鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

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狼と狼




第26話

「そうそれじゃあ良い感じに事は運んだのね?」

『ああ、こちらとしても問題が多く発生したが何とかする事が出来た、だがそのお陰かここ数週間まともに寝ていなくてな』

 

火星の本部へと齎された通信、それを受け取ったエクセレンは地球からのものであると気付くと嬉しそうに自室で開いた。通信相手は鉄華団地球支部支部長であるクランクであった。現在アーブラウの防衛軍設立の為に軍事顧問として動いている鉄華団の代表として毎日奔走しているとの事。途中テイワズから出向して来たラディーチェの裏切りや現地での少年達との確執などもあったがアインが事前に察知しそれを処理したり緩衝材となってそれらを上手く防ぐ事に成功し無事に地球支部の仕事を完遂する事が出来たとの事。

 

「それにしてもラディーチェって人とんだ食わせ者だったって事ね、お仕置きしたんでしょ?」

『当然だ。横領に未遂だが機密情報の横流しなどもあったからな、現地の防衛軍に処理を任せたさ。悪を許さぬ皆だから心配いらんだろう、エクセレンが回してくれた人の情報のお陰もあったね』

「私は何もしてないと思うけどね~」

 

地球での重要な仕事をやり遂げたのはあくまで地球支部の皆の力であり自分はその手助けをしただけだ。本当に功労されるべきはクランクやアイン達なのだ。

 

『それでは此方はもう切らせて貰う、まだまだ忙しくてな。やれやれゆっくり寝られそうになくて適わない』

「それなのに嬉しそうじゃない?」

『フッ』

 

連絡を切ると椅子に背中を預けながら天井を見つめる。これで地球支部も御役御免、これからは火星での仕事が中心になってくる、夜明けの地平線団を討伐した事でテイワズから手柄として大きな物が与えられた。クリュセのハーフメタル採掘場の管理採掘を預けるという話、これによって更なる財源の確保や仕事の確保まで調達出来た。いよいよ鉄華団の皆がMSに乗って戦わなくても無事に生活出来るビジョンが見えてきた、そんな事に嬉しそうにしつつもある番号を入力すると通信回線を開いた。

 

「どうも。またお世話になっちゃったわね、夜明けの地平線団での事とか地球での事とかさ」

『気にするな、俺とてお前には世話になっている』

「お互い様って物よ、それと今はなんて呼べば良いのかしらね?」

『ヴィダール、そう呼んでくれ』

 

通信の先から響いて来るややエコーの掛かった声に軽く笑う、矢張り慣れない所がある。ヴィダールと名乗る男と思われる通信相手、エクセレンと何処で繋がっているのかは不明だが彼女は彼を通じてアリアンロッド艦隊の情報や妨害などを依頼してそれを実行して貰った経緯があり間接的だが鉄華団の夜明けの地平線団の討伐に貢献して貰っているととも言える存在である。

 

「ヴィダールねぇ……随分趣味的な名前ね?さながらあれはオーディンかフェンリルかしら?」

『そんな尊厳的な物ではないと思うがな、それとそちらは如何だ?此方には早速クジャン公の赤っ恥の件が届いているぞ』

「ああ終わってるのに正義の鉄槌云々言ってたお坊ちゃんね?」

 

ぼやきのような独り言を聞いたヴィダールは深い溜息のようなものを吐きだした。

 

「本当にあれってアリアンロッドの指揮官なの?それにしては随分と無能な香りがするんだけど」

『むぅ……ハッキリ言ってそうではないな。今のクジャン公、イオク・クジャンの評価が高いのは前クジャン公が余りにも勇猛且つ有能すぎる方だったからだ。それゆえにその嫡子であるクジャン公にもそんな能力があるのではないかという期待があるから、と言えば満足かな。次いで言うとMSの腕前はハッキリ言って糞だ。あれなら訓練校を卒業した新兵の方がよっぽどいい働きをする』

「……」

『総評すると経験もなく未熟であるに加えてMSの操縦がヘタクソである自覚がなく、自分は凄腕と思い込んいておまけに無駄に正義感が強く、さらにお偉いさんという事だな』

 

ヴィダールの歯に衣着せぬ発言に思わず絶句してしまった。彼自身虚言は言わずに率直な言葉を言う事を好んでいる事からそれが事実であると悟るが事実だとしたら相当な無能という事になるような気がする。というよりも問題児にも程があるだろう、自分の腕前を如何やったらそんな風に勘違い出来るのだろうか。彼の周囲にはそれほどまでにイオクの手柄に見せ掛けられる技術を持った者がいるのかそれともギャラルホルンお得意の情報操作なのか。

 

「そう言えば提供したコンピュータは如何?」

『漸く俺の癖や挙動の学習が終了した所だ。まもなく実戦だ、そのための調整でこれからもまた掛かりきりだ。すまないが今日はこの辺りで、また連絡してくれ』

「ええそれじゃあね」

 

通信を切ると同時に室内の呼び出しようのスピーカーからオルガの声が漏れてきた。団長室に来て欲しいとの事だ、また何か面倒な事でも起きたのだろうか。最近草臥れて来たから新調した鉄華団のジャケットを羽織ると団長室へと気だるげそうに歩き出して行く。本来そんな歩き方などしてはいけないのだろうかやや疲れているのかもしれない。そんな疲れを隠しながら辿り着いた団長室にはオルガやビスケットに加えてキョウスケの姿まであった。

 

「あらキョウスケまで居たのね。如何しちゃったの?」

「それを深めた話をしようと思ってんだ。実はクリュセのハーフメタル採掘場の管理採掘を鉄華団でする事になったんだが俺達はそれに関してノウハウなんかは知らないからな」

「そこで今回の採掘場はアサルトウルフとの共同経営にする事になったんですよ。その打ち合わせをする為にキョウスケさんは此方に」

「そういう事だ」

「あらら、歳星に加えて火星でも良く顔を合わせるようになるわね」

 

やや嬉しそうな表情を浮かべるエクセレンに比べて冷めているような表情だが薄い笑みを浮かべているキョウスケにオルガは何処か複雑そうな思いを浮き彫りにしながらそんな思いを仕舞い込みながら咳払いをした。

 

「鉄華団本部の空いてるスペースをアサルトウルフに使ってもらう事になったからその際の注意事項とか連携に関する事とかもあるから姉さんには会議には参加して貰う、加えてこいつもだ」

 

書類を彼女へと回す、それを覗きこんで見るとそこには様々なデータと共に写真が貼り付けられていた。ハーフメタル採掘場と隣接するように置かれているのでてっきり現場の写真かと思っていたが合っているようで違った。そこに映り込んでいたのは地面から顔を覗かせながら何かを、抑え付けているかのように埋まっているMSの姿だった。しかもそれは鉄華団としては非常に見覚えがある物だった。

 

「これってガンダム・フレームじゃない……!?こんなお宝が埋まってたなんて凄い大当たりじゃない!?」

「ああんでシノがよ、如何しても俺が乗りたいって聞かねぇんだよ。まああいつも一番隊の隊長だから相応しいって言えば相応しいんだけどよ」

「シノってば我先にゲシュペンストを欲しがってたのにね」

 

困ったような表情を浮かべるビスケットに肩を竦めるエクセレン、まあ幾ら新型と言ってもゲシュペンストは所詮量産モデルの機体。それと幻のガンダム・フレームを比べるのは可笑しい事だろう。

 

「まあいいわ。隊長機にガンダムっていうのは二番隊と同じだしね、まあまずは歳星へ持っていく事になるでしょうね」

「ああ頼むぜ。それとよ、もう一つMSにしてはでか過ぎる物が出て来てよ」

「でか過ぎるもの?」

「ああ。ついでにそれの近くにあったMWモドキも一緒に歳星に持って行って調べてもらってくれ」

「分かった」

 

 

 

――……。―――……。

 

―――……?。……!……?。

 

――――……、……??。

 

―――――、………




ビスケット「次回、鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使 2nd Season

目指すべき道


クッキーとクラッカに太ってる方が俺らしくて良いって言われたんだけど

その方がいいのかな?」

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