鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

23 / 37
嫉心の渦中




第23話

地上へと降り立った翼を折りたたむと地上を滑るかのように駆け抜けながら新たな獲物を喰らう為に動き始めた。悪魔に睨まれ命の危険を感じ取った敵は発狂したかのように銃を乱射するが発射された銃弾を手にした細長い剣のようなメイス、ソードメイスで受けながらその反動と衝撃を利用しながら回転しその勢いでメイスをMSへと炸裂させて装甲をフレームごと歪ませるという圧倒的な破壊力を生む一撃を放った。

 

「な、何だよあれ……!?あんな簡単にMSを……!!?」

 

MWに乗っていたハッシュは呆然とするようにその光景を目に焼き付けていた、突如空から舞い降りてきた天使よりも遥かに慈悲も無くただただ目の前に立ち塞がる敵を屠り抉るだけの悪魔は次々と敵を狩って行く。正に悪魔のような狩人だ。それを横で見ていたデインは思わずバルバトスと三日月さんが帰ってきたんだと呟く。

 

「み、三日月って何時も寝てるあの……!?」

「ああ。間違い無い、見た目は変わってるけどバルバトスを動かせるのは三日月さんだけだ」

「あれが……」

 

戦いは何時の間にか一方的な殺戮へと転じていた、先程まで攻められていて防衛していた筈の此方が何時の間にか相手を全滅させる為に身体を動かしていた。それを見つめるハッシュは気付けば笑いを浮かべながらゾクゾクとした感覚が身体を突き抜けるのを感じながら背筋が熱くなっていた。その力に憧れたのか、MSという存在が発揮する力に憧れたのかは分からない。だがハッシュは獰猛そうな笑いを浮かべ続けていた。

 

「これで最後っ…!」

『うわぁぁぁぁっっ!!!!!!』

 

気付けば最後の一機もバルバトスが殲滅したハーフメタル採掘場へと襲い掛かってきたMS部隊は壊滅していた。それらを目の当たりにした新入団員はその圧倒的な力に憧れたりその強すぎる力に震えたりと様々だったが悪魔たる三日月とその隣に降り立った堕天使、そして幽霊と獅子を見つめ続けていた。

 

 

戦闘も終了し本部へと戻ってきた皆、そこで襲ってきたのは夜明けの地平線団という大規模な海賊である事とそれを依頼した人物をオルガとビスケットが突き止めた。二人はユージンとこれから如何するべきかと会議をしている間に戦闘によって出来た破損などの修繕作業に入っている中久しくドック内に入ったバルバトスを三日月は見上げながらエクセレンの膝に座りながらエネルギーバーを齧っていた。そんな三日月へと雪之丞が近づいていく。

 

「んで如何だったよ、ルナ・ルプスの調子はよ」

「うーん……なんか今まで以上に出力とか機動性が上がってるのに凄い扱いやすい。なんか俺自身の身体?みたいに違和感なく動かせるよ」

「グシオンと同じくガンダム・フレームに対応する為の新型設計の『TD』搭載型だからね。小型化もされてるし燃費も良い、それでいて空を飛べるというね」

「今までのMSの常識を完全にぶっ壊してるな、『TD』っつう代物は」

 

こうなったのも大体エクセレンが即答でテイワズにテスラ・ドライブの契約を結んでしまったせいである。そのお陰かテイワズは圏外圏で更に勢力を伸ばしておりギャラルホルンの正規部隊ですら戦う事を恐れるようになってきている。そんな中でも最も恐れられているのはダントツでエクセレンと三日月だろうが。バルバトスを見上げると背中から伸びている翼にも似ている機関が目に入る、そこに新型『TD』が搭載されておりバルバトスの性能を底上げする結果となっている。

 

「ヴァイスちゃんの改修プランも考えてもいいよって言われたんだけどねぇ~……現状で満足してるしパーツを新しいのに変えちゃえばそれだけで性能はある程度上がるから私としてはそれで満足よ」

「まあヴァイス自体性能はいいからな、余り必要としてないって感じだな」

 

そんな世間話をしているとドックに二人の女性が入ってきた、それはクーデリアとフミタンであった。此方に頭を下げてくる、忙しくて大変と聞いている割には顔色も良く元気そうにしている。

 

「お久しぶりです三日月。エクセ姉様に雪之丞さんも」

「おう久しぶりだな」

「久しぶり、なんかオルガと話してたんじゃないの?」

「はい。お嬢様……いえ私と社長は暫くの間桜農場の方にて避難させていただく事になりましたのでその後挨拶にと」

「あらそれじゃあ2年前みたいに一緒にいられるわね」

「はい、なんだか懐かしいですね」

 

懐かしげな空気になりながらもエクセレンはニヤつきながら三日月を降ろすと暫くクーデリアの護衛がてら桜農場で自分がやっている事を教えてあげたら如何かと提案するといいねそれっとクーデリアを連れて桜農場へと向かって行った、それを見送ったエクセレンは自分のヴァイスの整備を開始する為に動き始めるのであった。

 

「くぅ~はぁ~……あ~お腹すいた」

 

ヴァイスの整備と調整、補給要項などを纏めて団長補佐のビスケットに渡すと食堂に姿を現したエクセレンを皆が囲って自分達と一緒に食べようと誘ってくる。鉄華団の食堂は以前よりも大きく拡張されておりそこでは本格的な調理器具が揃っており何時でも美味しい食事を食べられるようになっている。そんな引き金となったのは『TD』の技術を提供した際の契約金や次々支払われるお金のお陰だった、本部に残りながらオルガ達の帰りを待っていた皆にとってエクセレンの齎してくれた資金のお陰で美味しい食事が食べられるので更に人気が過熱する事になっていた。

 

「アトラちゃん今日のご飯は~?」

「えっとこの前地球からのレシピで見たドネルケバブって料理です!おっきなお肉からお肉を削いでそれを野菜と一緒にソースで食べるんですよ!」

「へっ~因みに何ソースがあるの?」

「ヨーグルトとチリソースです、はいどうぞ」

 

ドネルケバブを受け取って席に着くと早速ソースをかけようとするが手を伸ばそうとした瞬間、周囲の子供達や食事をしに来ていた雪之丞やヤマギ、デインや三日月までもが此方を見つめていた。

 

「え、えっと何かしら皆お姉さんを見つめちゃって……?」

「姉さんは何ソースを掛けるんですか?」

「えっまだ決めてないけど」

『だったらヨーグルトでしょ!!』『チリソースで決まりだろ!!!』

 

と一斉に声が上がった。どうやらこドネルケバブ、以前エクセレンが居ない時に昼食として出た際に大人気となったものらしいがその際に掛けるソースで派閥が出来てしまったらしい。辛くて元気が出て肉の旨みを引き出し食欲も増進するチリソース派と肉の臭みや油を旨みへと昇華させ後味のさっぱりさと酸っぱさが身体を癒すヨーグルト派が誕生しケバブが出る度に言い争いが生まれていた。

 

「姉さんならヨーグルトですよね、あんな外道(暗黒面)でケバブに対して冒涜に等しいソースなんて掛けませんよね」

「ヤ、ヤマギちゃん顔が怖いわよ……?」

「俺もヨーグルト派です、試す価値はあると思いますよ。特に疲れてる時なんか堪りません」

「デ、デイン君もそうなのね…?」

「うっす」

 

心なしか普段会話する時よりも饒舌になっているデインにやや興味が引かれるエクセレンはヨーグルトも悪くないと思いつつ手を伸ばそうとするがそれを三日月が止めた。

 

ケバブ(これ)ならチリだよ。身体が暖かくなって元気が出るんだ、それにこれならチリが鉄板」

「お、おう三日月はそっち派なのね……」

「そうだぜエクセレン。このピリリとしたのが肉と絶妙にあってな、特に体力を使う俺達に取っちゃ最高の栄養食みたいなもんだぜ」

「お、おやっさんまで……」

「兎に角試してみてよ」

 

大好きな姉に自分の好きな味を試して欲しいと三日月は親切心からチリソースを掛けようとソースを手に取った。だがそれに負けじとヤマギもヨーグルトソースを手に取った。

 

「待ってください三日月、姉さんには白くて優しいヨーグルトです」

「チリ」

「ヨーグルト!!」

「チリ」

「姉さんまで邪道に落とす気ですか!!幾らなんでもそれは見逃せません!!」

「それ味が弱いから強い姉さんには似合わないよ」

 

二つのソースの容器を握り締めたまま少しの間エクセレンの皿の上で繰り広げられる小さな戦争、それらを周囲の子供達も応援するようにしていた。だがそれも終焉の一撃が訪れてしまった、戦争をしているうちに思わず強く握ってしまい二つのソースがケバブの上にダイビングしてしまったのだ。

 

「ああっっ……」

「あっ」

 

ヤマギと三日月は自分達の争いの結果を見た、先程までこんがりと焼かれた肉と新鮮な野菜が乗っていたケバブは赤と白のソースが大量に掛かってもう大変な事になっていた。思わず情けない顔でそれを見つめるが二つのソースが混ざったぐらいじゃ倒れはしないだろうとエクセレンは覚悟を決めて食べたが結局素材の味はせずソースの味が口一杯に広がる結果となった。この後もう一皿用意されたケバブだが再び争いが発生したが

 

「おいお前ら何やってんだ?ケバブっつったらガーリックマヨネーズに決まってんだろ」

 

まさかの第三勢力(オルガ)の登場に更に食堂は賑やかになった。がMSに乗せて欲しいとお願いしに来たハッシュはケバブ論争に巻き込まれてしまいエクセレン共々、延々とケバブのソースに付いて語られるのであった。




シノ「次回、鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使 2nd Season

夜明け前の戦い


なんか俺もすげぇヤマギのヨーグルトお勧めされたな

まあ確かにうめえんだけどさ、そこまでのこだわりっているのか?」



鉄華団にも出来たこんな平和な一幕を書いてみたかった。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。