アーラシュに憑依したオリ主がネギま!の修学旅行中にステラする話   作:偽馬鹿

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古戦場のメンテ連打で怒りの更新2

綾瀬夕映をいじめてる感じですが、綾瀬夕映のことは大好きです
是非この困難を乗り越えて覚醒して欲しいです(外道感)


綾瀬夕映の聖杯戦争ラグナロク4

『やっぱりぶっつけ本番は危なかったねー』

 

綾瀬夕映は未だにズキズキする頭を抱えながら、サーヴァント探索に勤しんでいた。

体調は最悪、 気分も下降気味。

魔力だけはスピカのおかげで十全であった。

 

『これは……きついですね……っ』

『本来なら死んでたんだけどねー』

 

軽く言ってくれるですね。

綾瀬夕映はスピカに感謝しながらロキに悪態をつきつつ、神経を研ぎ澄ませる。

 

使うルーンは探索のそれ。

誰もが寝ている中、別荘の中でこっそりと作ったルーン石である。

 

探索のルーン(探すです) よ」

 

小さく呟く。

誰にも聞こえないくらい小さい声。

その言葉が、小石の文字に魔力を通した。

 

「っ……」

 

ズキリと頭に痛みが走る。

それと同時にスピカの額が割れる光景が浮かんだ。

 

痛みをこらえ、スピカが自分を庇う光景をかき消し、魔力を通し続ける。

どうしてここまでするのだろうか。

綾瀬夕映はふとそう思うが、痛みに思考が流されてしまう。

 

 

 

 

「っ……こっちから何か音がするです」

 

反応があった。

適当に理由をでっち上げ、みんなを誘導する綾瀬夕映。

 

場所は少し路地の奥に入った場所だ。

比較的危険と言われているが、既に何度も修羅場を潜り抜けている綾瀬夕映には軽いもの。

そう思っていた。

 

 

 

しかしそこには。

 

 

 

血塗れで倒れているたくさんの人。

 

 

 

「ヒッ!」

 

小さな悲鳴。

それは誰が上げたものだったのか。

 

そして()()()と、血塗れの人たちの向こう側から現れる黒い影。

それは不定形で、ぐちゃぐちゃになったモザイク。

崩れては膨らみ、また崩れては膨らむ。

 

そして手のような何かが、集団の先頭である綾瀬夕映へと向けられた。

ゆっくりと確実に進んだそれは、綾瀬夕映の頬を撫でた。

 

 

 

―――――ジリ……と頬が焼けた音がした。

 

 

 

「シッ!」

 

真っ先に動いたのはランサーだった。

武骨な槍を掲げながら、赤い盾で綾瀬夕映と黒い何かとの間に割って入る。

 

そして叩きつける。

勢いよく槍は黒い何かを潰し、そのまま両断した。

 

 

 

しかし黒い何かは動きを止めない。

分断されたまま黒いそれを触手のように伸ばし、ランサーを狙った。

 

狙いは全て急所。

一つでも捌くことができなければ戦闘は困難になるだろう。

 

 

 

しかし。

 

 

 

「ふんっ!」

 

 

 

その一切をランサーは回避することなく()()()()()()

そして、分割された黒い何かを赤い盾で圧し潰すように仕留めたのである。

 

 

 

攻防は一瞬。

しかし緊張と恐怖によって、その時間が酷く長く感じた。

 

喋る者はいない。

誰もが一瞬の緊張と目前の恐怖に動けずにいた。

 

 

 

「……っみなさん! 怪我人を助けましょう!」

 

そんな中、声を発したのはネギ先生であった。

真っ先に怪我人に駆け寄り、回復魔法をかける。

すると、みんなが少しずつ動き出し、怪我人を運び始めた。

 

ネギ先生がいなければ、きっと誰も動くことができなかっただろう。

それほどまでに目の前の惨状は酷いものだったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫です、みんな生きています……」

 

応急処置を終え、ネギ先生が一息ついた。

みんなも何もしていないにも関わらず、疲れに襲われその場にへたり込む。

 

 

 

「さて、怪我人を運ぶとするか」

 

そんな中、1人平気な顔で怪我人を担いでいるランサー。

確かに怪我人には慣れっこなのだろう。

サーヴァントが自分達とはどこか違う存在なのだと、改めて思った。

 

 

 

『……ふーん』

『……なんですか?』

 

唐突に、今まで黙っていたロキが口を開く。

怪我人を運んでいる最中のことだったので、声が漏れそうになってしまった。

 

『ランサーが黙ってるならいいかなーと思ったんだけど』

『だから……なんですか?』

 

のんきな声で喋るロキに、若干苛立ち始める綾瀬夕映。

今忙しいのだ。

さっきの戦闘に参加しなかったロキに構ってる暇はないのである。

 

 

 

『そう? じゃあ言うけど』

 

ロキは邪険にされたことも気にせず、そのまま話を進める。

図太いというかなんというか。

そういうところは見習うべきなのだろうか。

 

 

 

『ランサー、さっき1人殺したよ』

 

 

 

「……………え?」

 

 

 

しかし、その直後の台詞に綾瀬夕映は凍り付く。

人が1人死んでいる。

それはつまり、()()()()()()()()()()()()ということだろうか。

 

『察しがいいね。そういうことだよ』

 

ニヤリと擬音が付きそうな雰囲気で、ロキが言う。

ああ、しかしそれは。

()()()()()()()()()()()()

 

 

 

頬に黒い何かが触れた時、聞いたのだ。

助けて、という小さな声を。

 

それはあまりに小さい声で。

まるで最後の力を振り絞ったような声で。

 

 

 

それを、綾瀬夕映は無視したのだ。

自分達の安全の為に。

 

 

 

頭痛が酷くなる。

スピカの額が割れる光景がフラッシュバックする。

先程黒い何かが触れた頬がジリジリと痛む。

 

もしかしたら止められたかもしれない。

そう考えただけで吐き気がする。

 

 

 

「……ゆえ?」

「のど、か……」

 

しかし、そんな気持ちはのどかを見て薄れていった。

そうだ、自分が勝手な行動をとれば他の誰かが傷付いたかもしれないのだ。

だからこれは仕方ないことなのだ。

 

綾瀬夕映はそう自衛する。

そうしなければ、今まで自分を支えてきた柱が折れてしまう。

それはきっと自分を壊してしまうだろうから。

 

 

 

「……大丈夫ですよ、のどか。私が守るです」

 

 

 

そして決意する。

のどかや他のみんなをこんな気持ちにさせない。

その為には、どんな困難だって乗り越えてみせる。

 

 

 

頭痛が酷くなるが無視。

スピカの惨状がフラッシュバックするが無視。

ジリジリとする頬の痛みも無視。

 

 

 

胸元の火のルーン石を握り締める。

結局没収はされなかった。

スピカの魔力があれば死ぬことはないだろうという判断からだろうか。

 

 

 

けれど。

みんなを守れる力がある。

それだけは確かである。

 

 

 

『……』

 

 

 

そして、悲痛な覚悟を決めている綾瀬夕映を、ロキは無言で見つめていた。


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