怪獣娘~ウルトラ怪獣ハーレム計画~   作:バガン

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 書きたいネタはいくらでも湧いてくるが、どういうことかと説明を求められたら、いましばらく時間と予算をと答えざるを得ない。

 それよりも、ハーレムものが書きたいと言いながら全然ハーレムしていないこの作品の明日はどっち?


夕焼けの決闘

 

 

 話は少しさかのぼる事、シンジがゴモラに決闘を申し込まれた日。その午後。

 

 

 「ハリケーンミキサー!」

 

 「グワー!」

 

 

 シンジはアリーナの宙を木の葉のように舞っていた。

 

 

 「一発!」

 

 

 「二発!」

 

 

 「散髪。」

 

 

 「四発!」

 

 

 「一体何のバカ騒ぎかしら?」

 

 「あら?エレちゃんおはー。」

 

 「見てのとおり、試合だ。ルーキー同士のな。」

 

 「あらそう、猫がじゃれて遊んでいるようにしか見えなかったわ。」

 

 「厳しいなー。」

 

 

 観客席にエレキングさんが入ってきた。この時点ではまだシンジとは面識がない。

 

 

 「あれが、例の男の子かしら?」

 

 「そ、シンちゃん。私の幼馴染なんだー。」

 

 「今まさにボロ雑巾のように地面に叩きつけられているけれど、いいのかしら?」

 

 「いいの、私もさっききたねぇ花火にしたから。」

 

 「そう。」

 

 「心配しなくても、あいつはなかなかタフだぜ?成長するのが楽しみだ。」

 

 

 そういうレッドキングの視線の先で、シンジは立ち上がる。

 

 

 「さっきの技は・・・。」

 

 「ふっふーん、『マッスルマン』の『デビルバッファロー』の必殺技だよ!」

 

 「ミクさんも『マッスルマン』好きなんだ?」

 

 「シンジさんも?あの熱いバトルと、友情がたまんないんんだよねぇ!」

 

 「僕も結構、あの漫画を参考に技とか覚えてるからね・・・。」

 

 「やっぱりー?!なんかそんな気はしてたんだよね!」

 

 

 思わぬところで同胞に出会えた。『マッスルマン』は今から40年も前、週刊少年ツブラヤで連載されていたプロレス漫画だ。既に原作は完結を迎えているが、ゲームやアニメで今なお根強い人気を誇り、原作者自らの手で新シリーズが最近開始されたばかりだ。

 

 

 なお、初期は怪獣退治ものとして連載開始したり、登場人物が女体化されたり、主人公の息子の名前がタロウと、なにかと縁があったりする。

 

 

 「あたしが好きなのは『デビルバッファロー』なんだ!まさに力こそパワー!って感じで!」

 

 「ミクさんらしいね。」

 

 「シンジさんは誰が好きなの?マッスルマン?ジェントルマン?」

 

 

 『こらー、おしゃべりしてないでちゃんと戦えー!』

 

 

 「だってさ、話は後にしよっか。」

 

 「う、そうだね・・・いっくぞー!」

 

 

 ハリケーンミキサー、それはデビルバッファローの必殺技。主人公たちの10倍以上のド迫力パワーをもって放たれるそれは驚異の一言だ。

 

 

 「くらえー!」

 

 「でもここは、四角いリングじゃないんだぜ?」

 

 

 周囲に所々岩こそあるが、それらを差っ引いてもプロレスのリングよりずっと広い。そう何度も喰らうものではない。

 

 

 「まだまだー!」

 

 「こっちだこっちー!」

 

 

 かまわず突っ込んでくるミクラスの突進を、岩へと誘導してダメージを誘う。しかしいくらぶつけさせても、その勢いはとどまるところを知らない。

 

 

 「なんて頑丈さ・・・いや、馬力なんだ。」

 

 「みよ!カプセル怪獣一の500万馬力のパワーを!」

 

 

 500万馬力、馬500万頭分パワーと言うことだ。同じツノを持つ怪力怪獣、300万馬力のシルバゴンのパワーアップした姿、キングシルバゴンが470万馬力だというから、それよりも強い。より簡単に言うと、初代ウルトラマンが100万馬力なので、パワーだけならミクラスはウルトラマンの5倍強いのだ。

 

 

 なお、馬力という単位が制定された当時の馬と現代の馬を比較すると、現代の馬は4倍強いらしいぞ良い子の諸君

 

 

 「言っておくが、このS.R.Iスーツがあったところで、発揮できるのは50万パワーが限界ってところだ。」

 

 「つまり、あたしの方が10倍強いってことだ!」

 

 「人間には力が無くとも、知恵と勇気がものをいうのさ!」

 

 

 ホップステップジャンプと助走をつけて、足のばねを強化して飛び込む。

 

 

 「そして、キィイイイック!」

 

 「なんの、こっちもドロップキッーク!!」

 

 

 空中で交差し、片方が弾き飛ばされ、片方が難なく着地する。

 

 

 「ぐわっ!」

 

 「へっへーん、どうよ?」

 

 

 地を舐めたのはシンジの方だ。当然だ、パワーがダンチなんだ。この問題は一生付き纏う。

 

 

 「とても賢い人間の戦い方とは思えないわね。」

 

 「まあそう言うなって、時々あっと驚かせるようなことをするのが、あいつの強みなんだよ。」

 

 「だったら道化にでもなったらどうかしら?」

 

 「まあこのままじゃピエロだわな。」

 

 

 人を楽しませる仕事をするのが道化。その中でもマヌケなことをして観客から笑いを買うのがピエロだ。ピエロには目の下に涙のマークがついている。心では泣いているというサインだ。

 

 

 シンジは滅多なことでは涙を流さないが、負けて悔しくないはずがない。その為に頭を使う。

 

 

 「なら・・・これならどうだ!」

 

 「今度は両足ってわけか・・・!」

 

 

 岩の上に立ち、再び攻撃の準備に取り掛かる。両足にパワーを集中させ、さらなる高みを目指す。

 

 

 「50万+50万で100万パワー!」

 

 

 先ほどよりも高く飛び上がり、アクロバットのように宙を舞う。

 

 

 「いつもの2倍のジャンプがくわわって、100万×2の200万パワーっ!」

 

 

 狙いを定め、コマのようにスピンする。

 

 

 「さらにいつもの3倍の回転を加えれば200万×3の」

 

 

 「ミクラス!おまえをうわまわる600万パワーだ!うおっ~~!」

 

 

 シンジの体が600万パワーの炎を纏う!空気との摩擦によって起こった炎の追加ダメージだ!

 

 

 「なんの!こっちはツノで勝負だ!ハリケーンミキサー!」

 

 

 両社の激突によって起こった爆発に、思わず誰もが目を覆う。そして各々が目にしたのは、見事に着地したシンジと、宙に投げ出されたミクラスの姿だった!

 

 

 「シンジさん、やったの?!」

 

 「いや・・・あれは失敗だ。」

 

 

 「ウギャー!!」

 

 「よっ・・・と。」

 

 

 着地できたはずだったシンジは前のめりに倒れ込み、ミクラスは空中でバランスを取り戻して難なく着地する。

 

 

 「勝った!」

 

 「負けた・・・。」

 

 

 「結局パワーってなんだったんですか?あんな簡単に増やせるものなんでしょうか?」

 

 「理屈は悪くなかったが、実践するには技量が足りなかったな。無茶なスピンに回転軸がブレて、うまく直撃しなかったんだ。」

 

 「試験なら落とされていたわね。」

 

 「あれ、エレちゃんもう行くの?」

 

 「ちょっと寄っただけだから。まだ仕事がある。」

 

 「そう、がんばってねー。」

 

 「あなたたちも、もう少し緊張感を持ったらどう?最近シャドウの動きが活発化しているし、不穏な動きも見せているのよ?」

 

 「はいはーい。」

 

 

 緊張感を持てと言われて持つミカではない。勿論それなりに注意はしても、ペースは乱さない。むしろ乱している姿の方が、エレキングは見たことがないぐらいだった。

 

 

 「負けました。」

 

 「惜しかったね、今度は勝てるといいね。」

 

 「いぇいいぇい!見てた?あたしのハリケーンミキサー!」

 

 「やはりミクさんのパワーはすごいですね、大抵の相手なら薙ぎ倒せるんじゃないかってくらいです。」

 

 「いやー、それほどでもー?戦ってて楽しかったし、またやろーねシンジさん!」

 

 「今度はもっとお手柔らかにお願いね?」

 

 

 

 

 「うっし、じゃあ次はオレが行くか!」

 

 「さっきはゴモたんと戦ってましたけど、次は誰と?あたし?」

 

 「いや、シンジ立て。」

 

 「はい、なんですか?」

 

 「来い。」

 

 「はい?」

 

 「来いっつってんだよ!」

 

 「恋?はしゃぐコイは?」

 

 「池の鯉、って違うわ!次はオレが相手してやるってんだよ!」

 

 「ナイスノリツッコミ。」

 

 

 わけもわからずに、なんだかんだと再びアリーナに戻された。

 

 

 「本当にやるんですか?」

 

 「まあ、ちょっとした洗礼だと思えよ。お前の基礎的なところもっと見たいと思ったしな。」

 

 「これってパワハラ?」

 

 「ちがう、『可愛がり』だ。」

 

 「レッドキングさんの方がよっぽどかわいいですよ?」

 

 「バカ!そんなこというな!///」

 

 「うおっあぶねっ!」

 

 

 照れ隠しに岩をぶん投げてきた。さすがにまっすぐ飛んでくるだけの岩には当たらない。

 

 

 「歯ぁ食いしばれよ!」

 

 「その歯が全部抜け落ちるような攻撃は勘弁!」

 

 

 ブォン!という音と共に鍛え上げられた丸太のような腕が頬をかすめる。避けた先にあった岩が粉微塵に砕け散る。

 

 

 「こんなん喰らったら骨が折れる程度じゃ済まないんじゃ!」

 

 「大丈夫だ、ジェロニモンの力で生き返れる!」

 

 「ウララー!」

 

 

 よしんばそれで生き返っても、腕の形が変わったりするのは御免だ。ひとまず距離をとる。レッドキングには岩投げなどは出来ても、固有の飛び道具というものは持っていないはずだ。

 

 

 「なんて考えてたんなら、お慰みだぜっ!」

 

 「ぐぉっ・・・口から岩が・・・!」

 

 

 しかも、爆発性のある危険なやつだ。ほぼ爆弾やロケット弾を撃って来ているのと変わらない。

 

 

 「常に相手がどんな動きをしてくるか予想しておけ!実際はその上を行くからな!」

 

 「これでもイマジネーションは結構あるほうだと自覚してますよ?」

 

 「そうか、なら、こいつは予想できるか?!」

 

 

 剛腕を振るって地面を殴る。すると、ひび割れが走ってシンジの足元に迫る。ゴモラの見せたアースクラッシャーとは違う、元祖・アースクラッシャーだ!

 

 

 「おぉー!これが本家か!」

 

 「見た目もゴモたんが使った時より派手だね。」

 

 「そりゃー、レッドちゃんが元祖だからね。」

 

 「でも、シンジさんあそこから動きませんよ?!」

 

 

 「見た目は派手だが・・・。」

 

 「今のをよく『避けなかった』な。」

 

 「レッドキングさんが、こんな単調な攻撃しかけてくるはずないと思ってたので。」

 

 「言ってくれるじゃねえか。」

 

 

 見事に、シンジの周りにだけひび割れが走っていた。慌てて避けていたならば、たちまち餌食となっていただろう。

 

 

 「かといって上に飛び退けば、岩で撃ち落とされていた。」

 

 「そこまで読んでいたんなら、10点やろうか。」

 

 「あと90点は?」

 

 「オレを倒せたらやるよ!」

 

 

 赤点にならないようがんばろー!パワー自慢のレッドキングに殴り合いを申し込むのは自殺行為に等しい。いっちょここは躱して殴っては退くのヒットアンドアウェイで行こう。

 

 

 「せいっ!せいっ!」

 

 「そんなへなちょこパンチ効かねえぜ!」

 

 「おわっと!」

 

 

 躱すこと自体はそこまで難しくはない。目をしっかり凝らせば軌道が見える。しかし一瞬の隙や気の緩みが生死を分ける緊張状態に、徐々に精神が摩耗していくのを感じる。

 

 

 そして精神が摩耗してくると、普段しないような判断やチョンボをする。

 

 

 「そこっ!」

 

 「ぐっ・・・!」

 

 

 「あっちゃー、いいのもらっちゃったね。」

 

 「これ以上は持たないかな・・・?」

 

 「いいや、シンジさーんがんばれー!」

 

 

 がんばれなんて、軽く言ってくれる。脳震盪で目は回るし、肺から空気が漏れて息もし辛い。けど、応援してくれているからには、おちおちやられているわけにもいかない。

 

 

 「こんのっう!」

 

 「おっ!」

 

 

 飛んできた拳を寸でのところでいなして、腕を掴んでジャンプして落とす。ジャンピングアームブリーカーだ!

 

 

 「そしてすかさず!」

 

 「うっ!やったな!」

 

 

 倒れた相手の上に覆いかぶさり、神業的速さで腕ひしぎ逆十字固めに持って行く!面食らったレッドキングさんはなすがままにされてる。

 

 

 「なかなか・・・やるじゃねえか・・・!」

 

 「結構練習しましたから・・・。」

 

 

 練習したのは半分、もう半分はS.R.Iスーツにインプットされた格闘技のデータのおかげ。あらかじめプログラミングされた動きを、必要に応じて半自動で技をかけてくれるのだ。

 

 

 「けど、このまま塩試合になるのは勘弁願うぜ!」

 

 「うおっ!」

 

 

 力尽くで振りほどかれ、逆に掴まれる。やっぱり固め技は地味なんだろうか?絵面的に。

 

 

 「そらよっ!」

 

 「あーあーあーあーあー!」

 

 

 そのままぶんぶん振り回されて、挙句岩に向かって投げ飛ばされた。レッドキングの得意技のジャイアントスイングだ。

 

 

 (あっ・・・。)

 

 

 背中に衝撃が走り、意識がとぶ。脳内に、今までの人生がフラッシュバックしてきた。何も出来なかったあの日のこと、雨が降ったの日の事、すべてが始まった日のこと。

 

 

 (死ぬな、これ・・・。)

 

 

 正直、今まで感じた事も無いレベルに、生命の危機を感じ取った。

 

 

 「気絶してるヒマはねえぞ!もっと熱くなれよ!!」

 

 

 無理無理、もう燃やす物残ってないって。風前の灯火どころか、風にとける灰も同然。

 

 

 「シンジさーん!」

 

 

 「おっ・・・と・・・?!」

 

 

 気が付けば、体が勝手に動いていた。向かってくるレッドキングさんをいなして、思いっきりすっ転ばせていた。

 

 

 「やりやがったな・・・!」

 

 

 すべてがスローに見える。S.R.Iによる補助とは違う、もっと生な、感覚的なスローだ。相手の動きが見えるだけでなく、次にどうしたらいいかもわかってしまう。

 

 

 「だらぁっ!がっ・・・!」

 

 

 「あの構えは・・・。」

 

 

 シンジが自然ととっていたのは、猫背ばって手を前に突き出した、柔道のようポーズ。相手の出方をみつつ、時に掴み、時に受け流すことに特化した構えである。

 

 

 「がっ・・・あぁ・・・!」

 

 

 倒れて一瞬レッドキングの気がそれた刹那、一気に距離を詰めると、その両手で首を締めあげ、チョップを喰らわせ、その状態で宙に持ち上げる。

 

 

 「あれで一気に体力を奪うつもりだね。」

 

 「ちょっと・・・激しすぎませんか?」

 

 「今まで散々、もっとすごい怪獣ファイトを見て来たけど?」

 

 「なんというか、生々しい戦い方だね。」

 

 

 脇に手を通し、ジャイアントスイングの要領で振り回し、投げ飛ばす。

 

 

 「ててて・・・オレの十八番をやりかえされるとは・・・ちょっとショックだぜ・・・。」

 

 

 「そいやっ!!」

 

 

 これでトドメだ!脳に酸素が行き届かず、未だグロッキー状態にあるレッドキングの首を再び掴み、ハンマー投げで地面に叩きつける!

 

 

 もうもうと砂埃が舞い散り、その中心にシンジは佇む。

 

 

 「はぁ・・・はぁ・・・勝った・・・?」

 

 

 「うっそー、シンちゃん勝っちゃった?」

 

 「すごいです!」

 

 「すっげー!シンジさんすっげー!」

 

 

 ついさっきまで、自分はなにをしたのか?そのあたりの記憶が曖昧であるが、目の前の現実は本物だ。

 

 

 「やた・・・やったー!初白星だー!」

 

 

 シンジは諸手を挙げて喜んだ。今まで無理だ無理だと口にし、頭の中でも諦めていたけれど、マグレでも本当に勝ててしまったらそれは嬉しい!今日は人生最高の日かもしれないぞ!

 

 

 「シンちゃーん!」

 

 

 「ミカー!見てたー?今の超ファインプレー!」

 

 

 「後ろ後ろ―!」

 

 

 むんずっ

 

 

 「へ?」

 

 

 頭に強い握力を感じ、振り返ってみれば、そこには太陽よりも明るい笑顔を浮かべたレッドキングさんが立っていた。

 

 

 「・・・さよならー。」

 

 「待てぃ!」

 

 

 逃げ出そうとする暇もなく、肩と頭を掴まれ、空へと放り投げられる。

 

 

 「あー。」

 

 「よくもやりやがったな!こいつはお礼だぜ!」

 

 

 両脚を両手で掴まれ、両腕を足でロックされ、上下逆さまの状態で地面へと突っ込んでいく。

 

 

 「コイツがレッドキングの、『レッドライバー』だ!!」

 

 

 ズガーン!と、先ほどのとは比じゃない砂埃舞い上がる。

 

 

 「あちゃー。」

 

 「良いところまでいったのに。」

 

 「油断大敵、だね。」

 

 

 戦場のド真ん中、シンジの墓標が建った。

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 「ひどいめにあった。」

 

 「戦場ではしゃぐからこんなことになるんだよ。」

 

 「まあ途中まではオレもヤバイって思ったけどよ、あそこでガッツポーズはねえよ。」

 

 「そこはオマケして負けておいてくれるところじゃ?」

 

 「世の中そこまで甘かない。」

 

 

 怪我の治療をされながら、ぶーたれるシンジであった。ぬか喜びに水の泡だったのだから仕方がない。

 

 

 「じゃー、シンちゃん負けたから、なんか罰ゲームね!」

 

 「え?そんな約束してたっけ?」

 

 「したよー、今さっき。」

 

 「後出しじゃないか。」

 

 「でもどうせ負けるでしょシンちゃん?」

 

 「それだったら最初っから約束なんかしないっての。」

 

 

 ひどい言われようだ。ミカは別に悪気があって言っているわけではないとはわかるけど、さすがに傷つくわ。

 

 

 「大体、こんなことになったのもミカがダイエットしたいとか言い出したせいでしょ。これ以上付き合う必要ある?」

 

 「うっ・・・そりゃまあ・・・そうだけどさ・・・。じゃあせめて、特訓として付き合ってくれたミクちゃんとレッドちゃんになにかお礼したら?」

 

 「あたし?あたしは別に・・・そうだなー・・・うーん・・・。」

 

 「オレも、気にしてくれなくっていいぜ?なかなか楽しかったしな。」

 

 

 少し残念そうにミカは食い下がった。今となっては昔の話だが、この時にもう少しシンジも気を使っていられたら、あんな大ごと(誕生日騒動)にはならなかったのだが。

 

 

 「じゃあ・・・今度一緒に遊びに行きませんか?」

 

 「おっいいねー!どこ行こっか!ジムとか?」

 

 「遊びに行くのに汗流したくないかな・・・。」

 

 

 この後は、色々遊ぶ予定だけを立ててお開きとなった。具体的な日時などは決めていない、ただの空論であったが、今はそれでよかった。彼ら彼女らにはその為の時間がいくらでもあったから。

 

 

 今は、そんなありふれた『明日』があることが、とても幸せなことだと思えた。

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 それからしばらくカレンダーをめくったある日の朝。

 

 

 「うーん・・・慌てて飛び出してきたのはいいけど・・・。」

 

 「何か不安?シンちゃん。」

 

 「いや、どこ行くかとか全然決めてないし。」

 

 「私が思うに、レッドちゃんの喜びそうなところがいいと思うよ!」

 

 「そりゃそれが一番だけどさ。」

 

 

 二人並んで小走りで本部前に行く。全く身に覚えのないこととはいえ、約束してしまったからには行かないわけにはいかない。そんなことしたら男の風上にも置けなくなる。

 

 

 「ついた・・・けど、レッドキングさんいない?」

 

 

 平日ならば行きかう人も多いこの場所も、休みの日となると人影もまばらだ。時間は午前9時、お店もあまり開いていない時間だ。

 

 

 それはともかくとして、この場にはレッドキングさんはいない。ひょっとして、約束はしたけど、来てくれなかったとか?いや、レッドキングさんに限ってそんなはずはない。そもそも約束した記憶すらないんだけど。

 

 

 「ねえミカ、待ち合わせ場所ってここで合ってるの?」

 

 「うん、そうだよ。いっつもここにしてるじゃん。」

 

 「それはそうだけど・・・じゃあなんで来てないんだろ?」

 

 「そりゃあ、約束の時間まであと4時間ほどあるからじゃないかな?」

 

 「は?」

 

 「午後の1時でしょ?約束は。」

 

 「・・・。ミカ、いい加減殴っていいか?」

 

 「優しくしてね♡」

 

 

 へなへなと座り込むシンジと、相変わらずあっけらかんに笑うミカ。人のいない広場に、コツンと乾いた音が響いた。

 

 

 「考える時間をくれたんだね、ありがとう。」

 

 「どういたしまして。中でちょっと休もっか。」

 

 

 また忙しい日々が始まる。フンドシ、もといハチマキを締めなおそう。しかしこの幼馴染には締め上げても簡単に逆襲されるであろう。

 

 

 「・・・空が青いな・・・。」

 

 

 




 公式ノベルのレッドキングさんが可愛すぎる件について。

 ネタの仕上がり具合はミクラスとのトーナメント編が7割ほど出来上がっている。けど、2期アニメの出方を窺いたいので少々時間がかかる。というかはやくこっちが書きたい。

 あと出来るものならウルトラニャンとかも出したい。出来るものなら。

 感想、おまちしております。

 

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