『一つ、聞きたいことがあるのだが、いいだろうか』
「ん?…………こんな深夜に?」
深夜の病室、月夜が差し込み室内を幻想的に照らすここで、私はベッドより半身を起こして月を眺めていた彼女へと語りかける。
『非常識だとは理解している。だが、どうしても気になることがあってな』
「いや、そうでもないよ? ぼんやり起きてた私もアレだし。ほら、私ってば病院で『快復に向かう』って状況がレアでさ…………興奮して、クールダウンでもしなくちゃ───じゃなくて。
それで、何かな、アストラルくん」
『以前、君の言っていた言葉についてだ。
君は、「ナンバーズは人の心を写し出す鏡」だと言った。それは一体、どういうことなんだ?』
「ああ、それね。それはね───」
勿論、これ以外にも、疑問はある。そもそも何故彼女がそれを知っているのかさえ不可解な現状、本来ならこんな部分的な質問ではなく、もっと根本的なことを聞くべきなのだろう。しかし、どうしてか、私は彼女に対してこれ以上を、彼女の秘密に関わる部分に関しての疑問を問いかけることに、どこか躊躇いを感じていた。
「そうだね。その前に一つ、聞いておきたいんだけど───アストラルくん。君は『白紙のナンバーズ』って知ってるかな?」
『…………白紙のナンバーズ?』
「あ、その様子だと知らないんだね。了解。じゃあ、今のは忘れてくれていいよ。
それでなんだけど。正直、そのままの意味です、としか言えないかな。逆に疑問に思ったことはない? 君の力であるナンバーズが、どうしてこれだけあれこれのカテゴリに属しているんだろう、って」
また一つ、疑問が増えた。白紙のナンバーズ。それは一体、何を指す言葉なのだろう?
単にナンバーズの力のカケラのことを言うのならそう言うだろうし、こちらに知らないか、と確認を取るということはあちらはそれを知ってることになる。ナンバーズのオリジナルの私にさえ知らない、その言葉の意味を。
本当に、彼女は一体、何者なのか。会話すればするだけ、その経歴に次々と謎が増す。これが彼女が言う「神秘性」を高めるための伏線ならば、そのために彼女が何を知ったのか。それもまた、興味深い題材だ。
『そうだな。シャーク、ギミックパペット、オーパーツ、紋章、そしてギャラクシーアイズ………偶然だとは、考えられないだろう』
「偶然じゃないからね。多分だけど、その気になればリセットとかもできるんじゃないかな。変な表現だけど。
でね。…………なんて言ったらいいんだろう? というか、これって本来、君が説明する側じゃないの?」
『…………そうだな』
「まあいいや。───ねぇ、アストラルくん。ちょっと貴方のナンバーズ、一枚だけ貸してくれない?」
『…………?』
「特殊カード変質論。異世界人である君がそれを知っているのかはわからないけど───
私は精霊に触れない。だけど、影響を受けないわけじゃない。また、その逆も然り。いや、むしろ負担を無視できる分、こういう呪われたカードとかを扱うのに向いている。
更に言えば、私はソレの可能性を、指向性を事前に知っている。うまくいくかはわからないけど、ちょっとだけ、実験だと思って私に任せてくれないかな?」
『…………一体、何を』
私には、彼女が何を言っているのか、理解することはできない。
だが、彼女は私の困惑など意にも返さず、言葉を巧みに弄び、歌うように述べる。私の求めた回答とはまた違う、しかして無視できない類の言葉を。
これは、私が彼女にはぐらかされているのか、彼女にとっては当然の流れでそのような会話となったのか、その答えは、彼女の意を汲めないこの私にはよくわからないが───
『いや。だが、そうだな。───実に、興味深い話ではある』
同時に、私が彼女の巻き起こす事態に、一定以上の興味を抱いてることも否定はしない。たとえこれが彼女の酔狂だとしても───たまには、こういうことも悪くはないだろう。
☆☆☆
(───失敗、か)
このデュエルモンスターズにおいて、必勝法と呼べる戦法はない。
いや、正確には、デュエリスト達が見い出せてないだけで、この世界にはそれがあるのかもしれない。だけど、一般的に考えられるどの必勝法を引っ提げてデュエルに臨んでも、結局は失敗することが多い。
(───やっぱり、
それは何故か、決まってる。俗に言う、カード精霊のせいだ。正確には、互いの力量が拮抗乃至は抵抗して、それをさせるまいと妨害しているからである。
「アリトくん。私はね、実はあんまり、強いわけではないんだ」
「あぁ?」
「私は、特別なだけで、強いわけじゃない。私の秘密に触れたヒトは、みんな私のことを『異様』と言うけど、それは間違いじゃない。
私はね、色々と変なんだ。このナンバーズも、ギャラクシーアイズもそう。私の秘密の副産物にしか過ぎないんだよ」
「…………何が言いてぇんだ?」
「簡単。───私を
じゃあ、私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」
敢えて笑顔で、子どもに言い聞かせるように優しく、柔らかな口調で宣言する。
この状況でも自分を貫くのは正直、いやかなり精神的に辛いけど、このデュエルは遊馬くんも見て、否、誰も見ていなくても、私はアイドルなのだ。いつもにこにこ貴方の隣に。どっかの邪神のようにめげずにしつこいくらいアプローチをする! それこそがアイドル!(※個人差があります)
その割には私闘とかアイドルらしくないことばっかりやらかしてる気はするけど、普段から
決闘をやって咎められるヒトはいない。それがこの世界における大前提にして絶対の常識なのである。
「俺のターン、ドロー!」
彼のフィールドにカードは無く、手札は今引いた一枚だけ。客観的な視点だと誰がどう見ても彼の劣勢としか言えない現状、しかし彼らメインキャラという存在は、そんな一般論を容易く打破してみせる。
「俺は手札から、《エクシーズ・トレジャー》を発動!
フィールドにいるモンスターエクシーズの数だけ、デッキからカードをドローだ!」
(───やっぱり引いてくるよねぇ。流石の運命力)
初期手札にほど近いレベルにまで手札を加算してきた彼に警戒を深める。
思い出すのは、WDC決勝戦のこと。私が負けた、現状ではただ一つのデュエル(非公式戦を除く)。あの時もこうやって、たった一枚の最期の手札から膨大な量の運命を操り、フィールドをどんどんと展開し、私の切り札をさえ見事打ち果たしてみせた彼。
(───まあ、彼のように、とはいかないだろうけど)
「まずはマジックカード、《バーニングナックル・スピリッツ》を発動!
デッキトップを墓地に送ることで、墓地にいるヘッドギアを守備表示で特殊召喚する!
更に俺は、《BK スイッチヒッター》を召喚!
このカードは、バーニングナックラーの素材とする時、1体で2体分の素材にできる!」
《バーニングナックル・スピリッツ》
通常魔法
「バーニングナックル・スピリッツ」は1ターンに1枚しか発動できない。
①:デッキの一番上のカードを墓地へ送って発動できる。
自分の墓地の「BK」と名のついたモンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚する。
《BK スイッチヒッター》
効果モンスター
星4/炎属性/戦士族/攻1500/守1400
①:このカードを「BK」XモンスターのX召喚の素材とする場合、このカードは2体分の素材にできる。
「レベル4のモンスターが3体…………」
ついにくるのか。オーバーハンドレッドナンバーズ。デッキ解説の時はボロクソ言ってたような気がする、でもあれで何故かアニメより強化されていた地味に珍しいナンバーズが。
「俺はレベル4のヘッドギアと、スイッチヒッター2体分をオーバーレイ!
3体分のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!
現れろ!《No.105 BK 流星のセスタス》!」
《No.105 BK 流星のセスタス》
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/炎属性/戦士族/攻 2500/守 1600
レベル4モンスター×3
①:このカードは「No.」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない。
②:このカードがこのカードの攻撃力よりも高い攻撃力を持つモンスターと戦闘を行う場合、
このカードのエクシーズ素材1つを取り除いて発動する事ができる。
このカードはこの戦闘では破壊されず、この戦闘は無効化されない。
この戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。
「105番目…………やっぱりバリアンは、アストラルくんのナンバーズとは別の、ナンバーズの名を冠すに相応しいモンスターを持っているんだね」
「へっ、その程度の認識でいいのか?」
いいんじゃないかな。結局、アニメでも細かい理由とかは明言されてなかったと思うし。多分、ナンバーズじゃないとナンバーズは破壊できないから、ナンバーズ以外の勢力を持つ人にナンバーズを当てはめただけ…………なんか変な表現になっちゃうなぁ。とにかく、まあ、そんな感じだろうから。
ちらっと、後方で見学しているはずの遊馬くん達の方を見る。ミザエルとの決闘を引き受けたからには、多分彼らにはこれが初めてのオーバーハンドレッドナンバーズ。となると。
(───うーん。面白いくらい動揺してるなぁ)
新たな空間を作り出すスフィアフィールドが音を遮断しているのか声こそ全く聞こえないけど、それでも遠目ではっきりと見て取れるだけ彼らは動揺を示している。アニメ通りの反応をしているんだろうか、なんて浮かぶのは、もはや業に近い何かだから諦めているけど。
加えて、真月くん。いや、ベクター。今は役に徹しているとわかっていても怖い。しかも役者としてもほぼ完璧に近くて、芸能にどっぷり染まっている私ですら先入観が無ければ違和感に気づかなかったかもしれない。病院で話した時は本当に気の良いお調子者の少年、みたいな感じだったしね。
文句なしの満点。驚いてる演技も完璧。機会があれば、演技指導を願いたいくらい。正直、私は彼のように嫌がらせのために全てをかなぐり捨てる覚悟は嫌いじゃないです。やってることは邪悪だけども。
「その程度、ね。正直、私にとってはナンバーズなんて妙ちきりんな戦闘耐性を持っているだけのエクシーズモンスターでしかないから、評価の対象はそれを操るデュエリスト本人だけだよ」
「へぇ、なるほどな」
「ただ、この状況でたかが一体、ランク4のモンスターを出したところで私の優位には変わりない。
勿論、私はランクでエクシーズモンスターを格付けするつもりはないけど、ブレードドラゴンにすら劣る火力で、この私をどうにかできるのかな?」
「慌てんじゃねぇ! 俺の本気はまだまだこれからだ!
行くぜ! バリアルフォーゼ!!」
「えっ」
そんな言葉を皮切りに、うぉぉぉお、という掛け声と共に彼の身体が光り輝き、光が開けた先にはなんと、バリアン究極態となったアリトくんの姿が!!
(───そういえば、真の姿じゃないとカオスナンバーズ使えないんだっけ?
いきなり変身するから、何事かと…………)
いや、何事云々を言い出すなら現状がもはや何事なのか突っ込みたい気持ちで一杯だけど。
「───」
パクパク、口を動かす。違う、何かを言おうとしたのだ。まさかの変身!?とかそれがお前の真の姿か………とかそういうリアクションを。だけど、言葉がどうやっても捻り出せなかった。これがまさに絶句、と言うのだろう。前世も含めて初めての経験である。経験したくなかった………。
(───やばいよやばいよ。心構えもなしに目の前で変身とかやられると困っちゃう)
実際、反応に困る。何を言えばいい? 事前に身構えていたミザエル戦とは違い、この闘いは本気で偶発的なものだ。プライベート時のアドリブに期待が持てない自分では、気の利いた反応なんてとてもとても。
「へっ、覚悟しやがれ! これが俺らバリアンの、真の力だ!
俺は手札から、《RUMーバリアンズ・フォース》を発動!」
「それは───」
ランクアップマジック。エースの効果をお披露目せずにいきなり進化とは。焦っているのか、余裕がないのか。───そうでもしなければ、勝てないと踏んだのか。
マインドスキャンを持たない私には、彼の真意を推測は出来ても断定は出来ない。だけど、彼が真の切り札を私に見せるに相応しいと考えてくれたのなら───
(───負けられないなぁ、絶対に)
「闇を飲み込む混沌を!光を以て貫くがよい!
カオスエクシーズ・チェンジ!
現れろ、《CNo.105 BK 彗星のカエストス》!」
《CNo.105 BK 彗星のカエストス》
エクシーズ・効果モンスター
ランク5/炎属性/戦士族/攻 2800/守 2000
レベル5モンスター×4
①:このカードは「No.」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない。
②:このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
その破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
③:このカードが「No.105 BK 流星のセスタス」を
ランクアップしてエクシーズ召喚に成功した場合、以下の効果を得る。
●1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材1つを取り除いて発動する事ができる。
相手フィールド上に存在するモンスター1体を破壊し、
その破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
セスタスの拳に膨大な力が宿り、混沌を編み上げ全身を覆い尽くす。
快活な青い装甲がカオスを表す赤に染まり、その色を紫に染め上げていく姿は、知ってる私にも衝撃的な構図だった。
「バリアンズフォースの更なる効果を発動!
このカードの効果で特殊召喚したモンスターに、オマエのナンバーズのオーバーレイユニット全てを移し替える!」
「くっ…………」
ダークマタードラゴンのオーバーレイユニットは2つ。これによりカエストスのユニットは5つとなり、こちらの火力まで微妙に下げられてしまった。それでもまだカエストスは私のどのモンスターにも及ばない攻撃力でしかないけれど、彼のバーニングナックラーには、簡単に火力を1000も上げられるモンスターがいる───!
(───でも!)
私だって、負けはしない。負けられない。バリアンだろうとなんだろうと、デュエリストであるならば如何様にも出来る!
「カエストスの効果を発動! カオスオーバーレイユニットを一つ使い、オマエのナンバーズを破壊! 破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!
これで、終わりだ! いっけぇぇぇぇええ!!」
「させない! 罠発動!《ランク・ゲイザー》!
自分フィールドのエクシーズモンスターのランクの合計かける300、自分のライフを回復する!
私のフィールドにいるエクシーズモンスターはランク9が4体!よって私は、10800のライフを得る! ───っ」さなぎ LP 3200→14000→10400
(───っ、流石に、初期ライフに近いダメージは…………)
相変わらず肉体的には異変はないが、とてつもない不快感が魂に刻まれる。呪縛、とはまさに真理を得ている。これがまともなカードであるはずも、まともな手段で生まれるはずもない!
「───その程度?」
「───んなわけ、ねぇだろ!
更に俺は、カエストスのカオスオーバーレイユニットを全て取り除き、《ストイック・チャレンジ》をカエストスに装備する!」
(───ストイックチャレンジ!? やばい、これは…………まさか、ワンキル狙い!?)
《ストイック・チャレンジ》
装備魔法
Xモンスターのみ装備可能。
①:このカードの発動時の効果処理として、装備モンスターのX素材全てを取り除く。
装備モンスターの攻撃力は
この効果で取り除いたX素材の数×600ポイントアップし、
相手モンスターとの戦闘によって相手ライフに与える戦闘ダメージは倍になる。
また、装備モンスターの効果は無効化される。
②:相手ターンのエンドフェイズに発動する。このカードを墓地に送る。
③:このカードがフィールド上から離れた時、装備モンスターを破壊する。
ストイック・チャレンジ。そのカードは、よく覚えている。火力強化と、戦闘ダメージ倍化の圧倒的なライフダメージによって、アドバンテージの概念を打ち滅ぼす一発逆転のカード!
「そして、取り除いた数×600ポイント、装備モンスターの攻撃力をアップする! 俺のカエストスのカオスオーバーレイユニットは4つ! よってその攻撃力は2800に2400を加えた5200だ!」
「でも、私のブレードドラゴンの攻撃力は全て3200。つまり通るのは最大でも4000ダメージだけ。
私の今のライフの前では、その程度じゃあ、まだまだ軽い!」
「それでも構わねぇ!
バトルだ! 俺はカエストスで、銀河眼の光波刃竜を攻撃!
コメット・エクスプロージョン!!」
「───なら、貴方の切り札は、この場に相応しいこのカードで打ち砕く!
速攻魔法、《ぶつかり合う魂》、発動!」
《ぶつかり合う魂》
速攻魔法
①:自分の攻撃表示モンスターが、そのモンスターより攻撃力が高い
相手の攻撃表示モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に発動できる。
その戦闘を行うモンスターの内、攻撃力が低いモンスターのコントローラーは、
500LPを払ってそのモンスターの攻撃力をダメージ計算時のみ500アップする事ができる。
その後、お互いがLPを払わなくなるまでこの効果を繰り返す。
その戦闘で発生するお互いの戦闘ダメージは0になり、
ダメージ計算後にその戦闘でモンスターを破壊された
プレイヤーのフィールドのカードは全て墓地へ送られる。
「このカードを発動後、バトルするモンスターの攻撃力が低い方のプレイヤーは、ライフを順次500毎に支払い、その攻撃力を500アップでき、それを互いのプレイヤーが諦めるまで続ける!」
「意地の張り合いってやつか!だが…………」
「そう、私と貴方のライフ差は圧倒的!
よって私は、ライフを2000支払い、攻撃対象となったブレードドラゴンの攻撃力を5200にアップ!」 さなぎ LP 10400→8400
「攻撃力は互角…………ってことは」
「互いに効果を発動できず、ストイック・チャレンジの効果によって貴方のモンスターも破壊。そして、この効果の対象となったモンスターが破壊されたことにより、互いのフィールドのカードは全て墓地に送られる!」
「なっ………」
ブレードドラゴンとカエストスが文字通り、ぶつかり合い、フィールドの全てのカードを巻き込んで消滅する。
これにより、互いのフィールド及び手札は0。墓地も使えるカードはない。次の私のターンこそ、勝負の決め手となる、そんな場面になったわけだけど、
「貴方のターンは、これで終わり?」
「…………ああ。俺はこれで、ターンエンドだ。
俺は、俺に出せる全力を出し切った。これでオマエが次のターン、新たにモンスターを引いて負けたとしても、悔いは───」
「いや。その必要はないよ。というか、多分次のカード、私の運命力的に役立たずだと思うし。
だから私は、エンドフェイズにランク・ゲイザーの更なる効果を発動する」
「何………!?」
《ランク・ゲイザー》
通常罠
①:自分フィールド上に存在するXモンスターを任意の枚数選択して発動できる。
それらのモンスターのランクの合計×300ポイントのライフを回復する。
また、このカードの発動後、このターン選択したモンスターがフィールドを離れた場合、それらのカードを対象に、墓地のこのカードを除外して発動できる。
そのランクの合計より低いランクのXモンスター1体をX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚し、対象のカードを下に重ねてX素材とする。
この時、素材とするモンスターの数は、そのX召喚に必要な条件と同数でなければならない。
私の運命力では、本気を出した彼に到底及ばず、運気を取られて絶望の未来となるのが目に見える。だから、私は事前に布石を仕込んだ。故に、彼はここで終わりだ。
そして、今の私の後ろには、あの遊馬くんがいる。希望の象徴、ナンバーズのオリジナル。ならば、出すモンスターと言えば、これを除いて他はないだろう。
どちらにせよ、4体素材のエクシーズなんて数えるほどしかいない。なら、少しくらい気を利かせてこのカードを召喚しても、誰にも文句は言われないと信じて。
「ランク・ゲイザーの発動時、フィールドに存在したエクシーズモンスターがフィールドを離れた場合、それらのカードをエクシーズ素材として、そのランクの合計よりも低いエクシーズモンスターをエクシーズ召喚す───」
(───いや。待て待て待て。ちょっと落ち着こう。落ち着いて、落ち着いて…………。
今の私は、ほぼ勝利が確定している。気を利かせるのもいいけど、こんなところで奥の手を使っていいのかな?
……………………よし、やめよう)
ホルダーに手を差し伸べたその時、私はふと冷静になって地味に酷い思考を繰り広げる。こんな全力の闘技でもまず打算が前提に入ってしまうあたり、私という人間も、実に救い難い。
けれど、一戦一戦が本気で何の支障もない彼と違って、私は遊馬くんを最低7人から守り抜かなきゃいけないからね。この程度なら、いくらでも飲みくだしますとも、ええ。
しかし、1000以上の攻撃力で4体素材。何かいただろうか…………あ、あの子がいたっけ。よし、これで行こう。
「偽りの骸を捨て、神の龍となりて顕れよ!
ダイレクト・カオスエクシーズ・チェンジ!
降臨せよ! ランク10、《CNo.92 偽骸虚龍 Heart-eartH Chaos Dragon》 !」
いつしか、フェイカーさんを完封して見事に勝利を収めたカオスナンバーズが、スフィアフィールド内を蹂躙するように君臨する。
確かにこのカードは弱い。進化すると弱くなる。しかも段違いに。こんな意味不明な悲しみを背負うナンバーズなんてきっと他にはいないだろう。でも、それも問題はない。
彼がここに来てくれた。えらく限定的で、選ばれ過ぎた状況だとしても、今の私はそれだけでこの決闘に勝利することができるんだから。
「攻撃力1000の、カオスナンバーズ…………!?」
「私のターン、ドロー!」
引いたカードは融合。ある程度の確信はあったといえ、本当にビックリするほど現状では役に立たないカードだ。でも、それも全てにおいて無問題。勝利の方程式は、既にフィールドに出揃っている………!!
「バトル!
私は、ハートアースカオスドラゴンで、アリトくんに直接攻撃!
ハートブレイク・キャノン!!」
「ぐっ………ぁぁああああああ!!!!」 アリト LP 1000→0
ハートアースの放つ凶悪にして強大、無敵の砲撃が、スフィアフィールドごとアリトくんを吹き飛ばす。
それを確認し、慌てたように駆け込んで来た遊馬くん達の姿を見て、私はようやく、バリアンとの闘いを見事制した事実を実感するのだった。
何故か勝率100パーセントのハートアースカオスくん。二回も出るなんてそんなん想定しとらんよ………。
なお、ブレードドラゴンの蘇生効果が発動してないように思われますが、ぶつかり合う魂のデメリットを受けた場合、戦闘破壊が確定したブレードドラゴンをもデメリットとして墓地に送ることになるため、相手によって破壊されていない扱いとなり、蘇生効果が発動しませんでした。
…………わけがわからないって? 安心しろ。私にもわからん。
クオリティが下がってる気がするなぁ…………仕事であんまり、時間取れてないからなぁ。