ワンピースのような世界で生きる   作:スペルン・テンタサイズ
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四話

「もう、此処は無理そうだね‥‥」


僕は海中から顔を出し、自分が長年住んでいた島があった場所を見つめながら言った。


あれから僕は三つの海賊と交戦した。前回と同様の方法であったが2回目は集団格闘を鍛えるために船長だけを沈めて複数の船員と交戦した。そして3回目の海賊は今までで一番弱い海賊であった。そのため船を沈めることなく上陸した段階で襲撃をかけて倒すことができた。

そして生け捕りにした海賊を拷問にかけた。そして船に置かれていた地図や本などを読むなどして、この世界についての情報を少しばかり得たのだが‥‥


「俺は白ひげ海賊団の傘下だぞ‥‥こんなことして‥‥親父がただで‥‥済ますと思う‥なよ。」


度重なる拷問で衰弱していた海賊は呪詛を唱えるような恨み声で言い残して死んだ。

僕は所詮は傘下の海賊、白ひげ海賊団は最近になって急速に勢力を広げている海賊らしいが、そのトップが来るわけないだろうと思っていた。

そうして修行の日々に明け暮れていたが、ある時、自身の生物としての直感が僕に逃げろと警告した。水平線の向こうから、とんでもない化物がやって来ていると‥‥

僕は化物が来るであろう方角の水平線を双眼鏡で見てみた。すると、ある船の旗がはためいているのが確認できた。

その海賊旗は十字の骨に、弧を下に向けた三日月状の髭をした髑髏マーク、本に書いてあったことが本当なら、間違いなく白ひげ海賊団の海賊旗であった。遠くからでも感じ取れるほどの覇気‥‥僕は咄嗟に海に飛び込み、海中に逃げることにした。


白ひげ海賊団は真直ぐにこの島に向かい、島に上陸した。


海賊船からは多くの巨漢の姿が見られた。彼らは正に幾千の猛者といった雰囲気を漂わせていた。その中でも一際デカく圧倒的な存在感を放つ男がいた。
その男は海賊旗と同じような髭を生やしていたことから、エドワード・ニューゲート通称“白ひげ”が彼であることがわかった。

彼の身長は軽く6メートルを超えていた。
この世界の人間は、やたらと体格の良い人間が多かった。出会ってきた人間が海賊だけだから海賊限定の特徴だけなのかもしれない。それでも奴の背丈は異常だ。現実的に考えてプ○テインやセ○ビックを直接血管に流し込み過剰摂取しても、あそこまでの身長には成れないだろう。




今の白ひげは怒気に溢れていた。
遠く離れた海面で双眼鏡を使えわないと見えない位置にいるのに奴の気迫がヒリヒリと伝わっくる。



何故、白ひげが怒っているのか‥‥?



それは、やらかしたことに僕が白ひげ傘下の海賊の死体を弄び、海賊旗と共に飾っていたからだ。側から見れば狂気の所業。僕は誰しもがドン引きするようなアートを作り上げていた。

奴らは拷問の最中、殺される直前まで「親父、親父」と泣き叫んでいた。だが、僕はその言葉ー親父という単語が大嫌いであった。その単語を聞くたびに、僕は最悪な出生で生まれたこと、自身が悪意によって生まれたことを思い出してしまう。

苦労していた母をみて、何度、父親という存在を恨んだことか‥‥

だからこそ、魔が差したのだろうか。必死に親父という存在に助けを求める奴等を絶望の淵に堕としたくなった。親父という存在が、どれほど醜悪な存在であるのかを証明して、奴らのその身に刻みつけるために。

それから、僕は海賊だから問題はない、などという詭弁を正当化して、外道の所業を行なった。だが、腹立たしいことに数多の拷問の苦しみを与えても、彼らは親父という存在を否定しなかった。僕は苛立ちのまま彼らを殺し巫山戯た現代アートのようにして飾った。

生物として最大限の侮辱を与えるように‥‥


だが、その所業が白ひげの堪忍袋の緒を切った。白ひげ海賊団は傘下の海賊の死体を丁寧に回収すると、船に乗り、力を込めて腕を振り払った。

すると空間に巨大な亀裂が入った。そして辺りが大きく揺れ始めたのだ。


地震‥‥


前世でも今世でも、ここまで大きな地震に遭遇したことがなかった。奴は人為的に大規模な地震を起こせるのだろうか?

そうだとしたら、とてつもないパワーを持った人間であるといえる。あんな奴と対峙するには、僕は未だ早すぎる。
いや‥‥一生をかけても、あそこまでの強さに届くことすらできないかもしれない。白ひげは自身の想像を遥かに絶する男であった。


地震の揺れと共に島が沈んでいく。数年間の思い出の地が自身のエゴが招いた厄災で滅んでしまった。

この新世界という海では僕は圧倒的弱者である。先ほど三つの海賊と交戦したと言ったが勝てる相手を選んで三つである。本当は倍以上の数の海賊がこの島に上陸したが、どれも勝てるような相手ではなかったのだ。

ゲームや漫画なら格上と命懸けの戦いをすることで、レベルアップすることができるだろう。確かに、それは一理あると思う。

だが、いくら超再生力を持っていようが死ぬときは死ぬ。死んでもセーブポイントや教会の神父の前で復活や主人候補で運良く死を回避なんてありえない。


僕は蛮勇にはなれない


死ぬことより大切なモノを持っていない。
あるのは母の願いだけ。そのために僕は強くなっているわけで、生きるための過程で死ぬのは間抜けにも程がある。

僕は悔しいけど新世界を去ることにした。だが、二度と来ないと言ったわけではない。次来るのは、それ相応の実力が伴った時だ。今は自身のレベルに適した場所で己を鍛える時期だ。

目指すは偉大なる海路、前半の海、此方からでは“楽園”と呼ばれている海路である。