鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

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第4話

「はぁ~……決闘に勝ったは良いけどその分仕事がどっと増えたわね……」

 

決闘に勝利しグレイズとクランクの身柄を手に入れたCGS改め鉄華団。そして三番組の教官職兼相談役という任に付いたエクセレンだが鉄華団と名前を変え新しくスタートする為の書類などの整理や始末に追われていた。これも責任ある大人の勤めとしてやっているが他にも鹵獲したグレイズを売却し少しでも高値にしようと修繕の為のマニュアル作りやMSの整備マニュアル作りと中々に多忙を極めていた。

 

「ブロウニング、此方のマニュアルは仕上がったぞ」

「あ~有難うクランクさん、助かったわ~」

「しかしこれだけの量をもう…凄まじく優秀なのだな」

「まあ、色々あってねぇ……」

 

エクセレンの部屋に入ってきたのは鉄華団に身柄を置く事になったクランク、ただ身柄を置いて置くだけではなく彼には自分が手を回せない子供達の先生役を頼む事にした。主にグレイズの整備の手引きや知識面での補強を依頼した。

 

「え~っと鉄華団の変更業務申請書はこれでよくて桜ちゃん農場の契約更新もこれで良しっと。他の会社にも連絡を付けなきゃ行けないのは後5社で……ああそうだ、アトラちゃんが入ったから後で契約書とかも持って行かないと……なんとか地球に行くまでに間に合わせないとねぇ……」

「少し休んだらどうだ、流石に働きすぎだ」

「うん、この書類終わったらね……よし終わった!ふぅ~休憩~……」

 

書類を終わらせ一段落付いたエクセレンは机に寝るように倒れこみ疲れた~と声を漏らす。クランクが鉄華団の一員として働き始めて数日が過ぎたが彼女の優秀さには舌を巻く。少年達からの信頼も厚く腕も立ちムードメーカーでもある、ある意味要的な存在となっているエクセレン。だからこそ聞いて起きたい事があった。

 

「少し良いか、子供達を……戦いから離す事は出来ないだろうか」

 

それを聞いて身体を起こして水を喉に流し込みながら身体を伸ばすエクセレンは言葉を詰らせた。

 

「あのような子供が銃を握り、戦いに出て相手を殺すなど間違っている…私はそうとしか思えん」

「私も出来る事ならそうしたいんだけど……残念だけどそれは難しいとしか言わざるを得ないわね」

「しかし……」

「あの子達にとって出来る仕事が他にないのよ、生きて行く為のね」

 

苦々しく口を開いた彼女の表情はこの数日中で見た事もないようなものだった。暗く悔しそうな表情、明るく陽気なエクセレンには全く似合わない物だった。

 

「あの子達には他の仕事を出来るだけの能力がないの、文字を読む事が出来ない子も多い。出来るのは銃を持って撃ったり、機械を弄ったりする事が精々……そんな子達がお金を稼ぐにはこんな仕事しかないの、子供だって戦わないと生き残れないって現実が此処にある」

「……」

「私だってねあんな仕事させたくないの、出来る事なら全員引き取って育てて上げたいの。でも私の蓄えだと皆を養って行くには1年ぐらいが限界なの、それだと十分に仕事が出来るだけの能力や知識を教え込むのは難しいの。だから……今はこの仕事場で出来るだけの事をしていくのがベストだと思うの」

 

齢が十にも満たっていない子供もこの鉄華団には居る。そんな子供が生きていくのは社会は厳しすぎる、だから今この鉄華団で出来るだけの事をしてそんな子供達が生きていけるようにしていくしかないとエクセレンは思っている。強く握り締められた手には強い悔しさがクランクの目に見えた。

 

「まずはこの鉄華団を大きくしてあの子達に銃を握らせない位の会社にする。そしてあの子達には真っ当な仕事をしてもらう、それが私の目標よ」

「真っ当な……ブロウニング、如何やら君は何倍も強いようだな」

「本当に、色々あってね」

 

何処か自分の過去をはぐらかすような言い方にクランクは肩を竦めた。彼女の言い分は正しくそこにある感情も理解した、今ある現実を否定したいがただそれだけでは前に進めずに解決にならない。故に容認しつつも改善する為に前へと進み続ける、それが選んだ道なのだろうと理解した。ならば自分も少しでもその手助けとあの子供達の未来の為に尽力してみようと思った。

 

「ならば俺も今の役目を全うするとしよう、皆のクランク先生として……。大人としてな」

「お願いね」

「ああ」

 

処理し終わった一部の書類を持って部屋から出て行くクランクを見送ったエクセレンは溜息をつきながら自分の吐きだした目標に少し嫌気がさした。子供達に未来を見せる為に、その未来を奪いかねない道を進ませる。だがそうするしかない、そんな自分が嫌になった。

 

「……違うわね、そうさせない為に私が盾になるのよ。私があの子達の矛になり盾となる……うんそうしましょう」

 

そう改めて決意を決めなおすと再びげんなりしそうになる書類の山へと向かって行く。その途中で水が書類に零れて悲鳴を上げそれは鉄華団中に響くのであった。

 

『イィィィヤァァァァァ!!!??書類がぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

「ムッ……今のブロウニングの声か?」

「あのクランク先生、ナノラミネートアーマーの補強の仕方ってこれで良いんですか?」

「んっああそうだ、コツとしてはだな……」

 

 

そして遂に鉄華団が地球へと向かう為に宇宙へと飛びたつ日がやってきた。シャトルには宇宙へと上がり鉄華団の船となったイサリビに乗り込みトドが紹介したオルクス商会の案内の元、地球へと向かうメンバーが乗り込んでいた。勿論エクセレンやクランクの姿もあるがエクセレンの表情はある意味死んでいた。

 

「だ、大丈夫ですかエクセレンさん。か、顔色悪いですよ」

「だいじょ~ぶよアトラちゃん。お姉さんちょっと頑張っちゃったから、少し疲れてるだけだから……」

 

水をこぼした事で台無しになった書類、そのやり直しを行った事で徹夜をする羽目になったエクセレンはギリギリになんとかやり直しに成功してその足でこのシャトルに搭乗している為ややお疲れ気味。隣に座っている先日鉄華団に正式加入したアトラが心配そうな視線で見てくるが何処か浮ついた声で返しているのをみてクランクは何処か哀れそうな視線を送るのであった。

 

「いよいよね……あーやべマジで眠い」

「少し眠ったら如何です?」

「そうしたいのは山々なんだけどねぇ~この後も何かゴタゴタがあったら嫌だから」

 

仕方なく起きているようなエクセレンを他所に、様々な思いと未来に向かう為のシャトルがいよいよ旅立とうとしていた。火星に残り帰りを待つ団員、旅立つ団員に手を振り無事を祈る家族、企みを抱えそれが如何転ぶかを楽しむ者の思いを受けながらシャトルは重力の緒を引き千切りながらどんどん加速して宇宙へと飛び出した。鉄華団の主要メンバーを乗せたシャトルはいよいよ暗黒の宇宙へと漕ぎ出し低軌道ステーションへと向かう為に案内役であるオルクス商会の輸送船に拾ってもらう予定だった。

 

「さてと、予定通りに行くのかしら……?」

「あっあれがオルクスの船じゃないですか!?」

「えっ予定より早くない?」

「だな、何でこんなに……」

 

窓から見えた巨大な船、それこそがオルクス商会の船だがまずは低軌道ステーションでその船が来るのを待つ手筈なのに幾らなんでも早過ぎる。何かあると思いつつそれを見つめていると複数の光が此方に向かって来ていた、それは船に比べると小さいが速い……。

 

「あれはグレイズ!?それに奥に見えるのはギャラルホルンの船!?」

「それってギャラルホルンの!?」

「おい奥に見えるあれがかよおっさん!?」

 

クランクが大声を張り上げながらその正体を見破った、それは間違いなくギャラルホルンのグレイズとその船だった。明らかに此方を狙って接近して来ている。

 

「はぁどうなってんだよ?!」

「おいトドテメェ説明しやがれ!!!」

「俺が知るかよ!?ギャラルホルンなんて聞いてねえ!!くそっ!!」

 

トドが操縦室に飛び込んでオルクス商会の船へと連絡すると返ってきたのは『我々への協力を感謝する』という通信であった。それを聞いたシノやユージンはトドを問い詰めるように近づいたがトドは何も知らないと叫ぶがこんな事態になってしまったはそれも意味は成さない、二人はエクセレンに視線を向ける。

 

「殺さない程度にね♪」

「「喜んでぇ!!」」

「ギャアアアアア!!!!」

 

トドはシャトルの後方へと連れて行かれるとそこで鈍い音の発信源となったがクーデリアとアトラ以外は全く気にする事はなかった。兎に角このままではまずいとオルガは加速するように指示を出すがあっさりとグレイズに追いつかれてしまい囲まれてしまう。

 

「も、MSから優先通信です!クーデリア・藍那・バーンスタインの身柄を引き渡せとか言ってますけどぉ!?」

「やっぱりそうきやがったか……姉さん!頼めるか!?」

「任せされた♪」

 

エクセレンはその場で服を脱ぎ捨てる、皆が驚く中そこに会ったのはオレンジを基調したパイロットスーツであった。それを覗いていたシノは思わずガックリ来ていた。

 

「シノ君残念♪それじゃあ三日月と行って来るわね~」

「「三日月?」」

「何をする気なんです団長!?」

「へっ……!!」

 

グレイズ三機に包囲されたシャトル、その後部ハッチが開かれ同時に煙幕が展開されていく。グレイズは小細工をと言わんばかりに頭部を輝かせるがその煙幕の中から三つの銃口がそのグレイズのコクピットに突きつけられ次の瞬間、銃口から弾丸が放たれ機体を穿った。それを行ったのはバルバトスとヴァイスであった、後部ハッチのギュウギュウ詰めにされた二機はストレスを晴らすかのごとく引き金を引いた。

 

「あ~狭かった。ヴァイスちゃんのお肌が荒れちゃうわ、さてとお仕事開始よ三日月」

『分かってるよ姉さん』

 

シャトルに付いたグレイズのワイヤーを切断しつつシャトルから離脱、残ったグレイズへと向かっていく。

 

「さぁ~てお久しぶりの宇宙での戦闘よん、気合入れていくわよ~!!!」

 

最初からエンジン全開なエクセレンは地上では出し切れていなかった出力を上げながら凄まじい速度でグレイズに接近しつつライフルを撃ち落としつつ片手間に三日月の背後を取ったグレイズへと攻撃するという援護を行う。

 

『ごめん、有難う』

 

その援護を受けたバルバトスはすぐさま反転しつつ奪った斧でグレイズの腕を切断しつつ0距離でコクピットを打ち抜いた。

 

「わぁお!良い戦いっぷりだと事!ちょいやっ!!」

 

距離を取ったヴァイスに攻勢をかけるようにライフルを連射してくるグレイズ、それから逃れるように高速移動をしながら狙いを絞らせないようにしつつ隙を突いて一気に接近しオクスタンランチャーを頭部へと突きつけ発射、頭部を破壊しつつそのまま胸部には動きを止めたグレイズから斧を奪いそれをコクピットへと振り下ろして破壊する。

 

「一丁あがり!」

『姉さん、オルガ達はイサリビに入れたみたいだよ』

「おりょ?あらま本当、良かったわ」

 

カメラを向けてみるとそこにはシャトルへと接近した赤い船、鉄華団のイサリビが見えていた。しかしそのイサリビもオルクスの船に攻撃されて現在は加速して退避しようとしている。速めに援護に行きたいところだがレーダーが新しい敵の反応を捉えた、今度は4機だ。

 

「あらあら私達ったら大人気ね、ちゃっちゃと片付けちゃいましょう三日月!」

『うん』

 

迫ってくるグレイズは此方に向かって揃った射撃を行ってくるがナノラミネートアーマーには遠距離からの射撃など無意味、牽制だと割り切っているのだろうが自分達はその程度では止まらない。これから鉄華団の初仕事として地球へと向かうのだ、止まってなどいられない。

 

「さてとやっちゃいましょうか!!」

『ブロウニング!!』

 

オクスタンランチャーでバンバンやって行こうという時にクランクからの通信が入った、イサリビのオペレーター席からの通信だ。

 

「もう何よ、今良い所なのよ?」

『すまん、だがお前から見て緑のグレイズが居るだろう!!』

「んん~?」

 

モニターの映像を拡大望遠して見ると確かに紫や暗い青というの中に異物のように混ざった緑色のグレイズがあった。地上でクランクが共にCGSを襲撃して来た時のと同じようなカラーリングだ。

 

「居るけど如何したの?」

『その機体に乗っているのは私の部下だ、出来る事なら殺さないで欲しい!!』

「あらあら相手は殺す気出来てるのにこっちは殺すな?もう難しいこと言うわねぇ!!」

 

どんどん迫ってきて斧を振り下ろしてくるグレイズを足蹴りしつつライフルの一射を浴びせて怯ませて後退しながら返事をする。殺すなというのは言うのは簡単だが向こうが殺す気で来ているのに此方は手加減するしかないというのはかなりきつい。

 

『すまん、だが……』

「んもう、しょうがないわねぇ。色男さんの頼みなんだから断れないわねぇ」

『感謝する……!!』

 

そう言って通信を切ったクランクに溜息を吐きつつもランチャーを構えなおす、頼みを引き受けたはいいが実際どうやってやろうかと思いつつシャトルに載せていたバルバトスのメイスが漂っている事に気付きながらそれを三日月にパスしながらそのアインというのが乗っているグレイズを捕捉する。

 

「三日月、あの緑の奴は私がやるわ」

『解ったっよっ!!!』

 

迫ってきた一機の攻撃を回避しつつその胸へとメイスを突きつけつつその先端から鋼鉄の杭を打ち込む三日月、他のグレイズを滑空砲で動きを止めながら斧で仕留める。が新たな敵に其方に身体を向けた。

 

「新手……!?」

『ふん少しは出来るようだな、宇宙ネズミが!!』

 

 

「さてと……まあボロボロにして引っ張っちゃいましょうか♪」

 

もうあれこれ考えるのが面倒になったのか取り合えずボコろうという結論に至ったエクセレンは斧を構えて突撃してくるグレイズへと向かっていく。

 

『羽つきぃぃぃっっ!!!』

「わぁお何とも血気盛んな事で!」

 

荒々しく斧を振るい此方を仕留めようと躍起に会っているグレイズを遇いつつも一気に後退していきながらライフルで軽く牽制する。装甲に任せながら防御もせずに弾を弾いて迫ってくるグレイズ、熟ナノラミネートアーマーは優秀だと思い知らされる。この射撃主体のヴァイスには辛いご時世だ。

 

「だけど、ちょちょい!!」

 

しかしそれでも戦う事に変わりはないと引き金を引くが普段銃弾が発射されている上の銃口ではなく下にあるもう一つの銃口から光が放たれるとそれは斧を飲み込みながら装甲に弾かれて四散していく。

 

『な、何だ今の光は!?』

「ムフフフ……さぁて行くわよ!WモードのWは『若さってなんだ?』の略なの」

 

一気に加速して行くヴァイスから次々と放たれていく弾丸がグレイズの機体を大きく揺らし弾いていく、それを必死に制御しようとするアインだがそこへ先程と同じ光が襲いかかってくる。それは的確にグレイズの頭部のカメラとスラスターを打ち抜いた。

 

『ば、馬鹿な!?こんなピンポイントで、しかもあんなに高速移動しながらの精密射撃!?』

「ん~……振り向かないことかしら?」

 

それを行っている本人は暢気にフリーダムな事を言いつつにグレイズの戦闘能力を奪っていく、そして止めと言わんばかりに高速移動からのキックをコクピットへとブチ当てた。その激しい振動はアインへと襲いかかりグレイズは動きを止めてしまった。

 

「は~いパイロット君、もしも~し?」

『ぅぅ……』

「うん死亡確認……じゃなくて気絶してるのよね」

 

そして接触回線を用いてモニターを強制的に開いてコクピット内を確認して見ると小さくうめき声を上げているアインの姿があった。だが此方へと向かってくる機体があった、それは青い指揮官用のグレイズであった。

 

『君のお相手は、次は私がしよう』

「あららイケメンな声ねん、でも残念。好みじゃないのよね!!」

 

一旦アインを置いて青いグレイズとの戦闘に入るヴァイス、高い推力とコクピットの高い操縦技術が光り中々の強敵だとエクセレンに直感させた。

 

「くぅぅうお戯れを!」

『まだまだ……なっ!!』

 

が突然グレイズは後退して行ってしまった。何事かと思えばなんとイサリビが此方へと近づいて来ていた。どうやら小惑星にアンカーを打ち込んで強引に進路の転回を行ったらしい。

 

『姉さん待たせたな!さあ行くぜ、地球へ!!』

「ヤリ手になっちゃってまあ、お姉さん嬉しい!」

 

アインのグレイズをなんとなく回収しつつエクセレンはさっさとイサリビの内部へと入って行った。一応生かしておいたのし鉄華団的にもグレイズは美味しいので貰っておこうという気持ちからである。

 

 

イサリビのドックでは急ピッチで補給作業が行われていく中エクセレンはヴァイスのコクピットで一人、静かに深呼吸をしていた。あのグレイズとそのまま戦っていたらどうなっていたかは分からない、今回は運に救われたかもしれない。だがその運も実力の内という、一先ず喜んでおくとしよう。コクピットを出るとクランクが鹵獲したグレイズのコクピットを上げて中のパイロットを引きずり出している光景だった。

 

「アイン!おいアインしっかりしろ!!」

「うううっ……クラン、ク二尉……?えっクランク二尉!!!?ど、どうなっているんですかぁ!!!?」

「あらら、なんだかまた修羅場る感じぃ?」

 

大体貴方のせいです、エクセレン姉さん。




既に原作が壊れている件について。

うんまあ……エクセレン姉さんだから、しょうがない(思考放棄)

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