「バディライド!」
「「アギラ!」」
・・・。しかしなにもおこらなかった!
「ダメだ。」
「ダメだね・・・。」
「うーん、なにが足りないんだろうね?」
騒動から一夜明けて、GIRLS本部のトレーニングルームに一同は集まっていた。本日の主役は昨日覚醒した2人。その2人を囲んで祝賀会・・・ではなく、実験が行われていた。少なくともミクは祝賀会のつもりだったらしいが。
「一度起動できたってことは、なにか切っ掛けがあるはずだよな?」
「シンジさんはどんなことをやったんですか?」
「えっと・・・特に何も?強いて言うなら『がんばって。』って言っただけですけど。」
「じゃあ、もっと熱く言ってみればいいんじゃないかな!」
「もっと、熱く・・・。」
「頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるってやれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ!そこで諦めるな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る北京だって頑張ってるんだから!」
(コピペ乙、です。)
「どうだ?頑張る気持ちになってきたか?」
「いえ、全然。」
「なんかお腹すいちゃったし、ご飯食べ行こうか?粉もん!」
「そこはお米じゃないんだゴモたん!」
などと、真面目なのか不真面目なのかわからない問答をしていると、そこに赤い髪の非常にかわいい女の子がやってきた。ものすっっっっごくかわいい。
「みなさ~ん!シンシンの検査結果が出ましたよ~!」
「シンシン?」
「なんかパンダみたい。」
この赤くてぴょんぴょんしているかわいい子はピグモンさん。シンシンというのがシンジの事なのは言うまでもない。スチール星人の怪獣娘がいれば、このネタでもう少し引っ張ってたけどやめた。
「まずですね~、シンシンは怪獣娘ではありません!」
「知ってる。」
「だって男だし。」
「でも、身体測定の結果から推察されるに、『怪獣娘が人間の時』に相当する身体能力があるようです。昨日の怪我ももう治ってますし。」
「えっ、そうだったの?じゃあシンジさん何者?」
「少なくとも、一昨日までは普通の人間だったよ。こうなったのは、今日か昨日のこと。」
「やっぱり、昨日のことが影響しているんじゃないかな?」
「『バディライド』ですか・・・。」
『バディライド』、たしかにシンジはあの時そう言った。それによってアギラは超絶パワーアップを成し遂げ、単身巨大なシャドウビーストを倒したのだ。では、あの時シンジの身には何が起こっていたのか?
「あの時、僕はアギさんと繋がっているような感覚だった。」
「ボクもそう思ってた。背中を押されるような、頼もしさがあった。」
「なるほど、繋がりか。」
「つまり、アギちゃんとシンちゃん繋がって、お互いに力を与え合ってたってことだね!」
「僕、そんな大それた力なんて持ってないよ?それこそ、バディライザーの力なんじゃないかな?」
それとも、このカードの力なのか。怪獣の描かれたカードを取り出す。
「資料映像で見たことがあります。それが、『実物の』アギラさんですね。」
「うん、がんばってって言った時、このカードが現れたんだ。」
「おー!なんかかっこいいじゃん!あたしもほしー!」
これとは別に、まだ白紙のカードが入っているが、これらもそのうち変化するのだろうか。
「それから、シンシンの身柄はGIRLSが預かる事となりました!」
「へー、そうなんだ。」
「まあそうなりますよね。」
「仕方がないね。」
「待って。」
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「まさか拒否権すらないとは。」
「事態が事態ですから。」
「GIRLSにいればバイト代も出るし、一石二鳥だよ!」
「それはありがたいけど、それとこれとは・・・。」
と、口では言っているがそこまで反感は持っていない。納得のいく理由と説明をもらったから。
「任されたからには、まずこいつの使い方を解明しなくっちゃね。」
「元々シンジさんのものとはいえ、自由に扱わせてもらえてよかったですね。」
「うん、遺産としてどうかと思ってたけど、ちょっと気に入ったよ。ちょっとだけね。」
シンジには、バディライザーを使用して、怪獣娘たちのサポートを行うことを依頼された。原理がどうあれ、戦力アップになることは間違いないのだから、これを放っておく手はないだろう。
「さっそくですが、シンシンと行動を共にするパートナーを決めたいと思いま~す!」
「はいはーい!あたしやりたいあたしやりたーい!」
「痛い、痛いからそんな掴まないで!」
「一緒に行動するからには、体力と根性もしっかりつけてもらわねえとな!オレがみっちり鍛えてやるぜ!」
「だから痛いって!」
いくら少し強くなっているとはいえ、肉体派2人に組み付かれちゃたまらない。既に両方の腕がギリギリと悲鳴を上げている。
「ちょっと2人とも、それじゃあシンジさんの体がもちませんよ!」
「お?ウィンちゃんも立候補するの?」
「いえそういうわけではありませんが・・・順当にいけばアギさんが適任なんじゃないかなと思いまして。」
「ボクぅ?」
「たしかに、今一番近いのはアギアギかもしれないですね~。ね?アギアギ。」
「それはそう・・・かもだけど、シンジさんは?」
「え?僕は・・・ちょっ痛いから!」
ひょんなことから、世の男どもが涙を流して羨むシチュエーションに出くわした。ここにいる美少女6人から、一人をパートナーとして選べとお偉いさんが言うのだ。それもここにいるだけでなく、選択肢を広げればまだまだ増える。うわぁ、夢が広がりんぐ。
などと、無責任なことが言えるのは他所の人間だけ。当の本人はと言うと、あまりの事態に色を好むどころか困惑の色しか出ない。誰を選んでも、他の人から恨みを買ったりするんじゃないのか。選ばれた方も選ばれた方で内心嫌なんじゃないのかとか。つまり『誰にしようかな?』ではなく『どうすればいいんだ?』というのが目下の悩みだ。
と、そんな様子を後ろから(´・~・`)みたいな顔をして窺っていた人物が、シンジの頭に飛びついてアピールをしてきた。
「私がやるー!私がシンちゃんの面倒みるー!」
「ゴモたん?!」
「ねね、いいでしょう!アギちゃん!」
「う、うん。ゴモたんがやりたいっていうのなら・・・。」
「やったー!」
「お゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
チョークスリーパーだとかアイアンクローだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえホールディングを味わい、今日一番の叫びをあげるシンジだった。
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数日後、とあるイベントホールでの一幕。
「入場待機列はこちらでーす!4列になってお並びくださーい!」
「走らないでくださーい。」
ミカとの共同生活(?)が始まった。ミカはゴモラ、もといゴモたんとしてアイドル活動に勤しんでいるので、そのマネージャーのようなお仕事が日課となった。
「でも結局アギさんも一緒なんだね。」
「ゴモたんに何故か気に入られちゃってて・・・。」
ゴモたんはその愛くるしいキャラとはっきりとした明るい性格で人気を博している。その待機列を捌ききってひとまずは一段落して、休憩室でお昼を食べている。
「何人か女性のスタッフも見かけたけど、あれも怪獣娘さんなのかな?」
「そうだね、GIRLSのロゴを持ってる人はみんな関係者だよ。」
「怪獣娘さんからも人気なんだな。」
すげぇよミカは。心の中でつぶやいた。
すると一つ疑問がわく。僕っていったいミカのなんなんだろうか?接点は幼馴染で、今はGIRLSの見習いアルバイトとして一緒に仕事をしているというところ。
「僕のとりえってなんだろう?」
「何突然?」
そもそも今ここにいられるのも、バディライザーを動かせたという一点だけ。そしてバディライザーを一番に手にできたのも、父からの遺産だからということだけ。
「いや・・・僕以上にバディライザーを使いこなせる人間もいるんじゃないかな?って。」
ありていに言えばこうだ。
「えっと・・・。」
「ごめん、変な事言ったな。忘れて。」
「エビフライもーらい。」
「あ゛っ。」
「ゴモたん、いたの。」
最後にとっておいたエビフライを、横から掻っ攫われてしまった。
「なんてことを・・・。」
「変なこと言うシンちゃんへの罰だよーだ。」
「聞いてたんだ。」
「そりゃあ、いやでも聞こえるよね。こんなに大きな独り言されたら。」
「痛い痛いぐりぐりするな。」
右手の指でシンジの頬を刺しながら、いやみったらしく言って見せるが、そこまで不快感は感じない。
「なになに?私の人気に嫉妬しちゃったとか?それとも幼馴染が誰かにとられちゃう~とか思ってたの?ねぇねぇ?」
「そんなんじゃないっての!」
「ほーん?じゃあなぁに?」
「シンジさん、バディライザーがうまく使えなくて不安なんだと思う。あれから一回も成功してないから。」
そうなのだ。あれから毎日暇を見つけては練習を繰り返してはいるのだが、一向に上手くいかない。
「そんなことかぁ。大丈夫だって、一回出来たんだったらその内またできるようになるよ!まだ数日しか経ってないじゃない。」
「それはそうかもしれないけど、もし1年経っても出来なかったらと思うと・・・。」
「その時は、その時までに別の何かを見つければいいんじゃないかな?道って一つだけじゃないよ?」
「ミカ・・・。」
やっぱりすげぇよミカは。
「お?惚れたかな?いやーゴモたんったら罪作りなんだからもー!」
「自分で言うな自分で。」
「ってわけで、シンちゃんの悩みが解決したところで、一発ギャグやってみよー!」
「うぇええ?」
あぁ、この流れもこの数日間何度も見て来たな。ミーティングが終わったら一発ギャグ、仕事が終わったら一発ギャグ、寝る前にも一発ギャグ、もはやお馴染みの展開だ。シンジもこの流れに乗るようになった。
「シンちゃんが!」「アギさんが?」
「あれ?」
「わーい引っかかったー!自分は指名されないって安心しきってたー?その油断が命取りー!」
「は?へ?」
「シンジさん、ファイト。」
「え?いや、え?」
「ってゆーわけで!シンちゃんこの後のステージの前座よろしくね!」
「ちょっ、おまっ。」
この後、シンジが3分を懸けて考えた命がけのギャグは、わずかに会場の空気和ませることに成功した。その後、楽屋ではスプーンが思いっきり叩きつけられる音が響いた。
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「そこのあなた、ちょっといいかしら?」
「はい?」
楽屋でひとしきり泣いた後、後片付けの為に廊下に出て少し歩いたところで、後ろから声をかけられた。振り返れば、・・・なんというか青い女性がいた。GIRLS関係者かな?
「実はお話があって・・・。」
「あっ、御免なさい、セールスはお断りなんです。」
「ちがう!ちゃんと許可をもらって通ってきているわ・・・。私は、こういうものです。」
と、名刺をとりだしてきた。名刺は受け取ったら読み上げて確認するのが社会人のマナーだ。
「私立探偵事務所『ブルーコメット』の、天城ミオさん?」
「以後、お見知りおきを。」
GIRLSの所属ではない・・・けど、外注かなにかの人なのかな?
「あなたも、怪獣娘さんなんですか?」
「ええ、そうよ。今日はあいさつに来ただけだから、また会いましょう。」
「どうもこちらこそ。」
それだけ言うとミオさん去っていった。本当に、顔合わせしに来ただけだったんだろうか?ひょっとしたらミカやアギさんが何か知っているかもしれないし、後で聞いてみよう。
「と、はやいとこ戻ろうか。また一発ギャグさせられちゃかなわん。」
もらった名刺は本人の前ではしまわないのが社会人のマナーだ。名刺入れに入れるべきだが、生憎持ち合わせてはいない。GIRLSの社員証の中に挟んで、廊下をかけて行った。
「濱堀シンジ、あなたは怪獣娘の希望の光か、それとも底知れぬ闇・・・かな?」
天城ミオがそう問いかける。答えを知るものは、誰もいない。
レッドキング「さすがダークネスファイブのリーダーだ!」
ベリアル「や め ろ 。」
一か所「これがやりたかっただけだろ」ってネタがあるけどわっかるっかなー?
なお、今回小説版を読んでいないために、キャラ付けに不明瞭なところがあるにもかかわらず。ベムラーさんを出してしまったことを深くお詫び申し上げます。
二次創作には原作への深い理解と愛とリスペクトが伴わなければならないという己のポリシーを曲げてでも、ここでベムラーさんを出すべきだと思ったことをここに懺悔します。可能な限りセリフは最小限にとどめて、キャラ崩壊などを起こさせないように努めます。
小説版単行本化はよ。