鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

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いさなとり




第6話

ヴァイスの整備も完了しアトラの作ったご飯も食べたエクセレンは書類仕事や操縦で溜まっていた疲れを癒す為にベットに潜り込んだ。少々硬めだがこのぐらいでも十二分に寝られると直ぐに眠りに落ちて行った……が数時間も過ぎると艦内のアラートが鳴り響くと自然と体が反応するように飛び起きた。

 

「っもう良い夢見てたのに!!後少しで行けたのに熟練度獲得……!!」

 

一体どんな夢を見ていたのだろうか、輸送船を被弾させるなというミッションで受けていたのだろうか。そんな事は無視しつつパイロットスーツを纏うと大急ぎで格納ドッグへと急いだ。ドッグではクランクとアインが中心となって何時戦闘になってもバルバトスとヴァイス、そして昭弘が搭乗する事になったグレイズの発信準備が急ピッチで行われていた。

 

「そうだ、今のうちのガスを補給しておくんだ!その後に弾薬のチェック!!」

「よしリアクターの調子は良いな、クランク二尉……じゃなくてクランク教官、後はバルバトスのチェックだけです!」

「おしそっちは俺の方でやる、そっちは任せるぜ先生達」

「あららっ整備チームが良い感じに形になってるわね♪」

 

その様子を少々悪戯気な瞳を作りながら見守っていたエクセレンは少し前までMSの整備の仕方で困っていたり迷っていたりしていたのにクランクとアインの指導のお陰でかなりスムーズに仕事を進められるようにしている少年達、子供というのは少し目を離すと成長するというが如何やら本当らしい。姉だったつもりなのに少々母親の心境になってしまった。

 

「おやっさ~ん。ヴァイスちゃんの整備終わってる?」

「なんだもう着てるのか?気が早くねえか」

「良く言うじゃない、備えあれば嬉しいな♪って」

「いや言わねえよ」

 

真顔で返されてややしょぼんとしつつも直ぐに気を取り直してヴァイスのコクピットへと乗り込んだエクセレン、こんな状況なら追っ手が来ても可笑しくはない。敵はギャラルホルンかそれともこの船を狙っての海賊なのかは分からないが兎に角自分は戦うだけだ。機体の起動とチェックが終了すると現在の詳しい状況を知りたいのでブリッジに向けて通信を開いた。

 

「ねぇ一体このアラート何なの?一応ヴァイスちゃんには乗ってるけど」

『ああ姉さんちょうど良かった、実はな』

 

オルガの口から状況が知らされた。先程のアラートは此方を追ってくる船を知らせる物、だがその船からの通信で顔を見せたのは自分から逃げ出した前所長のマルバ・アーケイだった。そしてそのマルバは元CGSの全資産をタービンズという会社を運営する代表の名瀬・タービンに譲渡するという契約になっているらしくさっさと船を止めろという事らしい。だがそれでは鉄華団は事実上の解散、メンバーは真っ当な仕事を名瀬本人が責任を持って紹介するらしいがそれは鉄華団としては許せない。

 

何より自分達が受けたクーデリアの仕事という筋を通せなくなる。加えて言うなればこれは千載一遇のチャンスでもあった、地球に行くための案内役が使えなくなったため新しいのを探す必要があったがギャラルホルンと揉めてしまった以上火星の本部の事を頼める大きい後ろ盾が必要となってしまった。そこで目を付けたのがタービンズが傘下に入っているテイワズという巨大な組織だった。オルガはその要求を突っぱね、自分達の力を見せる事でテイワズ入りを交渉出来るようにしようと考えた。そして正しく今、戦闘は始まろうとしているらしい。

 

『っつう訳です、姉さんに相談せずに決めたは悪いと思ってますけど俺達だってもう餓鬼じゃねえ。自分達でやれるって事を姉さんに分かって欲しいんだ』

「……」

『あ、あの……姉さん?』

 

モニター越しに黙り込んでいるエクセレンに思わずオルガは心配そうな声を上げた、今までこの人が人と喋っている際に黙り込み、更に茶々も入れずにただただ静かにしている所など見た事がなかったからだ。それもそれで如何かと思うが兎に角オルガからしたら不気味でしょうがなかった。思わずブリッジ全員が息を飲んでしまう。

 

「ううううっ……お姉さん嬉しくなってきちゃった……もうそこまで……もうなんだか感激!」

『な、何だよびっくりさせやがって……まあ兎に角出て貰えますか?』

「お任せお任せ~♪」

 

通信を切り再度機体チェックをしているとアインがモニターに現れた。

 

『エクセレンさん、ヴァイスリッターの方も出来る限りの調整はさせて貰いましたが一部分からない装置があってそこはノータッチです。そこは解ってください』

「ええ了解よ、装甲とリアクターだけでも十分よ」

『ご武運を!』

「あらあら真面目な青年にそう言われちゃうとお姉さんもやる気出ちゃうわね、後でハグして上げるからねアイン君♡」

『いいいっ!?け、けけけけ結構ですのでぇっ!!?』

『よぉし最後にヴァイスを下ろすぞ!下気ぃ付けろ!!」

 

顔を真っ赤にして去っていくアインを面白がりつつもヴァイスはアームによって移動させられカタパルトへと固定させられる。発進口が開放され暗黒の宇宙が見えている、今からまたあの海で戦うのだ。やってやろうじゃないか。

 

『カタパルトスタンバイ。いつでもどうぞ』

「そんじゃまエクセレン・ブロウニング、ヴァイスリッターちゃんいくわよぉ~!!」

 

急激な射出によるGが襲ってくるがヴァイスの速度から何時も身体には負担が掛かっているような物なので平気そうな顔をしながらイサリビから猛スピードで発進したヴァイスは先に出撃していた昭弘のグレイズと三日月のバルバトスにあっという間に追いつく。

 

「お待たっ♪待っちゃったかしら」

『別に待っちゃいねえよ姉貴』

『うん、ヴァイスって凄い速いね』

 

鉄華団が所有し出撃可能な存在の中でも矢張り速度ではヴァイスが飛びぬけて速度に秀でている、なので合流した際にはブレーキを掛けて速度を調整しないとあっという間に追い越して敵艦に一人で特攻を掛ける事になる。CGSに入る前にそれをやらかして酷い目にあった。レーダーには前方から二機のMSが迫ってくる、望遠するとマッシブな身体つきをしたMS。近接に入り込まれると中々きつそうだ。

 

「わおっ中々良い身体つきしてるわね。昭弘のお知り合い?」

『ああっ!?姉貴アンタ俺を何だと思ってるんだよ!?』

「うーん筋肉モリモリ?」

『俺の印象それだけかよ!!?』

 

などというギャグをやっている間にイサリビから通信が飛んでくる、如何やらもう一機のMSが出現し此方を攻撃し続けているとの事。誰か一人戻ってきて欲しいという要請だった。

 

『んじゃ俺戻るよ。姉さんと昭弘、此処任せるよ』

『!………ああ、任せろ!』

「任せなさい、確りね!」

『うん』

 

反転して一気に戻っていくバルバトスを追撃するようにタービンズのピンク色のMS、百錬がライフルで追撃を仕掛けるが同じくライフルを握ったヴァイスが牽制のように射撃をし進路を防ぐ。

 

『邪魔をするもんじゃないよ坊や』

「あら失礼しちゃうわね、私は女よっ!!」

『えっそうなの?』

 

素早く機体を切り返しながら相手の肩を蹴りつけながら一気に距離を取りライフルを連射していく。グレイズに比べて重装甲なのか効果は芳しくは無く全て弾かれて終わっている、射撃型な機体にとって重装甲なのはきついが弟に頼まれたのだから確りとやらなくては。

 

『そりゃ悪かったねぇ、んじゃお詫びという訳じゃないけどアンタはうちで面倒見てあげようか?』

「そりゃどうも、だけど私は鉄華団って居場所が気に入ってるの」

 

オクスタンランチャーに持ち替えながら迫ってくる百錬を振り切るように速度を上げつつ周回しBモードで弾丸を連射、百錬の関節を狙ってつもりだったがそこも確りとカバーするように装甲が覆われており貫く事が出来ない。

 

「お堅いわねぇ」

『旦那持ちだからね、この位がちょうど良いのさ!!』

「あらそっ!!」

 

再び間接狙いだがそれをあっさりと回避した上に回避先を先読みして放った弾をあっさりと防御してしまった。それを見てエクセレンはこのパイロットも全く油断出来ない相手だと実感する、力量は互角かそれ以上かもしれないけど負ける気は毛頭ない。迫ってくる弾丸を避けつつ昭弘の方へと目を向けるが其方は苦戦を強いられていた。

 

『ぐっ!!オオオオッッ!!!』

『しつこい……!!』

 

ライフルを破壊された昭弘は目の前のもう一機の百錬と戦闘を繰り広げている、がエクセレンほどの腕もない上にグレイズには阿頼耶識は装備されていない。今までの戦いで培った勘と経験を頼りになんとか目の前の今強敵に食らい付いているようなものだった。斧を掴みブレードを受け止めるが力量の差か出力の差か、グレイズの斧は容易くヒビが入り砕け、グレイズは蹴りを食らった。

 

「昭弘大丈夫!?」

『俺は……あいつに任されたんだ、姉貴と一緒に任された……此処は引けねぇぇぇっ!!!引く訳にはいかねぇんだよぉぉ!!!!』

『くっこいついきなり勢いがっ!!』

 

三日月の先程の言葉が発破となったのか一気に息を吹き返した昭弘は出力を全開にしながら百錬にタックルするとそのまま頭部を殴りつけ超至近距離で肩に付けられた砲塔を向けてぶっ放すと肩の一部の装甲を丸ごと破壊した。それにより砲塔は壊れてしまった昭弘は怯まない。

 

「わぁお!昭弘やるぅ!そうよ一気に行っちゃいなさい!!」

『おおおっ!!!おおおおおおおおお!!!!!』

 

エクセレンの言葉もあり大声を張り上げながら百錬の身体に組み付くとガンガンと装甲が無くなった部分へと拳を何度も何度も振るい続けていく。装甲が無くなった部分を何度も攻撃されれば幾らMSといえどダメージはどんどん蓄積して行く。

 

『アジー!あっちの援護に行きたいけど、アンタが行かせてくれないねぇ!!』

「駄目よ駄目駄目!今は女子会の最中なんだから、途中帰宅は許しませんことよ~!!」

 

援護へと向かおうとする機体すら自分に釘付けにしているエクセレン、相手が重装甲だろうが全く怯まずに時には一直線に突撃して相手を驚かせて目の前で手を振ってから回し蹴りをしたり遠距離で高速移動しながらから頭部を集中的にスナイピングしたりと人外的なテクニックを連発していた。それに百錬のパイロット、アミダは恐ろしさを感じていた。自分が相手にしている女はどれだけ強いのかと。

 

「ではお次は……必殺!天空蟷螂拳なんてどうかしら!?」

『アンタ一体どれだけ引き出しがあるんだい?』

「人間引き出しはいっぱい多い方が良いのよ?」

 

と茶目っ気良く笑った所で突撃しようとした時に通信が入ってきた、それはイサリビからではなくタービンズの船であるハンマーヘッドからであったがそれはオルガの物であった。

 

『もういいぜ姉さん!!勝負は付いた!!』

「あららっオルガ、お話は終わった感じ?」

『ああ。姉さん達のお陰だぜ』

「そう言って貰えると嬉しいわね~♪昭弘も良く頑張ったわね」

 

そう言いながらランチャーを肩に担ぎながらグレイズの方に目を向けて見るとそこには百錬の腕に組み付いて腕ひしぎ十字固めを行っているグレイズと腕を完全に決められている百錬の姿があった。思わずエクセレンは噴出しかけたが良く見たら百錬の腕は後少しで千切れそうになっていた。

 

『ハァハァハァハァッ……やった、のか……?』

「ええ良くやったわ」

『姉さん有難う、アンタがグレイズにインプットしてくれたこのモーションが無かったら今頃ボコボコに殴られてたぜ』

「そ、そう!?いやぁ流石私ね!(言えない、遊びであのモーションデータ入れたなんて絶対に言えない……)」




クランク「鉄華団も中々悪くはない。

子供達も良い子が多いし熱心で教え甲斐がある。

最近では字を教えるためのデータを作っているんだが

ちゃんと使えるといいんだが……

アインと相談しながら作るか。

次回、鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使

寄り添うかたち

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