怪獣娘~ウルトラ怪獣ハーレム計画~   作:バガン

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 一応ここから2期以降のお話になる予定。シンジが海外留学に行っている間に、2期の出来事が起こったという感じで。多少お話は矛盾するけど、気にするな!


激ファイト!?シンジVSガッツ星人

 「シンちゃ~ん・・・。」

 

 愛しの幼馴染が旅立ってから数か月経った。その残り香を求めて、毎日のようにシンジの自室にミカはお邪魔している。

 

 「すんすん・・・はぁ・・・。」

 

 こうして定期的にシンジ成分を吸収して鋭気を養っている。自分が思っていた以上に、幼馴染に依存していたと思い知らされる。

 

 「よっし・・・。」

 『ゴモたん、またシンジさんの部屋いるの?』

 「うん、今日もシンちゃん成分補充完了!」

 『そんなことするくらいなら、通話すればいいんじゃないの?』

 「それとこれとはちょっと違うんだよぉ・・・。」

 

 ロクに通信網の発達していない時代ならともかく、今は人工衛星越しに繋がる時代だ。実際、現状報告がてらシンジからの通信は定期的に行っている。つまり、離れていても顔を合わせる機会はいくらでもあるのだ。

 

 「シンちゃんが無事に帰って来るまで、私はシンちゃんとは連絡とらないって決めたの。」

 『本当は、いざ通信しちゃうと気丈に振舞ってるのにボロが出そうだからしたくても出来ないだけじゃないの?』

 「ほーほー、アギちゃんは会心のネタが出来たからぜひともみんなに見せたいと、そう言いたいんだね?」

 『そうは言ってないけど、どうせいつでもそうさせるつもりでしょ?」』

 「わかってるならいいんだよ。」

 

 「そ、わかってるならいいんだよ。私は大丈夫だよ!それよりも、シンちゃんの方は何か言ってた?今すぐゴモたんに会いたいよー!とかミカがいなくて寂しいよー!とか?」

 『ううん、淡々とその日あったこととかを報告してくるだけ。録画映像なんじゃないかって疑うぐらいシンプルだよ。』

 「そっか・・・でも、別に変わったところとかはないんだよね?怪我してたりとか。」

 『うーん、絆創膏とかは貼ってたよ。特訓だかなんだかで。けど病気とかはしてないと思う。』

 「そっか・・ならいいんだけど。そろそろそっち戻るね。」

 『うん、今日もまたイベント頑張ってね?』

 「もっちろん!アギちゃん前座の一発芸考えといてね!」

 『残念、今日は僕キングジョーさんのイベントに行くんだ。』

 

 プツッ、と通信を切って立ち上がる。ここでジーッとしててもドーにもならない。シンちゃんが帰ってくるまで、ボクはボクの役割を全うするよ。

 

 「じゃあね、行ってくるね。」

 

 無人の部屋にそう言い残して、ミカは小走りで会場へと向かう。

 

 

 

 

 「うーん・・・。」

 「どしたのアギちゃん?今日のお昼はファミレスにするか牛丼にするか悩んでるの?」

 「そんなんじゃないよ、シンジさんのこと。」

 「病気とかはしてないんですよね?」

 「病気じゃないんでだけど・・・ホームシックにはなってるかも。」

 

 シンジは心情が顔に出るタイプだった。そうでなくとも、鋭いアギにはまるっとお見通しだが。

 

 「結局似た者同士ってことだよね、2人とも。」

 「でも、相変わらずのようで安心しました。」

 「そうだね、帰ってくるのが楽しみだな。」

 

 「アメリカと言えば、キングジョーさんもアメリカから来たんだよね?」

 「そういえば、そうでしたね。GIRLS発足前から日本にはいたみたいですけど。」

 「そのキングジョーさんと今日会うんだよね・・・どんな人なんだろう?」

 「がんばってねアギちゃん!」

 「がんばってください!」

 「うん、ちょっと緊張してきたかも。」

 

 この日、アギラはキングジョーさんのイベントの警護にあたり、そして新しい物語がスタートすることを、今はまだ誰も知る由もなかった。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 その数か月後、

 

 「いっただっきまーす!!」

 「日本に帰ってきて、一番最初の食事がコレ(・・)か。」

 「牛丼が好きなんですぅ!」

 

 シンジは日本に帰国し、最初の昼食をとっている。牛丼一筋新発売~♪そんな間抜けな歌が聞こえる店内で、久しぶりの大盛り・つゆだくに舌鼓を打っている。

 

 「なんせ全日本牛丼愛好会の会員ですから。」

 「そんなのあるのか?」

 「レッドさんとミクさんも入ってますよ。」

 「そうなのか・・・。」

 「向こうではスライス肉の汁かけライスなんて食べられませんでしたから。」

 

 別段食べ物に困っていたわけではなかったが、週に一度はこの味を食べなければ生きていられない体になっていたらしい。

 

 アメリカにも牛丼屋はあるにはあったが、やはり味付けは日本のものに敵わない。日本人の舌だからかな。

 

 「すいませーん、追加注文でカルビ丼お願いしまーす。」

 「まだ食べるのか?」

 「なんかやけにお腹すいちゃって。」

 「そうは言うがもう5杯目だろう?最初っからメガ盛りを頼めばよかったんじゃないか?」

 「ネギだくやつゆ切りも食べたくって。おっキタキタ。」

 

 ちょっとリッチに、カルビ丼。カルビ丼のカの字はかっかっか~♪と店内BGMが変わった。

 

 「うん、これもイイな。」

 「本当によく食べるもんだな。」

 

 待ちぼうけをくらうベムラーさんも、何か追加注文しようかと思ってメニューを開いたその時、外で異変が起こる。

 

 「おっ?爆発音。なんか懐かしいこの感覚。」

 「いくらなんでも平和ボケしすぎじゃないか?」

 

 外を見れば、ビルの向こう側で煙が上がっている。

 

 「またシャドウかな?向こうでは全然見なかったけど。」

 「すぐGIRLSが来ると思うが、我々も急ごう!」

 「よーっし、修行した成果をみせてやるぞ!」

 「うむ、その意気だ!」

 「あと3杯食べたら。」

 「もういいだろ!」

 

 首根っこを掴まれ、チョーさんの待機する車に押し込まれると、間もなく車は発進した。

 

 「・・・お金!」

 「あっ!」

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「あやうく食い逃げになるところだった・・・。」

 「もっと落ち着いて行動してくださいよ、大人なんだから。」

 「誰のせいだ誰の!」

 

 大急ぎで現場に駆け付けると、多くの人が苦しんでいるようだった。

 

 「人?!」

 「これは・・・シャドウミストか。」

 「ちょっとだけ報告で聞きました。人に取り憑くタイプだって。」

 「人だけではなく、怪獣娘にも取り憑くんだがな。とにかく、気絶させてシャドウミストを追い出すんだ。」

 「かしこま!」

 

 トランク開けて中のキャリーケースを開けてさらに黒いガンケースを開けると、銀一色のリボルバー型拳銃を取り出す。

 

 「それは?」

 「スーパーガンR、試しに作ってみたんです。

 「光線銃ならもう持ってるだろう?」

 「向こうで本物の拳銃を撃つ機会があって、リボルバーが気に入ったんです。」

 

 これは実弾ではなくショックガンの一種で、弾薬の代わりに電池を6発弾倉に込める。

 

 「よっしと・・・さあいこう!」

 

 さっそくこちらの存在に気づいたミストに取り憑かれた人々が向かってくる。シンジは耳の後ろに人差し指をやると、そこからメガネのつる(・・)が伸びて、目の前に青いレンズが浮かび上がる。

 

 「新しいメガネも作ったのか?」

 「ひとついりますか?」

 「生憎だが目はいい方だよ。」

 「残念、ベムラーさんメガネ似合いそうなの、にっ!」

 

 向かってくる人の脚を素早く撃ちぬく。3発撃って3人倒れた。まあ及第点だろう。

 

 「いい腕だな。」

 「目がよくなったので。」

 

 S.G.Mにも改良を加えた。通信機能などはついていないが、周囲には見えないレーザーサイトで射撃を補佐してくれている。

 

 「さて、銃はこんなもんでいいか。次は格闘だ!」

 

 バッ!と上着を脱ぎすてると、こちらも新調したS.R.Iスーツを見せつける。上半身が青で下半身が赤、両腕にはヒレのような突起があり、これが風を斬る。さらに左胸に外付けのペースメーカーがついている。逆三角形型の青いランプが、生命維持装置のエネルギー残量を示す。腰の後ろにはバックパックが巻かれている。これも使いたいものを瞬時に取り出してくれるスグレモノだ。

 

 「とぉらっ!」

 

 まず一人、向かってくる相手にフライングニードロップを浴びせて沈める。続けざまに、右から殴ってくる腕を捕まえてロックし、反対側から向かってくる相手に投げつける。

 

 「よいそっ!」

 

 殴りかかってくる相手をかがんで躱し、お返しに足払いで転ばせる。今度は二人続けてやってきたので、一人目を跳び箱のように飛び越え、そのままドロップキックで後ろのやつを沈める。

 

 「ちょいさっ!」

 

 転がりながら近づいて、足払いで跳び箱を倒し、最後の一人は腕のフリップでサマーソルトキックを放ち、顎を蹴り上げながらで起き上がる。

 

 「おわりっ!」

 「7点。」

 「低くない?」

 「ちょっとやりすぎじゃないか?ゴモラだってもうちょっと手加減すると思うぞ。」

 「ぐぬっ・・・たしかに、サマーソルトはちょっとやりすぎだったかも?ごめんなさい。」

 

 気絶している相手に謝ってもしょうがないが。やれやれとベムラーさんは首を振る。

 

 「・・・遅かったか。」

 「ん?あなたは・・・。」

 

 腰まで伸びた長い髪に、赤いマフラー。キュロットのようなミニスカートに縞々のタイツ。そしてぴょこんと跳ねたアホ毛がチャームポイント。

 

 「ガッツ星人さん?おひさしぶりです。」

 「・・・。」

 

 あいさつしたのにあいさつが返ってこない。それどころか、怪訝そうにこちらの様子を窺ってきている。

 

 「あの、僕です、濱堀シンジ。アメリカ留学から今日帰ってきたんです。覚えてないですか?」

 「・・・あなた、」

 

 「おーい!」

 

 やっと口をきいてくれた、と思ったところで誰かがやって来た。ただし誰か、という表現は適切ではない。よく知っている声だ。

 

 「ガッツさーん!まーたひとりでやってんのー?」

 「一体誰に似たのかしらね?」

 「もう、いいじゃんそのことは!」

 

 ドヤドヤとやってきた一団を見て、シンジも声を上げた。

 

 「みんな!」

 「おー!シンジさん!シンジさんじゃん!」

 「帰ってきたんですね!」

 「うん、さっきね。そしたらシャドウが出てきて。」

 「おー!なんかシンジさんおっきくなってんじゃん!腕カチカチじゃん!」

 

 本当はGIRLS本部で再会する予定だったけど、こんなところで会うとは。懐かしいみんなの姿を見まわしてみる。ミクさん、ウインさん、アギさん、レッドさん、エレキングさん、それにガッツさん・・・ん?

 

 「シンちゃああああああああああん!!!」

 

 一足遅れてミカもやってきた、が、シンジの興味はそっちにはない。

 

 「おっすミカ。」

 「ずわぁああああああ!!」

 

 駆け寄ってくる幼馴染を華麗にスルーして、ガッツさんに近寄る。

 

 「あれ、こっちにもガッツさん?あっちにもガッツさん??」

 「ああ、あっちは私の分身・・・なんだけど、色々あって双子?みたいな関係なんだ。」

 「へー、ガッツさん双子だったのか。」

 「うぅ・・・シンちゃんが冷たいよう・・・アギちゃんなぐさめてぇ・・・。」

 「よしよし。」

 

 とまあ、なんやかんやで再会した一同は安心して帰路に就いた。

 

 「・・・。」

 「どうかしたの?」

 「いや・・・。」

 

 ただ一人、黒い方のガッツさんは除いて。

 

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 「おまたせー、報告済んだよ。お土産も渡した。」

 「おつかれ-、私たちにお土産は?」

 「ちょっと待ってね・・・。」

 

 スーツケースに詰め込んだみんなへのお土産をそれぞれ配る。特にお世話になっている皆には、それぞれ趣向を凝らしたものを選んだつもりだ。

 

 「お~!カーボーイハット!ウェスタ~ン!」

 「ミクさんに似合うと思って。」

 「コーヒー豆・・・。」

 「旅立つ前、梅昆布茶をアギさんくれて本当助かったよ。」

 「メイプルシロップ?」

 「カナダにも行ったので。パンケーキ好きでしょうエレキングさん?」

 

 「あっ、しまった。」

 「どしたの?」

 「ガッツ星人さんの分、増えてるとは思わなかったら・・・。」

 「あー、別に私の分は気にしてくれなくていいよ?」

 「え、でも・・・。」

 「いいからいいから、それ、あの子にあげて?」

 

 ガッツさんに渡すつもりだった小箱を、壁にもたれかかりながらこちらを見ていたもう一人のガッツさんのところへ持って行く。

 

 「ガッツさん、これよかったら・・・」

 「フンッ。」

 

 ぺいっ、と差し出された小箱は片手で弾かれて飛んでいく。

 

 「ちょっとマコ!」

 「えぇ・・・。」

 

 飛んでいった箱をガッツさんが受け止め、もう一人のガッツさんに詰め寄る。

 

 「ねぇ、いくらなんでもこれはないんじゃない?何が不服なのよ?」

 「あんたには関係ないことよ。」

 「なにぃ?」

 「2人とも落ち着いて・・・。」

 「どうどうどう。」

 

 喧嘩をはじめる2人に、慌ててアギさんとミカが仲裁に入る。

 

 「あんた、今すぐ私と戦いなさい。」

 「はい?」

 「まーまーマコちん、シンちゃん帰って来たばっかで疲れてるだろうから、ファイトならまた今度でね?」

 「ダメ、今すぐよ!」

 「ちょっとマコ、いい加減にしなさいよ!」

 「大丈夫、僕なら大丈夫ですから!今すぐ行けますって!」

 

 いてもたってもいられず、シンジは声を上げる。羽交い絞めにされていたもう一人のガッツさん・・・ややこしいのでマコさんということにしておくが、マコさんは絞めを振りほどいて、シンジに告げる。

 

 「逃げたりしたら、承知しないからね?」

 「・・・。」

 

 それだけ言うと、マコさんは先にサロンを後にした。それを追うようにシンジも歩き出すが、その手をミカに掴まれる。

 

 「シンちゃん、疲れてないの?私が代わりに行こうか?」

 「平気だよ、それにそんなことしたら、逃げたことになるんじゃない?」

 「ごめんね、シンジ。あの子気難し屋なんだけど、本当は悪い子じゃないんだ。」

 「わかってます。感じるものはガッツさんと同じものですから。」

 「全く誰に似たのかしらね。」

 「もー、言わないでよ!」

 

 そういって再び歩き出すと、自然とミカの手も離れていく。

 

 「シンちゃん・・・なんか変わったね。」

 「変わったって?」

 「なんか、ドライになったっていうか、冷たい。」

 「向こうで色々あったんじゃない?人は変わるよ。」

 「それだけならいいんだけど・・・。」

 「・・・。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 さて、場所は変わってアリーナ。本来大怪獣ファイトが行われるのは、絶海の孤島のジョンスン島だが、普段トレーニングや模擬戦にはこちらの人里離れたアリーナが使われている。そういうことにしておいて。

 

 「なんで戦う必要があるのかな?」

 「力を見てみたいとか?マコちゃんにとっては、シンちゃん初対面になるし。」

 「そんな戦闘狂なキャラでもないだろ?」

 

 観客の見守る中、戦闘開始のゴングが鳴るまで当事者の二人は動かない。

 

 「確認するけど、」

 「なに?」

 「本当に僕が相手で間違ってない?本当はレッドさんとかとじゃなくって?」

 「あなた以外に誰がいるの?」

 「そう・・・。」

 

 まあ確かに、シャドウミストの取り憑かれた人間が相手じゃあ、シンジの力試しには力不足だった。なお『役不足』という表現は、力に対して役目が軽すぎることを言う。よって、こういう場面では力不足という言葉が正しい。

 

 「それにしても、随分ごてごてした格好ね。そんな重装備で山登りにでも行くの?」

 「なーに、ほんのピクニックさ。バックパック(お弁当箱)背負ってね。」

 

 カーン!試合開始だ。合図とともにガッツさんはゆっくり距離を詰めながら、光弾を発射して牽制する。対してシンジは落ち着いてS.G.Mを起動してから左手でスーパーガンRを構え、ジグザグに動いていく。ガッツさんの指先をよく見て、どっちを狙ってくるか的確に判断して躱す。

 

 「動きは格段に良くなってるな。」

 「シンちゃん基礎を固めるのは得意だからねー。」

 

 ガッツさんもあくまで牽制とはいえ当たるようには撃っているはずだったが、一向に当たらないことで痺れを切らしたのか足を速くして近接戦闘に持ちこみにかかる。対するシンジは、向かってくるガッツさんに冷静に銃口を向けてトリガーを二回引いて、ガッツさんは二回だけ拳を振るい、足を止めない。

 

 「はぁっ!」

 「ふっ!」

 

 ガッツさんの右ストレートをシンジは右手でいなしつつ、今度は至近距離から発砲する。弾丸を最低限の動きで躱したガッツさんは、その流れでスピンキックを放つ。

 

 「ぬぇいっ!」

 「ちっ。」

 

 上半身を後ろへ大きく反らせ、リンボーダンスのような姿勢でキックを躱すと、フリーな状態のガッツさんの背中へ弾丸を叩き込む。

 

 「ふんっ。」

 「ぐっ!」

 

 ガッツさんはさらに姿勢を低くし、コンパスのようにその場でターンして足払いを放つ。よけきれずに足元を掬われたシンジは背中を地面に叩きつけられる。その腹に目がけて断頭台のような脚をガッツさんは振り下ろす。

 

 「ちいっ!」

 「ふん。」

 

 間一髪、横に転がってクリーンヒットを免れる。シンジは掌でスーパーガンRをクルリと一回転させ、手首の部分に留める。これで互いに素手の状態だ。

 

 「はぁっ!」

 「はっ!」

 

 そこからは格闘技の応酬が始まった。ガッツさんは目にもとまらぬ拳のラッシュを放ち、シンジはそれを躱しきれずに何発かもらう。しかしただ負けているシンジでもなく、一瞬の隙をついて腕をとり、脇固めをしかける。

 

 「なにっ!?」

 「こっちよ。」

 

 しかし、腕を捕えたはずのガッツさんが忽然と姿を消し、シンジの真後ろに立っている。ガッツ星人もゼットンと同じく、瞬間移動の持ち主なのだ。悠長に向き合っていては相手の思う壺だと直感したシンジは、手首に固定していたスーパーガンRを持ち直し、声のした方向に早撃ちを決める。

 

 「遅い。」

 「ぐっ!」

 

 しかしシンジの反応するより一歩速く、再び瞬間移動シンジの背後の背後・・・つまり真正面をとって逆に光弾をぶつける。背中を焼かれて転がるシンジのその先に、再び瞬間移動して頭を踏みつける。

 

 「あちゃー、完全にやられちゃってるよ。」

 「あれ、大丈夫なんですか?」

 「あれくらいで参るやつじゃないぜ、以前からな。」

 

 前にマコさんに同じようなことをされたことのあるアギさんとしては見ていて辛い物もある。だがやられているということは、同時にチャンスもそばにあるということでもある。

 

 「やられてたまるかっ!ドラゴンスクリュー!」

 「くっ!」

 

 隙をついて脚を掴み、ガッツさんを一回転させて今度はシンジが上に立つ。

 

 「スピニング・・・くそっ!」

 「甘いよ。」

 「そこだぁっ!」

 「なにっ!?」

 

 シンジは得意のスピニングトーホールドを極めようとするが、瞬間移動で逃げられるが、それも承知の上のこと。今までのパターンから予測して、背後を何も見ずに銃弾を放ち、それは見事当たった。

 

 「おお、ちょっとビックリだね。」

 「ちょっとガッツの方が慢心してたな。」

 「ガッツ気を付けないと。」

 「いや私はあんなヘマしないから。」

 

 手ごたえを感じたシンジは、すぐさま右腿のホルスターからライザーショットも抜いてさらに追撃を加える。

 

 「くっ、これは!」

 「専売特許を一足お先に奪っちゃったかな?バインド光線だ!」

 

 ガッツ星人の得意武器、ビームバインドを模した拘束光線でガッツさんの動きを封じ、その隙にシンジは素早くスーパーガンRのバッテリーををリロードし、ライザーショットのカートリッジも交換する。

 

 「このっ!」

 「喰らえ!」

 

 拘束を解いたガッツさんに、両手の銃でさらに畳みかける。左手からはショック光線を、右手からは破壊光弾を放ちつつ、一歩ずつ歩みを進める。

 

 「ぐぅっ!動こうとすれば・・・」

 「そこ(・・)を狙う。」

 

 避けようと脚を動かそうとすれば脚を撃ち、反撃しようと手をかざせば手を撃ちぬく。動きを封殺しながら距離を詰めて、今度はシンジがスピンキックでガッツさんの側頭部を蹴り飛ばし、倒れたガッツさんにさらに銃撃を加える。

 

 「えげつないわね・・・。」

 「ホントにあれシンジさんなのかな?」

 「人は変わる・・・けど。」

 (シンちゃん・・・。)

 

 観客席にいる者は皆いい顔はしていなかった。あるものは不安の表情を浮かべ、あるものは眉間に皴を寄せる。

 

 「今までのアイツは・・・。」

 「レッドキングさん?」

 「普段からしてそうだったけど。アイツ、スパーリングの時も相手のことを気遣ってて、無意識的に手を抜いてたんだよな・・・。」

 「今は完全に相手を倒すつもりでやっている・・・ということ?」

 「それが果たして成長だと言えるのか?」

 

 観客席の不安な空気をよそに、リングでは凄惨な戦いが続けられていた。スーパーガンRの弾が切れれば、ライザーショットを両手で構えて狙う。ガッツさんはひたすら防御して耐えるが、その間にシンジはゆっくり近づいてわき腹にサッカーボールキックを入れる。

 

 「ぐぁっ!!」

 「終わりだ。」

 

 最後の引き金を引く。しかしその弾丸が貫いたのは虚影。手ごたえの無い幻だった。

 

 「分身か!」

 「正解!」

 

 カーン!と振り返って見たのは2人のガッツさん。すかさず撃てばそれらも幻、危うい雰囲気を感じて岩陰に身を翻し、再びスーパーガンRをリロードする。

 

 「遅い!」

 「おっと!」

 

 身を隠していた岩が破裂する。一目見ただけで分身は3人、その3人が自分一人を狙って光線を撃ってくるのだからさあ大変。その弾幕をかいくぐる事は、到底不可能な話だったろう。それが以前のシンジであったのなら。

 

 「はぁっ!!」

 

 走りながら岩を蹴って三角跳びをし、空中で捻りを加えて見事に光線を避け切り、その内角に入る。着地の瞬間に一発、分身の一体に撃ち込むと霧散する。

 

 「とどめ!」

 

 両手の銃がそれぞれの標的を捉え、銃口が火を吹いて分身は消える。3体は全て分身だった。本物はどこに?

 

 「こっちだろ!」

 「なに!?」

 

 また後ろ、と思わせて実は斜め上。しかしその奇襲すらもシンジは見抜いて撃ちぬく。落ちてきたガッツさんに、再び斉射攻撃を加える。

 

 「オラオラオラ、どうしやがった?強気だったのは口だけだったのかな?」

 「くっ・・・舐めんじゃ・・・ないわよ!!!」

 

 ブワッ!とオーラを放ってシンジを怯ませる。シンジが一瞬目を逸らしたその間に、ガッツさんは強烈なボディブローを叩き込んでいた。

 

 「かっ・・・あっ・・・。」

 「調子乗ってんじゃ・・・ないわよ!!」

 

 血気迫るガッツさんから黒いオーラが漂っているようにも見えた、が、それは見間違いだ。ガッツさんはかつてシャドウミストに侵され、怪獣娘たちを襲っていたこともあった。だがそれも、GIRLSの協力によって払いのけられた。では、現に今アリーナで際立つ存在感を放っている違和感の正体とは?

 

 「あれって・・・シャドウミスト?!」

 「シンちゃんの体から出ているの?!」

 「シンジはシャドウミストに憑かれていたのか!?」

 

 そうなのだ。人の心の孔に入り込み、凶暴化させるシャドウミストが、いつの間にかシンジに取り憑いていた。本人も全く無自覚のまま、今まで過ごしていたのだった。

 

 「シャドウミストに侵された人と戦った時、やたら好戦的になっていたのも、そのせいだったのか・・・。」

 「ベムラーさん、その時見てたの?」

 「ああ、だがちょっと留学で揉まれて変わったんだと思っていたが、違ったようだな。これでは探偵の名折れだな。」

 「じゃあじゃあ、今すぐガッツさんを助けないと!」

 「みんな、待って。」

 「ガッツ・・・どうして?」

 「あの子を、信じてあげて。お願い。」

 

 ミコにとって、今戦っているマコは自分の半身であり、かつてはシャドウミストに負けた自分自身でもある。とすれば、今度はマコがシャドウミストを倒す番であり、ミコはそれを見届けるべきだ。

 

 「シンちゃん・・・。」

 

 「ウォオオオオオオオオオオオオ!!!」

 「こんのっ、やかましいっての!」

 

 シャドウミストの影響が顕在化し、力も正確さもアップしたシンジの攻撃を危なげなくガッツさんはいなしていく。シャドウミストは、シンジの心に掛かっていたリミッターを外し、一切の妥協を許さぬ冷酷な戦闘マシーンへと作り替えた。

 

 「あの時の私に・・・私たちに足りなかったもの・・・。それが今はある!」

 

 ガッツさんは飛び退いて、再び分身を作り、シンジは手数で対抗する。膨れ上がったシンジの闘気が、S.G.Mのゴーグルを妖しく羽ばたく蝶のようなバイザーに変える。その眼は的確に攻撃の予測地点や本体の位置を読み取り、怪獣娘にも引けを取らぬスペックをもたらす。

 

 (射撃戦にかなり慣れてきている。ここは接近戦で仕留める!)

 

 分身を見ればすかさず射抜きに行く。逆に言えば、分身に対しては否が応にも反応してしまっている。それに気づいたガッツさんは、分身を囮に距離を詰めに行く。結果は成功、銃の役に立たない至近距離にまで近づけた。

 

 「こっからは!」

 「グォッ!」

 

 再び拳の応酬。今度は先ほどとは違い、シンジも的確にガッツさんのラッシュを捌いている。お返しにとシンジはキックを放ち、それをいなしたガッツさんの手刀が入る。が、それをシンジは逆に吹き飛ぶことによって衝撃を逃がす。

 

 再び少しの距離を置いたその刹那、バックパックからアタッチメントを取り出してスーパーガンRの銃口に取り付け、ガッツさん目がけて撃った。すかさず光弾で撃ち落とすが、その爆発と同時に厚い煙幕が発生した。

 

 「くっ・・・めくらましかっ!」

 

 毒ガスの類ではないが、視界を遮られる。神経を研ぎ澄まし、僅かな痕跡をも見逃さないよう耳を尖らせる。

 

 「!そっちか!」

 

 そこへ破壊光線が飛んでくる。だが特に苦も無く躱して、逆に撃ち返すと、それは爆発して上へと飛んでいく。

 

 仕留めた!と心の中で思ったが、目に入ってきたのはオートで発射を続けるライザーショットのみ。

 

 「囮か!」

 「ドラァ!」

 

 気づいた時には遅かった。ガッツさんのむいている方向とは真逆、その上方からシンジのフライングニードロップが迫る。シャドウミストによって強化された、必殺レベル

の一撃。

 

 誰もがそれを躱せないと思った。ただ一人を除いて。

 

 「ガッ!」

 「えっ・・・。」

 

 一番に驚いたのはガッツさんだった。突然シンジの体が吹き飛んだことではない。自分の腕が無意識のうちに、死角のシンジの方に向けられ、光弾を発射していたことだった。

 

 「今よ!!」

 「あ、あぁ!『ビームバインド』!!」

 

 ミコの声に我を取り戻したマコは、得意の念導光線を放ち、シンジを固める。

 

 「これで、トドメ!」

 「グォオオオオオ!!」

 

 そして腕をクロスさせ、発生させた十字架にシンジの体を捕らえる。放たれたエネルギーに焼かれ、シンジの体からシャドウミストが抜けていく。

 

 「・・・終わった。」

 「・・・うぅ・・・。」

 

 十字架を解除し、シンジの体は自由を取り戻すが、そのまま気絶しまった。だがこれでもう安心だ。観客席にいたみんなが寄ってくる。

 

 「あいつ・・・。」

 

 マコには見えた。ミコがウィンクをしているのを。あの時、完全に虚をつかれたマコの体を動かしていたのは、観客席からシンジの姿が見えていたミコだった。それがその場で出来た能力なのか、はたまた分身として生まれたマコが持った性質なのか、それはわからない。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「うっ・・・ん・・・なんか、哀しい夢を見ていたような・・・。」

 「シンちゃん!」

 「大丈夫ですかシンジさん?!」

 「あっ・・・平気だよ。全然平気。」

 

 しばらくして、シンジも意識を取り戻した。戦っていた最中のことはよく思い出せない。ただぼんやりと、自分の意識が自分の物でなくなるような感覚はあった。

 

 「ガッツさん、気づいてたんですか?」

 「別に。ただ気にくわないから叩きのめしてあげただけよ。」

 「もうマコ、そんな言い方ないんじゃないの?」

 「いえ、ありがとうございました。おかげで目が覚めました。」

 「ふん。」

 

 立ち上がってお礼を言うシンジに、マコはそっぽを向くが、少し満足そうにしているのがミコには見えた。そのことに気づいて慌てて表情を元のむすっとした顔にもどしたが。

 

 「でもいつの間にシャドウミストなんかに憑りつかれてたんだ?そんな自覚あったか?」

 「いえ・・・でも帰りの飛行機の間、よくない夢を見てたのは覚えてます。それがどんなのだったか思い出せないですけど。」

 「よくない夢?」

 「例えるなら・・・自分が自分じゃないみたいな。その時にはもう憑かれてたのか、憑かれてたから見たのか。」

 「自分が自分じゃないって?」

 「・・・わかんないや。今自分が本当に起きてるのか、それとも夢を見てるのか。」

 「シンちゃん・・・。」

 

 ぎゅっと、ミカが抱き着いてきた。突然の事に皆があっとするが、シンジにはその感覚をじんわりと噛み締められた。

 

 「これでも、夢だって思う?」

 「いいや、夢じゃない。幻覚でも意識だけの存在でもない。こうやってミカを抱くことが出来るんだから。」

 「シンちゃんだって、私が抱けるからうれしいのよ・・・。」

 

 「・・・もういいだろ!」

 「熱々なのはいいけれど、それはもう他所でやってちょうだい。」

 「あ、はい。ミカ?放してほしいんだけど?」

 「シンちゃん・・・シンちゃぁあああああああああん!!!」

 「あ、ああ、ああああああああああ!!!やめ、やめてええええええええ!!!」

 

 ベキベキと背骨が圧し折れる音がする。正直戦いで受けたダメージよりも大きい。

 

 「しぬっ。」

 「大丈夫?」

 「へいき。」

 

 ひとまず、一段落ついた。

 

 「そうだ、シンジ。このお土産なんだけど。」

 「あっ、そういえば忘れてました。」

 「自分の用意したものなんだから忘れちゃダメでしょ。これってさ、イヤリングだよね。」

 「はい、ガッツさんといえば十字架なので。」

 

 十字架をモチーフにしたイヤリングだ。ガッツさんは髪が長いのであまり耳が目立たないが、隠れたところでもこだわるのがオシャレだ。

 

 「じゃあさ、これ一個ずつ私とマコで貰って、それでよくない?」

 「おー、いいじゃん!ペアルック!」

 「そうか、そういう手が。」

 「じゃあこれ、シンジさん。」

 「なんで僕に?」

 「君が渡さないと意味ないじゃん。ほらマコも。」

 「ちょっ・・・。」

 「えっと、ガッツさん・・・じゃなくてマコさん・・・でいいのかな?これ、よかったら、もらってください。」

 「うっ・・・わかったわよ。一応もらっておくわ。」

 「マコ、そうじゃないでしょ?」

 「言われなくたってわかってるわよ・・・ありがとう。」

 「どういたしまして。」

 

 しっかりとマコさんは受け取ってくれた。

 

 「さ、帰ろうぜ!今日はシンジが帰ってきた記念に、焼き肉にでも行こうぜ!」

 「おぉー!いいっすねぇ!」

 「ただしベムラーさんの奢りで。」

 「なんで!?」

 「シャドウミストに気づかなかったでしょ?そのペナルティってことで、おなしゃす!」

 「「「「じー。」」」」

 「うー、わかった!奢ってやる!なんでも食え!」

 「やたー!」

 「ほら、マコも行くよ。」

 「なんで私まで?」

 「一緒に食事に行くのも仕事の一環だよ。」

 「・・・しょうがないわねぇ。」

 

 ようやく、元の空気が帰ってきた。今度こそみんなの元に帰ってこれたと、シンジは実感した。

 

 「やっぱいいな、日本は。」

 「どしたの急に?」

 「向こうでの暮らしも悪くなかったけど、やっぱりこっちがいいやってこと。」

 「そっか・・・。」

 

 「あのねシンちゃん。」

 「ん?」

 「おかえり、シンちゃん!」

 「あぁ、ただいま、ミカ。」

 

 また激動の日々が始まるだろう。今までの留学はほんの骨休めだ。さらにパワーアップした新しい日々が始まる!

 




 マコちゃんの口癖や性格が今一掴み辛い。モン娘は~れむだけが情報源だけど、デートしても基本ツンデレだからなぁ・・・。それも正しい意味でのツンデレ。とにかく、これからは2期で登場したキャラや、まだアニメに出てないキャラにもスポットライトを当てる予定。本当の戦いは、ここからだ!

 

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