デュエルバンドなんてなかった。   作:融合好き

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この作品、憑依タグがないってので運対くらったんだけど…………憑依なんだろうか。違うつもりなんだけども。まあいいや。


あ、今回で(冒頭で)ミザエル戦は終わります。…………あっ(察し)


地獄! プトレノヴァインフィニティ!

この世界における一般的なデュエリストのいわゆる『切り札』は、基本的にピン挿しであることが多い。

 

いや、多いどころか、ほぼ大半がそうであるというべきか。勿論複数枚利用することが利点になるモンスターもたくさんいるからどうしてもざっくりとした表現になってしまうけど、少なくとも私の知る範囲では私を除くほぼ全員がそのようにしている。

 

何故か、そう聞いたことがある。前世の鬼門たるエクストラデッキの枚数制限もないこの世界。その気になれば己の切り札のみならず、そこらで販売されてる汎用エクシーズや簡易融合で特殊召喚できる低級の融合モンスター、素材が(この世界では未だに)禁止カードとなっているどう考えても使えない《クリッチー》なんかを三積みしていてもなんのデメリットもないどころかメリットにすらなるというのに、どうして誰もそうしないのか、と。

 

 

『え?…………ええと、うん? ああ、言われてみれば…………。

 

でも、(・・・)そういうもの(・・・・・・)じゃないの(・・・・・)?』

 

『へ、へぇ…………?』

 

 

何か深刻な不文律的理由があるのかと思えば、返ってきたのはそんな言葉。勿論、全員が全員、彼女のように『なんとなく☆(要約)』と答えたわけではないにしろ、中身はどれも似たり寄ったりで『これぞ!』と言える理由はなく。でも、みんなそれが当然のように思っていた。

 

それに対し、私は何故、という以前に、ああ、と納得をしてしまった。私と違い、みんなは『合理的』とはかけ離れたところに生きている。デュエリストとは本来そういうもので、それでこそなんだな、などと。

 

だから、彼らは変なサポートカードをデッキに入れるし、コンセプトに関して妙な拘りを持つ。それは彼らが安価で販売されている上位互換を使わずに舐めプをしてこのゲームをバカにしてるわけではなく、このゲームをそういうものとして見ているから。

 

この辺りの意識の差が、きっと私がイマイチこの世界に馴染めてないと感じる要因なんだと思う。こんなにも私と彼らで、意識の差があると思わなかった………!ってやつだ。しかもこれ、絶対に治る気がしない。だって私、なんだかんだでOCG脳だもの。エクストラに全く別のカテゴリ(Em)が入ってる時点でお察しというね。 これでもだいぶ拘ってるんだけどなぁ。

 

で。

 

 

「2体目の、ギャラクシーアイズだと…………!?」

 

 

今ある光景も、その要素の一つ。かつての私が、かつてのように振る舞うからこそ生まれしもの。

 

フィールドに狭苦しく立ち並ぶ2体のギャラクシーアイズ。これぞ前世では良くあった光景ながらもこの世界では世にも珍しい、『超弩級エースモンスターのガン積み』行為である!

 

 

「【光波】は本来、同名モンスターを並べることで真価を発揮するデッキ。私の光波竜が奪ったモンスターを自身の現し身とするのもその一環。

 

ならば何故、私がこの子を複数枚持っていないと考えるのか。貴方のナンバーズは唯一無二で、それでこそ特別なカードなんだろうけど、同じギャラクシーアイズだからと私の子に貴方の相棒を当てはめるのは視野狭窄だよ」

 

「なっ…………!」

 

 

運命力の欠如から、私がその『本来の闘い方』をできていないことは棚に上げて尤もらしく語る。

 

このゲームの創始者である誰かさんも言ってたように、デュエルとはすなわち互いの心理のせめぎ合い。動揺を誘えば運命に翳りが生じ、迷いがあれば戦術を曇らせる。無論、それが全て、というわけではないにしろ、精神面で優位に立つことがデメリットとなることはまずあり得ない。

 

だから、ただでさえ運命力が低────ん?

 

 

「───あれ? なんか、変な破砕音が…………」

 

「───!

 

いかん、エネルギーが大き過ぎる…………!」

 

「……………………え?」

 

 

 

 

 

 

(───え。マジで?)

 

 

気づけば、私のそこそこ優秀な聴覚が、小さくスフィアフィールド内に反響するメキメキメキといった感じの謎の音声を拾い上げる。

 

と、同時、いつかの決勝戦が如くスフィアフィールドに電流的な謎パワーが放電(比喩表現)し、それを見たミザエルまでもが慌てだして…………って、え?

 

え?

 

 

(───いやいやいやいやいや。なんでさ。まだネオタキオンどころか、真の姿(バリアン態)すら見せてないのに…………)

 

 

それとも。

 

 

仮に、私に(・・)何の負担もないからと、他でもないこの私が、この子の力量を見誤っていたとしたら。さて、どうだろう。

 

私の感覚に間違いがないことを大前提として、この子の単純な『格』はと言えば、だいたいあのコートオブアームズ辺りに匹敵する。つまり、一般的なナンバーズよりも格上で、しかしカオスナンバーズには及ばない。これは、本来なら何の変哲もなかったはずのカードに宿った力としては破格と言える。

 

次に、ナンバーズについて。これはまあ、察しの通り、いわゆる原作にて特別とはっきり明言されていたカード群だ。故にこれまたそんじょそこらのカードなんかでは格として及ぶべくもなく、また使い手の思い入れにより良くも悪くも変化する。

 

しかし、ムラがあることを考慮してもそのアベレージは軒並み高く、例えるなら…………なんだろう。王様のブラマジ並み? いや、映画のスフィンクスアンドロジェネスくらいかもしれない。実のところ、このあたりの格付けは全て私の独断と偏見で行なっているため著しく正確性に欠けているのだ。なにせ私は、それを実際に体感することはできず、かつて無かったからこそ過剰なまでに感じ取れる第六感を頼りに計っているだけなのだから。でも、最低限、低くはないことだけは理解できる。

 

加えて、私自身の体質。私は、この世界の人間ではないが故に精霊に干渉できず、また本来ならそれに干渉されることもない。事実、私はナンバーズなんてものに出会うまで精霊の干渉による被害(ダメージへのリアクション)を単なるジェスチャーの一種なんだと誤解していたくらいだ。スフィアフィールドを抜けられたからには、この体質に関しても間違いはないだろう。でも、この辺の感覚はどちらかと言えば繰り手本人の格に左右されるから、あまり当てにしない方がいいかもしれない。

 

ここまでを前提に内容を組み立て、客観的に私の光波龍くんの力量を測ってみることにする。…………いや、できないか。そもそもムラだらけのナンバーズが基準として成立していない以上、こんな仮定に意味はない。無理に基準を算出しても、自己満足以上の結果にはならないだろう…………でも。

 

 

(───あの時)

 

 

あの時、トロンさんとの闘いで私がこの子を出した時、Ⅳさんを始め、凶悪なナンバーズなんか見慣れているはずの彼は、明らかにこの子を見て『惚けていた』。まるで、信じられないものを見たかのように。

 

あの時はそもそもそれどころではなく、気にはなっても流してしまったが、アレはもしかしたら私の光波龍に対し、彼が『ナンバーズ以上のもの』を感じたからなのではないだろうか?

 

アニメで遊馬くんと闘った彼。私に影響を与えたホープ、その進化系たるホープレイすら涼しげな表情で受け流していた人物が、このカードを見て驚いていた。勿論、ランクアップなんて非常識なものを見たせいもあるんだろうけど…………。

 

 

(───そうなると、ホープレイ以上のモンスターが2体。それに加えて、ランクアップにタキオンドラゴン…………)

 

 

しかも、タキオンドラゴンは効果を使用した本気モード。カオスナンバーズではなくても、原作でのネオフォトンドラゴンと互角以上の力を持った超性能モンスター。事実、彼がタキオンを召喚していた時は明らかにスフィアフィールドに負担が生じていたし、これだけ要素を詰め込めば、この段階でのオーバーフローもあり得ない話ではない。

 

いや、今更も今更だがこの際細かい理由はどうでもいい。現状、何よりも大切なのは、現にこうして、スフィアフィールドが崩壊寸前だという事実…………!

 

 

(───どうにか、伏せカードは…………駄目だ。《銀河眼新生》だったらなんとかなったかもしれないけど、このカードじゃ…………)

 

 

しかも、現状、私に打てる手はない。まだ私のターンならどうにかできる可能性はあったのだが、相手ターンのバトルフェイズ、しかもエンドステップに都合よく割り込めるカードを、私如きの運命力で見通して仕込むなんて───あ。

 

───違う! 今はこんなこと、考えるより前に、逃げないと───!

 

 

「ま、まず───!」

 

 

崩壊(・・)への予兆をデュエリスト特有の勘で感じ取り、慌ててスフィアフィールドの外壁へと駆け寄り、手を───

 

 

「あ、っう…………!」

 

 

タイミングを狙ってたかのように、私の額に河辺の石であろうそこそこの大きさの物体が衝突する。おそらくだけど、スフィアフィールドが発するエネルギーに引き寄せられた物体が亀裂を通り抜け、たまたま私に───ああもう! こんなこと考えるより、前に…………!

 

 

(───ま、にあ、え───!)

 

 

前世でいう、トップアスリートにも匹敵する、しかしこの世界では割と微妙な身体能力を最大限引き出して、どうにかスフィアフィールドを潜り抜け(・・・・)た瞬間、

 

 

 

 

「あ───

 

 

 

覚えているのは、ここまで。

 

後方より発された、凄まじい轟音と共に拡散する光の波動に、私の意識は飲まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと、河辺を歩く。

 

沈みかけの夕陽が眩しく世界を照らすこの光景は、私にとって、仕事で荒んだ心を癒してくれる優しい絵画のようなものだ。だけど───

 

 

「はぁ…………」

 

 

小さくため息。幸せがまた一つ、逃げていく感覚がする。

 

原因はわかっている。他でもない自分のことだ。いくら目を逸らそうと仕事に没頭しても、こうして少しでも余裕が出てしまうと、いつも私はこうなってしまう。

 

 

「今日も、何も言ってくれなかったな…………」

 

 

思い返すのは、目下の悩み、私が抱く自分勝手な自己嫌悪の要因にして元凶。そして最近、いつまでも何かを抱えて悩み苦しんでいる憧れの人について。

 

彼女の悩みについて、私は何も知らない。でも、だからこそ、曲がりなりにも彼女の友人である私は、どうしても気に病んでしまう。

 

しかし、それが彼女にとって、余人に立ち寄れないほど大切なものであることはわかっていた。そう、私はそれを、ただ傍で見守り続けてあげるべきだってわかってたのに…………私はかつて、どうしても耐え切れなくなって、自分の気持ちをぶつけてしまっていた。

 

 

『───さなぎちゃん! 大丈夫!?』

 

『あ──うん。私は大丈夫。ちょっと疲れていて…………』

 

 

こちらの真剣な気持ちを察してか、いつもの綺麗な笑顔すらまともに見せず、俯いてそう応えた彼女の態度が、辛かった。

 

何も話してくれない彼女。何もしてあげられない自分、双方に湧く悔しさと無力感が抑えられなくて。

 

 

『その、ごめんね』

 

『…………本当に大丈夫なの?』

 

『大丈夫大丈夫。ついさっきも休んだばっかりだし、ね』

 

 

未練がましく食い下がる自分の言葉を遮って、悲しそうな声が響く。その悲しみが何に向けられたものなのかさえ、私にはわからなかった

 

肝心な事は教えてくれない。でも、彼女は私に、隠さずに感情を吐き出してくれている。その事に…………彼女の傷口を抉っている事に気付いていながらも、それを私なんかに晒してくれる彼女の状況に、自分勝手な満足感を得ていた自分へやや嫌悪しながらも。

 

 

『で、でも、凄いよね! 確かにさなぎちゃんなら、って言ってたけど、まさか本当に決勝トーナメントまで出場しちゃうなんてさ!』

 

『──それはそうだよ』

 

『え?』

 

『あ。いや、なんでも──』

 

 

 言葉の端々から覗く意味と彼女の様子から、悩みの種類にあたりをつけた。自分の知らない所であった“何か”、そこで何があったのかまではわからないけど、それが彼女を、これほどまでに追い詰めているのだと。

 

 

『……………』

 

 

 らしくない(・・・・・)、そう思った。常にアイドルとして懸命に生きてきた彼女の姿は、私にとっての憧れだった。そこに至れず、だけれどいつまでも追い求めてこんなところに燻っていた私には、彼女が誰より羨ましかった。

 

そう。私もいつか、彼女のようになりたくて───でも。

 

でも、私は。それなのにこの私は。それと同時に、そんな彼女が、自分と同じように(・・・・・・・・)悩んでいる姿を見て、きっと密かに安心(・・)していた。

 

自分だけがこうではない。彼女のような人だって、何かにつまづくことはあるんだって、そんな、あまりにも格好悪い安心を、よりによって私は、誰よりも憧れている彼女に抱いてしまって。

 

私は、私のことが、心底から嫌いになった。ただ、それだけ───

 

 

 

───ドオォォン…………

 

 

 

「ん…………?」

 

 

劈く轟音。まるで地上で花火が爆発したような、現実感のない音声が私の耳を掻き鳴らす。

 

ごく自然に、当然の反応として音のした方へ目を向ければ、人気も無く荒れ果てた河川敷の一部が崩壊して、その周辺に不自然なクレーターを作り出していた。

 

 

(───え…………?)

 

 

固まる。あまりに穏やかな河川敷に不釣り合いで、現実感のない光景が私の脳を問答無用で停止させた。

 

先程まで確と歩いていた軌跡が、急に夢の中にいたかのように色褪せていく錯覚に囚われるが、あの破砕音の付随品であろう肌に焼きつく熱、ジワリと押し寄せる熱風が私を現実世界へと引き摺り込む。

 

 

「ち、ちょっ、河が、クレーターって、ば、爆弾…………?!」

 

 

どうにか捻り出した言葉も、混乱に飲まれて形にすらならず、支離滅裂な単語を刻むのみ。果たしてここで、何があったのか。理由は分からずとも、それが成した結果を客観的に把握することは容易だったはずなのに、それすらも今の私にはできなかった。

 

反射的に、仕事着が汚れるのも構わず、丈の長い草が無遠慮に生い茂った道無き道を掻き分けて、現場と思わしきクレーターの方へと向かう。

 

───そこで私は、”あり得てはいけない“ものを見た。

 

 

「うぅ…………」

 

「ひっ───!」

 

 

ソレ(・・)を見た時、私は最初、目の前に何があるのかも分からなかった。いや、理解しようとしなかった。何故なら、ソレはあまりに私にとって馴染み深いものであり、そして───ソレは同時に、あまりにも私にとって、想像し難い状態でその場に在ったのだから。

 

 

「さなぎ、ちゃん───?」

 

「───あ、───ちゃん…………? さっきぶり、だね…………ごめん、ちょっと、救急車とか───お願い」

 

 

ひゅぅ、と口から変な息が漏れ出る。絞り出した言葉も、驚愕からか先程以上に掠れている。先程までに考えていた葛藤も、もはや思慮の内にすらない。私がたまたま遭遇した目の前の非常識(ボロボロになった蝶野さなぎ)は、それだけ私の心から余裕や判断力を奪い取っていた。

 

 

「な、なんで…………」

 

「ああ───ちょっと、油断、しちゃって…………。私なら、って思ってたんだけど。………流石に、無理だったみたい…………」

 

 

弱々しく、私以上に掠れた声で力なく紡ぐ彼女の姿に、嫌な想像が脳裏をよぎる。

 

そも、私の貧困な想像力では、道端で女性がボロボロになって放置されてる原因なんて数えるほどしか挙げられない。しかもそれが、彼女のようなずば抜けて見目麗しい少女ならば尚更のこと。私自身、自惚れかもしれないが割と容姿の整った方だと思うし、ならばどうしてもそういう(・・・・)可能性を考えてしまうのは、仕方のないことだろう。

 

邪推を振り払うように、私は改めて彼女の状態を確認する。服に乱れはないか、顔に殴られた痕がないかなど、これがヒトの手によるもの(・・・・・・・・・)なのかどうかを。

 

 

(───違う(・・)、わね。じゃあ、やっぱり、さっきの音に巻き込まれて…………?)

 

 

「あの、早く…………救急車───」

 

「…………あ!

 

え、と。今呼ぶから───!」

 

 

そもそもなんで彼女がこんな人気のない河川敷にいたのかは疑問だが、私の想定していた最悪(・・)ではなかったことにひとまず安堵、同時に怪我の具合もそこまで酷くなかったことに純粋な意味での安心(・・)を抱く。

 

こんな場面に出くわしたことで本来の安心(・・)を思い出す辺り、私は相当最低な人間なんだなと嫌悪してしまうが、しかし私のそんなネガティブ思考も、てんやわんやの対応に追われていつしか消えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

(───ああ、これ(・・)は私が彼の代わりになったんだな)

 

 

「…………なーんて思っていたのに、なんで君も怪我してるのかなぁ。遊馬くん?」

 

「? …………何のことだ?」

 

 

今世では初めてのはずなのに、もはや馴染んだとかそんなレベルじゃないほど慣れ親しんでる病院のベッドの中で私は愚痴を零す。それを受けた当人はと言えば、私が何を言ってるのかさえわからないとばかりに困惑顔だ。まあ、実際、これは私にしかわからないんだけど。

 

 

「むしろ、どうしてアンタがそんな大怪我してんだよ…………」

 

「それはね遊馬くん。私が譲れないもののために馬鹿な意地を張って馬鹿やったからだよ。つまり、いつもの君と同じだね。

 

というか、そんなことよりここにいるとトラウマ(幻痛)が…………早く帰りたい…………」

 

 

病院。この単語だけで私は、かつての私を思い出して鬱になってしまう。だからこそ今まで怪我には細心の注意を払っていたし、更にデュエル中に怪我することがまず私にはあり得ないと判明した時はそれこそ狂喜乱舞したくらいなのに。

 

 

「でも、あれ? 遊馬くんだけ? シャークは?」

 

「シャーク? いや、今日は来てねぇけど…………」

 

「…………?

 

あれ? 遊馬くんって、何で怪我をしてるんだっけ」

 

「ああ………ちょっと恥ずかしいけど、デュエル庵ってところへ行った帰りに崖から落ちちまって───」

 

 

不思議そうにしながらも、スラスラと淀みなく、自分がここにいる経緯を恥ずかしげに語る遊馬くん。それも当然だ。彼にとってのこの疑問は、私以外の存在には違和感すら感じることはないごく当たり前の経緯なのだから。

 

 

(───ちょっと、いや、だいぶシナリオを外れてるなぁ…………)

 

 

相変わらずうろ覚えで頼りない記憶だけど、確かこの時期の彼はシャークと一緒にあのミザエルと(カイトが)闘ったことが原因で入院してたはず。だからこそ私は彼らの怪我を引き継いだのだ、などと考えていたわけなのだが、それでも彼は怪我をした、しかも何故か遊馬くんだけとなると、妙な陰謀を感じなくもない。主に、私への役者変更辺りで。

 

一体、この世界は脇役代表たる私に何をさせたいのか。ここまでタイミングよく彼と一緒になるということは、私にシャークの代わりでもさせたいのか。それとも───

 

 

「デュエル庵? それって───」

 

「───なあ」

 

「ん?」

 

 

何、と聞こうとした私の発言を遮り、神妙なトーンで遊馬くんは切り出す。

 

力無く紡がれた言葉は私にとっての予想外であり───そして、私という存在がこの世界に与えた影響を、如実に感じ取ることができる一言だった。

 

 

「バリアンって奴等は…………何がしたいんだろうな」

 

「え?」

 

「いや、奴等がナンバーズを奪いたいってのはわかる。でも、俺にはその理由がイマイチわかんねぇんだ。いいや、それも違う。理由がわからねぇことも奴等の目的を知らない俺がわからないのは当然だ。だけど、なんつぅか、その…………。

 

”なんかモヤモヤする”って言えばいいのか…………すまねぇ。なんか、俺には上手く言えねぇや」

 

「それは───」

 

 

何を。

 

何を彼は、言っているのか。彼らが何をしたいのか、何をしているのかなんて明白だろうに、どうして彼は、そこ(・・)を悩んでいる…………?

 

 

(───いや)

 

 

いや、違うんだ。前提が。今の彼は、私がいることによって原作とは違う道を辿っている。思い出せ、彼の軌跡を。私の行動を。それが及ぼすだろう、起こり得る可能性を───

 

 

(───まさか、とは思う、けど…………)

 

 

一つ。私の闘った相手、それらの共通点を思い浮かべて、やや突飛な考えが浮かんだ。まさか、とは思うけど、彼のような純粋な少年なら、確かに「そこ」を理解できない(・・・・・・)ことだって、あり得ない話ではない。

 

でも、彼が? よりにもよって、この世界の主人公である九十九遊馬が?

 

彼のような存在がまさか、私如きの行動によって、そこまで変わってしまうものなのか?

 

 

「もしや、とは思うけど───」

 

『───遊馬。そこから先は、私が話そう』

 

「…………アストラル?」

 

 

それでもやっぱり信じられなくて、いくらか会話の予防線を張りながらそれ(・・)について切り出そうとした矢先、私の出鼻を挫くように、否、私の出鼻をまさしく挫くタイミングで、今まで静かに私達の会話を見守っていたアストラルが、遊馬くんへと語りかける。

 

そして、やはりというかなんと言うべきか。彼が続けて遊馬くんへと告げた言葉も、おおよそ私の想像通りのものだった。

 

 

『遊馬。君の感じているモヤモヤ、とやらは、おそらく“敵意”、乃至は悪意と呼ばれるものだ。

 

彼らバリアンは、我々、いや、君を対象に、明確な敵意を持って目的を成そうとしている。君にはきっと、それを受け入れ難い…………違うな。上手く、受け止められていないのだろう』

 

「───“敵意”?」

 

 

(……………………)

 

 

トロン、フェイカー、バリアン(ベクター)。私が請け負った、乃至は勝負そのものを妨害してしまった彼の敵。

 

それらの共通点はずばり、悪であること。悪意を以って人々に害を成し、自身の欲望を満たそうとした人物であること、だ。

 

アストラルはこの期に及んで地味にボカしているが、はっきり言って今の彼は、悪意に対する経験が足りてない。だから、イマイチそれを理解できていない。それが自分に向いてると、自分を対象に向けられてると、彼は認めたくないのだろう。

 

無論、トロン一家やカイトさんを始め、彼に対して害意を持った人はいた。しかし、それは彼がナンバーズのオリジナルであるアストラルを伴っていたから、もしくは単にナンバーズを持っていたからで、彼個人を理由にそれを向けられたことなんて、ライバル関係なシャークを除けば、それこそⅢくらいしかいなかったはずだ。実際にはどうだったかはさておき、彼にしてみれば今まである種の蚊帳の外だった自分が、突然バリアンなんてよくわからない存在に狙われるようになった。それはさぞかし困惑することと思う。

 

今までと本質的には同じなのに、彼がそう感じるようになったのはおそらく「九十九遊馬がナンバーズを持っている」ことに対してギラグが警戒しているから、なんだと思うけど、それを素直に実力がついたんだ、とポジティブに捉えることは、彼らの事情を全く知らない遊馬くんには不可能な話で、と。

 

 

(───こんな感じ、かな? ちょっと、いやだいぶ強引だけど…………)

 

 

私のは勝手な想像だが、どのみち彼の相棒たるアストラルはまず間違いなく確信を持って言っている。ならきっと、結論自体に誤りはない。いずれ慣れるから気にするな、と言ったところで、意外にもきっちり物事を考える彼(ソースはアニメ)は、しばらくの間悩みそうだし…………。

 

 

(───悪意、ねぇ)

 

 

職業柄、そういうのには慣れ親しんでしまったこの私には、彼が抱く葛藤や困惑は「わからないことがわからない」というのが現状。とはいえ、彼の悩みの原因は明らかに経験不足。そしてこれから先、彼はバリアンに容赦なく狙われるからには、それが原因で敗北する可能性もないわけではない、わけで。

 

 

「…………どうしようか、アストラル、くん?

 

───そういえば、自己紹介とかしてなかったね。私はさなぎ、蝶野さなぎです。よろしく」

 

『私はアストラル。好きなように呼んでくれて構わない。…………どうもこうも、時間に任せるしかない、というのが現状での最善手だが…………すまない。私自身、薄々と気付いてはいたのだが、それをあえて遊馬に伝えるのは憚れた』

 

「いや、なんとなくなら理解できるし、いいよ。あれだよね。純粋な子を汚したくないというか…………今まで君がソレを受けていて、彼には背負わせたくない、なんて考えていたんでしょう?」

 

『…………そう、だな。その通りだ』

 

 

観念したように、空中で器用に項垂れながらアストラルは告げる。そういえば私、デュエル中でもないのに未だアストラルが普通に見えるんだけどこれって結構やばいんじゃないだろうか。いや、実害はなさそうだから別にいいけど。

 

しかしまあ、なんともお優しいことだ。どうせ彼が遊馬くんを利用し続けてる限り、ソレはいつか必ず遭遇する事態だと言うのに、限界までソレを見せたくない、などと。

 

 

(───なら)

 

 

でも、気持ちはわからないでもない。理解できないことと、共感できないことは微妙に違う。いずれにしろ彼がソレを理解する日は来るのだろうけど、ソレをアストラルが懸念する悪い方向ではなく、それらしい、彼の主義に沿うものとして誘導してあげれば…………。

 

 

(───よし)

 

 

正直、気は進まない。でも、後のことを考えるなら。

 

 

「要は悪意を向けられることを、それも直接じゃなくて間接的に被害が出てることに納得がいってないんでしょ?

 

自分を襲うのはいい。アストラルくんを伴う以上、ある程度の覚悟はしている。でも、それになんで関係ない周りを巻き込むんだって憤ってる。典型的なお人好しだね。甘い、と言い換えてもいいかも」

 

「甘い…………?」

 

「甘い。そう、甘すぎる。いい? 人間はね、決して綺麗なモノばっかりじゃないんだ。彼等は人間じゃないのかもしれないけど、おそらく根本は同じ、我々と同一の価値観で動いてる。

 

そして、非常に残念なことに、人間ってのは、善も悪も、理由さえあれば、いや、理由なんてなくたって、誰しもが簡単にどちらにも転ぶものなんだよ」

 

「なっ───そんなわけは…………」

 

「ある。───と言っても、君はあまり実感できないだろうね。なら、君はそれでいいんだよ。

 

何の理由があったとしても、それは他人を利用することの大義名分にはならない。特に、その理由を告げもしない人物ならなおさら。そうでしょう?」

 

『…………』

 

 

最後の言葉は遊馬くんを通して、後ろから見守る彼へと揶揄しながら告げる。遊馬くんなら壁面通り受け取る言葉でも、彼にとってはどうなのか。さて。

 

まあ、この程度であの九十九遊馬のお人好しっぷりを修正できるわけないけどね。でも、信じていた仲間であろうと「その可能性がある」ことが頭のどこかに入っていれば、いずれ来るその未来で、衝撃を多少は和らげられるかもしれないし。

 

 

『───遊馬。今まで、君と闘ってきた“悪党”は、みな、君ではなく、それ以外の何かを目的として闘っていた。カイトならばハルトという少年、Ⅲならば家族、といった感じにな。比較的過激なあのⅣですらそうだ。ナンバーズは、あくまでそのための手段に過ぎなかった。

 

だが、此度のバリアン、という者は、「君がナンバーズを所有していること」を懸念している。その違いが、君の認識で違和感となっている。

 

例えばカイトは、「ハルトのため」にナンバーズを奪い、人を昏睡状態へと追い込んでいた。だが、バリアンは、「遊馬を倒すため」に人々を操っている。つまり君は、原因が君であるからこそ、それに苛立ちを感じている、というわけだ』

 

「…………わかるような、わかんねぇような」

 

「それを飲み下せるようになるには、やっぱり経験が足りないかなぁ。こればっかりはどうしても、“そういうの”に触れていかないとわからないものだし」

 

 

見捨てるような言い方だが、別にそれが悪いと思ってるわけではない。悪意など、本来は理解できないくらいに純粋な方がいいのだ。まして、彼のように誠実さが武器になる人物ならなおさら、ね。

 

 

「けど、経験ね。アストラルくんの懸念も心配も葛藤も優しさもなまじ理解できる分、こればっかりは難しいなぁ。

 

まさか、逆にバリアンを挑発でもして戦線布告をしろ、だなんて言えないし、出来るとも思えない。話を聞く限り、襲う頻度も割と適当みたいだし、ミザエルみたいに乗ってくれるはずも───」

 

 

(───)

 

 

 

 

…………あ。やばい、うっかり口が滑った。油断、しちゃった。

 

 

 

 

(───お願い、気づかないで…………!)

 

 

「そも、悪の定義は各々の価値観によるものだからね。ナンバーズを守ることだって、アストラルくんの記憶がないからには、必ずしも正義に繋がるとは限らない。いや、正義を成すためのものだとしても、それがバリアン世界にとっての悪だとも考えてられる。

 

正義の反対はまた別の正義、あるいは寛容や善、といった概念的要素だから───」

 

『───すまない。少し、いいだろうか』

 

 

なるべく自然に、そして遊馬くんがついてこれないような哲学的な話題を矢継ぎ早に展開していた私に鋭く、いや、目敏くアストラルが言葉を挟み込む。

 

やはり賢い彼は誤魔化せないか、とやや観念しながらも処刑を待つ受刑者が如く続きの言葉を待っていると、しかし彼の紡いだ台詞は私にとってかなり予想外なものだった。

 

 

『君は、その、アイドル、なのだろう? だが、先程から君の話を聞いてると、君はどうもソレ(・・)に慣れてるように感じられる。それは───』

 

「…………」

 

 

どうしてか、と無言で追及する異世界人(・・・・)。まず彼の疑問が私の想像した最悪の追及ではなかったことに対して安堵したが、これはこれで地味に答えづらい質問だ。

 

───いや、答え自体は簡単なんだけど、主にアイドルのイメージ的な意味で。

 

 

(───これは…………まあ、いいか)

 

 

どのみち、彼らには私が普通のアイドルとは違うことがバレてしまっている。先の失言を誤魔化すためにも、この疑問に敢えて乗り、このまま話題を逸らしてしまうのも悪くない。私とてアイドルにはある種の崇拝に近い何かを持っているから、なるべくこういう面を見せたくはないんだけど…………仕方ない。

 

それに、被害を被るのはあくまで私で、私が好きなアイドルが変わるわけじゃないからね。

 

 

「これも、認識が甘いのかなぁ。残念なことに、芸能界では君の懸念する『悪意』なんてありふれているんだよね。

 

しかもそれは、なにも私に限った話じゃない。大人になれば、どうしてもそういう要素は随所に付き纏う。…………認めるのは遺憾だけど、アイドルっていう職業は、見かけ通りの綺麗なものじゃないんだよね…………」

 

 

私のなるべく些細な体験談を交えて、大人になることの悲しさを刻々と説く。こんなことをある意味遊馬くん以上に純粋な彼に言っていいのか、とかは言ってる最中に何度も思ったが、ここ最近の忙しさで積もり積もってしまったストレスが、良くも悪くも私の口数を増やしてしまった。

 

ふと、我に帰る。失言を誤魔化すためとはいえ、変な方向に振り切りすぎだ。意外にもアストラルが興味深そうに聴いてるからいいにしろ、この私がアイドルの幻想を壊すような真似をするなんて、いよいよもって本気でやばいのかもしれない。あるいは、油断し過ぎである。

 

 

「…………って、なーに言ってるんだろうね、私。疲れてるのかな…………最近、デュエルもあんまり出来てなかったし。

 

───そうだ、遊馬くん」

 

「え?」

 

 

鬱になりそうな話題を割と強引に断ち切って、途中から興味無さげに私の愚痴を聞き流していた遊馬くんに視線を合わせ、告げる。

 

 

「ちょっとデュエル、しよっか。ほら、病院では気分を盛り上げないとあっさり死んじゃうからね。───ハッ、そういえば私、点滴が刺さってない!? やばい、死んじゃう…………!

 

───じゃなくて。ちょっとだけ、付き合ってもらえるかな?」

 

「だ、だけど、俺ら、激しい運動は禁止されているんだぜ?」

 

「そりゃあ病院だしね。当たり前じゃない。

 

………………………………?」

 

「?」

 

 

(───?)

 

 

なんでここで、彼は疑問符を浮かべるんだろうか。病院だから激しい運動はできない、でもこのまま寝転んでいても気分が落ち込むだけ。だから気分を盛り上げようとデュエルを提案したのに…………?

 

 

「デュエルディスクはどうするんだ? それに、場所も…………」

 

「…………え?」

 

 

何を言ってるのか理解できません。

 

いや、本当に何言ってるの? そんなの───

 

 

(───え、待って、まさか)

 

 

「……………………えーと、そこにテーブルあるから、それでいいんじゃ…………?」

 

「へ?」

 

「いや、『へ?』じゃなくて…………え?」

 

 

私はあくまで常識的に、本来のテーブルゲームとしての「遊戯王」を提案したつもりだったのだが、なんかおかしい。なんだろう、この謎の認識の違いは。

 

そういえば、それはあくまで常識だからと、誰かにわざわざそんなこと(・・・・・)について問いかけたことはなかったし、私にしても『どうせだから』とデュエルディスクを使ったデュエルばっかり、否、それしかしてなかったような気はするが。

 

 

(───そうか…………テーブルデュエルは一般的じゃないのか…………知らなかった…………)

 

 

これは驚き桃の木、ではなく、世界の違いからの齟齬とはいえ、よくもまあ今までこんな致命的な話題を避けて来れたものだ。運が悪いのかはとにかくとして、常識外れだと大恥をかかなかっただけ良しとしよう。

 

 

「…………とにかく、やろう。うん。こればかりは、実際にやってみないと。ほら、デッキを持ってきて」

 

「あ、ああ…………」

 

 

私の気迫にやや押されつつも、遊馬くんと私は普段デュエルディスクに挿しっぱなしなデッキをテーブルの右端の方へと置き、やったら分厚いエクストラデッキをホルダーごと前世のエクストラデッキゾーンへと設置して5枚ドロー。互いに向き直って構える。

 

私にとっては少し懐かしいだけ。でも、遊馬くんにとってのこれは相当に珍しい、というかやったことがないらしく、かなり戸惑っているのが見て取れる。

 

 

「じゃあ、私のターンだね。ドロー。

 

スタンバイ、何かある?」

 

「へ?」

 

「ないならメイン。私は手札の《銀河戦士》の効果を発動。手札のこのカード以外の光属性モンスターを墓地に送って、手札のこの子を特殊召喚する。特殊召喚成功時の効果、並びに墓地に送った《光波異邦臣》の効果を処理するけど、何かあるかな?」

 

「な、何かあるかって…………」

 

 

 

 

 

 

《銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー)》

効果モンスター

星5/光属性/機械族/攻2000/守 0

「銀河戦士」の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:このカード以外の手札の光属性モンスター1体を墓地へ送って発動できる。

このカードを手札から守備表示で特殊召喚する。

②:このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる。

デッキから「ギャラクシー」カード1体を手札に加える。

 

 

 

 

 

 

まずは信頼と安心の銀河戦士。ギャラクシーを嗜む私のデッキにも当然のように三積みしている。サーチするのは銀河遠征。銀河戦士そのものが発動条件を満たすので実際、相性は抜群だ。

 

うさぎやうらら、ヴェーラーを握ってなさそうなのですかさず発動。2枚目の銀河戦士を呼び出す。サーチ効果は使えないけど、そんなのはどうでもいい。

 

 

「私はレベル5、機械族の銀河戦士2体で《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》をエクシーズ召喚。ここまではいい?」

 

「いいって言われても…………」

 

 

どうにもできない、という顔をしていたので、何もないと判断して展開を進める。どのみちこのタイミングでヴェーラー使っても手遅れだし、うさぎやうららも意味ないからいいんだけど。

 

「じゃあ、ノヴァの上に重ねて《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》をエクシーズ召喚。このカードはノヴァの上に重ねてエクシーズ召喚することもできる。

 

次に、《光波鏡騎士》を召喚。光波がいることで《光波翼機》も特殊召喚して、この2体をオーバーレイ。ランク4、《フレシアの蠱惑魔》。守備表示で。

 

フィールドに2体、エクシーズモンスターがいるので《エクシーズ・ギフト》を発動。2枚のカードをドロー。

 

カードを3枚伏せて、メイン終了。エンドフェイズ、私はこれでターンを終了かな。

 

あ、効果確認は自分でお願いね。一応、発動時に説明はするけど」

 

「お、おう…………」

 

 

 

 

 

《銀河遠征(ギャラクシー・エクスペディション)》

通常魔法

「銀河遠征」は1ターンに1枚しか発動できない。

①:自分フィールドにレベル5以上の、

「フォトン」モンスターまたは「ギャラクシー」モンスターが存在する場合に発動できる。

デッキからレベル5以上の、

「フォトン」モンスターまたは「ギャラクシー」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 

 

 

《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》

エクシーズ・効果モンスター

ランク5/光属性/機械族/攻2100/守1600

機械族レベル5モンスター×2

①:1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

自分の墓地の「サイバー・ドラゴン」1体を選択して特殊召喚する。

②:1ターンに1度、自分の手札・フィールド上の

「サイバー・ドラゴン」1体を除外して発動できる。

このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、2100ポイントアップする。

この効果は相手ターンでも発動できる。

③:このカードが相手の効果によって墓地へ送られた場合、

機械族の融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚できる。

 

 

《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》

エクシーズ・効果モンスター

ランク6/光属性/機械族/攻2100/守1600

機械族・光属性レベル6モンスター×3

「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」は1ターンに1度、

自分フィールドの「サイバー・ドラゴン・ノヴァ」の上に重ねてX召喚する事もできる。

①:このカードの攻撃力は、このカードのX素材の数×200アップする。

②:1ターンに1度、フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターをこのカードの下に重ねてX素材とする。

③:1ターンに1度、カードの効果が発動した時、

このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

 

 

《フレシアの蟲惑魔》

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/地属性/植物族/攻 300/守2500

レベル4モンスター×2

①:X素材を持ったこのカードは罠カードの効果を受けない。

②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

「フレシアの蟲惑魔」以外の自分フィールドの「蟲惑魔」モンスターは戦闘・効果で破壊されず、

相手の効果の対象にならない。

③:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

発動条件を満たしている「ホール」通常罠カードまたは

「落とし穴」通常罠カード1枚をデッキから墓地へ送って発動できる。

この効果は、その罠カード発動時の効果と同じになる。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

《エクシーズ・ギフト》

通常魔法

①:フィールド上にエクシーズモンスターが

2体以上存在する場合に発動できる。

デッキからカードを2枚ドローする。

 

 

 

 

 

 

盤面をなるべく固めてターンを譲る。久しぶりだが、だからこそ前世の感覚でデッキを回せた気がする。いつもこんな感じに妨害ができるフィールドを敷けたらいいんだけど、そうはいかないのがこのゲームの悲しいところである。

 

 

「えーと、俺のターン…………」

 

 

いつもと違うフィールドに戸惑っているのか、彼とは思えないほど普通にカードを手札に加える遊馬くん。なんだろう、なんとなく新鮮だ。そう感じられるほど彼とデュエルをしてきたわけじゃないんだけども。

 

 

「俺は、《ブンブンセブン》を召喚! このカードは、相手フィールドにモンスターエクシーズがいる時、手札から特殊召喚できる!」

 

「えーと、ちょっといい? 他の効果は…………なさそうだね。じゃあいいかな」

 

「…………そして俺は、《ガガガマジシャン》を召喚!」

 

「通さない。フレシアの蠱惑魔の効果を発動。オーバーレイユニットを一つ使って、デッキの《狡猾な落とし穴》を墓地に送り、その効果を発動する。

 

自分墓地に罠カードが無い場合、相手モンスター2体を破壊する」

 

「なら、《ガガガリベンジ》を発動!」

 

「えーと、確かそれは…………《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》の効果を発動。1ターンに一度、オーバーレイユニットを一つ使って、相手が発動したカード効果を無効にし、破壊する」

 

「っ、《死者蘇生》! 蘇れ、ガガガマジシャン!」

 

「何もありません」

 

「ガガガマジシャンの効果発動! このカードのレベルを8に変更する!」

 

「このタイミングでレベル変更? 何も無しで」

 

「更に、《ガガガイリュージョン》を発動! フィールドにガガガマジシャンがいる時、墓地のモンスターをガガガマジシャンと同じレベルにして特殊召喚する!」

 

「へぇー、そんなサポートが。ランク8ね。嫌な予感がするから賄賂で」

 

「…………永続魔法、《ガガガ×ガガガ》を発動!」

 

「まだあるなんて、流石だね。何もないよ」

 

 

前世の感覚で淡々と、しかしてなるべく適切な処理をしてフィールドを制圧する。相手ターンにこれだけ色々とできるのが、デュエルの醍醐味だと思うのです、はい。

 

なお、彼が最後に発動したのはガガガモンスターと同じカードとなってフィールドに出される魔法モンスター。つまり、フィールドにはレベル8モンスターが2体となる。あんだけ妨害しまくったのに狙い通りになるあたり、彼の運命力が私と桁外れなことが伺えた。

 

さて、何が来るんだろうか。ランク8のナンバーズって何がいたかなぁ。

 

 

「レベル8のモンスター2体をオーバーレイ! 現れろ! 《No.15 ギミック・パペット-ジャイアントキラー》!」

 

「え?───ジャイアントキラー!?!!????」

 

 

待て。なんでそれをこんなどうでもいいデュエルで使う。ホープを使え、ホープを。

 

というか持ってたの? てっきりアニメではトロンとのデュエルのついでに回収したと思ってたんだけど、シャーク戦の時点で回収していたんだろうか。

 

 

「ジャイアントキラー、効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、このカード以外のモンスターエクシーズを全て破壊、破壊したモンスターのコントローラーにその攻撃力の合計分のダメージを与える!

 

デストラクション・カノン!」

 

「《ダメージ・ダイエット》、発動。あー、せっかくのフレシアインフィニティが…………」 さなぎ LP 4000→2600

 

「バトルだ! 俺はジャイアントキラーでダイレクトアタック!」

 

「《エクシーズ・リボーン》によってノヴァを蘇生、壁にします」

 

「バトルを終了して、ジャイアントキラーの効果を発動する!」

 

「ノヴァが相手によって破壊された場合、エクストラデッキから機械族の融合モンスターを特殊召喚できる。

 

これによりレベル10、《スーパービークロイド-モビルベース》を特殊召喚」 さなぎ LP 2600→1550

 

『融合モンスターとは、珍しいな』

 

「というかエクストラデッキ分厚すぎないか…………?

 

ホルダー5個って、流石に多すぎだろ…………」

 

 

うるさい。君のような運命力を持たない私は、前世から持ち出した引き出しを最大限に活用しないと勝てないんだから仕方ないでしょ。それに、エクストラデッキの分厚さなら君だって大概じゃない。デッキの2倍近くあるし。

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

「じゃあ、エンドフェイズにミラーナイトの効果で光波翼機を手札に加えるね。

 

私のターン、ドロー。スタンバイ。メイン。私は手札から《簡易融合》を発動して《旧神ノーデン》を融合召喚して、その効果で墓地のミラーナイトを蘇生、ウィングを自身の効果で特殊召喚からのプトレノヴァインフィニティ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかぐだぐだな、雑とも言えるお遊戯そのもののデュエルが、病院の一室で賑やかに執り行われる。

 

何のしがらみも、勝敗の意味すらないどうでもいいこのデュエル。最初は戸惑っていた遊馬くんも淡々と行う制圧にいつしかムキになり、悩みも忘れてデュエルへと没頭していく。

 

そんな彼を見た私は、前世を含めて始めて、病院のことがほんの少し、ほんっっっっとうに少しだけ、悪くないな、なんて血迷ってしまうのだった。





なんか超長くなった。謎。デュエルなんてほとんどないのに…………。


ひっどい展開を綺麗な回想で誤魔化そうとする作者。普通に最低だと思う。でも、こうして療養期間とかを無理に取らないと、彼女の立場的に遊馬の付き添いとかができないから仕方ないんだ…………!


なお、彼女はいわゆる幻想殺し(全身)みたいなスキルを持っていますが、間接的な被害は防げません。今回の怪我は、スフィアフィールドの影響によるものではなく、爆発の衝撃で起きた風に吹き飛ばされた事による打撲や擦過傷が主です。上条さんなら立ち上がって「歯ァ食いしばれよ最強───」とか言う程度の被害でしかありません。つまりデュエルに支障はないので無問題です(軽いとは言ってない)



















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