アーラシュに憑依したオリ主がネギま!の修学旅行中にステラする話   作:偽馬鹿

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敵も味方も戦力が増えて大変なことに


ネギせんせーの英雄の卵エクササイズ1

『……ネギ』

 

ネギが自室に帰ろうとエヴァンジェリンの自宅から出た瞬間、ランサーが急に声をかけてきた。

その声は焦っているような戸惑っているようなものだった。

 

『どうしたのランサー?』

 

ネギも何やら不穏な気配を察する。

ピリピリとした空気を感じるのである。

 

『戦闘の気配だ』

 

ランサーの一言で、予感が的中してしまったことをネギは理解した。

すぐに自身の杖に乗り、加速する。

 

「どの辺りか分かる!?」

『恐らくはショッピングモールの辺りだ。魔力のぶつかり合いを感じる』

 

一通り町を案内したおかげか、ランサーの台詞で戦闘の位置を正確に把握できた。

即座にその方向へ杖を向け直し、加速する。

 

「兄貴! 何が起こったんでさぁ!?」

「カモ君! 向こうで戦いが起こったみたいなんだ!」

「なんだってぇ?!」

 

驚いた様子のカモ君を肩に乗せたままショッピングモールがある方向を指差す。

一体誰が戦っているのか。

一瞬生徒のみんなの顔が思い浮かんだが、即座に頭を振った。

まだそうと決まったわけじゃないからだ。

 

 

 

「っ! 見えたよ!」

 

すぐに目的の場所に辿り着いた。

周囲を見渡すと、今まさにガラスの中に取り込まれようとしているスピカがいた。

 

「スピカさんっ!」

 

咄嗟に手を伸ばす。

無我夢中で、スピカが危険な目に会うと思ったら動かずにはいられなかった。

 

しかし、その手を空を切る。

あと一歩というところで、とぷんという音と共にスピカはガラスへと消えていった。

 

 

 

「間に合わなかった……!」

「兄貴……」

 

ギリ、と歯を食いしばるネギ。

自分がもう少し早く辿り着いていれば。

そう思わずにはいられなかった。

 

 

 

辺りを見渡しても誰もいない。

スピカをあんな風にした人物は既にいなくなったということだろう。

 

考えろ、ネギは自分に言い聞かせた。

思考を止めることは負けを認めることだ。

アーラシュと一緒に行動した時に言われた言葉の1つだ。

 

 

 

「ネギ先生っ!」

「夕映さん、のどかさん!」

 

少しすると夕映とのどかが走ってくるのが見えた。

息も絶え絶えだ。

 

少し落ち着かせると、夕映がとんでもないことを口にした。

 

「女子寮でも何か大変なことが起きたです」

「なんですって!?」

 

聞けば女子寮で大きな揺れがあったとか。

今度こそ……ネギの脳裏に生徒達の顔がしっかりと浮かんだ。

僕が守らないといけない。

ぎゅっと手を握り締め、ネギは女子寮へと杖に乗って飛び出した。

 

 

 

 

 

 

「どこですか……!」

 

女子寮に到着したネギは神経を研ぎ澄まし、周囲の様子をうかがう。

きっと急ぐだけじゃ意味がない。

ちゃんと考えて、正確に動かなくちゃならない。

 

「きゃああああああ!」

「っ!」

 

悲鳴だ。

ネギは即座に駆け出し、悲鳴の聞こえた方向へと急ぐ。

スピカのことを思い出し、今度こそはという思いも込めて。

 

 

 

「っ! 千鶴さん!」

 

悲鳴の聞こえた部屋へと駆け込むと、今にも攫われそうな那波千鶴の姿が見えた。

そして壁に叩きつけられた小太郎の姿も見える。

動くこともできずにしゃがみ込んでいる村上夏美の姿もあった。

 

動けない。

今動けば村上夏美も巻き込んでしまう。

 

 

 

結局、ネギは何もできないまま那波千鶴を攫われてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうするんやネギ。明らかに罠やで」

「……それでも向かわなくちゃ。みんなが危険な目にあってるんだから!」

 

小太郎の傷を治し、村上夏美を落ち着かせてからネギと小太郎は並走していた。

向かう先は指定されたステージ。

一分一秒でも時間が欲しい中、唐突にランサーが霊体化を解いて姿を現した。

 

「……分かった。()()()()の意志を尊重する」

「だ、誰やこのおっさん!?」

 

ネギは聖杯戦争のことを簡単に教え、その参加者であることも教えた。

そしてその参加者の助けになる存在がサーヴァントであることも。

 

「サーヴァント……つまり、味方ってことでいいんやな!」

「そうだ」

 

やけに素直だ。

ネギは初日のランサーの態度を思い出すが、今はその時ではないと思い直す。

今はあの紳士風の男を倒さなくちゃ。

 

 

 

 

 

 

「……来たか、ネギ君」

「来ました……さあ、みんなを離してください!」

 

那波千鶴、刹那、古菲、和美、スピカ。

そして明日菜。

みんな囚われてしまっている。

 

ステージには数多くの鏡が立ててあったり寝かせてあったりしている。

あれには一体何の意味があるのか。

分からないが、今ネギにそれを考えている余裕はなかった。

 

「ランサー!小太郎クン! みんなを助けるよ!」

「了解した、マスター!」

「おうよ、ネギ!」

 

3人同時に飛び出す。

すると地面から水……否、人影が飛び出してきた。

見た目は小さな女の子だ。

 

「任せろ」

 

ランサーは一歩先を行き、槍を薙ぎ払う。

その槍先はまるで見えない。

その一撃が周囲の女の子を弾き飛ばした。

 

そしてそのまま疾走。

あまりに速く、2人を後方に置いて駆ける。

そして一気に紳士風の男へと肉薄した。

 

 

 

しかし、それを阻む者がいた。

ネギからすれば必殺にしか見えない突きを、誰かが止めたのである。

 

「……アサシン」

 

サーヴァント……!

ネギは新たな敵の登場に緊張を高めた。

 

「……畏まりました」

 

アサシンは小さく呟くと、手に持った剣で反撃した。

力任せに振り払われたそれに、ランサーは押し戻された。

 

 

 

「ランサー!」

「こちらは任せろ! 今は仲間を救えっ!」

「はい!」

 

ネギはランサーに言われた通り、紳士風の男に肉薄する。

即席ではあるが、なんとか小太郎とのコンビネーションも形になっている。

少なくとも不利な状況ではなかった。

 

 

 

サーヴァント同士のぶつかり合いは一見一方的だった。

ランサーの槍が振るわれたと思うと既にアサシンの姿はなく、気付けばランサーの背後に出現する。

そして剣がランサーに向かって振り降ろされる。

それを赤い盾で防いだランサーが、そのまま盾で地面へと叩きつけようとする。

 

それをアサシンはまた消えることで回避。

ランサーの反撃はすべて見切られているように見えた。

 

 

 

「……そうか、鏡だ! 兄貴! アサシンは鏡を媒介にして移動してるんだ!」

「!」

 

アサシンの様子をじっくりと観察していたカモが叫ぶ。

カモの台詞にネギも漸く合点がいった。

なるほど、鏡が所々に配置されているのはそれが理由なんだ。

 

 

 

ならばその鏡を砕く。

ネギは即座に魔法の矢を放つ準備をする。

 

「させると思うかね?」

 

ズ、とネギの前に紳士が立ちふさがる。

今にも攻撃を放つ直前だ。

 

「悪いなおっさん。今の相手は俺や!」

「む」

 

そこに小太郎が直撃する。

側面から勢いよくぶつかった。

 

「ラス・テル マ・スキル マギスキル! 光の精霊(セプントリーギンタ)37柱(スピーリトゥス・ルーキス)集い来りて(コエウンテース)敵を射て(サギテント・イニミクム)魔法の射手(サギタ・マギカ)連弾(セリエス)光の37矢(ルーキス)!」

 

ネギの杖から魔法の矢が飛び出す。

狙いは舞台に設置されている無数の鏡だ。

 

「見事だマスター!」

「ちぃっ!」

 

鏡が砕けたことで、ランサーが即座に攻勢に乗り出す。

カモの言う通り鏡を媒介に移動していたようで、ランサーの攻撃を回避することができなくなっていた。

 

サーヴァント同士の戦闘は一気にランサーの優位に傾いた。

ランサーの攻撃が通るのに、アサシンの攻撃は通らない。

まるで何かの加護で守られているかのようだった。

 

 

 

その様子を見て、迷いなく紳士との戦闘に専念するネギ。

小太郎との連携が上手く行き、優位に立っているとネギは確信した。

このままいけば、必ず勝てると。

 

何せ小太郎から相手を封印する瓶を受け取っているのだ。

今、自分たちはその射程内で格闘戦をしている。

隙があれば即座に瓶を使って封印する……!

 

 

 

しかし。

 

 

 

「魔法が……!」

「かき消された……!?」

 

紳士風の男を封じると思われた瓶は、その効力を発することなく床に落ちた。

呪文は完璧だった。

魔力も充分。

 

それなのに何故。

ネギは困惑した。

 

 

 

「マジックキャンセル……魔法無効化能力という奴だよ」

「そんなっ」

 

 

 

紳士風の男が種明かしをする。

しかもそれは明日菜の能力だという。

 

魔法が通じない。

それはネギ達にプレッシャーとしてのしかかる。

攻撃手段の大半が通用しないということだからだ。

 

 

 

「どうしよう……!?」

 

 

 

ネギは声を上げるが、打開策は見えてこなかった。

 

 

 

 

 

 


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