鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

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第34話

月外縁軌道統制統合艦隊(アリアンロッド)からやって来たイオクとそのお目付け役であるジュリエッタが鉄華団への体験入団をする事10日が過ぎた。未だに扱きにひぃひぃ言いながら必死に身体を動かしているイオクに比べてジュリエッタは涼しい顔をしながら訓練を行い鉄華団の中でも人気が出ている。時折三日月と食事について談義している姿も見慣れ始めた。

 

「おいビスケット、アリアンロッドから送って貰った資料って何処にしまった!?」

「B-7だよ!急いでよオルガ今度やる軍事演習の打ち合わせに必要な資料を作らないといけないんだから!もう鉄華団は小さな企業じゃないんだよ?!」

「分かってる!!ああもう姉さんもキョウスケの兄さんも戻ってきたMSに夢中で動けないなんてったくなんて日だ!」

 

アリアンロッドから正式に移譲された権利によって協定を結んだ鉄華団はギャラルホルンと大きなパイプで繋がっている大企業へと成長している。しかし元は民兵組織、それを運営しているのは子供達という事もあり経験もしていない事で大変な毎日を送っている。

 

「団長さん、そこはこうするのよ」

「団長さんよこっちは終わったぜ!」

「早く終わらせて飯行きましょうぜ」

「ああすんませんアサルトウルフの皆さん」

「「「気にするなもう仲間みたいなもんだ!」」」

 

そんな彼らをフォローしつつ経営について必要な知識や技術を伝授して行くのはキョウスケがトップを努め現在は鉄華団と共にハーフメタルの管理採掘を行っている『アサルトウルフ』の面々であった。元々差別意識などが皆無に近くあっさりと鉄華団を受け入れ弟達が出来たと思いつつ彼らに確りとした仕事を教えているからか鉄華団からの受けも良く素直にオルガも助かっている。

 

「よし行きましょうぜ飯に」

「今日はなんだっけ、ケバブじゃないよね?」

「あれ美味いけど食堂が殺伐とするからなぁ……」

「確か今日は和食とかいう奴らしいですよ」

「俺、魚苦手なんだけどなぁ……」

 

思い描いていたかのような日々、忙しく大変ながらも毎日毎日が充実して行っている。オルガの目標だった鉄華団になりつつある。戦いではなく真っ当な商売だけで皆を食わせていけて楽しく明るく過ごしていける鉄華団。最近では兄貴分であるタービンズの方も景気が良く連絡をすると笑顔で名瀬が出迎えてくれる事にもかなりの嬉しさを抱くようになった。

 

「そういえば団長さんって女となんか無いの?」

「な、何すかいきなり!?お、俺は女なんて別に……」

「そっかまだ経験してないのか!よしよしなら今晩一緒に如何だ団長?」

「いいいっ!?か、勘弁してくださいよ!?」

「こらこら青少年を穢すんじゃないよ」

「「男は穢れてなんぼだろ!!」」

「……団長にビスケット君、これの言う事は真に受けないでね?」

「「は、ははははっ……」」

 

様々な事が自分よりも経験豊富な彼らにからかわれる事もあるがそれもそれで悪くないと思えている。これが平穏な日常の一ページなんだと思いつつも楽しんでいる、書き続けている団長日誌にも毎日こんな事が羅列され続けている。

 

「シノ、坊ちゃんの様子は如何だ?」

「全然駄目だぜ、まともな訓練受けて来なかったんだな。ありゃきっとアリアンロッドも持て余してただろうな。同情するぜあれの部下には。まあジュリは良い腕してるけどよ」

「ミカと同格だからな」

 

そんな会話をしながらも食堂に付けば今日も皆の談笑と食事を貪る音と笑い声が聞こえてくる、今日も料理長であるアトラは大忙しだろうが彼女には笑みが張り付いている。楽しみながら仕事をしているのが分かる。

 

「はい団長さん、今日はニホンって国で生まれたカツ丼だよ」

「カツドン?おおっすげぇなこれでけぇ肉が乗ってやがる……?!」

「戦いに勝つ!って思いが載せられるらしいよ、お代わりは自由だからどんどん言っておくれ」

「おう」

 

最近鉄華団の調理チームに入ってきた綺麗なマダムがそう言ってくる、以前までアトラが務めていた店の女将さんである。如何やらアトラが誘いを掛けて此方に入ったらしい、毎日毎日忙しいっと愚痴を零しながらも笑顔で働いて皆に活力を注入してくれている人だ。そんな人から料理を受け取りつつ三日月の隣に座る。

 

「おうミカ、そっちも飯か」

「オルガ。うん今日の訓練は全部終わらせたし新しいバルバトスの調整も終わったから」

「そっかどうだ新しいバルバトスは?」

「なんか、ゴツくなった」

「まあ確かにな」

 

歳星へと送り出され改修が施されたバルバトス、ヴァイス、アルト。それらも帰って来たが今まで以上のパワーアップを遂げている。特にバルバトスは三日月とキョウスケが討伐したあのハシュマルをそのまま背中に背負っているかのパワーアップを遂げておりそれを見た時皆たまげたものだ。

 

「おおっうめぇなこれ……!!すげぇジューシーだな」

「うんどんどんお代わりしちゃおう」

「だなっ!」

 

まるで競走でも始めるかのように同時にカツ丼をかき込んでいく二人は何処か兄弟のようにも見える。そんな二人が幸せな時間を過ごしている中ヤマギが食堂に飛び込んでくるかのように走りこんできた。

 

「団長!大変です!!」

「如何したヤマギぃ!?」

「タ、タービンズから緊急連絡です!!団長室に繋いでありますから急いでください!!」

「兄貴から?!分かった直ぐに行く!!!」

 

オルガ最後のカツを平らげると大急ぎで団長室へと走り出した、部屋に飛び込み机の上にある端末を起動させ即座に通信回線をタービンズへと合わせた。

 

「兄貴!!」

『オルガか』

「ええ、緊急連絡って聞いてすっ飛んできたんです!!何があったんですか!?」

『ああ、ちとまずい事になった』

 

神妙な声の名瀬にオルガは自然と身体が緊張してしまった。あの名瀬が此処まで声を硬くするなんて普段なら有り得ない事、一体何が起きたのだろうか。

 

『テイワズの元ナンバー2、ジャスレイ・ドノミコルス、そいつが面倒を起こしやがってな』

「ジャスレイ……って確か記憶喪失でそいつの会社の大半は兄貴が手中にしたって話じゃ」

『ああだが最近記憶が戻ったらしくてよ。あの野郎巧妙に手を回しやがってよ、元JPTトラストの奴らを引き抜いて歳星から自分の船とMSを大量に奪って逃げやがった。しかも他の傘下が動けないように細工までしやがって……』

 

名瀬の声は強張ったまま、酷く不快そうな声色をしている。

 

『しかもあいつは他の海賊連中を束ねて新しいでかい勢力まで作ってやがった、そいつらは遅かれ早かれ歳星に向かって来るだろうな』

「そ、それって滅茶苦茶やばいじゃないですか!?」

『ああやばい。今歳星にはまともな戦力は無いし動けるのはタービンズを含めて少しの戦力しかない、オルガ悪いが手を貸してもらえるか?』

「勿論です兄貴!!そうだ、アリアンロッドにも声掛けませんか!?」

 

この時オルガには電流が走っていた、自分達がアリアンロッドと協定を結んだのは大きな理由がある。それがギャラルホルンだろうが構わずに襲撃してくる海賊の存在だった。ジャズレイが束ねているという勢力は殆どが海賊でありギャラルホルンに対抗するために手を結んでいるような物、ならばこれを一気に殲滅する為だったらきっと手を貸してくれるだろうと。それを名瀬にいうと彼は愉快そうに笑った。

 

『そりゃ良いな!オルガ、お前良い事を考えるじゃねえか』

「へへっんじゃ早速ラスタルに連絡を取ります!」

 

これにラスタルは上機嫌に笑いながら承諾、海賊を殲滅する為の一大作戦を計画する事となった。因みに鉄華団内でこれを発表した際にエクセレンが

 

「あっこのケツアゴ、私を後ろから襲うとしてきた奴じゃないの」

 

と言った結果、鉄華団全体から殺意が染み出し異常なまでに士気が高まったという。

 

「い、言っちゃいけない事言ったかしら……?」

「いや良く言ってくれた。奴は俺が打ち貫く」

「俺がやるよ狼の人」


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