アーラシュに憑依したオリ主がネギま!の修学旅行中にステラする話   作:偽馬鹿

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夕映ちゃんにトラウマ埋め込もうか考えてる間に遅れました


拾われっ子死線をくぐる

「……驚いたわ」

 

スピカは自身の歓迎具合と木乃香の家の立派さに驚愕していた。

特に交遊もない自分に対して割と甘めな対応に面を喰らっているのである。

 

「気にするな。クラスメイトが来たんだ。歓迎くらいする」

「そうなの?」

「そうなんだ」

 

エヴァンジェリンが日本酒を飲みながらスピカに説明する。

アーラシュは笑顔を浮かべたまま無言。

茶々丸もザジもあまり喋るタイプではないため、スピカの周りは少し静かだった。

 

 

 

「……?」

 

ふと気づくとアーラシュがいない。

スピカはキョロキョロと辺りを見渡し、木乃香の父親とネギ先生と一緒にいるのを見つけた。

 

そろりと近づき、何を話しているのか盗み聞きする。

決してネギ先生と喋りたくないとか知らない人と会話できないとかではない。

ないったらないのである。

 

「アーラシュ先生って凄い人なんですね!」

「そうでもないぞ。視えればどこにいても矢が当たるだけで」

「アーラシュ先生ってヤバい人なんですね!」

 

ネギ先生の台詞がアーラシュのヤバさを物語る。

というか若干引いてる。

スピカも結構引いてた。

 

「千里眼というものなんですね」

「ああ、おかげで便利に過ごしてる」

「ははは、きっと他の人が聞いたら卒倒しますね」

 

笑いながらも汗をかく木乃香の父親。

スピカも内心、ヤバいなこいつ……と思い始めたところである。

アーラシュメンタル化物ですねこれは。

 

 

 

というよりもだ。

スピカはもっと気になることがあるのだ。

そう、自爆技という奴のことである。

 

何やら大事になっているし、何か起きそうな予感。

そこで何らかの情報をポロっと漏らしてくれるんじゃないかと期待していたのである。

結果はこのありさまだが。

 

「むう」

 

待ったものの、結局自爆技の詳細は聞けずじまい。

お風呂へ向かうというので撤退。

流石に覗きは趣味じゃないのである。

 

「収穫なしか?」

 

エヴァンジェリンが意地悪そうな顔で酒を一口。

なんだかむかついたのでエヴァンジェリンに飛びつこうとする。

しかしするりと回避される。

べたりと潰れたところをザジに撫でられた。

 

「むぅ……」

 

納得できない。

スピカはふくれっ面を晒しながら撫でられ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

夜の話。

うつらうつらし始めたスピカをエヴァンジェリンが起こす。

 

「ん……何?」

「逃げるぞ」

「え?」

 

既に茶々丸に抱えられてるザジとスピカ。

最近こればっかりじゃない?

内心呟きながらスピカは障子を突き破って外へと飛び出した。

 

「何が起きたのよ」

「侵入者だとさ」

 

ドカンバコンと轟音を鳴らす総本山から逃げ出す4人。

あ、あの矢はアーラシュの矢ね。

閃光のように突き抜けていく矢を見ながらスピカが呟く。

どうやらアーラシュが無事で安心したようである。

 

 

 

バーニア吹かせて空を飛ぶ茶々丸。

その両腕にはスピカとザジ、背中にエヴァンジェリン。

 

「落ちます」

 

当然のように重量オーバー。

近くの茂みへと飛び込んだ。

 

 

 

「……痛い」

 

頭を強く打ったスピカは額をさすりながら立ち上がる。

気付けばエヴァンジェリン達とははぐれてしまっていた。

 

 

 

「あっ……」

「あれ?」

 

すると草むらから少女が飛び出してきた。

むむむ、中々の美少女……と考えたところで、その少女に見覚えがあることに気付いた。

確か夕映。

名字は覚えてないスピカであった。

 

ともかく、スピカは夕映を見て、即座に後ろから追いかけてくる何かに気付いた。

それは人間ではなく、スピカの見たことのない何かだった。

つの、赤い肌、眼。

一般的に鬼と言われる何かだった。

 

 

 

スピカはそれが敵だと思い、即座に行動に移した。

夕映を自分の後ろに追いやり、手をかざす。

エヴァンジェリンからもらった魔法発動媒体の指輪が光る。

 

「喰らえ……!」

 

魔法の矢を放つ。

数は101。

エヴァンジェリンにも隠している全力である。

 

「うおっ!?」

 

放たれた閃光は鬼の身体へと殺到する。

威力は十分。

閃光は鬼の身体を貫き、その体を霧散させた。

 

「すごい……!」

 

夕映の目が輝く。

満更でもないスピカ。

褒められ慣れていないので新鮮な気持ちである。

 

 

 

鬼の追撃はなし。

スピカは夕映の手を握って走り出した。

 

「ど、どこに行く気ですか!?」

「山を下りるわ」

 

とにかく人目のある場所へ。

魔法使いは人目を嫌う。

エヴァンジェリンが得意気に語っていたのを思い出す。

 

坂を下ってとにかく街へ。

急いで戦域外へと出なければ……と考えたところでスピカは夕映を突き飛ばした。

 

 

 

「やばっ」

「えっ……」

 

ぐしゃりとスピカの左手が拉げる。

振り降ろされた棍棒がスピカの腕を打ち砕いたのだ。

 

 

 

失策だった。

スピカは周囲の警戒を疎かにしたことを後悔した。

姿を見せたのは鼻の長い仮面を被った翼を持つ人型。

俗に言う天狗だが、スピカにその知識はなかった。

 

突然の襲撃で魔力は纏まっていない。

既に天狗は棍棒を振りかぶっている。

夕映は突き飛ばされた状態で動けない。

 

万事休す……!

スピカがそう思って目を瞑る。

 

 

 

しかし、いつまで経っても衝撃は来ない

目を開くと、目の前にはえーと……そう、楓がいた。

未だにクラスメイトの名前が曖昧なスピカ。

 

「大丈夫でござるかリーダー?」

「は……はいです」

 

これならもう平気そう。

スピカは再生しかかっている左手を隠しながら立ち上がった。

 

「そ、そうです! 今腕が!」

 

スピカはその台詞に再生した腕を晒して見せる。

ひらひらと大丈夫だと語り、そのまま歩き出す。

 

「あ……あれ……?」

 

夕映は混乱する。

今まさに腕が拉げ、ちぎれたように見えたのに。

スピカの腕は綺麗で、まるで何事もなかったかのようだった。

 

「私は行くわ」

 

指輪を確認し、空を見渡す。

山の上から平地へと降り注ぐ流星が見える。

アーラシュがいる。

 

 

 

スピカは向かう。

アーラシュがいるであろうその場所へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あっ」

 

そして、夕映は気付いた。

確かに腕に傷はなかった。

しかし、その服はズタボロではなかっただろうか。

 

つまりあの怪我は真実で、スピカはそれだけの怪我をしても平気な世界にいる。

そしてその世界は一体どこなのか。

夕映は恐ろしくなった。

 

 

 


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