鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

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生贄



第33話

「オラオラもっと気合入れて走れやがれってんだ!!ちんたらしてっと倍増させっぞ!!」

「ク、クソ……こ、このイオク・クジャンがこんな一企業の訓練で音を上げるなど有り得ない……!!」

「イオク様もっとキリキリ走ってくださいませんか、もう周回遅れしてますよ。それではお先に」

「ま、まてジュリエッタ私を捨てるのか!!?」

 

月外縁軌道統制統合艦隊(アリアンロッド)との協定を結んだ鉄華団は火星と地球間における案内役兼顧問となった事により鉄華団の仕事はより真っ当且つ良い物へとなっている。アリアンロッドとの協定によって得られた信用は火星での地位を更に強固な物にしており火星では鉄華団に表だって文句を言うような連中を一掃していた。その仕返しをしようにもアリアンロッドと通じてしまっている鉄華団に何かしようものなら即座にアリアンロッドにその事実が流れてしまうので結局何も出来ない事が発生していた。

急成長をし続ける鉄華団を妬ましく思う連中から嫌がらせや奇襲などが問題となっていたのでそれがなくなった事に関してビスケットは大喜びしていた。当初こそ未だ鉄華団を下に見るアリアンロッドとの人間との諍いがあったがラスタルの懐刀と言われているジュリエッタが積極的に鉄華団との交流をしているのを見て自分の行いを見て改める事もしている。

 

そんな鉄華団を潰そうと宇宙海賊達は徒党を組んでアリアンロッドの輸送船団を襲おうと躍起になるがそれらを潰す鉄華団も活躍し海賊達は歯痒い思いをしながら地球へと行く為にタービンズらの力を借りているという現実があり如何にも喜べない物があった。

 

「ぁぁっ……星が見える……」

「妙な事をのたまっているとシノさんにブッ飛ばされますよ」

「私はセブンスターズの人間だぞ!?」

「今は鉄華団の二週間の体験入団員ですがね。ラスタル様からも好きにしてくれて良いと言われてますから遠慮無しにやってきますよ、嫌だったらさっさと後3週頑張ってきてください。でないと昼食食べれませんよ」

 

そんな鉄華団にアリアンロッドの人間が出向して来ていた。その人物とはイオク・クジャンとジュリエッタ・ジュリスであった。元々はイオクのみであったのだが形だけではあるが護衛と連絡員として派遣されたジュリエッタ、本人は嫌々だったが鉄華団の美味しい食事の事を考えると悪くないと思っているらしい。

本来違う組織である筈なのにイオクが何故居るかと言えばMA迎撃戦においてそれを妨害するかのような攻撃を加えたイオクへの罰である。仇を討つなどと言いながらやったのは折角分断したMAとプルーマを再び合流させる事になりそうな危険な行為であった。加えてそんな奴を助ける為に鉄華団にとっての聖女というべき存在であるエクセレンが傷ついてしまったのが一番許せない事であった。

 

そんなイオクへの罰を与える為にラスタルは鉄華団への二週間の出向を命じた、新たなに協定を結んだ組織との連携と友好を深める為に上の立場の物が率先してそれを実践するのだとラスタルから言われて意気揚々とイオクはやってきたが実際は怒りや恨みで今にも破裂しそうな場へ放り込まれただけだった。出向してまだ三日、それなのにイオクはもうヘロヘロとなっていた。

 

「ゼエゼエ……」

「もうへばっているんですか、午後からはMSの訓練だというのに暢気な物ですね」

「な、何故お前はそんなに食欲があるのだ……!?」

「鍛え方が違いますから」

 

確りとした正規訓練を受けているジュリエッタと違ってイオクはそのセブンスターズという圧倒的な名前によってアリアンロッドに入りラスタルという七光りもあった為に一部隊の指揮官を任せられているがそれまでの過程が到底指揮官とは思えないような物なので肉体面も技術面も酷く未熟なのである。彼の機体であるレギンレイズの射撃仕様のカスタマイズも前に出したら直ぐに死にそうだからという理由からである。

 

「三日月、今日のご飯は何です?」

「今日はケバブ。鉄華団(うち)だと人気メニューなんだ」

「ケバブ……聞いた事がないですかきっと美味しいんでしょうね!」

「美味しいよ、きっとジュリも気に居るよ」

 

食堂に入るとイオクに対して一斉にヘイトが集まる中ジュリエッタは無視しつつ三日月に今日のメニューを聞きつつ一緒に食事を取りに行く。イオクが早々に席に倒れこむように座りゼエゼエと息を荒げている。イオクの評価は最悪だがジュリエッタの評価は非常に高い、あのイオクの付き添いという事で皆警戒していたが、普通のやり手のパイロットでありなにより三日月とも仲が良いので皆直ぐに打ち解ける。そんなジュリエッタはイオクの分も取りつつ三日月と共に席に戻る。

 

「これがケバブですか……何やらサンドウィッチの一種のような感じですね」

「このソースを掛けるんだよ」

「二種類あるようですが三日月のお勧めは」

赤い方(チリ)

 

三日月のお勧めの赤い容器を取りソースを掛けて頬張るとチリソースの辛味によって肉の旨みが高められた味に思わず感激し身体を震わせ三日月と硬い握手をする。

 

「三日月感謝します、矢張り貴方という友人を持てた事を誇りに思います」

「やっぱり気が合うね俺達」

 

そんな二人を他所にこっそりとヨーグルトソースを掛けて食べるイオクであったがこっちの方が美味いぞ!と大声を出してしまい三日月とジュリエッタから凄まじい眼光で睨み付けられ萎縮したまま食事をするのであった。それを遠巻きに見つめているエクセレンは何とも言えない表情を浮かべつつもオルガとキョウスケにガードされていた。

 

「お姉さんなんか凄いお姫様感があるんだけどどうしてかしら……?」

「あのたわけをお前に近づける訳にはいかない、お前の優しさに惚れられでもしたら最悪だ」

「そうだ、無駄に権力を持ってる糞野郎ってのは無理矢理姉さんみたいな美人を手篭めにしようとするんだからな。皆にも姉さんを守るように言ってある」

「か、考えすぎなんじゃない?」

 

その後、MSの訓練が始まったのだが……

 

「おいクジャンお前本当に一部隊の指揮官か!?全然なってねぇじゃねえか!!基本から全部やり直しだ!!」

「な、何故私がこんな目に!?」

「大体自業自得です。三日月、次は私とお願いします」

「いいよ」

 

イオクが自分の駄目駄目さを全面的に押し出し徹底的に扱かれている中、ジュリエッタは初めて扱う獅電やゲシュペンストを難なく使いこなし阿頼耶識無しの三日月と互角にやりあうという実力を発揮し鉄華団内での評価が更に上昇し子供達からもジュリ姉ちゃんと呼ばれるようになった。

 

「わ、私はこんな所で……(バタッ!!)」

「こんな所で寝るなんて良い度胸ね……来な模擬戦30本だ!!」

「さあ行くわよえ~っと……ベニヤ・ペシャン!」

「誰だそれは!?」

 

MSの技術向上のために出向していたタービンズのアジーとラフタにも徹底的に扱かれ、その日はボロボロになって眠りについた。がまだまだスケジュールは続きイオクは更なる地獄を見るのであった。




マクマード「次回、鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使 2nd Season

落とし処


鉄華団、最初こそ餓鬼ばっかりでどうなるかと思ったが

俺の勘もまだまだ捨てたもんじゃねえな。

さてと、久しぶりに名瀬と一杯やるか」

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