アーラシュに憑依したオリ主がネギま!の修学旅行中にステラする話 作:偽馬鹿
「
ネギは押し寄せる黒い何かを魔法の矢で牽制し、みんなを引き連れて駆け抜ける。
向かう先は学園長室。
学園長なら何とかしてくれるかもしれないという思いからだ。
「ってぇい!」
「ホァチャッ!」
明日菜と古菲が側面から押し寄せてくる黒い何かを蹴散らす。
ハリセンで吹き飛ばし、
ランサーは殿を務め、追い立ててくる黒い何かを粉砕していく。
そして、残ったメンバーで怪我人を運んでいる。
「はぁ、はぁ……」
「急に増えてきたわね……」
増えてきたのは黒い何かである。
まるでネギ達が進むのを阻むように押し寄せてきているのだ。
しかし、学園長室までもう少し。
もうちょっと頑張れば辿り着ける……!
「マスター!」
「ッ!」
ランサーの呼び声で、ネギは漸く目前に黒い何かが陣取っていることに気付いた。
油断していた。
本来であれば先頭を走っている自分が真っ先に気付くべきだったというのに。
しかし、その黒い何かは今までの敵とは雰囲気が違った。
巨大な鉄塊のような武器を持っているからではない。
他の黒い何かよりも更に人型に近く見えるからでもない。
その黒い何かはまるで……アーラシュやランサーと同じく、サーヴァントのようだったからだ。
「……マスター」
「うん、ランサー」
ネギは杖を構え、ランサーは槍を構えた。
明日菜とアイコンタクトをし、先に行くようにと促す。
「気をつけてよ」
「うん」
一言交わす。
そしてネギ達は駆け出した。
「はああああっ!」
ネギは黒い何かへと直進し、ランサーは怪我人を運ぶみんなをフォロー。
明日菜率いる怪我人を運ぶチームはそのフォローを受けて学園長室へと向かう。
すると黒い何かは突撃してきたネギを無視してランサーの方へと向こうとした。
速度は緩慢だが、それが持つ鉄塊はあまりにも凶悪。
それが振り降ろされてしまえば、怪我人が出ることは必至。
「させません!
すかさずネギは魔法の矢を放つ。
狙いは鉄塊を持ち上げている腕と思わしき部位。
しかし、まるで泥の中に撃ち込んだように手応えがない。
撃ち抜かれているはずの腕らしき部位はくねくねと変形し、魔法の矢を回避しているようにも見えた。
「ならば……!」
ランサーが赤い盾を掲げる。
それと同時に黒い何かが振り降ろした鉄塊がランサーへと襲い掛かる。
瞬間、轟音。
地面に罅が走り、ランサーを中心に地面が歪む。
あまりの衝撃に周りの人はネギも含めて体勢を崩した。
「ぐ、む……!」
ランサーも衝撃を受け、わずかに後退している。
だが、それでも背後に抱えるネギの生徒達と怪我人に指一本触れさせていない。
しかし、ランサーを見てネギが驚愕した。
まるで何かに守られていたようなランサーが、その守りの上から傷つけられたよう。
「フンッ!」
とはいえランサーはそれを意に介している様子はない。
何事もなかったかのように槍を振るい、黒い何かに叩きつけた。
威力は十全、しかし黒い何かはまたくねくねと変形して回避する。
「マスター! 広範囲への攻撃を!」
「はい!」
ネギは杖を使って飛翔し、上空で魔法の詠唱をする。
ランサーには通らない魔法の内から、広範囲へと放てる魔法を選択した。
「
白銀の雷がネギの手から放たれる。
不規則に放たれる雷が、黒い何かの身体を焼いていく。
「■■■■■■ー!?」
ここで初めて黒い何かが声を上げる。
いや、それは声というよりも爪で黒板を思い切り削ったような音だった。
「仕留める……!」
ランサーはネギの魔法によって動きを止めた黒い何かに肉薄し、槍を突き出す。
狙いは黒い何かの中央ど真ん中。
急所と思われる位置に向かって一直線に槍でぶち抜いた。
「や、やった!」
ランサーの一撃を黒い何かは避けることができずに直撃し、爆散した。
後に残ったのは干乾びた何かであった。
「ランサー! 大丈夫?」
ネギは上空からゆっくりと降り、ランサーへと近寄る。
先程の怪我が心配だったのだ。
「待て、マスター」
走って駆け寄ろうとしたところで、ランサーが制止する。
どうかしたのだろうかとネギが疑問に思ったところで、ランサーが言う。
「マスター。君には酷な事かもしれない」
「ランサー……?」
ネギは理解できなかった。
何故ランサーが謝るのか。
何故ランサーが悲しそうな顔をするのか。
そして、
「……あ」
分かった、分かってしまった。
何故ランサーが謝ったのか。
何故ランサーが悲しそうな顔をしたのか。
駆け出す。
今ならまだと。
間に合うかもしれないと。
それをランサーが遮る。
ランサーは首を左右に振り、ネギに言う。
もう間に合わないと。
「そんな……」
ネギはがくりとその場に崩れ落ちた。
救えなかった。
助けられなかったのだ。
きっと助けを求めていたに違いない。
そう考えるだけで、ネギは胸を締め付けられるようだった。
「マスター、君のせいじゃない」
ランサーはネギの頭をポンと叩き、優しく諭す。
しかしネギはそれでも、という気持ちが捨てきれなかった。
「マスター。思い悩むな」
優しい声だった。
しかし、それでいて力強い声だった。
ネギがランサーの方を向くと、その表情は怒りに満ちていた。
そうか、ランサーも怒っているのか。
その矛先はネギではなく、他の何か。
恐らくは、黒い何かを操る誰か。
ネギは立ち上がった。
こんなところで立ち止まっている場合じゃない。
みんなも心配しているかもしれない。
やることはいっぱいだ。
「……マスター」
「大丈夫、僕は大丈夫」
でも、きっと大丈夫じゃない人が今も増えているんだ。
そんなこと許されるわけがない。
ネギはそう決意して駆け出した。
「皆さんが待ってます。僕達も行かなくちゃ」
「……そうだな」
ネギが駆け出してすぐ、ランサーも追いかける。
何か覚悟したような表情を浮かべるランサーに、ネギは気付いていない。
しかし、ネギは思っていた。
それでも、と。
それでも、みんなと一緒ならきっと。
ネギは縋るようにそう唱える。
それは仲間を信じているからか、それとも自分を信じていないのか。
彼自身、それは分からなかった。