鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

7 / 37
寄り添うかたち





第7話

戦闘終了後約30分後。MS隊をエクセレン、昭弘、三日月が抑えている間にイサリビはある意味賭けと言ってもいい方法に撃って出た。スモークを発射しそれを迎撃させ、相手の視界が途切れた隙に真正面から一気に接近しその際にMW隊を敵艦に潜入しブリッジ制圧を狙うという賭けに。本来なら互いに反対方向同士に移動している物に無理やり飛び移ろうとしたら速度差による負担が尋常ではないほどに掛かり一歩間違えば体がひき肉になる。

 

しかしMW隊は、いや鉄華団はそれを恐れなかった。仲間が身体を張って戦って暮れているのだから自分達もそれに報いる為の行動をしなければならないと危険は承知、リスクなど知った事ではないと実行した。結果として作戦は大成功、ブリッジまで進行した所で銃を突きつけられたマルバは気絶しタービンズの代表の名瀬は取引の交渉に応じる事を約束してくれた。そしてMS戦で疲れているだろうエクセレンもタービンズとの交渉に参加するとハンマーヘッドへと移動し名瀬との交渉に入った。

 

 

タービンズ代表の部屋に通された団長のオルガ、クーデリア、教官のエクセレンとお付のユージンとビスケットはお洒落な部屋の内装に少々驚きつつも勧められて席に付く。エクセレンは一応教官だが座ろうとしなかったが名瀬に勧められてオルガの隣に座った。

 

「マルバはうちの資源採掘衛星に放り込む事にしたぜ。今回掛かった経費はあいつの身体で返してもらう」

「そちらに預けた話です、お任せします」

「そうね相応の罰よね。それにしてもお兄さん色男なのに結構いい性格してるわねぇ」

「そうかい?美人さんに言ってもらえると男冥利に尽きるな」

「いやぁんもう美人だなんて♪もっと言って♪」

「はははっ戦ってた時も思ったけど本当に面白いねアンタ」

 

先程までMS戦闘をしていた百錬のパイロットであるアミダが思わずそう口にした。互いに通信は通じていたので声を知っているので目の前の相手がそうだとは分かったがまさか此処までマイペースにいられるとは流石に思ってもみなかったのか名瀬も少々笑っている。戻ってきたアミダから

 

『あの白い奴のパイロット、相当な腕だね。百里と同等かそれ以上の推力で移動しながら間接部を遠距離から精密射撃なんて普通出来るもんじゃないよ』

 

と聞いていただけにどんな女がパイロットなのかと思えば目の前には絶世の美女とも言える美貌を持ちながら陽気でマイペースなコメディビューティな女性で名瀬もある意味驚いていた。こういった場合は堅物で無口な女性が相場かパターンだと思っていたらしい。

 

「にしてもこの船に乗り込んだ時も思いましたが、女性ばっかりですねこの船」

「そりゃそうさ。この船は俺のハーレムだからな」

「えっ?」

「はっ?」

「わぁお♪」

 

思わず安心と安定のエクセレン以外の鉄華団側の空気が死んだ。流石にハーレムをやっているとは想像もしていなかったらしい。ハーレムは男がそれ相応の財力や体力、活力などなど求められる物が多い。それを実現出来る人間などハッキリ言って少ない。

 

「まあそう言うことだ。子供も5人ぐらいいるな、腹違いだが全員俺の可愛くて愛する子供達さ」

「う~んなんていう男の夢の園、色男さんだとは思ってたけどそれ以上だったわね。なんていうのかしら、酒池肉林?」

「否定はしねえな。まあ一度に抱くのは一人一人だけどな、そうしないと皆が嫉妬深くになっちまう」

「しかも全員と関係良好と来ましたよ、これは負けてられないわよオルガ」

「ええ……って何で俺に振るんですか姉さん!?」

 

いやなんとなくという言葉に再びガックリ来るオルガに笑う名瀬とアミダ、何とも愉快な教官もいたものだと。

 

「んじゃ一旦話を戻して……ギャラルホルンとの戦いと今回の俺達との戦いでお前達の力は良く分かった、それで何が望みだ?」

「僕達はこのクーデリアさんを地球まで送り届ける仕事を依頼されています、ですが僕達は地球への旅は初めてですので案内役が必要です。その案内役を依頼したいんです」

「そして俺達をテイワズの傘下に入れてもらう事は出来ないでしょうか」

 

それを聞いて成程と納得する。圏外圏の一大商業組(テイワズ)なら強大なギャラルホルンに対する後ろ盾になると考えている。それは確かにそうだ、彼らの狙いは間違っていない。じっとオルガを見つめる名瀬は強く睨み返してくる姿に軽く笑って答えた。

 

「いいぜ、オヤジに話を通してみる。」

「あら結構あっさりと。これならこれは必要なかったかしらね」

 

そう言いながら懐からある資料の束を取り出すとそれに名瀬が興味を示した。一部だけを手渡すエクセレン、それを見つめながら目配せで説明を求められると素直に答えた。

 

「それは私のヴァイスちゃんに搭載されている航行用推進システムのデータよ、価値あるんじゃないかしら?」

「推進システムか……ほう、宇宙だけじゃなくて大気圏内でも使用可能なシステムか……」

「そういえば姉貴のMS、火星でも自由に空飛んでたよな」

「ええ。ヴァイスちゃんが飛んでるのはそのシステムのお陰なの」

 

それを聞いて名瀬はますます興味を引かれた。現在のMSが長時間空を飛行するのは難しく出来たとしてもホバーや滑空が精々、だが今の話を総合するとそのシステムを搭載するとMSの機動力が上がる上に大気圏での飛行も可能になるという話になる。これはとんでもない代物かもしれない。

 

「確かエクセレンとか言ったな。あんたこれを何処で?」

「私のパパが20年ぐらいかけて作ったとか言ってたわよ。元々は外宇宙に行く為の推進装置だ~!って言ってたけどその時の話は良く覚えてないの。まあデータは全部残ってるからいいんだけどね」

「……なぁこのデータ、タービンズ否テイワズと独占契約を結ぶ気はねえか?」

 

その言葉に全員が驚いた、アミダも資料を読んでみるとMSのパイロットとしてこのシステムは是非とも欲しいと言いたくなるような代物だった。極めて革命的なシステム、これを一人で作り上げた彼女の父親は本物の大天才と言える存在だ。

 

「いいわよ別に。私じゃなくて鉄華団の独自技術としてテイワズに提供料と使用料をくれるなら」

「お、おい姉さん!?いいのかよ!?俺全然わからねえけどそれ姉さんの親父さんが作ったもんなんだろ、そんな簡単に使って良いって言っていいのか!?」

「いいのよ」

 

技術的な部分やどれだけ凄いのかは分からないが事態の深刻さは良く分かったオルガは慌てたようにエクセレンに問いただした。名瀬の言い方して相当に凄いシステムなのは間違い無い、ある意味独占すべき物とも言えるのにそれをあっさりと使って良いと決めてしまっていい物か。自分の父親の発明を。だがエクセレンは笑って答える。

 

「私のパパって事は鉄華団の皆にとっては御爺ちゃんみたいなものなのよ?孫に自分の物を使って貰えるなんて御爺ちゃんにとって嬉しい事なんてないわ。それに少しでも鉄華団の財源が潤えば、貴方達が楽になるでしょ?」

「っ……姉さん」

 

言葉に詰りそうになりながらも珍しく聖母のような笑みを浮かべたエクセレンが眩しく見て居られなくなって来た。どれだけ自分達の事を考えてもらえているのかと、何よりも自分達の事を優先してくれている事に嬉しく思えてしまった。

 

「こりゃ想像以上にいい女だなアンタ。まあ正式な契約をするかどうかは本拠地(歳星)に着いた時に決めるとしよう」

「ええ分かったわ。出来るだけ良いお値段を期待するわ色男さん♪」

「こんなお宝、下手な額出せねえよ」

 

と何処かとんでもないお宝を偶然発掘してこれからはトレジャーハンターでも名乗ってみようかなと呟く名瀬をアミダは軽く制した。この後契約に際してエクセレンがある条件をつけそれが呑まれるのならこちらも契約すると公言し名瀬もその条件を呑む事を公言した。

 

「これであの子達が生き残る確立が上がる……嬉しいなぁ…」

 

イサリビに戻ったエクセレンはベットに倒れこみつつそう呟くと疲れからかすやすやと眠ってしまった。暗い彼女の部屋のデスクにはある計画書が置かれていた。そこには『テスラ・ドライブ、ガンダム搭載による性能上昇幅』と書かれていた。




アイン「何時の間にか俺はこの鉄華団という場所に暖かさを覚えている。

純粋な子供達の瞳に暖かな感情、久しく素晴らしいと思えるものに出会えている。

子供達の為に大人として出来る事、ただ教えるだけで良いのだろうか。

三日月や昭弘、彼らも子供なのに戦っている。自分も……

何かを、何かをしなければいけないと思う。

次回、鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。