鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

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落とし前





第32話

「う~んアリアンロッドとの事実上の同盟……なんとまあ、よくもまあ此処まで来たって感じするわよね」

「ああ。鉄華団が発足してまだ3年も経っていないだろう。それになのに此処までの急成長、ハッキリ言ってアサルトウルフの代表としては羨ましいものがあるな」

「そう言いつつそっちだってハーフメタルの採掘場はアサルトウルフとの共同経営なんだからそっちも十分美味しいんでしょ?」

「ああ。ギャンブルに傭兵事業よりも儲かっているな」

 

エクセレンの執務室にて先日のラスタルとの会談の結果によって出来上がった鉄華団の成り上がりに付いて話し合う二人。鉄華団だけではなくテイワズそのものを深くまで潤していく結果となり鉄華団のテイワズ内の評価が上がっていく中他の組織からの妬みや悪意は更に大きくなっていく事だろうがその辺りの対処になれているキョウスケも動いているので下手な手は取れない。

 

「それとラスタルさん達が今回の事を祝って鉄華団の本部に顔を出して友好を深める為にやるバーベキューパーティをやるけどキョウスケ達も出る?」

「……すまないがその時はアサルトウルフの皆はギャンブル事情について会合があってな。恐らく俺以外の連中は出れないだろう」

「なんでキョウスケは出れるの?代表なんでしょ?」

「……ギャンブルにおいて俺はカモにしかならんからだそうだ」

「大穴ばかり賭けるからよ」

 

実際キョウスケは経営者としては非常にやり手ではあるがギャンブルの一点に限っては全くもって駄目、何が何でもの大穴の分の悪い賭けばかりをするので事業は成長するものの自分自身は負け続けているという奇妙な事になっている。その影響かギャンブル事業に関わって大負けでもしたら困るからという理由で部下達から除外される扱いを受けておりエクセレンにも借金をしているのが現状である。

 

「それで何時返してくれるのかしら?もうリアクター1,5基分位は貸してるわよね~?」

「……」

「アサルトウルフの売り上げで返しちゃ駄目よ?自分で働いた分のお給金から出す事♪」

「……分かっている」

 

旗から見たらギャンブル好きの亭主に金を貸している資産家な女房なのだが、実際仲は良いが交際などはしていない。発展しそうになっても鉄華団の古株のメンバーがエクセレンに恋人が出来るという一点に置いて過剰な反応を示してしまい認めようとしない。

 

「そろそろ、アルトが戻ってくる頃だ。見てくる」

「逃げたわね……まあいいわ、ヴァイスちゃんどうなってるかな~♪」

 

 

「ふぅ……これで受け入れ準備は完了っと」

 

汗を拭いながら空を見上げるビスケット、今日行われるアリアンロッドとの協定を祝してのバーベキューパーティ。その為に外に発注し届いた道具を運んだりとビスケットは忙しくも嬉しそうに働いていた、漸く鉄華団の悲願とも言える真っ当な仕事のみでの事業に大きな一歩を踏み出せたのだから。合法的なルートの使用許可に地球圏との大きなコネ、これを喜ばずにはいられない。

 

「ビスケット~こっちは終わったよ~!」

「ありがとうアトラ、でもまだ時間はあるんだし休んでも」

「ううん折角大人数のお客さんが来るんだから気合入れなくちゃ!よ~し後4品作るぞ~!!クーデリアさん手伝ってね!」

「ええっ三日月のためにも美味しい食べものをっ!!」

「そうだね!!」

 

最近料理長に就任し更に腕前が上がってきたアトラは張り切りながらバーベキューの付け合わせなどの準備をする為にクーデリアと共に食堂へと駆け込んでいく。今までなかった大人数のお客さんというのが何か掻き立てるるものがあるらしい。それに負けじと下げていたボトルから水を飲んで身体に力を入れる。

 

「さてと……もう一頑張りっと!」

 

 

「さてと、今日のこの日我々アリアンロッドは鉄華団との協定を迎える。日増しに増加する阿頼耶識対応型のMSを大量投入する海賊に対抗する為の事だ。知っての通り彼らは少年達だがだからと言って彼らは我々にとって重要な立場にある人物達であり来る日の友人達でもある!」

「そうだ、お前らも思うところあるだろうが鉄華団はこれでアリアンロッドから正式な案内役を任された。その期待に応えるだけの活躍をする!」

「おお頼もしい、では本日は無礼講だ!お前達も鉄華団の皆も好きなだけ飲み食いをし絆を深めようではないか!!」

「ああ、んじゃ乾杯!!」

『乾杯!!』

 

鉄華団本部の野外ではあちこちから肉の焼ける匂いと煙が天へと向かって伸びている、準備されている鉄板の上ではジュウジュウと肉が油によって焼ける音が心地よく鳴り響きながら空腹に訴えかけてくる。その油を纏いながらこちらも負けずと焼けて野菜は熱が通っていくたびにしんなりとなっていき肉を引き立てるサポーターとして十分な見た目を発揮している。

 

「焼肉だけじゃないわよ♪新装開店、エクセお姉さんのウルトラ焼きそば!!」

「おい姉さんが焼きそばやるってよ!?」

「マジかよ!早く行かねえと直ぐになくなっちまうぞ!?」

 

肉に負けじと熱々の鉄板にて調理を開始するエクセレン、彼女が出すのは焼きそば。CGS時代から稀に出していたメニューであり皆に大人気である、そして経営が安定している今では大量の肉に新鮮な野菜まで入っているのでその旨さも倍増している。その為に三日月を始めとしたメンバーが殺到して行くのを見たジュリエッタを筆頭にアリアンロッドのメンバーも自分達もと駆け出して行く。

 

「姉さん、今日のは随分肉が多いね」

「ふふんバーベキューに負けないようにお肉も野菜も山盛りよ♪」

「(ゴクッ……)美味しいのですか焼きそばというのは」

 

三日月と同じく最前線にいるジュリエッタが思わず喉を鳴らしながらそう聞いてきた。アリアンロッドのラスタルが目を掛けているMSのパイロットと聞いたがそれだけではなく食欲旺盛な少女とも聞いた。今回は鉄華団の腕白達だけではなくアリアンロッドの大人達までいる、気合を入れて作られなければ。食べた事が無いが思わずソースが焦げる匂いに誘われてきたジュリエッタに三日月が応えた。

 

「当然だよ、姉さんの作る焼きそばは世界で一番美味いよ」

「世界で、一番……是非食べたいです山盛りでお願いします!!」

「姉さん俺は激山盛りで」

「はいは~いちょっと待ってね♪」

 

新たにソースを熱せられた鉄板へと掛けると大きな音を立てながらソースが焦げながら面に深みを与えて行く、その匂いが更に空腹を攻撃してくる中鉄ベラを鉄板に叩きつけながらエクセレンは決め顔を作りながら言う。

 

熱い頼みます!!アチョチョチョチョアチャァァアア!!!ホワチャアアアア!!!」

『オオオオオッッ!!!!!!』

 

最早意味の分からない盛り上がり方をし始めた焼きそばの一角をオルガは少し呆れ顔で見つめていた。無礼講とは言ったがアリアンロッドとのパーティなのだからもう少し確りとして普段のテンションは抑えて欲しかった言わんばかりの表情であった。

 

「出来たわよ~!!さあ好きなだけお食べなさい!!」

「こ、これが焼きそば……!?このモチモチとしつつも歯応えのある麺を包むコクのあるソースの香ばしさ、ジューシーな肉の旨みのそれを上回っているですって!!?こんな美味しい食べ物があるのですか!!!?」

「アンタ分かってるじゃん、これが姉さんの焼きそばの美味さ。このからしマヨネーズかけるともっと美味くなるよ」

「っっ!!?な、何ですかこれは!?辛さが味を引き締めつつまろやかになってるですって!?どうなっているんですか美味しすぎです!!」

「……アンタ分かるじゃん」

「…貴方こそ、こんな美味しい食べ方を教えてくださって感謝します。ジュリエッタ・ジュリスです、仲良くしましょう」

「三日月・オーガス、宜しく」

 

なにやら食を通じて意気投合してしまった三日月とジュリエッタは互いに固く握手を結ぶと次の瞬間にはガツガツと貪欲に焼きそばを貪り始めた。

 

「はははっ良く食うじゃないか鉄華団の小僧共!!ほらそこが焼けているぞもっと食え!もっと食え存分に食え!」

「おう任せてくれよラスタルのとっつぁん!」

「フム……この流石美食家としても名を轟かせているエリオン公、肉のチョイスも抜群且つこの自家製のタレも良いな…」

「仮面の兄ちゃんすげぇそれ口の部分開くんだ!?しかもなんか開閉速度がくそ速ぇ!?」

「なんでそんな機能あるのか分からないけどカッコいい!!」

「ふふん如何だ、中々にイカすだろう?」

『超イカすぅぅぅぅ!!!!』

 

制服の袖を捲くりながら鍛えられた筋肉を露出させた腕でトングを持ち更に肉を焼いていくラスタル。地球のギャラルホルン、その中枢をなすセブンスターズの一角でありアリアンロッドの司令官が自ら焼肉奉行をこなしながら鉄華団、アリアンロッド双方に肉を振舞っている姿は如何にもシュールである。何も知らない人間が見たら近場の気の良いおっさんが焼肉奉行を引き受けているようにしか見えない。

 

「この鉄華団のお嬢ちゃんが漬けたキムチ凄い美味いぞ!?」

「おおっマジだ!?」

「しかもキムチに紛れている火星ヤシが更に味を深めている、だと!!?」

「えっへん!これがクーデリアさんとの共同開発した火星ヤシ入りキムチ!」

 

アトラもクーデリアと共に作ったキムチを皆に振るまいながら給仕として調理人として慌しく動き回っている。しかし自分の作った料理が受け入れられて嬉しそうにしている、そんな中オルガは熱々の肉を頬張りながら野菜と共に水を流し込み豪勢な食事を楽しんでいると焼肉奉行を一旦交代し食べる方に回ったラスタルが近づいてきた。

 

「如何だオルガ団長、楽しんでるか?」

「ご覧の通りだ、満喫させてもらってるぞ」

「そうかそれは何よりだ」

 

隣に立ちながらビールを開けてぐいっと一気飲みするラスタルをオルガはやや驚嘆の目で見た。あれほどぐいぐいと酒を飲めるのは得意ではない自分からしたら畏敬の物のように映ってしまう。矢張り年を取ると酒も美味くなるのだろうか。

 

「そだアンタに一つ聞いてみたい事がある」

「何だ?」

「うちの姉さんがMA戦で一機のMSを助けたんだがそいつは俺達の作戦に割り込んで折角分断したMAとプルーマを合流させかねない攻撃をした。その落とし前を付けたい、そいつどんな奴か知ってるか」

 

それを聞いたラスタルはああ……っと思わず溜息をついた。ジュリエッタから報告を聞いたがそれは恐らく自分が後見人をしているイオクの事だろうと思う。あの無能は何をしてくれているんだと思ってしまった。

 

「……ああ知っている、此方でも処罰は与えているがお前達も気が済むまでやりたいだろう?」

「ああ。是非頼むぜ」

「分かった。ではそいつを2週間ほど鉄華団に預けよう、殺さない程度に嬲ってくれ」

「助かるぜ」

 

本人の知らぬ間にイオクの鉄華団の出向及び徹底的な扱きがされる事が決定した。肝心の本人はMA戦時の行動が原因で謹慎処分とされているがそれ以上にMAの恐ろしさのせいで部屋に閉じこもってしまっているらしい。それも何時までもという訳にも行かず……イオクは鉄華団へと送り込まれる事になるのであった。




ラスタル「次回、鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使 2nd Season

生贄


イオク、お前には我々と鉄華団との仲を保つ為に火星へ行って貰う。

自分のせいでMA起こしたのだ、鉄華団に扱かれてこい

これで少しはマシになれば良いがな」

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