鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

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新たな引き金





第25話

「オルガ、アサルトウルフって一体どんなとこだ?」

「俺もそこまで詳しくはねえけどテイワズの中でも有数の武闘派って聞いたな。俺よりもメリビットさんに聞いた方が良いんじゃねえか?」

 

通信を終了させつつ真横に接近して来たイサリビよりも一回り巨大な艦に思わずユージンが息を飲んだ。先程までは距離があったせいでおもちゃのように見えていたものも此処まで接近すると艦に描かれた狼のエンブレムが現実味を帯びてくる。

 

「相対速度、アサルトウルフ所有艦アセナとの合わせ完了しました」

「どもっす。んでメリビットさんアサルトウルフって知ってます?」

「ええ勿論、鉄華団に来るまではテイワズで働いてましたし。良く知ってますよ」

 

メリビットの口からキョウスケ・ナンブという男という男について語られていく。アサルトウルフ、テイワズの直系団体に属しておりテイワズの中でも有数の武闘派組織で彼らだけで敵対組織の4つほど壊滅させているというほどの腕利き集団。主に合法的なギャンブルや傭兵に近い仕事を生業にしている。特に有名なのがその代表であるキョウスケ・ナンブという男。

マクマードから直接スカウトされ親子の盃を交わした人物であると同時に凄腕のパイロット、以前までは専用にカスタマイズされた百錬を使用しているが重装甲に高出力のブースターを装備して相手の迎撃を無理矢理突破して戦艦に風穴を開けた、正面から迫ってきたMSを正面から潰したなどなどそのような噂が耐えない。

 

「おいおいなんだよそれ……おっかねぇな」

「最近では試作型のゲシュペンストを購入して自分仕様に改造して愛機として使っているらしいです。でも噂ではエイハブリアクターの慣性制御があってもかなりのGが掛かるとか……」

「なんつぅか……俺らも人の事言えねぇかもしれないがその機体も如何かしてんな」

 

伝説的な活躍をしたガンダム・フレームにMSとしては破格過ぎる速度と操縦者の能力によって異常な狙撃能力を発揮するヴァイス。これらの戦力を抱えている鉄華団としては何かを言える立場ではないがその愛機とやらはヴァイスかそれ以上に狂った機体なのだなとオルガは思った。

 

「そう言えば……その愛機を作る際にはエクセレンさんの手も借りたとか」

「ああそれは俺も知ってる。アサルトウルフに連絡が取れたのも姉さんのお陰だからな」

「フ~ン……なんか気にくわねえな」

 

一人だけムスッとしたユージンは前へと向き直りつつ胸の中で蠢く感情を抑えつける事に専念した。そしてギャラルホルンからの情報通りに進めていくとその情報にあったエイハブ・ウェーブの反応を感知、遂に海賊の艦隊を捉える事に成功した。

 

「一応情報通りか……偵察隊からの報告は?」

『オイオイ冗談きついぞ!!』

「如何したシノ!?」

 

通信が繋がっているシノから零れた言葉に全員が驚きを隠せなかった、それはシノも同様であり提供された情報では合流前の艦艇3隻を叩くという物だったのに相手は10隻。夜明けの地平線団の全艦隊が勢ぞろいしていたのだ、だがレーダー上では3隻では確認で来ていないのに如何いう事だとオルガが声を荒げる中、レーダーには新たな艦の反応が次々と出現していた。

 

「そんな……相手は10隻!?」

「まさかあいつら……!!」

 

シノの流星号から送られてきた映像を見てみるとそこには3隻の艦が他の艦を牽引しながら此方に迫っているのが確認出来た。何とも上手い戦法だとオルガは舌打ちした、相手へ自分達の戦力差を間違えさせるという手法。稼動しているリアクターの反応は他の艦を牽引している3隻のみ、これなら確かにレーダーに反映される数を抑える事が出来る。

 

『MS隊、出撃だ!』

「待ってました!さあ行くわよ三日月!」

『うん』

 

既に待機していたエクセレンと三日月は出撃準備を完了させておリカタパルトの展開を待っていた。そして敵が此方へと向かって来ながらMSを出しているのを確認すると出撃の合図が出た。

 

『姉さんに三日月、あいつらは俺達を包囲する気らしい。それを正面突破してそこから叩く!』

「相変わらず強引な手ね。でもそういうの好きよ、んじゃ三日月と私でMS隊を引き付けておくわね」

『分かった。兎に角目立つように暴れれば良いんでしょ』

「大正解!んじゃエクセレン・ブロウニング、ヴァイスちゃん行くわよ~!!」

『三日月・オーガス、ガンダム・バルバトス出るよ』

 

イサリビから出撃して行く鉄華団の最高戦力とも言える二機のMS、先陣を切るように突撃して行くバルバトスとヴァイスは同時に射撃を開始し敵の射程外から次々と弾丸を命中させていき相手のライフルなどを潰していく。

 

「はいは~い大サービスで撃ちまくっちゃうわよ~!!」

『んじゃ俺行って来るから』

「行ってらっしゃいね~」

 

片手間に投げキッスをモニターの三日月に飛ばしながらヴァイスは縦横無尽に回転や常識外れな機動を見せながら敵の頭部や間接部へとビームや銃弾を叩きこんでいく。その援護射撃を受けながらソードメイスを握り締めたバルバトスが一気に距離を詰めて行くと胸部などを集中的に狙って得物を振り回す。カメラや間接を撃ち抜かれて動きの鈍るそれを一気に抉るような一撃が悪魔によって加えられていく。

 

『こ、これが噂に聞く悪魔って奴かよ!?』

『か、数では此方が圧倒してるんだ距離をとりつつ……ぐわぁ!!!』

 

確かにバルバトスは接近主体のMS、距離をとろうとするのは悪い選択肢ではないのだがその援護を行っている堕天使の存在を忘れてはいけない。元々が遠距離からの援護狙撃を行う機体なので距離をとればヴァイスが襲い掛かり、距離を詰めようとすればバルバトスのメイスで命が抉られるという見事な関係が出来上がっていた。その影響か夜明けの地平線団のMSの勢いは大いに削がれその隙に鉄華団は艦の守りを固めるMSを次々と出撃させていく。

 

『オオオオッラァァァァッッ!!!!!』

 

ホタルビから出撃した一機のMSが雄たけびを上げながら手にしたライフルを連射しながらなんとか艦に取り付こうとしているMSを薙ぎ払っていく。ナパーム弾を使用しているからかそれを受けたMSのナノラミネートアーマーは剥がされてしまい獅電や流星号などの射撃であっさりと落とされていく。その連携の核をなしているのがやや黒っぽくなった強靭な4本腕のMS、改修された悪魔『ガンダム・グシオンリベイクフルシティ』であった。

 

『どんどん行くぞぉぉっっ!!!』

 

バルバトスと同じくテイワズによって改修されたグシオンは新型『TD』が搭載され性能が向上した事に加えてヴァイスのオクスタンランチャーを応用して開発されたライフル、『ローストランチャー』が装備されている。ナパーム弾と通常弾頭を打ち分ける事が出来るライフルは高い効果を発揮しながら相手を落としていく。そんな嵐のようなグシオンの弾幕を掻い潜るかのように突破して来たガルム・ロディが迫ってきた。

 

「ちっ!なんだっ!?」

 

突然のアラート、後方から凄まじい速度で何かが突っ込んできた。それは目の前まで迫っていたガルムに突進をかますとそのまま胴体を真っ二つにするかのように破壊すると更なる前線へと突っ込んで行った。その突進力と速度にヴァイスを連想した昭弘は当然だがIFFには味方と表示されていた。そしてそこにはアサルトウルフのエンブレムが刻まれていた。

 

「あれが、まさか話に聞いてた……」

 

その機体の残痕を追うようにカメラを動かすとあっという間にMSの防衛陣を突破すると左舷の一艦へと突撃していった。無謀とも言える行動だが艦の迎撃さえも無駄と吐き捨てるかのように突撃したそれは莫大な推力によって生じた運動エネルギーをそのまま破壊力に転換するように腕を振るうと艦橋を破壊してしまった。

 

『おいおい何が起きてんだ!?なんか突っ込んだと思ったら相手の一隻沈んだぞ!?』

「なんかシノ君の流星号よりも流星染みてたわね」

『んなぁっ!?』

 

驚きと心外と言いたげな表情を浮かべながらも敵をプラズマ・ステークで落としながらも突撃から戻ってきたそれを見つめた。先程敵艦に突っ込んだというのにもうこちら側に戻ってきている、とんでもない推進力だ。

 

『すまない単機突撃をしてしまった。だが此方としてはそれだけ力になれるという事だ』

「その為にこんなアピールゥ?無茶するわねキョウスケ」

『ただ、撃ち貫くのみ。それが俺に出来る最大限の事だ』

 

それを形容するならば赤く重装甲化させたゲシュペンストだろう。まず目を引くのは肥大化している両肩、輸送用のコンテナをそのまま肩に内蔵したと言われても違和感がないほどの大きさ。機体に複数装備されている大型のバーニア、それがあの化け物のような突進力を実現させているのだろう。そしてその突進力を余さず破壊力に転換出来る腕のリボルバー式の杭打ち機、あれが戦艦の装甲ごと艦橋を破壊したのだ。試作型のゲシュペンストをキョウスケが自分に合うように改造した結果誕生した機体、『アルトアイゼン』の力に鉄華団は驚いていた。

 

「だけど今がチャンスよ!!今のアホみたいな突進でお相手さん浮き足立ってるわよ」

『まあそりゃそうだろうな……まさかMSが戦艦ぶっ壊すとか普通思わねぇよ、しかも単機で一撃で』

『アンタ凄いね。ねえ俺と一緒に突っ込まない?』

『了解した、エクセレン援護を頼む』

「はいは~いお任せよん♪」

『よし鉄華団及びギャラルホルン、そしてアサルトウルフの全員!今の一撃であいつら驚いてやがる!いまのうちに畳んじまうぞ!!!』

 

オルガの号令と共に大攻勢が開始された。異常な力を見せ付けたアルトと既に名が知られ恐れられているバルバトスとヴァイス、その影響か海賊達は最早まともに連携すら取れていなかった。

 

「邪魔」

「どんな装甲だろうと、撃ち貫くのみ!!」

 

背後からエクセレンの援護を受けながら前進して行く二機は次々と敵を薙ぎ払っていく。メイスでコクピットを潰し、装甲の隙間から腕を差込みコクピット内部を破壊したりと正に悪魔的な活躍をするバルバトス。圧倒的な突進力を破壊力に変えMSを粉砕するかのような一撃で相手を穿つアルト。一騎当千の活躍をしていく二機を支えるヴァイス、それらに触発されるように獅電や流星号、リベイクの動きも格段に良くなっていく。結果として夜明けの地平線団は構成艦3隻が撃沈させられ、MSの大半を沈められるか鹵獲され上にボスまで完全に捕縛されこの世界から消滅する事となった。

 

「さあ海賊ども、このイオク・クジャンが正義の鉄槌を……あれっ?」

『はぁ……イオク様が妨害にまんまと嵌ったせいで完全に出遅れたじゃないですか』

「わ、私のせいか!?」

『それ以外に何があると?ラスタル様には確りと報告させていただきますので』

「ちょっ!?」

 

月外縁軌道統合艦隊の部隊の指揮官であるイオク・クジャンがMSで出撃しながら声明を出すが既に戦闘は終了し後始末をしている最中であった。その影響でアリアンロッドは赤っ恥をかく事になった上にイオクの評判が火星と地球で下がったとか。

 

「ねえ狼の人、姉さんとはどんな関係なの」

「どんなか……難しいな」

 

この後、打ち上げとして鉄華団とアサルトウルフはパーティをするのだがそこでエクセレンがキョウスケを呼び捨てで親しげに呼んだりしたので感謝の念と嫉妬の念が鉄華団の団員内に渦巻く事となった。

 

「すまねえなキョウスケさん。姉さんは俺達鉄華団にとってかけがえのない存在でな」

「気にしていない。エクセレンが慕われる理由は俺も理解している」

「そうか。だが姉さんに手出したら許さねぇからな、その時は鉄華団全員が相手になるからな」

「……肝に銘じておこう」




アトラ「次回、鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使 2nd Season

狼と狼


最近三日月機嫌良いみたいでよく笑ってる。

うんやっぱり積極的に行かないと駄目だよね!!

まずは……エクセレンさんみたいに刺激的な事をした方がいいのかな?」

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