アーラシュに憑依したオリ主がネギま!の修学旅行中にステラする話   作:偽馬鹿

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イベント中ですが、休みを手に入れたので書けました。
この調子で終わりまで進めたいところです。


拾われっ子の旅行事情3

「俺は多分もうすぐ死ぬ」

「え……?」

 

スピカにとってそれは理解不能、意味不明の一言だった。

困惑が先行し、駆け足は自然と止まった。

 

「どういう意味だ?」

「視えたからな」

「お得意の千里眼か」

 

ふるふると体が震えるのがわかった。

どうして震えているのか、全く分からなかった。

 

アーラシュを失うことを恐れているのか。

その事実をあっさりと話すアーラシュを恐れているのか。

 

「……」

 

わからない。

スピカはわからなくなってしまった。

 

ズキンと胸のあたりが痛む。

これはどうしたことか。

別にアーラシュがどうなろうと、自分には関係ないことなのに。

 

「所謂自爆技って奴だ。それを使うことになる」

「使わないという選択肢はないのか」

「ない」

 

断言である。

どうしてそこまで頑ななのか。

スピカは途端に苛立ち始めた。

 

死ぬことが分かっていて何もしないなんて。

死にたくないなんて当たり前のはずなのに。

どうしてそんなに軽いのだろうか。

 

ズキンと胸のあたりが痛む。

これ以上この場にいたくないくらい痛い。

 

そんな痛みに耐えきれなくなり、スピカはその場から駆け出した。

 

 

 

駆け出した先にはザジ。

スピカは戸惑うことなくザジに抱き着いた。

ザジはそんなスピカをしっかりと受け止め、トントンと背中を叩いてあげた。

 

その横では開いた両手を所在なさげにひらひらしている茶々丸がいた。

どうやら抱き着いてくるのだと思ったらしい。

仕方なく腕を降ろした茶々丸はどことなく寂しそうだった。

 

 

 

 

 

朝の話。

スピカはエヴァンジェリンに起こされ、もっさりと起きた。

実際のところ、ほとんど眠れなかったのだが。

そのことを悟られないように、スピカはゆっくりと着替えを始めた。

 

 

 

(やはり昨日の話を聞いたんだな)

 

当然、エヴァンジェリンにはお見通しだった。

無気力なスピカの着替えを手伝いながら、エヴァンジェリンは思案する。

どうやって話を誤魔化すかではなく、どう焚きつけるかである。

 

別にアーラシュがどうなろうが知ったことではないが、スピカがどうにかなるのは駄目だと思ったからだ。

誰かとの距離感を測りかねている少女一人残していなくなるとはけしからん。

かつての自分を重ねていることを自覚しながらも、エヴァンジェリンは考える。

 

「黙って見ているつもりか?」

「え……?」

「あの馬鹿が勝手に死んでいなくなるのを黙って待つのか?」

 

考えた結果直球だった。

何故自分がこんなに悩まなければならないのか。

そんな思いも混じった台詞である。

 

「……ゃだ」

 

くしゃりと顔を歪め、スピカは呟いた。

その小さな声に頷き、エヴァンジェリンは背中をトントン叩く。

 

こんな子を泣かすとは男の風上にも置けぬ。

エヴァンジェリンは激怒した。

かの邪智暴虐の馬鹿を殴らねばならぬと決意した。

 

 

 

 

 

 

 

朝食後の話。

のんきに歩いているアーラシュを見つけたスピカは、物陰からこっそりと見ていた。

エヴァンジェリンは呆れ果てた。

 

「呆れた。放って置けん」

 

仕方なく、エヴァンジェリンはスピカを引っ張りアーラシュと合流した。

慌てた様子のスピカといつもの調子のザジ、茶々丸を引き連れて。

 

「お、暇か」

「暇だ。どこでもいいから連れてけ」

「わかったわかった」

 

アーラシュはふんわりとした笑顔を浮かべて6班を引き連れていく。

移動費その他諸々はアーラシュの財布から出る模様。

 

 

 

「美味しい……」

「中々だな。流石に本場は違う」

 

生八ッ橋に舌鼓をうちつつ観光を続ける6班。

中々に観光を楽しんでいる様子。

スピカに至ってはさっきまでの不安感すら忘れて楽しんでいる模様。

 

 

 

しかし、ふとスピカは思い出す。

アーラシュが死ぬと言ったことを。

急に不安に襲われるが、エヴァンジェリンが近くにいたから少し不安が和らいだ。

 

唐突に思い出したが、何故いきなりそんなことを思ったのか。

スピカが不審に思ったところで、アーラシュの雰囲気が変わった。

いつものアホみたいな雰囲気から、初めて出会った時の張り詰めた感じに。

 

「誰だ」

 

気付けばアーラシュの手には弓矢が握られていた。

狙いは近くの草むら。

ギリギリと弓を引き絞り、既に発射できる体勢だった。

 

 

 

「弓のアーラシュ……ここで死んでもらう」

 

 

 

不意に声。

それが聞こえたと同時にアーラシュは矢を放った。

 

風切り音と共に何かが砕ける音が響き、同時に草むらから人影が飛び出す。

アーラシュは人影が飛び込んでくるのと同時に駆け出し、更に距離を詰める。

その行動に不意を打たれたのか、人影が戸惑ったように動きを止める。

 

その瞬間矢が放たれる。

一息で放たれたそれは眉間心臓股間を狙ったもの。

それを人影は回避しつつアーラシュの首を刎ねるべく魔法の刃を展開した。

 

「甘いわっ!」

「っ!」

 

そこでエヴァンジェリンが動く。

糸を使い人影の間接を締め上げ動きを封じる。

そして動けなくなったところをアーラシュが射抜いた。

 

「ふ、ん。仕留めきれないか」

 

人影は眉間を貫かれながらも喋り、パシャリと音を立てて消えた。

エヴァンジェリンから聞いた水の分身術だろうか。

スピカは自分がザジと一緒に茶々丸に抱えられてるのに今更気付いた。

 

「逃げられたか」

「中々の腕だったが、心当たりは?」

「腐るほど」

 

エヴァンジェリンの問いに答えながら、アーラシュは弓矢を消す。

いつもどうやってるのか分からないが、誰も教えてくれないのでスルーする。

魔法でどうにかできるのだろうと当たりをつけているスピカであるが、微妙ハズレである。

 

 

 

安全を確認できたのか、アーラシュの雰囲気がいつものアホみたいな感じに戻った。

エヴァンジェリンの様子もピリピリした雰囲気が消えた。

いつものみんなだ。

スピカは安堵した。

 

 

 

「さて」

 

スピカはアーラシュの声を聞き、茶々丸に抱えられたまま振り向く。

いつまで抱えられているのか。

どうやら目的地が決まったらしい。

 

 

 

「関西呪術協会の総本山とやらに駆け込むぞ」

 

 

その顔はどこか力強く安心するような感じだった。

しかしその声に、スピカは言いようのない不安を感じていた。

 


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