鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

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望んだ居場所



第31話

「噂に名高き鉄華団、その団長に会えてこちらとしては光栄だ」

「そりゃどうも。俺としてもまさかのアリアンロッドの司令官が直接会いに来るなんて思いもしなかったぜ」

「はっはっは驚いてくれたかな」

「正直顎外れかけたよ」

 

鉄華団はその日、最も緊張する日を迎えていた。団長たるオルガと教官であるエクセレンは共に宇宙へと上がるとギャラルホルン火星支部の宇宙ステーションにてその時を待ち続けていた。そんな彼らへと姿を見せたのは月外縁軌道統合艦隊、通称 アリアンロッド艦隊の総司令官であるラスタル・エリオンと仮面を付けている男、ヴィダールであった。名瀬からラスタルが自分から望んだという鉄華団との会談、正式な物であった為に受けない訳にも行かず了承し日取りを決めいよいよとなった日。オルガは隣に居るエクセレンのお陰で辛うじて冷静を保っていたが内心は驚きと警戒心で飽和していた。

 

「それでそちらの美人のお嬢さんは?オルガ団長の秘書さんですかな?」

「あらお上手です事♪私は鉄華団の教官を担当しておりますエクセレン・ブロウニングと申します」

「教官!こいつは驚いた、そして鉄華団の団員が酷く羨ましく思えますな。こんな美人から訓練の手解きを受けるなど……いやはやさぞ訓練にも身が入るでしょうな」

「あらあら本当にお上手ねぇ♪」

 

ラスタル・エリオン、セブンスターズの一角であるエリオン家の現当主。ワイルドなままに残された髭と以下にも勇猛そうな顔つきは相手に威圧感と共に一種の安心感のようなものを与えている。会談中だというのに口説くような言葉回しからすると見た目に違わず豪快な男なのだろうという印象を受ける。

 

「んでそっちの……仮面の人は……?顔の傷でもあるんだったら聞いちゃ悪いが」

「すまない。とある事情からか外す訳には行かずにこのままで失礼する、名はヴィダール」

「そうか、なら気にしないでおく。んで天下の月外縁軌道統合艦隊の司令官様が俺達火星の一企業になんの御話があるんですかね」

 

何処かニヒルっぽく口を開いたオルガ、ハッキリ言って自分達はギャラルホルンとはこれ以上関わる気はなかった。マクギリスからの勧誘を蹴った上にMAはギャラルホルンの力を借りる事もなく討伐する事に成功し無用な貸しを作らずに済んだ。っというかMAの覚醒自体はギャラルホルンの責任なのだからこちらに非はないだろう、MAを掘り出したのは此方だが……。

火星内での経営も軌道に乗り始め仕事も良い感じに入るようになってきてオルガが目指す真っ当の仕事だけで運営して行く鉄華団が形になろうとしている所だった。そんなオルガにラスタルはニヤリと笑った。

 

「一企業とは謙遜をするな、君達は伝説的なガンダム・フレームを三機所有している上にあのMAを討伐している。既にその戦力は火星ではトップと言えるだろう、ギャラルホルンの火星支部も君達と真正面から戦っても勝つ事は難しいだろう」

「そりゃどうも。だが俺達はこの力を使ってどこかに攻め込む気はない、あくまで自衛や防衛の為だ」

「分かっている。そして君達はマクギリス・ファリドからの誘いを蹴った、故に今こうして会いに来ているのだ」

 

瞬間的にエクセレンの瞳が鋭くなる、マクギリスが鉄華団と繋がっていたのは公然の秘密のようになってはいるが火星の王に関する事は完全な機密な筈。それを知っている上で会談の申し出をしたという事はこちらも何かがあるという事になるだろう。

 

「それで私達に何を望むのかしら?」

「そうだな。面倒な事な言い回しや理由は退屈だろう、ならば率直に言うとしよう。我々月外縁軌道統合艦隊は君達鉄華団と協定を結びたい、その内容はアリアンロッドの火星圏及び地球との境における案内役兼顧問を鉄華団に委託したい」

「「……はいっ!?」」

 

思わず変な声を出したオルガとエクセレン。思わず木星までぶっ飛びそうになるほどの衝撃に二人は顔を見合わせてしまった。この男は今なんと言ったのだろうか、鉄華団がアリアンロッドの案内役を請け負うと同時にその顧問になるという事だ。前代未聞どころの話ではない一体何のメリットがあるというのだろうか。

 

「理由はいくつかある。2年前より地球火星間では以前よりも宇宙海賊共が活発化している、その影響はギャラルホルンが火星支部へと輸送する物資にまで手を出しているところもあってな。唯の海賊なら対処出来るが奴らは阿頼耶識対応型のMSを大量に投入して来て被害も大きくなっている」

 

2年前と言えば鉄華団始まって依頼の大仕事、クーデリアを地球へと送り届けるという仕事を行いそれを無事に達成した時の事を指されている。

 

「だが数なら上なんじゃねえのか?」

「数だけならな。しかし海賊共も馬鹿じゃない、複数の組織が手を組み戦力確保した上で阿頼耶識対応型MSを大量投入されては幾ら数で上回っても押され気味になる」

 

そう言われると確かに納得できる。自分達は正にそれをやってのけていたのだから、しかも自分達の場合は戦力は少なかったのにその乗り手が全員腕が良かった為に数で圧倒されても盛り返し押し返す事が出来ていた。MSを操縦するのにタイムラグが発生せず人間のような動きが出来る阿頼耶識対応型は普通のギャラルホルンのMS乗りからしたら厄介な事この上ないのである。

 

「蛇の道は蛇、阿頼耶識の強さを最も把握している者達に協力してもらうのが一番だと考え君達鉄華団にこの話を持ちかけたという訳だ」

「成程……詰る所それを受けた場合はギャラルホルンの輸送船を護衛したり、軍事演習の参加協力とかになるのかしら」

「その通り、美人な上に頭も切れるとはますます羨ましい。この件についてテイワズのトップ、マクマード・バリストンからは鉄華団(お前達)の許可があれば良いと言われている」

「親父が!?」

「あらら~手回しが早いです事……」

 

オルガが断ろうとした親父に確認して見ないという事を先に封じられてしまった。加えてマクマードからは合法的な商売になるんだから良いだろう、加えてお前達が表に出て動けば裏に輸送依頼が多くなって利益が大きいとの事。

 

「……」

「勿論鉄華団の案内役という便宜は通常の業務でも使っても構わない、民間企業が地球へと行きたいと言えばアリアドネを使用してもらって構わない」

「随分と、高待遇過ぎないかしら……」

「ああ、裏があるとしか思えない」

「……フッ流石に分かるか」

 

矢張り何かあるかとオルガは身体を硬くした。

 

「来る時に備えた布石と、とでも言えばいいかな。近々起こる大きな戦いに備えて鉄華団にはアリアンロッド側に回って貰いたい」

「でかい戦い……?」

「ああ。ギャラルホルンを、いや地球と火星を巻き込んだ大きな戦いになるだろう。その為にだ」

 

それを聞いて真っ先に連想したのはマクギリス、あの男の事だった。常々話していたギャラルホルン改革の話、腐敗したギャラルホルンを変えたいというあの男が出てきた。しかしこうしてアリアンロッドの司令官が出てきている以上マクギリスが何か大きな事を起こすのだろうというのは明らか。間違い無い事なのだろう。ならば自分がとるべき道は……。

 

「俺達は、鉄華団は降りかかってきた火の粉を払う為に戦う。それで良いか」

「十分だ!ではこれで成立かな、オルガ・イツカ」

 

満足げに笑いながら豪快な笑みを浮かべるラスタル、先程まで冷徹な武人のようだったのに陽気なおっさんのように見えてオルガは若干この男の事が分からなくなってきたが決めた。自分達は真っ当になり、平和に暮らしていく為にアリアンロッドと組むと。

 

「ああ。宜しく頼むぜラスタル・エリオン」

「うむ。では後日火星の鉄華団本部を訪ねる、部下を連れてな。そこで我々の協定を祝って焼肉パーティでもしよう」

「肉か……良いな皆喜ぶだろう」

「ヴィダールお前も強制参加だ!その仮面外せよ!!」

「いやこの仮面のままで出させてもらう」

「でも食べれないんじゃない?」

「無問題だ。この仮面は口元の部分がスライドして開くようになっている」

「何だよその無駄なギミック!?」

 

本来とは別の道を進む事になった鉄華団、だがオルガに後悔はなかった。きっとこれが家族を真っ当な仕事をする鉄華団に導いてやれる道だと信じている。そう思いながら握手をするラスタルの手を強く握り返した。




ジュリエッタ「次回、鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使 2nd Season

落とし前


駄目ですこれは私が焼いた肉です!

あっイオク様は石でも焼いててください」

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