アーラシュに憑依したオリ主がネギま!の修学旅行中にステラする話   作:偽馬鹿

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古戦場の本番は今日までだと忘れてました
ちまちま書いてた分を公開します


このちゃんキャスター漫遊記4

「てい、てい、てーい」

 

ぺしぺしぺしと、キャスターが黒い何かにお札を張り付けると、黒い何かが消滅していく。

それも端っこの方につけるだけで本体まで消滅するため、とても効率がいい。

木乃香も何枚かお札を握らされているが、使う必要がないだろうくらいお手軽だ。

 

「やっと相性がいい相手が来ましたー」

 

キャスターの気分はいい様子。

ニコニコと笑いながら無双している様はまさにサーヴァント。

 

いつもの剣や鏡は使っていない。

鏡はともかく剣は本来の持ち主じゃないのでー、とはキャスターの談。

 

 

 

渡されたお札を見ると、雲から雨の降っている絵が墨で描かれている。

神託によって最適なお札を選んだとのことだが、どうして雨なのか。

 

 

 

「それはー簡易宝具って奴なんですよー」

 

黒い何かを全滅させたキャスターが、ふわふわしながら帰ってきた。

結構な数の黒い何かを蹴散らしたはずなのだが、無傷である。

 

「ええと、道具作成しながら鬼道を使ってですねー」

 

キャスターは無地のお札を1枚取り出し、どこからともなく取り出した筆でさらさらーっと書き込む。

出来たのは太陽の絵が描かれたお札1枚。

一瞬な上に魔力が使われた様子もない。

どれだけ燃費ええんや鬼道。

 

「完成でーす。これは太陽の特性を持ってますのでー」

 

ひょいっとキャスターがお札を投げると、風に逆らうように路地裏へと向かう。

すると見えないところで爆発し、その奥からいくつもの黒い何かが出て来た。

 

「隠れた何かを照らし出す能力を持っていますー」

 

ふんわりとした笑顔のまま、即座に雨のお札をぺしぺしと張り付けていく。

 

 

 

即座に消滅していく黒い何かを見ながら、木乃香は疑問に思う。

どうして雨のお札で黒い何かが消えていくのか。

 

「え? あれが()()()()()()()()()()()()ですよー?」

「えっ」

「えっ」

 

唐突に話題が飛ぶ。

というか分かってるなら最初に言うてや。

木乃香はキャスターをペシペシ叩いた。

 

 

 

痛い痛いと逃げ回りながら、キャスターは説明をする。

雨のお札は自身の宝具を簡略化したもので、敵の対軍宝具の効果を抑える機能を持っているのだという。

 

「対軍宝具っていうのは広範囲に機能する宝具ってことですねー」

 

私のと一緒ですー、とキャスター。

つまりキャスターは対軍宝具を持っているわけであり。

それをほぼ魔力消費なしで小型にして持ち運べるということだ。

木乃香はよくわからなかったが、エグい話である。

 

 

 

「というか、あの黒いのがバーサーカーの宝具ってことは」

「はい、私が大活躍ってことですねー」

「……うんいやまあ、そうなんやろうけど」

 

ふんす、とやる気満々のキャスターに着眼点はそこではないと思った木乃香。

というかこの情報、早く伝えなくてはいけないのではないだろうか。

 

 

 

そう思った瞬間、建物の上からべちゃりと黒い何かがいくつも降って来た。

バーサーカーはここから木乃香達を逃がさないつもりのようだ。

 

「……囲まれちゃいましたねー」

「あかん奴や……」

 

しゅばばばっとお札を用意したキャスターは黒い何か達へ投げつけた。

木乃香はすぐ勝負が決まると思った。

だって今までもそうだったからだ。

 

 

 

「ああっ()()()()!?」

 

しかし、その期待は裏切られた。

なんと今まで素通りしていたお札攻撃が、黒い何かが持っていた木刀で斬られてしまったのである。

 

わざわざ触れないように準備していたということは、今までの攻撃が知られていたということだ。

つまり、黒い何かはそれぞれが情報を共有しているということになる。

 

「……あれ、ピンチですかー?」

「あかん奴や……!」

 

即座に剣を取り出したキャスターであるが、距離を詰めたりはしない。

何とか隙を見つけてお札を張り付ける為である。

焦っているようで冷静な判断。

いや、ふわふわした雰囲気はそのままなのだが。

 

その様子に木乃香は若干安心する。

何というか、安心させるような雰囲気を醸し出しているのである。

木乃香にはよく分かっていないが、それはキャスターの持つ神性の影響だったりする。

 

 

 

()()()と、黒い何か達が動き出す。

キャスターは木乃香を背後に庇いながら剣を突き出して構える。

木乃香もいつでもお札を投げられるように構えている。

 

 

 

「このちゃん! ……百裂桜華斬!!」

「せっちゃん!」

 

そこにへ、せっちゃんが飛び込むように駆けつける。

放った斬撃は何重にも放たれ、周囲の黒い何かを斬り刻む。

 

しかし。

 

「何っ!?」

 

木刀を持っていた黒い何かだけは、その斬撃の嵐を凌いだ。

 

 

 

そして反撃。

黒い何かは全体をうねらせて勢いをつけ、木刀をせっちゃんに叩きつけた。

 

「ぐ、うっ」

「せっちゃんっ!」

 

強烈な一撃がせっちゃんを襲い、思い切り弾き飛ばされる。

そして、キャスター達の足元まで吹き飛ばされた。

 

木乃香はすぐに刹那へと駆け寄る。

せっちゃんは腹部を押さえている。

骨が折れたのかもしれない。

 

「ええと、ええと」

 

エヴァちゃんから教わった回復魔法があったはず。

そう考えて思い出そうとするが、焦ってしまい上手く思い出せない。

 

「大丈夫ですよマスター。私がついてます」

 

ふんわりとした声が上から聞こえてくる。

その声に勇気づけられた木乃香は、しっかりとした声で呪文を口にした。

 

「プラクテ・ピギ・ナル 汝が為に(トゥイ・グラーティアー) ユピテルの王の(ヨウイス・グラ―ティア) 恩寵あれ(シット) 治癒(クーラ)!」

「あっ……」

 

光がせっちゃんの身体を包み、収まる。

すると苦しそうだったせっちゃんの顔が和らいだ。

 

「よかった……」

 

何とか成功したようで、一安心。

キャスターに感謝しなくては。

そう思い、キャスターの方を見上げる。

 

 

 

ポタリと、木乃香の何かが顔に当たった。

何かと思いそれをぬぐうと、それは血液。

 

 

 

「キャス、ター……?」

 

 

 

さっきまで何でもなかったキャスターの胸に、木刀が突き刺さっていた。

 

 


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