俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか? 完 作:ケツアゴ
やあ! 全国の子猫ちゃん達元気かい? オリ主の神野遥だ。私は今、いずれハーレムの一員になる予定のアリーゼと戦っている最中だ。
「ええい! 邪魔だ、貴様!」
「恥ずかしがらなくて良いんだぜ? ほら、抱きしめてあげよう」
今日は目障りな原作主人公も、クール可愛い刹那ちゃんも不在で、幼馴染みと二人だけで港付近で高難易度の任務だったんだけど、神に選ばれた私が居れば楽勝だったよ。私の能力『神秘招来』は文献などで存在を知った伝説の武具防具を召喚、操作できる。扱いきるだけの才能も持っているから正に完璧なのさ。
そして今、またしてもやって来たアリーゼとの戦闘中だ。少しお馬鹿だから情報をペラペラ話すし可愛いなあ。
強い相手が好きだから私はストライクのはずなのに、照れちゃって素直になれないアリーゼを私は追い詰めていく。周囲は雪国の真冬みたいな状態だけど、まあ伝説を紐解けば防寒効果の高い物なんて幾つか存在するし、彼女を落とすのも時間の問題さ。
「やはり貴様はあの御方に匹敵するようだ。だが、それ故に我等の勝利は揺るがない。貴様と我が夫となる男くらいしか脅威は居ないからな」
まっ、私が成長フラグを潰しているし、その関係かイレギュラーが多いから原作主人公は役に立たないだろうね。メインヒロインの内、手に入れば良いかなって程度の地味系ヒロインしかフラグっぽいの立ててないし。
「おい! 深追いは止せ!」
従者二人と戦闘中に海に墜ちた彼の声が聞こえて足を止める。まっ、アピールは充分したし、戦闘の熱が冷めたら私の魅力を理解してくれるだろうね。
「帰るぞ、お前達!」
気絶して海に浮かぶ従者二人を回収したアリーゼは去っていく。しかし寒いな。風邪を引きそうだ。・・・・・・帰ったら彼に甘酒を作って貰おう。凄く美味しいんだよね。
「へっくし! ・・・・・・不覚だ」
翌日、私は幼馴染みの体温を計測した体温計を見る。氷が浮くほどに冷え切った海に落ちたせいで風邪を引いたみたいだ。大丈夫かな・・・・・・?
「風邪を治す能力は無いのかい?」
「毒や病気、癌や呪いや生活習慣病を治すのはあるんだが、風邪は無いな。まあ、回復力向上は有るから今日一日休めば治るだろう。お前は学校に行け」
「何言っているのさ。今日は休日だぜ? 頭が働いていないみたいだし、大人しくしていたまえ」
振替休日って事も忘れるなんて重傷だね。さて、オジさん達は相変わらず留守だし、今日はお世話してあげるか。……一年生の子とデートだったんだけど仕方ないか。メールで延期を告げておこう。
「所で看病時の姿だけど、ナースと女医のどちらが良い?」
「どうでも良い。……どんな格好をしてもお前はお前だ」
此処は意表をついてメイド服にしておこうかな? 勿論長袖ロングスカの清楚なほうだ。侍らすならフレンチメイドだけどね。
「さて、何処に置いて……おや、これは」
この家に荷物を運び込んだ時に紛れ込んでいたのか古いアルバムを発見してついつい眺めてしまう。少し埃を被ったその中には私達の赤ん坊の頃の写真や幼稚園の時の写真。こういうのはこっちの世界でも同じだから良かったよ。転生したら思い出まで変わっているなんて寂しいからね。
この頃から私と彼は一緒のことが多く、写真の多くで手を繋いでいる。いや、正確には手を繋いでくれていた、かな? 彼と手を繋いでいると落ち着くんだよね。小さい頃は大きくなったらお嫁さんになってあげる、って言ったものだ。懐かしいなぁ……ん?
アルバムに挟んでいたらしく、くっ付いたページを開いたら中から落ちたボロボロの紙を拾い上げる。このころから堅物さが伺える文字でこう書かれていた。
『しょうらい、はるかちゃんをおよめさんにします』
ふふふ、懐かしいなぁ。私が泣きそうな顔で頼んだからって渋々書いてくれたっけ。彼にはあの頃からお世話になりっぱなしだよ。私に対して文句を言いながらも何かと世話を焼いてくれて、頼みも大体聞いてくれる。私はどうすれば彼に報いる事が出来るのかな……?
「取り合えず栄養のある物を食べてもらおうか」
冷蔵庫の中を見ればリンゴがあったので此れを摩り下ろすとして、この家では風邪を引いたときはクタクタになるまで煮込んだ饂飩って決まっているし、既に味は教えてもらっているから私でも作れる。
「卵が無いのか……」
時計を見ればまだご飯の時間まで時間があるし買い物にでも行こう。でも、その前にやることがある。
「ほら、取り合えず汗拭こうか。背中拭いてあげるから脱いだ脱いだ」
「悪いな、助かる」
彼が自分で前面や腋を拭いている間、私は汗でびっしょりの背中を拭く。昔から甘えてオンブして貰った背中だけど、随分と大きくなったと思う。
「今日、一年生の子をデートに誘っていたんだろう? 俺のために悪いな」
「気にしなくて良いよ。私にとって子猫ちゃん達より君のほうが大切だし、デートは後からでも出来る。ほら、終わったよ」
それにしても私のメイド服にノーコメントとか気が利かないなぁ。そんなのだからクラスの女子全員とほかのクラスの何割かからバレンタインのチョコを貰っても、一つも本命が無いなんてことになるんだよ。
「本当に君の将来が心配だよ。私が貰ってあげる事になるんじゃないのかい?」
「いや、何を上から目線で言っている? 俺が貰ってやることに成りかねないの間違いだろう」
結局は私達が結婚する事には変わらないんだけど気付いているのかな? まあお互い最後の手段的なアレだし……。なんか昔の事を思い出したばかりだから少し照れるなぁ。
「おや、治癒崎さんと田中さんじゃないか。こんな所で会うとは奇遇だね」
饂飩に入れる卵と蒲鉾を買いに行く途中、ターゲットにしている二人と出会った。それだけなら歓喜する所なんだけど、焔までいるなんてね。ってか、どうして君が二人と居るんだい? 田中さんは良いとして、もう片方とはフラグが折れているはずじゃないか。
「二人とばったり出会ったのー。神野さんは委員長と一緒じゃないのー?」
「ああ、今はね。じゃあ、私は此処で」
どうやら原作主人公の補正でフラグが立ったのかと思ったけど違うみたいだ。何時もなら口説きに掛かる所だけど今は後回しだ。今は彼のことが優先だからね。
私にとって可愛い女の子達は甘いお菓子だ。デザートだよ、デザート。甘ければ甘い程に美味しいし、量も種類も沢山の方が良い。生活に心のゆとりを持たせる為の清涼剤だ。
そして彼女達がお菓子なら、彼は差し詰め炊き立ての白米や焼き立てのパンかな? 主食だよ、主食。お菓子は無いなら無いで寂しいけど構わない。でも、三度の食事は必要不可欠だろう?
私にとって彼は隣に居て当然で、なくてはならない存在なんだよ。
「……美味い」
「そう。頑張って作った甲斐があったよ」
風邪を引いても食欲はあったから少し大盛りにした饂飩を彼は全部食べ尽くす。うんうん、喜んでくれて私も嬉しいよ。
「今日の私は尽くすタイプの良い女だろう? お嫁さんにしたくなったかい?」
饂飩鉢を回収しながらニヤニヤ笑い、何時もの様に冗談を言う。まぁ、何時もなら即座に否定されるのがパターンだ。その遣り取りさえ私にとっては掛け替えの無い楽しい時間なんだけどね。
「まあ、奇行さえなければお前に告白していただろうからな」
「……へ?」
思わず妙な声が出る。思いもしなかった返答に思考が停止し、次に混乱がやって来た。えっと、マジで!?
「っとまぁ、お前は何時もこんな風に……」
「おいおい、冗談かよ。たちが悪いよ? ……少しお返しをしようじゃないか」
ベッドに潜り込み有無を言わさず腕と足で抱き付く。暴れようとしているが元々私の方が強いんだ。風邪を引いた状態で勝てるわけが・・・・・・。
「……うん。やっぱり君に密着すると落ち着くよ。少しだけ寝かせて……」
言葉の途中で睡魔に身を任せる。にしても思いもしない冗談が来るとはね。ビックリしたよ……。
あっ、因みに私が好きな言葉は『甘い物は別腹』。もし私達が恋人だったとしても、子猫ちゃん達によるハーレムの野望を捨てる気は無いのさ。
尚、後日見事に私が風邪を引き、今度は彼に看病して貰う事になった。
「少し不安なんだ。手を握っていてくれないかい?」
「その程度なら構わん。落ち着くまで握っていろ」
やっぱり君はずっと側に居て欲しい存在だよ……。
~オマケ~
「教えて! 遥さん!! 今回からの新コーナー、読者からの質問に答えるよ」
「お前が司会とは世も末だな。助手の委員長だ」
「さて、記念すべき第1回の今回はこの世界の基本について教えよう。まず、能力についてだ。この世の全ての人の中に何かしらの能力は宿っている。それを引き出せるか否かは本人の資質次第だけどね」
「能力は千差万別。ハイハイの速度が大幅に上がったり、漉し餡を粒餡に変えるなど妙な力の者もいる。同じ系統でも上位互換の能力は存在するんだ。ああ、目覚めた者は身体能力も上昇するぞ」
「更にレベルが十段階。私達が人に隠れて戦う化け物は少しずれた世界『異界』から現れるんだけど、対抗する実戦部隊の平均はⅢ。私のⅩなんて理論上は有ると言うだけ。レベルアップには才能と過酷な訓練が必要だ。・・・・・・・所でエッチな能力は幾つ有るんだい? ほら、私達って結婚が決まっているし気になるじゃないか」
「メタ発言禁止! では、次回!」
「活動報告で質問受付中だよ」
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