっきの対面では情報の不足からかトロンさんとの関係を疑われたりしてイラっときたぜ! しちゃったけど、彼は本来なら私が逆にサインをねだりたいくらい尊敬しているデュエリストなのだ。そんな彼がこの程度で負けるわけないじゃないか!(盲信)

 

いや、流石に冗談だけどね。でもまあ、この程度、凌がれるのは普通だ。ならば私は、ここでできる限りをするまで。

 

 

「攻撃は続行!

 

ランク7、ディアブロシスでガガガガードナーを攻撃!」

 

「ぐぅ…………!

 

だが、ガガガガードナーは手札を一枚捨てることで破壊を無効にできる!」遊馬 LP 4000→2700

 

「なら、続いて、ランク9、光波刃竜でガガガガードナーを攻撃!

 

烈刃の、サイファーストリーム!」

 

「ぐぁぁぁあああ!!」 遊馬 LP 2700→1000

 

 

光波刃竜の攻撃によってガガガガードナーが爆散し、衝撃に遊馬くんが吹き飛ばされていく。ガガガガードナーにターン制限はなかったとは思うが、手札がないならそれも意味はない。火力に押され、無残に消えゆくのみ。

 

しかし、同時に。これで私の攻撃は打ち止めになったのも本当だ。このターン、彼は間違いなく私の追撃から逃げ延びた。ならば私は彼の敵役として、彼の健闘を褒め称えるべきだろう。ま、そもそも和睦一枚でなんとかなったしね!(台無し)

 

 

「ふぅ。

 

じゃあ、バトルを終了。私はカードを一枚伏せてターンを終えるけど、何かある?」

 

「…………いや、ねぇ」

 

「じゃあ、まずはカードを一枚伏せようかな」

 

 

宣言と同時、踵を返してスフィアフィールドの更に端の方へとゆっくり進み、フィールドに手を当てる。

 

ビリっとした感触にやや手を押し返されてなおも手を無理に推し進めれば、奇妙な感覚と共に右手がその空間に接触した。不安定で不完全で、それでいて力強く存在を主張しているフィールドは、まるで何かを暗示してるようで。

 

そのままの状態で顔だけ彼へと向け、私はなおも何故か衝撃を受けて倒れた彼らに向かって言葉を紡ぐ。

 

 

「頑張るね、遊馬くん。流石に、ここまで上がってきただけはあるよ。

 

でもね、だからこそ聞きたいんだ。君は───どうして、そこまで頑張るの?」

 

「──え?」

 

「………質問が悪かったね。

 

勿論、私だってデュエルに負けたくなんかないし、なんとしても勝ちたい気持ちもしっかりわかる。

 

でも、君はなんか、微妙に違う気がする。なんというか、目標があったのに、それを既に達成してしまっている───いや、はっきり、目的を見失ってるんじゃないかな?

 

だって君───どうしても私に勝ちたいわけじゃないでしょう?」

 

「───!」

 

「なのに君は、私が何者だとか、勝つべき(・・・・)理由なんかをデュエル以外の要因にこじつけて、自らの持ち味を殺しているようにみえる。

 

きっと君は、今まで真っ直ぐに自分を貫いてきたんだろうね。でも、だからこそ、君は現状の違和感に慣れていない。だけど」

 

 

視線を私のエクストラデッキに移し、中に入っている膨大な量のカード。私が前世より持ち込んだ、私にとっては馴染みの深いカード達の方へと向ける。

 

これらのカードは、私のイレギュラーたる所以だ。しかし、それと同時にこれらのカードがあること自体が───

 

 

「人生なんて、上手くいかないことの連続。

 

貴方はさっき、トロンくんについて質問してたよね? 推測だけど、貴方は私ではなく、トロンくんと闘いたかったんじゃないかな。だからこそ、貴方は戸惑っている。

 

───というかね、君。私よりも、私が持つカードのことばかり気にしているでしょう? そんなんで私に勝てると思ってるのかなぁ?」

 

「っ…………」

 

「君が注目していたトロンくんが私なんかに負けて拍子抜けしたのはまあわからなくはないけど…………今だけは、私だけを見てくれると嬉しいな」

 

「あんた…………」

 

 

今の私はアイドルであるのと同時、彼に対峙する一人のデュエリスト。つまり、言うなれば彼はこの私を、アイドルを独占しているに等しいのだ。それなのに、余計なことをごちゃごちゃと考えて、縛られてまともに楽しめてないなんて、アイドルとして見過ごせない。

 

そして同じく、デュエリストとしてもそうだ。もっと熱く、もっと楽しく、もっと笑顔にデュエルする! それこそが、私の望み。私の願い!

 

 

「勝たなければならない───今の理由は、それでいいけど、私はそんな時にでも、いつも笑顔で闘ってきた。だってこれは、そんなとっても楽しい遊戯。

 

だから私は、たとえ負けたら全てを失っても、最後まで自分を貫こうと思う。貴方はどう?」

 

「…………」

 

「ナンバーズとかそんなのは、勝つべき理由になったとしても、勝ちたい理由になり得ない。

 

だから、そんなのはいいんだ。重要なことじゃない。全てを忘れて、君らしく闘って欲しい! 君の後ろの、その友達と一緒に!」

 

「───!

 

まさか、あんた…………」

 

 

いよいよ以ってぼんやりと認識できてしまったアストラルの方を全身で示し、歌うように私は続ける。

 

このデュエルをより彩るため、このデュエルをより楽しむため。そして何より───彼の後ろで考え混んで楽しめてないあの人を、もっと盛り上げるために!

 

 

「さあさあ、私はこれで、ターンエンド!

 

じゃあ、君のターンだね! 君達(・・)がこの状況をどう突破するのか、しっかり見せてもらうよ!」

 

『もしや君は…………私が、見えて───?』

 

「まあね! ファンを見逃すなんて、アイドルじゃないし!

 

───って言うのは冗談かな。違和感はあったけど、見えるようになったのはついさっきだから」

 

「じゃあ、なんで…………」

 

「あれ? それにはもう答えたよね?」

 

「え?」

 

 

惚けた声を上げた遊馬くんにはっきりと向き直り、カツカツと靴を鳴らして彼へと近づいていく。

 

そうして元の位置、自身のスペースに戻った私は、謎めいた、アイドルとしての笑顔を敢えて顔にぴったり貼り付けて、常のように爽やかに言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

「───それは秘密。だって私は、アイドルだからね!」

 

 

 

 

 

煌めく笑顔と、神秘性。私のアイドルとしての理想を、私はうまく体現できているのか。

 

その答えは、きっと永遠に出てこないけど───ただ、最後に見た彼らの顔は、まるで何かを吹っ切ったような爽やかな様相を示していた。




しかしマーリン強いなマジで。私の宝具5スキルマレベル100フォウ1560マリーと一文字しか違わないのに100倍くらい強いんじゃね? というかマリーが弱いんだな。なんで強化されないんだろう………ずっと待ってるのに………。

あと武蔵邪魔。特にインフェルノ戦とか。無敵覚えてから出直せ。



追記:手札枚数が間違っていたのでインチキトレジャーで補完しました。今後もこんな感じでトレジャー使われるかもしれませんが、基本的にトレジャーは手札枚数修正用のカードとしてしか使わないので許してください。



さなぎ「実は私は、ガンマン一発で死ぬぞぉぉおぉぉおおお!!!」




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