鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

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新しい血へ






第22話

白騎士という意味の名を持つヴァイスリッターとは対照的に黒く並び立つ獅電よりも装甲は厚く機動性よりも装甲による防御力などを重視しているようにも見える。それはハッキリ言って装甲が装甲としての仕事を一切していないヴァイスと並べて見ると改めて理解できる。この場合はヴァイスが異常なほどに紙すぎる装甲なだけなのだが。

 

「ひゃ~カッコいいなゲシュペンストでしたっけ?」

「そうよ。ヴァイスちゃんを基にして作られたMS、まあ汎用性と安定性を持たせる為にヴァイスちゃんとは随分違う作りになってるけど」

「確かに基本的にヴァイスの方が異端って感じしますもんね」

 

仮にヴァイスをバルバトスがメイスで殴ったとするとたった一撃で装甲が砕け散り行動不能になり最悪フレームごとリアクターがイカれるという可能が非常に高い位に装甲がない。それをカバーする為の機動性なのだが世間一般のパイロットからしたらヴァイスなど使ってられない機体だろう。

 

「さてと……これらって動かせるのかしら?」

「流石にまだ無理ですね。実は急かされて持ってきたので最終調整が終わってないんです。取り合えず確認のメンテとOSのチェックが終われば動かせるようになりますから訓練に使うのはそれまで待ってください。後追加モーションデータの準備もお願いします」

「はいは~い」

 

手元のタブレットのデータを確認しながら作業員はゲシュペンストを本部のドックへと運んでいく、テイワズの次期主力機として獅電と争いをしているゲシュペンスト。流石に量産性と操縦性は獅電の方が上回るが性能面ではゲシュペンストが上回る。その為テイワズでは隊長機をゲシュペンストにし他の機体を獅電にするというチーム編成を考えているとの事、それを試験し評価する為に鉄華団にゲシュペンストが搬入される事となった。

 

「うーん今日はMS訓練出来そうに無いわね~地球に獅電送る為にゲシュペンストの搬入を急いで貰ったのが仇になっちゃったわね」

「ありゃ~それじゃあMSの適正テストはお預けっすか?」

「そういう事になっちゃうわね期待させてごめんなさいね~、その代わり……」

 

鉄華団のジャケットを脱ぎ、シャツ姿になるエクセレン。自重しないプロポーションはシャツ越しに主張を行っているので団員達は非常に興奮する。

 

「お姉さんのこの姿で許してね☆」

『勿論ですっっ!!!ご馳走様です!!!!』

 

スケベ心を上手く掴んで人身掌握をするエクセレンとそれを見て呆れつつも上手い事するもんだと心の何処かで尊敬するような注意しようと心するハッシュであった。

 

「オルガ、ゲシュペンスト三機の納入確認したわよ。予定通りに2番隊と3番隊に回すけど良いわよね」

「ああそれで頼む。これで後は歳星からバルバトスとグシオン、本部で使う獅電がくれば戦力は十分に揃う。でかくなっていくのは良いがその分厄介事も増えてきてるからな」

 

提出される書類を見つつオルガは呟いた。鉄華団を設立しテイワズの傘下になる二年、書類仕事や挨拶回り、様々な事を必死に覚えながら鉄華団団長として成長をしていくオルガ。時には名瀬の、時にはエクセレンの手を借りながら苦労しながら自らの成長と鉄華団運営の為の団員教育などにも手を回しながら鉄華団を引っ張って行っている。

そんな鉄華団を良く思わない人間達がいる、海賊や他の企業。海賊などを通じて鉄華団に対して攻撃などを仕掛けてなども来るので自衛の為の戦力はあって困らない。その為に歳星から戻ってきたエクセレンと彼女の愛機を基にして作られた新型MS。これで大分楽になって来たというものだ。

 

「そういえば運び込んだあれは?もう変わってる?」

「ああ、それならシノが新人とかライドと一緒に変えたよ。俺としてはノーマルカラーの方が好きなんだけどな……」

「ですよね~……」

 

エクセレンはオルガから受け取った書類を見て矢張りかと苦笑する。最初に鉄華団でテストとして搬入されたゲシュペンスト一号機はそのまま鉄華団実働一番隊の隊長機とされているがその一番隊の隊長はシノである。書類にある写真には黒ではなくピンクに塗装され頭部には鮫の目がペイントされて三代目流星号となったゲシュペンストの姿があった。彼らしいと言えばらしいのだが……。

 

「そだ姉さん、来週末アドモス商会の仕切りで採掘現場の視察が行われるんだけど俺もそっちに行っちまう。その間の団長代行頼んでも良いか?」

「勿論よ。承ったわよ」

 

胸元の谷間から取り出した腕章を腕に通す、そこには団長代行!と書かれておりそれを見たオルガはまたかと呆れてしまった。

 

「おいおい……んなとこにしまうなよ。というか他所でそれやるなよ?鉄華団が妙な集団だと思われる」

「悪魔と堕天使が同居してるんだから既に妙じゃない?」

「それ言ったら終わりだろ」

 

そんな事がありながら1週間後、鉄華団としては久しぶりのクーデリアの再会と喜びつつその護衛を行っていた。ハーフメタルの採掘現場は火星にとって独立の旗印、それと同時に莫大な利益を生み出す場である。そんな場へと行き鉄華団としての団長として、テイワズの人間として参加するオルガは重要な立場にある。そんなオルガの代行として団長の席に座っているエクセレンはオルガが少しでも楽になるようにと遅くまで仕事を続けているとアラートが鳴り響いた。持っていた通信機からヤマギの声が響いてくる。

 

「何事!?」

『団長代行、ユージン副団長から緊急の発進要請です!!ハーフメタル採掘場に敵が来たとの事です!』

「一番隊を直ぐに上げて!装備はB、それと援護の為にMW隊の3班と4班もMS隊出撃後発進!』

『了解!ヴァイスは如何します!?』

「ヤマギちゃん聞くまでも無いでしょ?当然行くわ!!」

 

笑顔で通信を切るとジャケットを脱ぎ捨てて格納庫へと走って行く、途中慌しく動く団員達をすれ違いになりながらも格納庫へと到達するとそこには何時ものように鎮座するヴァイスの姿がある。思わず二年前、CGSの時にヴァイスを起動した時の事を思い出しながらヴァイスへと乗り込み通信を一番隊へと繋ぐ。

 

「一番隊聞こえるかしら?発進後リアクターと『TD』と出力は全開で採掘場まで行くわよ!飛ばせば直ぐに着けるわ!!」

『了解!それと姉さん、一番隊じゃなくて流星隊だぜ!!』

『流星隊って……』

『俺達そんな名前なのかよ……』

 

シノのそんな発言でダンテらのテンションがやや下がりながらも出撃していくヴァイスら、外に出ると同時にテスラ・ドライブよりに浮かび上がり一気に加速し空へと舞い上がって行く。ヴァイスを戦闘に後に流星号、獅電と続いていく、一直線に採掘場を目指して飛んでいく。

 

『ユージン3分、いや2分待ってくれ!そうすれば到着する!!』

『分かった!でも早く頼むぜ!!』

 

現地への連絡をしながらもエクセレンの瞳にはまだ見えていない筈の採掘場近郊での戦いの灯火が見えるようだった、ポツリポツリと明るく照らされていく死の光。それを拭う為にオクスタンランチャーを手にし構える。

 

「さあ行くわよ皆!!」

『おう!!』

 

 

現場ではMW隊同士による激しい砲撃が行き交う中、遂に敵側のMSが姿を現した。マン・ロディと違い機動性と汎用性を重視ていると思われるガルム・ロディが躍り出ては鉄華団のMW隊へと銃撃を行い始めた。MW同士とは違った死の恐怖が一気に襲い掛かってくる中それを払拭するように到着した流星隊とヴァイスは戦闘を開始した。

 

「オラァァァァッッ!!!!」

 

シノのゲシュペンスト、いや流星号の左腕が唸りを上げる。その腕に装備されているのはプラズマを纏い高熱化し激しく音を立てていく。敵をそれを危険と判断し後退しようとするがそれよりも早く加速してタックルを喰らわせるとそのまま転倒させ仰向けになったガルムの胸へとプラズマ・ステークを突き立てた。高熱化したステークはナノラミネートアーマーを突破して内部へと潜り込むと連続的に内部へと攻撃を打ち込み敵機を撃破する。

 

「シノの野郎ゲシュペンストを上手く乗りこなしやがって羨ましいんだよ!!」

「全くだぜ、俺だって乗りたいのによぉぉ!!!」

 

負けじとダンテとデルマの獅電は互いに連携を取りながら敵を薙ぎ倒していく。ダンテは相手の得物を破壊するとデルマが通り過ぎるように脚を払い体勢を崩しそこへダンテが一撃を加えて確実にコクピットを潰していく。確実かつ正確な連携で相手を倒す二人は次の敵へと向かうがその視界の端で自分達の背後を狙おうとした敵が空からの攻撃を受けて爆散するのが見えた。

 

「うちの弟達に手出しはさせません事よ~!!」

 

鉄華団の堕天使、悪魔と同じく恐れられている存在であるヴァイス。どれだけ激しく動こうが狙われたが最後全身を撃ち抜かれ動けなくなった所を必殺の一撃が襲う。そんな噂が広まっている、それは事実であり各部の間接を遠距離と高機動を両立させたまま狙撃し止めをさすというキチガイのような所業を持って相手を打つ。エクセレンは酷く恐れられているがそれを撃つ為に敵もかなりの戦力を投入しているらしい、新たなリアクターの反応が8もあった。

 

「美しいって罪よね~、追加入ったわよ~」

『おうどんどん来やがれってんだ!!』

『おいシノお前は阿頼耶識あるから良いだろうけどこっちはガスの消費とかきついんだぞ!!』

『そうだ増援とかたまったもんじゃねえよ!!?』

 

という声が響いた時、夜明けが訪れ始めた空から一機のMSが落下するように此方へと向かって来ていた。片腕に得物を携えながら自分達へと向かってくる敵を全て薙ぎ払い潰す悪魔が翼を広げながら降臨する、天から地上に向けて銃口を向けながら降りてきたそれは瞳を輝かせ敵を睨み付けた。

 

「姿勢制御システム、テスラ・ドライブ、スラスター全開」

 

地上から敵へと喰い付くかのように飛びかかり一機のガルム・ロディへと得物を貫通させると顔を上げた悪魔はギラリと周囲を睨むと得物を構え、突撃しながら姉に言葉をかけた。

 

「姉さん、ただいま」

「おかえりなさい、三日月」

 

鉄華団の堕天使、エクセレン・ブロウニングとヴァイスリッター。鉄華団の悪魔、三日月・オーガス、そしてテイワズによって改修され生まれ変わったバルバトス・ルナ・ルプス。今、最強の戦力が敵へと襲い掛かった。




三日月「次回、鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使 2nd Season

嫉心の渦中



やっと火星に帰って来れた、取り合えずこいつら片付けよう。

これで全滅させたら姉さん、ギュっとしてくれるかな?」

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