鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

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第8話

タービンズとの戦闘及び交渉からまもなく10日が過ぎようとしていた頃、タービンズ(ハンマーヘッド)鉄華団(イサリビ)は圏外圏随一と言われている大組織であるテイワズの本拠地である巨大な船、歳星へと到達した。此処から自分達の運命が再び変動していくといっても過言ではない場に皆はやや緊張しながらも名瀬の案内の元で歳星へと降り立った。そしてゆっくりと進めていく歩みの先にはこれから話をするテイワズの代表、マクマード・バリストンの館があった。圏外圏一恐ろしい男と語る名瀬の言葉にその場全員が身だしなみを整え、入り口の人間に門を開けてもらい名瀬は脅しておきながら

 

「んじゃ行くか」

 

と軽く言った。皆緊張している中

 

「は~い♪」

 

唯一暢気なのはエクセレンのみであった。彼女のマイペース振りには何時も助けられている鉄華団だがこんな時位は確りとして場の空気をキッチリと引き締めて欲しいと心から願ってしまった。余裕綽々と言わんばかりの名瀬の軽い足取りに着いて行く鉄華団の首脳メンバーとクーデリア、そして通された部屋では恰幅が良い男性が和服を着ながら盆栽の手入れに使う鋏を持ちながら此方を見つめていた。

 

「おう来たか名瀬」

「ええ。久しぶりです親父」

「こいつらが鉄華団か……話は聞いてるぜ、良い面構えしてるじゃねえか」

 

穏やかな表情で此方を持て成しつつお茶菓子を用意してやれと声を掛ける姿に圏外圏一恐ろしい男という名瀬の言葉から連想していたイメージからかなり的外れな印象を受けてしまっていた。がエクセレンは表情は普段どおりにしつつも内心では軽く笑っていた、こういうタイプの人間は表ではなく内面が怖いのだと分かっているからだ。

 

「こいつらは大きなヤマが張れる奴だ。親父、俺はこいつらに盃をやりたいと思っている」

「えっ?」

 

小さくオルガが驚きの声を上げる。あくまで交渉の道筋を作ってくれるという話だったのにそれを飛び越えて名瀬自らがテイワズの一員として推薦したいといっている。予想外な話にオルガは戸惑ってしまう。

 

「ほうお前が男にそこまで言うとはな……。何とも珍しいな、いいだろう俺の元で兄弟の杯を交わせばいい」

「タービンズと鉄華団(俺ら)が兄弟分……!?」

 

驚いて暇も無く兄弟の盃の件は確定事項となり四分六、タービンズが兄で鉄華団が弟という事になった。余りな急展開にオルガはなんとか事態を受け止めようと必死になっていたが取り合えずしたい話は済んだので一度メンバーは外で待機しつつクーデリアとマクマードの話に入った。三日月が護衛として残っている間、他のメンバーは外でカンノーリという甘いお菓子と紅茶をご馳走になっていた。

 

「うっめぇっ~!!何じゃこりゃ~!?たまらねえぜ!」

「本当、でもカロリーとか大丈夫かしら?」

「エクセレンさんは生きているだけで普通の人の2倍のエネルギー使ってますから大丈夫ですよ」

「あらビスケット君それってどう言うことかしら」

 

食べた事もないカンノーリの甘さと味に舌鼓をしつつ堪能していると名瀬が鉄華団が鹵獲した物に対して金額がついたといってきた。

 

「これで良ければ請求を寄越してくれ」

「こ、こんなに!?」

「すっげぇっ!!」

「玉石混淆だったがな、中でもグレイズのリアクター二基は高く売れた。エイハブリアクターを新規に製造できるのはギャラルホルンだけだからな、しかもうち一機は重要な部分にダメージがないから良い値が付いた」

 

その一機とはエクセレンが鹵獲したアインのグレイズであった。カメラとスラスター部分は破損しているがその辺りは修理したり代わりのパーツに換装するだけで済むので余り値には響かなかったらしい。売る際にアインに大丈夫かと聞いたら気にせずに売ってもいいと言っていた。元々自分の所有ではないし既に自分は鉄華団だと力強く答えてくれた。

 

「こんな良いお値段するんだったら火星の軌道上でもっと鹵獲しておくべきだったわね。そしたらもっとうはうはだったのに」

「おいおいこれ以上だと業者も金準備するのに困っちまうぜ」

「そうもそっか」

 

軽口を飛ばしながらもオルガは名瀬に恥ずかしそうに兄貴と呼び感謝を示す。まだ早いだろうか慣れておくのは早い方がいい。そしてオルガこの金を使い火星からの出発やギャラルホルンとの衝突なので疲れとストレスが溜まっている団員を労いたいと申し出ると名瀬とエクセレンはそれを大いに推した。

 

「そりゃいい考えだな。家長としては家族のストレスをいい感じに抜いてやるのも仕事だからな」

「宇宙って娯楽とか限られてくるからね、そういうのって凄い大事なのよね」

「そっか……うし!今日はこれでパ~っとやるぞ!皆疲れてるだろうし色々大変だったからな、ここらで一気に疲れを癒すとするか!」

「おうそうしろそうしろ、歳星は金さえあれば楽しめる場だ。思いっきり羽を伸ばせよ」

 

そういうと早速オルガ、ユージン、ビスケットは戻ってきた三日月とクーデリアを連れて商業施設へと繰り出していった。まずは幼年組に対する簡単なご褒美と艦内でストレス解消をする為の機材を見にいった。それを見送ったエクセレンは胸元から契約書を出した名瀬と向き合って同じようにデータの入ったディスクを書類を取り出した。

 

「んじゃ早速契約と行くぞ。エクセレン・ブロウニング、鉄華団保有の独自技術である航行用推進システム『テスラ・ドライブ』。その技術とノウハウはテイワズでも研究開発を行うに伴いその許可料金と使用料を支払い独占契約を成立させる。そして条件として鉄華団所有MSである『ガンダム・バルバトス』に『テスラ・ドライブ』の搭載を望むだったな」

「ええ。如何だった?」

「親父もノリノリだったな。こんなお宝に対してこんな条件でいいのかって驚いてたぜ、だけどその分かなりの金額と弾薬や薬品、補給物資なんかを鉄華団に渡すって話だ。それでOKか?」

「ええOKよ。それにしても凄い金額ね~、これに加えて毎月毎月鉄華団(こっち)にお金振り込まれる訳でしょ?」

 

書類に書かれている金額だけで一体どんな買い物が出来るのだろうか、少なくとも火星の鉄華団本部の経営に関してはもうこれだけでやっていけるんじゃないかと思えるほどだ。自分の父親の生み出した技術のぶっ飛び加減が改めて理解出来た。そして内容を熟読し確りと確認したうえでサインを行った。

 

「んじゃこれで『TD』の技術はテイワズの物だな」

「ええ好きにやっちゃって。あっそうだ色男さん、ちょっとお願いがあるんだけど」

「んんっ?なんだ」

 

 

「終わった終わったぁ~」

 

自分の用事も済ませた事でエクセレンは漸くイサリビに帰還する帰り道でオルガ達青年組が意気揚々と出掛けて行くのが見えた。息抜きにでも行くのだろうかと思いつつ見ていると背後に一人の男が迫ってきたいるのを感じ取った。迫ってくる手を手早く取るとそのままアームロックの体勢に持って行きつつ建物の影へと入る。

 

「いでででででっっ!!?てめぇ何をしやがっあたたたたたっっむぐぅ!?」

「はーいちょっとうるさいわよ~静かにしようね~。後私のお胸はそんなに安くないのごめんなさいね~」

 

背後から近寄ってきたのは派手な黄色のコートを着たケツアゴ大男であった、名はジャスレイ・ドノミコルスと言いテイワズのナンバー2と言われているが先程テイワズに入ったエクセレンにとっては初めて見る顔であるので一切容赦はしない。

 

「てめぇ俺にこんな事してただで済むと思ってんのか……!?」

「それ私の台詞。私のバストゥを無断で触ろうとして無料(タダ)で済むと思ってるの?」

 

ハッキリ言ってしまうとジャスレイは先程まで歳星を離れて仕事をしており漸く戻ってきた矢先に絶世の美女とも言えるエクセレンを発見しそれを手篭めにしようと近づいてきたのだ。なのでエクセレンが新たにテイワズの傘下に入る事になった鉄華団の人間だとは知らないしエクセレンの重要性も全く知らない。

 

「貴方……さては屑ね」

「ああんっ!?なんだとてめ(ゴキャッ!!)グピィ…!!」

「あっやっば」

 

ジャスレイが暴れようとしたのを感じ取ったのか思わず、反射的に体が動いてしまいジャスレイの肩の間接を外した上に喉に肘打ちを打ち込んでしまった。その一撃でジャスレイは完全に意識を喪失し口からブクブクと泡を吹いて倒れこんでしまった。

 

「なぁ~んか言ってたけど良かったのかしらこれで……?まっいっかっ!!さぁ~ておやっさんとクランクさんとアイン君でも誘って飲みに行っちゃいましょう♪」

 

その場にジャスレイを放置したままスキップしながらイサリビに戻ったエクセレンは大人4人はオルガ達と合流し楽しく騒ぎつつその後2次会と称して静かに大人だけの酒の時間を過ごしたとの事。因みにアインは余り酒が得意でもないのに飲みすぎて顔を真っ赤にして倒れこんでしまったのでそこでお開きとなってしまった。この時の目を回している姿はエクセレンが撮影しており艦内にばら撒かれそうになったのをアインが止めようとするのがまた別の話である。

 

後放置させられたジャスレイは数時間後に何時まで経っても会議に来ないので探しに来た部下に発見され直ぐに病院へと運ばれたが数ヶ月の間意識不明が続き、その後記憶喪失になっていたという事件が発生した。犯人は誰も分からず結局迷宮入りと化したがジャスレイの会社である『JPTトラスト』はその後分裂させられ、その一部はタービンズが請け負った結果、名瀬のテイワズでの地位が上がったとか。

 

そして後日、鉄華団はテイワズの元でタービンズとの兄弟盃を交わし正式にテイワズの傘下の一企業となった。そして同時に……

 

「うおおおおおっっっ何だこのシステムはぁぁぁっっ!!?凄い凄い凄すぎるぅぅぅ!!重力制御と慣性質量を個別に変動させることが出来る装置なんて……これを作り上げた人は天才だぁぁぁぁっっ!!!更にこれをガンダムに搭載しろって言われなくてもやっちゃうよ私!!!」

「わぁおこれが所謂マッドメカニックって奴ね!」

「バルバトス、ヴァイスみたいに速くなるのかな」

 

一方ではとんでもない事が起ころうとしていた。




オルガ「偶に考えるんだが姉さんが居なかったらどうなってたんだって。

きっともっと大変でやべぇ道のりになってたと思う。

それだけ俺達は姉さんに助けられてる、だが頼りっぱなしてのも駄目だ。

俺はもっとでかくなる、何時か姉さんの隣に居ても恥ずかしくねえようにな

だからこそ、今はこの仕事に集中するんだ!

次回、鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使

明日からの手紙

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